サクライロノセカイ/リリカルなのはなお話

えびえもん兼いかじゅんのブログです。リリカルなのはの二次創作などを書いています。

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活動報告

的な物を書いてみることにした。

まぁ年末ですし、これからの予定でも書こうかなと。取り敢えず今は二次創作は『烈火の翼』を中心に更新していこうと思ってます。他は気が向いたらとか気分転換に更新ー、とかでしょうね。

ちなみに、自分の活動はツイッターを見れば分かります。『いかじゅん』で登録してあるしすぐ分かると思います。フォローとかも待ってます(笑)

ではでは、また次回の更新でお会いしましょう。多分近々、烈火の翼の最新話が完成すると思うのでー
  1. 2012/12/26(水) 17:27:41|
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魔法少女リリカルなのは 烈火の翼 第29話

イメージOP、嵐『Face Down』
────────────────────






世界は回る。例え、世界の危機が迫ろうとも、起ころうとも、世界は変わらず回り続ける。

物語は動く、歪んだ形だろうと、確かに終曲へと旋律を奏でる。ただ、確かなのは――物語は終わりと始まりを繰り返す。まるで『ダ・カーポ』の様に、繰り返す旋律‐物語‐。

物語の終わりと、物語の始まりは、すぐそこに迫っていた。その事を知っている者は、ほとんどいない。

だが確かに――歪んだ物語は、ゆっくりと加速していた。









◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「主、もう10時ですよ」

「……頭痛いから、もうちょっとねかせてよ~」

ちなみにこのやりとり、家ではなく病院の病室内でのやり取りである。

季節が季節なので仕方ないが、病院の毛布を離さず潜る様は、いつもの彼からは想像も出来ない姿である。毛布の所為で姿は見えないが、誰かは言わなくても解るであろう。現在進行形でアイドルと付き合っていると言う、冷静に考えると凄いことをしている、ヒナギクだったりする。

そんな布団の中の彼を、まぁあんな事があったのだから仕方がないか、とお見舞いの花を花瓶に生けながら考え、微笑みと共に見つめる女性は、先日までとはどこか雰囲気の違う魔法使い、芳乃シグナム。

たまには、寝坊助な主と言うのも良いのだろうが、どのみち次の一言で勢い良く起きるのだろうと彼女は“推理”していた。

「そうですか……ですが、そろそろ雪華が見舞いに訪れる頃ですよ」

アイツは今日、オフの日ですから――とシグナムが言葉を放つ頃には、毛布とシーツは既に整えられた後。その間にも、恐るべき速度で髪を整え身嗜みをしっかりと整え……ともかく、雪華が来ることに万全の状態で備えていた。

ちなみに、雪華が朝一で来ない理由はおそらく、見舞いの品をどうするか迷っているのだろうとシグナムには容易に想像が出来た。

なんだか初々しい二人の姿に、無意識のうちに笑みがこぼれてくる。
そんな彼女の雰囲気に見て、この前から疑問に思っていたのか、ヒナギクが少し考える仕草をしてから、言った。

「シグナム、なんか雰囲気変わった?」

その問いに、花を整える手を止めて僅かに瞳を見開き驚きを表すシグナム。

あの後、彼に付きっきりだったとはいえ、気付かれるとは思っていなかった。と言うより、思った以上に自分は顔に出やすい性格なのか……どちらにしろ、隠し通すことでは無いが、かといって言い振らすことでもない。

――せっかくなので、曖昧に答えて誤魔化して見ようか。

「……まぁ、変わったと言えば、変わりましたよ」

変わったと言うより、“戻った”と言う方が正しいかもしれない。それでも、姉にまで“変わった”と言われてしまったのだが。

明らかにはぐらかした返答にも、ヒナギクはふーんと特に気にした様子もない。何にしろ、シグナムはシグナムだと思っているのだろう。要は信頼しているのだ。

――さて、それはそうと。一つ、一応だが言って置こうと思い、扉を開く前に口を開いた。

「主、雪華が来ますから私はそろそろ帰りますが――病院では、昼間に“そういった事”は出来るだけお控えくださいね?」

「へ――えぇ!? そ、そそそんな雪華ちゃんとなんて私!!」

「おや、私は雪華とは言っていませんよ」

「ッ……う、うるさいうるさいうるさい!!!! さっさと行きなさい!!」

墓穴を掘ったヒナギクが顔を真っ赤にし、まるでツンデレの様な台詞――おそらく、中にいる人間の影響――を吐いてシグナムを追い出した。

明るくなったものだな、と扉を閉めて可笑しそうに……いや、嬉しそうにシグナムは微笑む。

――変わった。そう言いたかったのは、寧ろシグナムの方だった。明るくなった、何かを吹っ切ったと言う様にも思える。

それもこれも、命をかけて主を救ってくれた“友人”のお陰……そう考えた時、ふと気が付いた。

(……そういえば、友人が出来たのは初めてだったな)

記憶がなかった時は不思議にも思わなかったが、こう姉と過ごした十年近くの記憶が全て戻ると、なんだか不思議な気分になる。

――天才少女の“妹”。流石はあの人の“妹”……そんな言葉を聞かなかったのは、本当に久しぶりだったから。

「……さて」

記憶の戻った自分の想いに浸るのは、ここまでにしておこう。ふと彼女は桜色の髪を揺らして――不審者三名の後ろに回ることにした。

……不審者三名。赤毛の少女、守護騎士ヴォルケンリッター鉄槌の騎士、ヴィータ。まぁ彼女はいい。

頭に帽子を被った男、盾の守護獣、ザフィーラ。まぁ彼もいい。帽子は犬耳(?)を隠す為の物だろう。

しかし、しかしだ。コートとサングラス……明らかに間違った刑事知識を持ったヴォルケンリッターの最後の一人、湖の騎士、シャマル。

――目立つ。少なくとも病院の人々に怪しい目で見られるくらいには、凄い目立っている。

階段近くの壁辺りに隠れているつもりだろうが、全く隠れていない。そして、一番目立っているであろう人物が、全くそれを自覚していないと言うのが、一番厄介な事だろう。

「……ザフィーラ、やっぱお前シャマル連れて帰れ。アタシ一人で行く」

「だが……」

「お前ヒナギクと面識ないだろ、余計混乱させるだけだ。シャマルは……いると目立つ」

「え? 完璧な変装だと思うんだけど……」

それで完璧な変装なら、全国で変装を必要としている方々は苦労していないだろう。って言うか、楽になってもらっても困るのだが。

もう時間がない筈の守護騎士が、何故三人揃ってこの場にいるかと言えば――

「それで? お前達は何の用だ?」

「何の用って……ちょっと余裕が出来たから、この前の事をヒナギクに謝りに……」

「そうか、殊勝な事だな」

言いながら、ヴィータは気付いた。待て、今話しているのは一体誰だ、と。ザフィーラは勿論、いなかったシャマルにも事情は話している。

本来ここに来る余裕はなかったのだが、イレギュラーな事態があった事で余裕が出来た。

話を戻そう、今自分と話していたのは誰だ? いや、問う迄もない。その声を聞き間違う筈もないし、答えは目の前にあった。

桜色の髪をポニーテールに、彼女の意思の強さを現す様な、透き通る美しい瞳。何処か不思議な雰囲気を纏った彼女は、もう名前を問う迄もない。

「な、なな、なんでお前がここにいんだよ!?」

「主が入院しているからな。大体、私が病院にいて何が悪い」

それは、いつかと同じヴィータの問いかけ。が、シリアスの欠片もなく、あっさりとシグナムの正論によって切り捨てられた。

問いかけたヴィータも、冷静になるとそりゃそうだよな、と思ってしまう辺り、やはりシリアスの欠片もない。

そんなヴィータを尻目に、シグナムは酷く驚いているシャマルとザフィーラに視線を向け、そして再びヴィータに視線を戻しながら言った。

「……ザフィーラにシャマル、それにヴィータ、で合っているか?」

「合っているかって……貴方、“思い出した”んじゃなかったの?」

「思い出した、と言うのは語弊がある。私の記憶にない記録を、外部から叩き込まれた様な物だからな」

シグナムの言葉を聞いてもちんぷんかんぷん、といった風の三人。そりゃそうだ、これは彼女と記憶を封じる『魔法』を使った“姉”にしか分からない。

『……キミが全てを思い出した時、この記憶……いや、記録がキミの中に流れ込む。その時どうするかは、キミ次第だよ』

流れ込んだ記録は、そう多い物ではない。“前の自分”が目の前の三人とどういう関係だったのか、そして“夜天の魔導書”と言う本。

――だからといって、別にどうこうする気はない。自分は『烈火の魔法使い』。そして何より、あの方の“妹”である『芳乃シグナム』なのだ。

今の自分の記憶は、確かにそう。例え姉やおばあ様に会う前、どういう状態だったとしても、残酷な言い方だがまったく関係ない。

――烈火の魔法使いは、今まで確かにこの世界で姉と共に生きてたのだから。そしてこれからも、芳乃シグナムとして生きていく。流れ込んだ記録を見ても、シグナムは意志を変えず、そう選択したのだから。

(しかしまぁ、思い返すと姉さんも役者だな……)

何が自分では解けない、だ。掛けた本人が解けない訳ないし、さらっとおばあ様に責任を転嫁していた。まぁおばあ様もそう言われても仕方のないことをしているし、記憶が戻ったらすぐにバレる嘘だったのだから、よしとする事にしよう。

「それはそうと、主は今取り込み中……いや、取り込み中になる処か」

「は?」

「ほら、あれだ」

シグナムに顔の動きだけで促され、三人は揃ってヒナギクの病室を見た。

……そこに居たのは、一人の超絶美少女。帽子を被っていても、そのオーラは消せはしない。

そしてヴィータは、彼女に見覚えがあった。緋色の髪をなびかせ、業火の中から現れた彼女の姿を忘れる訳もなく、それ以前に“テレビで見た”記憶が――

「あぁ!! もしかして藤原ゆき――ふがっ」

「はいはい、言いたいことは分かるし、最近忘れていた正しい反応だが、病院では静かにな」

彼女の名を思わず叫ぼうとしたヴィータの口を、すぐさまシグナムが手で塞ぐ。

確かに、普通に身近にいるので忘れていたが、藤原 雪華とは今をときめく現役トップアイドル。本来テレビの向こうの人物なのだ。ヴィータの反応は凄く正しいし、ここで騒ぎが起きないことの方が奇跡に近い。

まぁそこは、使用する人達のマナーの良さ故だろう。病院の先生やナースの人に、サインを求められたりはしたが。

バシバシ、とシグナムの手を叩くヴィータ。分かったと言うことなのだろう、シグナムも大人しく手を離してヴィータを自由にしてやる。そこで当然の如くテレビの前での雪華を知るシャマル(はやてと揃ってファンだったりする。ちなみに口数が少ないザフィーラも)が、部外者の人間からすれば当たり前の疑問を持ち出した。

「な、なんで雪華ちゃんがその……ヒナギクさんの病室に?」

「なんでと言われてもな……主の“彼女”であるアイツが、見舞いに来てはいけない理由があるのか?」

沈黙、そして三人揃って目を見開き超絶の驚愕。なんだか、シグナムが目の前に現れた時より驚いている気がする。いや、確かに現役トップアイドルが現れて、果てには目的の人物の彼女などと言われれば、当然の反応かもしれない。

シグナムにとっては今さらだし、アイドルである以前に雪華個人の友人であるので、特に問題はない。
二回言うが、今さらなのである。

その当本人、藤原雪華はもう何回目かの手鏡を取り身嗜みをチェック。そして見舞いの品だろう物を持ちながら、入った時のシミュレーション。そこから再び身嗜みを――ループに入っていた。

が、そんな事をしている間に後ろにいた少年が迷わず扉を開き、雪華を強引に押し込んで手早く扉を閉めた。

まさに早業。そして目が物語っている……なんでこんな事してんだろ俺、と。静かに黄昏る少年……冬獅郎がシグナムの存在に気が付き、ふらりとシグナム達の下へ到達した。

「お疲れ様です、冬獅郎殿」

「なんで俺がこんな事……つうかお前がやれよめんどくせぇ」

「いえいえ、冬獅郎殿が一番適任でしょうから」

にこやかにそう告げるシグナムは、冬獅郎はめんどくさそうに、そうかよ、と言って静かに諦める。まぁ仕方がない。二人の会話に付き合う必要がないだけマシだろう。 続きを読む
  1. 2012/12/17(月) 17:49:03|
  2. 烈火の翼
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魔法少女リリカルなのは 烈火の翼 第28話

推奨ED、ポルノグラフィティ『ゆきのいろ』


────────────────────











何もない、暗闇の世界。どこかも解らぬ、闇一色の世界。その世界に二人の同じ、しかし違う人間が相対した。

片や、今にも泣きそうな表情で相手を見上げる……ヒナギク。片や、まるで迷子の相手をする様にしゃがみ視線を合わせる……紅 刹那。

同じ容姿なのに、どこか雰囲気が全く違う、不思議な二人。当たり前だ――既に、別の道を歩み始めているのだから。

「貴方が悩んでる理由、当てて見せましょうか?」

ふと、刹那が立ち上がりヒナギクを見下ろし、今度は悪戯っ子の様な笑みを浮かべる。そうして、今ヒナギクがここから出ようとしない“もう一つの理由”を簡単に言い当てた。

「大事な人に嘘ついたこと、後悔してるんでしょ?」

「ッ!?」

途端、酷く驚き、そして居たたまれない様な……そんな表情になるヒナギク。明らかに、図星のようである。

後悔、かは解らない。でも、あの時嘘をつき、今尚その事を心の奥底に隠していた。

――嫌われてしまったかもしれない。そんな、少年の様な悩みを表に出さないまま抱え込み、今の様な引きこもった状態になってしまっている。

通常なら、普通の彼ならばこうはならない。だが、それを可能にしてしまうのが“翼”の力。

自分から漏れだした“一部”の力でこれなのだから、困ったものだと内心ため息を吐く刹那。しかし、いつまでもこんな状態にしておく訳にはいかない。何せ、もう外に“迎え”が来ているし、自分が抑えて置くのにも限度と言う物がある。

――かったるい事は、あまりしたくないのに。

「仕方ないなぁ。じゃあまず感情の整理からね」

「?」

「烈火の魔法使い……あぁ、貴方には烈火の騎士か。彼女の事は、どう思ってるの?」

烈火の騎士、シグナムの事だろうか? 彼女の事……ずっと、一緒にいてくれると言ってくれた、大切な、大切な――

「……家族。よく、解らないけど、そんな気がする」

「そっか」

なんだか、目の前の人物に会ってから自分の気持ちが定まっていく……しっかりとした“自分”になっていく、そんな不思議な気持ちをヒナギクは感じた。

対して刹那は、その答えを聞いて“何故か”とても安心した様な安堵の表情を浮かべる。その理由は、やはり刹那にしか解らない。

「じゃあ……あの子は? 雪華ちゃんは?」

「……雪華ちゃん」

あの子への、想い。真っ直ぐで、天真爛漫で、でも仕事の事になると凄く必死で、凄く輝いてて。

そんな少女を、自分はどう思っているのか? 嘘偽りの無い、確固とした今の自分の気持ち、想い。

家族? いや、確かに一緒に暮らしてはいるが、何かが違う。友人? いや、これも何かが違う。じゃあ、一体何が――

『アンタ、その二人に恋してるんじゃね?』

(……あぁ、そっか)

もう、答えならとっくに出ていたのかもしれない。

出逢い、彼女の輝きを見た時、彼女と接した時間が刻まれた時、既にもう。

漸く、感情の整理がついたヒナギクが、ゆっくりと、自分にも言い聞かせていくように……言葉を紡いだ。


「――好き。私は、雪華ちゃんが……好きなんだ」


――それが彼の、彼だけの答え。出逢った時から、恋い焦がれていた。

その答えを聞き、美しく優しげな笑みを溢し、刹那はまた言葉を紡いだ。

「なら、こんな所にいないで、さっさと往きなさい。自分に嘘をつくのは、もうお終い。きっと、彼女は貴方の全てを受け止めてくれる」

「刹那、さん」

「私やさくらさん、烈火の魔法使いの『魔法』は奇跡を起こせるけど、決して万能じゃない」

そうだ、なのは達の使う魔法とは別物の『奇跡』を起こせる魔法とはいえ、決して万能などではない。
けど――

「でもね――愛や恋は、結構万能だから」

もう、彼らは大丈夫だろう。その想いさえ在れば、きっと何でも乗り越えて往ける。

だから後は……。

「でも、私は……」

「記憶がないって? 在るでしょ、ここに」

自然に、刹那が手を置いたのはヒナギクの胸。そこに詰まった、大切な物。

「なのはちゃんやさくらさん、桃子さんや士郎さん、烈火の魔法使いや……雪華ちゃん。皆との、大切な思い出はもうここに。貴方だけの、私とは違う大切な記憶が在るでしょう?」

「あ――」

そうだ、大切な記憶もう……ここに在ったのだ。何よりも大切な、皆との記憶。

もう大丈夫そうかな、と刹那は立ち上がり――純白の翼を、広げた。闇夜を照らす、純白の光はヒナギクを包み込み、外への道を繋げる。

「刹那さん……?」

「全部が終わった後でいいから、士郎さんと桃子さんの話もちゃんと考えなさいよ? さぁ――お別れです」

「待って!! 貴方は――」

「貴方に――蒼天の幸運を」

瞬間、ヒナギクは光と羽に包み込まれ――彼の“心”は、外の空間へと回帰した。

また、闇一色の世界の中で彼は一人になる。そして一つ、呟いた。

「そろそろ……潮時かな」

――その言葉を意味を知る者は、まだいない。彼の姿は暗闇へと消え失せ……歪んだ物語は、双天の魔法使いをも巻き込み加速を始めた。









◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

ドクン、ドクンと“翼”が作り出した空間が酷く震え――爆発的な衝撃が、真っ直ぐ響いた。

「くっ……!!」

咄嗟に動いたのは、やはり最強の魔導師と名高い女性、高町なのは。急ぎクロノ、そして本来は敵であるヴィータもわざわざ引き寄せて、広範囲に強力な防御フィールドを展開するワイドエリアプロテクションを作り出した。

次の瞬間、時空の翼を展開するヒナギクの更に後方。その空間に、確かな亀裂が走り――爆発的な紅蓮の業火が、一瞬にして辺り一帯を埋め尽くした。

「なっ……」
「シグナムかっ!?」

クロノが、ヴィータがその業火を見て驚きで目を見開くが、彼らの元にも炎が行き届く。そして、ワイドエリアプロテクションと炎が衝突――一瞬で、プロテクションを圧し込んだ。

(ッ……もうちょっと、加減してくださいよシグナムさん!!)

急ぎさらなる魔力を込め、辺りを包み込む炎から身を守りながら、未だ姿を見せない技を放った本人に文句を言う。

が、これでも加減は“している”のだ。この強固な歪みの結界をいとも簡単に破壊し、多少なりとも威力が落ちている筈なのに、高町なのはの鉄壁の防壁を圧し、尚広範囲に広がる業火。

――瞬発的な威力が一体どれ程であったのか、あまり知りたくはないことである。

だが、まだ終わりではない。何かが、信じられないことに業火の広がる亀裂の内部を突き進み、突入してくる。そんな馬鹿げた事を出来るのは、撃った本人を含め限りなく少ない。

だから、力の波動も含め、そして“氷結する炎”の光景を見て、誰が来たかは直ぐに理解できた。亀裂が、さらに広がる。そして、残り火とも言える業火をも氷結させ――姫君が姿を現した。

「――ヒナッ!!」

なびく“緋色”の髪。彼女そのものを表現するかのような、灼熱の炎髪。そして、己の師の名前を叫んだ事でやはりと思った。

氷雪系最強の刀、『大紅蓮氷輪丸』を展開し、氷華の翼で飛翔する氷の姫君――藤原 雪華。

残り火とはいえ、あの炎の中を突っ切って来るとは、全く予想外の登場の仕方だ。しかし、そんな事を考えている時間も惜しい。直ぐ様彼女に師の事を頼もうとし――急速に何かの力が強まって行くのをなのはは感じ取った。

「まさか……!!」

「このタイミングでか!?」

同じく、クロノも気が付いた。歪みを生み出していた力が、急速に翼へと集い出した。このままでは数秒もしない間に――この空間は、消滅する。

瞬時にそれを感じ取ったのだろう、雪華がヒナギクの元へと一気に飛翔する。が、それよりも速く……力の解放が始まった。

「雪華さん!! くっ!?」

衝撃がなのは達の元へも響き、変わらずプロテクションを解く事は出来ない。今プロテクションを解けば、自分達はたちまち吹き飛ばされてしまうだろう。

だが、雪華はその衝撃を何の防御も無しに、それどころか勢いを殺さずに迷いなく突っ込む。

当然、それによって――

「ッ!!」

『雪華!!』

雪華の受けるダメージは、その分増していく。けど――知ったことか。

氷華の翼が砕け、辺りに氷が散る――知ったことか。

衝撃に打たれ、口に血の味がする――知ったことか。

「関係……ない!!!!」

腕を伸ばす。その腕からも、血が溢れ出る――知ったことか!!

今は、目の前にいる大切な人の事だけを考える。こんな状態の自分を見たら、彼は泣くだろうか? でも、それでも、彼を救けたいから。だから、叫ぶ。

大好きな人の、名を。



「ッ……ヒナァァァァァアアアア――――――!!!!!」



……彼の表情が、辛うじて見える。驚きに染まった表情。そして、自分を見た彼の瞳は“確かな光を宿し”て――彼女の名を、呼んだ。

「ゆきか……ちゃん」

――刹那、安堵の表情を浮かべる雪華の指にヒナギクの指が触れ――強く、強く互いの身を抱き締めた。

翼が散る。二人が、そのまま離脱していく中、分離した力は……まだ生きていた。光が球体上の形となり、未だ強い光と衝撃を放っている。

「なのは!!」

「さっきよりマズいわ……このままじゃ、見境なく空間を破壊して現実空間にまで影響を及ぼしかねない!!」

ならどうする、と言うクロノの視線だけの言葉には答えず、神羅によって恐ろしく迅い思考速度を限界まで加速させる。

“アレ”を止める手段……ダメだ、今の自分達にその手段は存在しない。ならばせめて、“彼女”がたどり着くまでの時間稼ぎ――無理だ。

何か強い威力を持った力……それが在れば、僅かでも時間を稼ぐ事が出来るだろう。“彼女”が到着する、その僅か足りない時間を。

だが――手がない。今にも突撃していきそうな守護騎士のヴィータ……無理だ、彼女の攻撃が一番威力を発揮できるのは、おそらく接近戦。この障壁を常に展開していなければいけない状態では、とてもではないが接近は不可能。

クロノも、同じく無理だ。彼の場合、衝撃を貫いて尚時間を稼げる様な“火力”が足りない。

ならばその火力を持つ彼女自身――やれる物なら、とっくにやっている。

(この……己の未熟が恨めしい!!)

この空間に侵入する時に使った、転移用の魔力。さらに『ディバインバスター・エクスキューションシフト』で、温存していた魔力の半分以上を失い……今のこのプロテクション、想像以上に魔力を消費している。いや、彼女でなければとっくに崩れている、と言う方が正しいか。

衝撃を防ぎ切るだけのプロテクション、それを三人を囲み切るだけの範囲で、さらに長時間展開している。魔力が底を尽き掛け、障壁を圧し込まれ感覚が無くなり掛けている右腕を左腕で支え、そんな状態でも尚高速で動く思考を止めない。

破棄、破棄、破棄。思考しては、立案したプランを破棄して……彼女の気持ちとは裏腹に、無情にも光は輝きを増し――

「月……牙ッ!!」

刹那、響き渡るは運命を変える魔法使いの叫び。また空間に亀裂が奔り――真紅のドレス甲冑を身に纏った、芳乃シグナムが姿を現す。
天鎖斬月・緋炎から溢れる、灼熱の炎。それは、今までの牙とは比べ物にならない――烈火の刃。

鈴の音が鳴り、烈火の翼が、羽撃たく。


「天――衝ォ!!!!」


振り下ろされた刃から、真紅の牙が飛翔する。爆熱の炎が、光と激突し衝撃で空間が悲鳴を上げ――桜が包み込む。 続きを読む
  1. 2012/11/30(金) 04:04:03|
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魔法少女リリカルなのは 烈火の翼 番外編Ⅳ

「さくらちゃん!!」

……誰かが、呼んだ気がした。でも、今の少女にそれを確かめられる余裕は無い。ただ、思考が闇に染まって行くのを止められない。

そんな中でも、冷静に状況を把握している自分がいる……そんな自分が、少女は嫌いだ。

――少年が見せた表情を、良く知っている自分がいる。けど、冷静な彼女でもいつ見たかは思い出せない。

そして、その冷静な思考すらも途切れ――さくらの思考は、闇に落ちた。









◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「そうか……そんな事が」

「冬獅郎くんの目的は、大体は判っとる」

戦艦アースラ、ブリーフィングルーム。彼……冬獅郎が再び姿を消してから少し経ち、ブリーフィングルームにはギン、クロノ、雪華、はやてと言ったメンバーが集まっていた。他のメンバーも、ここにはいないが事情は――気を失ってしまった、さくらを除き――理解していた。

「彼の目的は……僕たちと敵対しなければ、できない事か?」

「そうやね。ボク達に理解は出来ても、納得は出来ん方法や」

そう語るギンの表情は、珍しく僅かな怒りの感情が浮かび上がっていた。無論、身近で言うとなのは位にしか判らない表情の変化では在るが。

理解は出来る、しかし納得は出来ない。それが、刃を交えて彼の意図を読み取った市丸ギンの見解だ。

「あの子、自分で全部背負い込んで、この戦いを終わらせる気や」

「彼から何か訊いていたのか?」

「いいや、刀合わせたらそんくらいは判るし……言うてたんよ――『さくらを頼む』ってな」

彼を知る者ならば、その言葉がどれだけ重い物か判る。その言葉の意図は――自分が決着をつけるから、お前らは手を出すな――と言う意味合いも在るのだろう。だから、彼もわざわざ“敵”と言う言葉を使った。

さくらを頼む……この言葉の重さを、ギンと同じ程に理解しているであろう雪華は、目を閉じて壁に寄りかかったまま動かない。

暫く沈黙が支配していた場で、ふとはやてが口を開いた。

「強い……人なんやね」

「強くなんて無いよ」

そう、はやての言葉を切って捨てたのは、今まで沈黙を保っていた雪華だ。少し驚いた表情のはやてを見ながら、雪華は続ける。

「一人で突っ込んで、皆に心配かけて、挙げ句の果てに大切な人を泣かせて傷つけて……そんなの、強くなんか無い」

『その通りです』

ブン、と前触れも無くクロノの目の前に通信モニターが開き、雪華の言葉に同調する。慣れないはやては驚いて声を上げてしまったが、クロノは慣れているのか特に驚いた様子も無くその人物を見る。

――高町なのはと、髪型を除き瓜二つの女性を。

「シュテルか」

『はい。……一つ、教えておきます八神はやて。一人で抱え込むのが悪いとは言いません。が、それで傷つき、悲しむのは自分だけではなく、周りの人間もです。覚えて置いてください、一人で抱え込み、強がるのは強さではなく、弱さです。それを、お忘れなきよう』

「は……はい」

すっかりちゃっかり説教されてしまったはやては、もう過去に同じ様な事をした自覚が在るのか非常に恐縮した表情になる。

ふむ、流石はなのはの構築体(マテリアル)、手慣れているな……そんな良く判る様な判らない様な事を思ったクロノが、シュテルの後ろに映る光景――無限書庫――を見て、そこから何気ない疑問を感じた。

「シュテル、なのはは居ないのか?」

『はい、今は白河家当主とその妻(他者命名)と共に、予測地点の検証を行っています』

「ちゅうことは、判ったんやね? 完全融合をする際、最も適していると思われる場所が」

『その通りです、ギン。このミッドチルダに於いて、あらゆる魂が彷徨い、集う場所……これが、ユーノが出した検索結果です』

後は、その場所に心当たりがあるなのはが調べに行くだけだったのだろう。相変わらず、凄まじい検索能力だな、とクロノも舌を巻く。
幾らギンからの情報が有ったとはいえ、僅か数時間で必要な物を検索する能力は、広い次元世界の中でもユーノ程に優れている人物は少ないだろう。

「で、そのユーノは何処に行ったんだ?」

『先程、クーゴに連れて行かれました。まだ何かないかと検索しようとするユーノに、人間ってのは休憩しないとな疲れて脳の動きが鈍くなるんだよ、だから休め……的な発言でユーノを説得し、ただいまお昼ご飯を食していますよ』

さらっと声真似までして、クロノの質問に応えるシュテル。……意外に思うかもしれないが、クーゴも案外常識人である。まぁ、無限書庫に来た理由は『暇だから』の一言なのだが。

「そ、そうか……とにかく、僕たちも今からミッドチルダに向かう。合流し、戦力を整えよう」

『了解しました。では、後程』

シュテルとの通信が途切れ、クロノは再び三人へ向き直る。

「さて、僕達はこれからミッドチルダに行き、なのは達と合流するが……君たちは、どうする?」

「私は一緒に行く」

真っ先にそう答えたのは、雪華だった。ただ、その表情はどこか……強がっているようにも見えた。

しかし、それをフォローするのは自分達ではない。だからクロノは何も言わず、はやてと……そしてギンへと視線を移した。

「私は、クロノ君の補佐官や。一緒に行くのは当たり前やろ?」

「そうか」

微笑みを浮かべ、迷いなく言うはやてに、クロノも少し笑みを溢し頷いた。そして、後一人……市丸ギンの答えは――

「悪いんやけど、ボクは一緒に行けへんわ」

「そう、か……」

落胆、と言う感情をクロノは僅かに表情に現した。それを見たギンが、少し笑みを浮かべ言葉を続ける。

「勘違いせんといてな。さくらちゃんがまだ起きんから、一緒に行けへんだけや。もし、さくらちゃんが動ける様になったら、ボクらも追い付く……一発、殴らなアカンからな」

誰を、とは敢えて言わなかった。とはいえ、クロノには言わなくても解った事だろう。冗談めかしく言ったギンに対し、クロノは頷き了承する。

ある意味、この三人に訊いた事で、残りのメンバーがついてくるかどうかも、決まっていたも当然だった。









◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

戦艦アースラ、その展望室。まぁ展望室とは言っても、今は異次元に待機しているだけなので何が見えると言う訳でもないのだが。

そこには一人の女性が座り、瞳を閉じて微動だにもしない。鞘に入った刀を軽く肩に乗せ、まるで瞑想するかの様に……ふと、彼女が――烈火の魔法使い、芳乃シグナムが目を開いた。

「お前、大丈夫なのか?」

その問いかけに答えたのは、ただシグナムを見つめていた、女性も羨む美しい容姿の青年……紅 刹那。

「あぁ、あの子の事なら心配ないですよ。無理に私がいなくても、特に何かある訳じゃないですし、今は私がいない方が――」

「違う。そうじゃない」

刹那の言葉を遮ったシグナムが、視線だけを彼に向ける。それに対し刹那は、僅かに首を傾げた。

はて? 自分がここにいる事で彼女が心配するのは、てっきり彼女の主の事だとばかり思っていたのだが……彼の思考の合間に、ブスッとした表情のシグナムが溜め息を吐いたかと思うと、相変わらず真っ直ぐな言葉の続きを放った。

「主じゃなく、私はお前の事を言っているんだ。分かれ、バカ者」

一瞬、彼女が何を言ったか理解し損ねた刹那だったが、その言葉の意味を理解すると、ふとあまり見せた事のない優しげな微笑みを見せた。

嬉しかったからだろうか、それとも――そこまでは解らないが、壁に寄りかかっていた刹那がシグナムの隣へ座り、少し言葉のない――しかしどこか、心地よい――時間を跨ぎ、そして言った。

「まったく、心配性な人ですね」

「お前には、心配性なくらいが丁度いいと思っているからな」

シグナムの言葉に刹那が、貴方に言われたくないですよ、と憎まれ口を言いながらも、二人の雰囲気は全く悪くない。

だがそれは……遠くもなく、しかし近くもない摩訶不思議な距離感。

「貴方は……どうするんです? これから」

「さくら姉さんの傍にいるさ。今の姉さんを放っては置けん……それに今は、二人きりにした方がいいだろう」

まぁ、そうだろうとは思っていた。雪華は、恐らく今頃ヒナギクがフォローに行っているだろう……方法は、最近の彼から察するに、どうなるかは保証できないが。

「…………」

「…………」

舞い降りる沈黙。互いに違うタイミングで視線を向けたと思えば、特に何を言う訳でもなく視線を逸らす。

「「なぁ(あの)……あ」」

そして、いざ話したかと思えば全く同じタイミングで声を掛け、何故か気まずくなり再び沈黙が舞い降りる……何というかまぁ、凄く初な二人だ。

だが、いつもならこんなに会話が続かない事はない。いつもなら、シグナムが会話を切り出して刹那がそれに口癖を加えながら応える、と言う感じか。


なのに、こんな微妙な雰囲気になっているのは……やはり、さくらと冬獅郎の事があったからだろう。

「……お前だったら、どうする?」

「え?」

結局、切り出したのはシグナム。それも、要領を得ない質問だった。戸惑う刹那に、シグナムは言葉を続ける。

「お前がもし、さくら姉さんと同じ立場だったら……どうする?」

「私……が?」

――もし、自分がさくらさんの立場だったら……信じていた大切な人が、自分の目の前から突然いなくなってしまったら。

あくまでも仮定の話……しかし、どこか他人事には思えなかった。もしシグナムが――仮定の話だから、深い意味はない、と思う――自分の目の前から突然いなくなり、今の二人のようになったら。

スッと瞳を閉じ、答えを決めた刹那がシグナムの瞳を見る。吸い込まれそうな強い、美しい瞳。もし彼女がいなくなったら――

「多分、今のさくらさんと同じ。でも――絶対に追い掛けると思うよ。私も……さくらさんも」

――だから、大丈夫だよ。案に、彼女の姉は大丈夫だと元気付ける為に言った刹那の表情は、誰もが御惚れる様な美しい花のような微笑み。

それを見たシグナムが、本能的に刹那の事を引き寄せようとして――

「――ッ!!」

「? どうかした?」

「な、何でもない。気にするな!!」

ギリギリの所で正気に戻り、恥ずかしくなって顔を背けた。変なシグナム、と可愛らしく首を傾げる無自覚な刹那はそう言ったが、それによって今のシグナムの心臓はバクバクで顔は真っ赤だ。

……こんなになっているのに、自分の持つ感情が何なのか理解ができないのだから、驚くべき事だろう。

(…………ヘタレ)

ふと、刀からはっせられた頭に響く声に反論できなかったのは……何ともまぁ、情けない話である。

天下無敵の姉も、どうやら色恋沙汰については、教えてはくれなかったらしい。









◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

緋色の髪が、広いベッドの上に広がる。しっとりと濡れたその髪は、タオル一枚と言うあれもない姿、彼女の――藤原 雪華のスタイルの良さもあり、酷く煽情的だ。

彼女に気のある男がいたら、間違いなく襲い掛かるレベルである。……いつもなら、はしたないやら髪を拭けやらのお小言が飛んでくるのだろうが、今はその兄もいない。

って言うか、ここはアースラの個室の一つなので、誰も入れる訳が――

「やっほー、そんな格好だと風邪ひくよ、雪華ちゃん」

「へ――にゃああああ!?」
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  1. 2012/11/15(木) 22:58:48|
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魔法少女リリカルなのは 烈火の翼 番外編Ⅲ


「おおおぉぉぉぉ――らぁ!!」

「うおおぉぉぉぉ――はぁ!!」

闇夜の天(そら)を刃が弧を描き、金属音と共に火花が散る。一度互いが離れ、再び力強く刃を打ち合う。

天鎖斬月が横凪ぎに振るわれる――氷輪丸がそれをいなす。

氷輪丸が左斜め上段から振るわれる――天鎖斬月がそれを難なく受け止める。

一進一退の攻防を繰り返し、戦いを彩る火花が数え切れない程に散り行く。

「月牙……天衝ォ!!」

「往け……氷輪丸!!」

互いに距離を取った瞬間、戦いは停止する事なく動く。天鎖斬月から溢れた奔流が型を成し、弧を描く白い斬撃が飛翔する。氷輪丸から溢れた冷却が型を成し、氷と水の竜が天を疾走する。

先に喰らいついたのは竜……が、その優劣はすぐに別れた。月牙が竜を砕いて往き、そのまま男に襲い掛かった。竜との衝突でタイムラグが在り、それは避けられたが、その隙を狙って崩天が特攻し天鎖斬月を殴る様に叩きつけた。

少し圧され気味の少年に対し、崩天は笑う。

「ハッ、人様乗っ取って力引き出しといて、その程度かよ!?」

崩天の言う通り、氷輪丸は少年の身体を乗っ取り……そして、自らの力を引き出している。例えそこに、資格者との信頼が無くとも。ならば何故、氷輪丸が崩天に圧されているのか?

理由の一つには、まだ氷輪丸が通常解放状態で在る事が関係している。常に完全解放状態と言っても過言ではない天鎖斬月を相手に、通常解放で挑むなど普通はナンセンスなのだが……少し違う、氷輪丸は全力を出さないのではなく“出せない”のだ。

氷輪丸の刀を圧し続ける崩天が、言う。

「違げぇな……まだそのガキと融合しきれてねぇんだろ!?」

「フッ――なら、少し強がってみよう」

「なに……ッ、チィ!!」

突如、崩天が自分に優勢だった鐔競り合いを崩し、その反動で後方へ飛ぶ。その時、先ほどまで彼のいた場所に巨大な赤と青が入り交じった球体が落ちて来た。無論、後方へ飛び球体を避けた崩天だったが、彼をさらに追撃するように上空からもう一つ球体が迫り来る。
再び飛び退き、それをやり過ごす崩天――

「卍解……大紅蓮氷輪丸」

――が、その背後に凄まじい冷気が集い、駆け巡るのを彼は確かに感じ取り、すぐさま後ろに振り返る。しかし、それより速く刃は振り下ろされた。

「氷竜旋尾!!」

巨大な竜を纏った様な姿の少年が刃を振り下ろし、崩天を名の通り尾の様な斬撃が包み込んだ。その氷自体にはすぐに罅が入るが……。

「千年……氷牢」

その上から、さらに氷の柱が集い、重なり合い崩天を封じ込めた。流石の崩天も、二段の囮に対しての対処で反応が遅れた所為で、完全解放への行動が一瞬遅れた。

決着はついた……そう言わんばかりに勝ち誇った笑みを浮かべていたのは、氷輪丸を持ったではなく、氷の牢を見下ろす二人の女性だ。

「ははっ、主に逆らうからこうなるのさ!!」

「噂の天鎖斬月も、所詮はこの程度――」

『――調子扱いてんじゃねぇぞ、ザコ虚(ホロウ)が……!!』

「「ッ!?」」

響く声は、氷の牢からの物……バカな。あり得ない、あの氷の中では指一本動かせない筈だ。そんな思いとは裏腹に、氷の牢に罅が入りそこから白い奔流が溢れ――瞬間、白い奔流が爆せ、氷の牢をいとも簡単に吹き飛ばす。

「主から能力(チカラ)貰っただけのクソガキが……」

白い奔流と冷気が晴れると、そこからダブり声が貫くように響き、圧倒的な重圧が空間を支配し、ただ立っているだけで空間が震えているように思えてくる、崩天がいた。

右半分が血の紋様で染まっている仮面……何処か禍禍しい雰囲気を出すそれは、幾千もの虚(ホロウ)が束ねられた存在である二人をも本能的に畏縮させる程の物だった――だからこそ、二人の反応は明確に遅れた。

「不意討ちの一回は一回です――月牙天衝・双牙」

「なに……ぐぁ!?」

「ヤン!! うぁ!!」

彼女達の真後ろから掛けられた声と共に、まずヤンと呼ばれた赤い虚が月牙の直撃を受け、殆ど差が無いタイミングでもう一人の虚にも蒼い月牙が直撃。二人とも月牙に呑まれ、そのまま地面に激突した。

二人を一瞬で倒した者……蒼天が、同じく一瞬で仮面を着けた崩天の隣に移動する。

「んだよ、高見の見物じゃなかったのか?」

「そう思っていたのですが、貴方の戦いに手出しする者がいましたので」

「あんなザコ、お前が手出ししなくても俺が一瞬で倒してたっつーの」

「私がそうしたかったので」

あーそうかいそうかい、と崩天がしれっと答える蒼天に呆れにもにた表情(仮面を着けているが)で言い、再び天鎖斬月を片手で氷輪丸に突き付けた。

「相変わらず仲が良いな、崩天」

「うるせーよ。テメェ、まだ続けんのか」

「クククッ……いいや、今は“まだ”虚化(ホロウか)したお前と戦う気はないよ」

今は“まだ”……そう不敵に笑い、完全解放状態――冬獅郎と違い、紫色の竜――を解除する氷輪丸。その隣に、先程の月牙を何とか耐えたのか二人の虚も睨み付けながら並ぶ。

「俺が逃がすとでも、思ってんのか?」

「そうせざるを得ない、とは思っているよ。この少年を身体を案じている、ならね」

「あぁそうだな――けど、ムカつくから一発喰らっとけ」

瞬間、崩天の天鎖斬月から仮面を着ける前とは比べ物にならない程の、圧倒的な白い奔流が溢れ出し、加速し――解き放たれた。


「――月牙天衝」


それは、斬撃という枠には収まり切らない物だった。崩天と氷輪丸の距離は、10メートルも無く、放たれた月牙は一瞬で彼らの姿を呑み込んだ。いや、それだけでは無い。圧だけで辺りの物が砕け、吹き飛ぶ。白い月牙は、辺りの天の一帯全てを覆い尽くす程の大きさ。

もはや爆発と呼んでも過言ではなく、天を崩す者の放った白い奔流はまさに、敵を喰らい尽くす“牙”だ。

凄まじい暴風と共に、漸く白い奔流が晴れて行く。そこには……誰もいなかった。跡形もなく消し飛んだ、と言う訳では無い事は撃った崩天と隣に控える蒼天には良く分かっていた。

「……まったく、無駄だと分かっていたでしょう」

「言ったろ、ムカつくツラに一撃入れたかったんだよ」

と、崩天が自らの仮面に軽く触れる。すると、重い重圧を放っていた仮面があっさりと消え失せた。そんな崩天を尻目に……蒼天がボソッと呟いた。

「…………ガキ」

「……オイコラ、今お前ガキって言ったよなぁ!?」

「いいえ。貴方がツンデレのガキとは、言いましたが」

「誰がツンデレだコラ!? テメェの方がツンデレだろうが!!」

「愛していますよ」

「心がこもってねぇ!!」

……なんか段々バカップルみたいになって来たので、以下の会話は割愛。









◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「んで、何から訊きたい?」

「じゃあ全部!!」

「……俺は何から、って訊いたんだがな、クイントさんよ」

崩天と蒼天がコントじみたやり取りをしているのとほぼ同時刻、首都防衛隊ゼスト隊隊舎。同じく、裏月とクイントも本当の意味でコントなやり取りをしていた。

それはさて於き、だ。

「しゃーねぇな。順を追って説明するか。まず、今回の一連の事件は――間違いなく、『理(ことわり)から外れし者』……その一人が起こしている事件だ」

「……それは、先程の救援に来た者達の事を言うのか?」

「はい。彼らは基本的に、人の前に姿を現す時は『資格者』と認めた人間と共にいるのです」

「さっきの二人の場合、俺とリインだな」

ゼストの質問にリインフォースが答え、さらに裏月がフォローを入れる。理から外れし者……彼らは、自らの意思で己が力を貸す――いや、力を共にするに相応しいと決めた資格者と共に在る。

ただ、性格や相性などの問題も在り一度に集結する数は多くない……そういう意味では、現時点で七人もの――候補や“例外”を入れれば九人――資格者がおり、その人物達の全員が互いの存在を認知している、と言うのはかなり珍しいと言えるだろう。

「で、ここからが重要だ。アイツらはな……管理局の法じゃ裁けない」

「「!?」」

裏月の言葉に、混乱を避ける為にゼストとクイントの二人だけに説明されていたのだが、その両人ともが驚きで目を見開いた。

「ど、どうして!? 少なくとも、このミッドで起こった犯罪なのよ!?」

「一つは、理から外れし者……つまり、“世界”と言う物から外れてるんだからその世界の法で裁くのは可笑しい。と言われてるな」

「もう一つは――彼らは関わっているんです。時空管理局……その、創設に」

……驚愕。というよりは、唖然として反応に困っていると言う感じの二人。まぁだろうな、と他人事のように裏月は思っていた。

話が飛躍し過ぎているとは、まさにこの事だろう。

「時空管理局創設……百年以上前の事にか?」

「あぁ。まぁ、生まれた時代が個人個人でバラバラらしいから、結構最近の奴もいるみたいだが……古代ベルカ時代程度なら、知ってる奴は多そうだな」

「て、程度って……」

「程度なんだよ。アイツらにとってはな」

そう、一部――最近の事だと言っているさくら、彼女と深い関わりが在る冬獅郎――を除き、古い歴史とされるベルカ戦乱時代も彼らにとっては“程度”でしかない。

しかも、表向きには知られていないが、彼らはベルカ戦乱時代に参加している。ただし、最後の辺りだけ……しかも理由が、あんまりにも五月蝿くて騒がしかったから、と言う後世にはとても語り継げない物なのだが。

誤解しないでもらいたいのは、この介入理由は一部の者でしかない事だ。公開されていない資料の中には、その圧倒的な力で戦乱の世を収めたとされる。ただ、戦争が収まったとき、彼らは表舞台から姿を消したとされ、ベルカの戦乱は表向き『勝者なき戦争』となっている。

一部記述には、一本の『刀』と共に戦乱の世を収めた者、その家系が在ったとされるが……これは、かなり有名な物では在る。この記述を踏まえると、ある意味この家系こそ戦乱の“勝者”なのかもしれない。今となっては、この戦乱の真実を知る者は彼らしかいないので定かでは無いが。

「んでもって、ベルカ戦乱に介入した奴らもいた訳だが……」

「再び彼らが表舞台に姿を現したのは、時空管理局創設の時と言う事です。彼らは、代々『刀』を受け継ぐ家系とされる『白河家』と共に管理局創設に尽力した、とされています」

「だから、管理局の法では裁けない?」

でもそれは、暗に彼らの犯罪行為を見逃す事になる。そう言いたげなクイントに、リインフォースが静かに首を振る。

「確かに、管理局創設から今まで何一つ問題は在りませんでしたが……彼らは、自分達の中で害を成す存在が現れたとしたら、自分達があなた方に協力し裁く。と言い残していたのです」

「つまりだ、レジアスのオッサンも動いている今……みんな動くぜ。刀を持つ者達も、処刑人(エグゼキューター)も、白河家の当主様も、俺たちもな。そして、切って落とされたこの戦いのタイムリミットと決戦までの時間は――三日だ」

三日……たったそれだけの時間が、彼らに残された世界のタイムリミット、及び決戦までの時間。

――歪んだ舞台の幕は、既に切り落とされている。









◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「ごめんねギンくん、付き合ってもらって……」

「いやいや、お安い御用やって」 続きを読む
  1. 2012/11/15(木) 22:43:35|
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