サクライロノセカイ/リリカルなのはなお話

えびえもん兼いかじゅんのブログです。リリカルなのはの二次創作などを書いています。

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魔法少女リリカルなのは 烈火の魔法使いの出逢いの物語 第2話

漆黒の翼と烈火の翼が羽撃たき、赤黒い軌跡と真紅の軌跡を描き、高速で衝突、交錯する。互いの武器を叩きつけ、弾き、再び叩きつける。

それを何度か繰り返した後に、漆黒の翼を持つ天使が右手に持った小型のライフルが……一瞬の内に五つの煌めきを放ち、軌跡を描いた。元々早撃ちに適した銃とはいえ、それを放った者の技量も凄まじい物だ。

しかし、超速で放たれた赤黒い五本の熱線は、対象に当たる事なく過ぎ去った。相手は“放たれた瞬間には既に”、その射線上から逃れる様に動き、そのまま炎の剣を構え突っ込んで斬り掛かる……が、やはりそれも、相手が素早く左手の魔力で刃が構成された武器、マギリングサーベルで受け止めた事により、またもや振り出しに戻る。

そんな常人には見る事すら叶わない、超速の空中戦闘を繰り広げる彼女ら二人を確かに捉えていた人物は少なかった。

――その超速戦闘を一切見失う事なく捉えていた人物が、時計塔の一番上に立っていた。風で純白のコートと栗色の髪が揺らめくが、本人に一切ブレは無い。

時計塔の上に立つ彼女の瞳が、今一度『黒の天使』を捉えた時、彼女はフッと笑みを零した。

「――また会いましょう。『殲滅者(デストラクター)』、高町 シュテル……」

届く筈の無い言葉は、やはり風に呑まれ消え失せ――同時に、彼女の姿も、まるで幻影だったとでも言うかの様に消えた……。

一方、永遠に続くかと思われた超速戦闘は、少しずつだが着実に変化していた。お互いの武器を振るい、衝突し激しい火花とスパークを散らすその戦況は、少しずつ、少しずつだが烈火の翼で飛行する……芳乃 シグナムに傾いているのだ。

「はぁっ!!」

「くっ……ッ!!」

振るわれた炎の刃を受け止めたシュテルだったが、その動作が先程までより遅い動きだった故に、力の優劣が完全にシグナムに傾いた。それをシュテルより速く把握したシグナムが、己の剣を強引に押し込み、斬り払ってシュテルを叩き落とす。

無論、シュテルとて何もせずにただ落とされる訳ではなく、降下しながらも凄まじい速さで右手を斜めに振るい、今度は八つの連なる閃光が瞬き、八つの熱線が放たれた。だが、シグナムはそれすらもあっさりと避けてシュテルに追い付き、再び刃を振るう。

何とかそれをサーベルで受け止めたシュテルは、それ以上は刃で彼女と互角に戦うのは無理と判断し、押された勢いに抗うことなく、翼の粒子を逆に噴出しシグナムから逃れる様に加速、そしてクルリ――と身体を回転させ、怪我の一つも無く地上に着地した。

そうして息を整えたシュテルが、少し遅れて地上に降りたシグナムを称賛と共に迎えた。

「想像以上、想定より上の強さ……素晴らしいです、シグナム」

「お褒めいただき、光栄な事だな。が、お前もまだ本気では無いだろう?」

「……そうですね。ならば、少し手札を見せましょうか――貴方に見切れれば、ですが。エクスシア、マギリングライフル・モードチェンジ」

『Yes Master.』

言いながら、シュテルは己の構えを“解いた”。マギリングサーベルも仕舞い、発射モードを変更したライフルは……シグナムから見えないようになる。

最初は彼女の無形の構えに、警戒で目を細めたシグナムが――唐突に、その頭脳に電流が走り、そして僅か一秒足らずでシュテルの構えの意味を“推理”し、目を見開いた瞬間――

「!!」

「ッ!!」

――“二つ”の音が辺りに響き渡り、二人の構えは変化していた。不屈の魔法使い、シュテルはライフルを撃ち“終えた”状態で、目を見開いて驚愕しており、そして烈火の魔法使い……シグナムは、彼女の視線を受け止めたまま、振るい“終えた”炎の剣を下ろした。

「……最早、未来予知の領域に入った直感力ですね。まさか、私の『不可視の弾丸(インビジブル・バレット)』を見切るとは」

もう、この勝負を見る大半の人間にとっては、未知の領域であり理解の範囲外の状態だろう。

彼女ら二人の攻防は、本当に“一瞬”の出来事だったのだから。まず、シュテルの『不可視の弾丸(インビジブル・バレット)』……これは、言葉にするだけなら簡単だ。

あの無形の構えからシュテルは――“目に見えない程のスピードで”マギリングライフルを抜き放ち撃った。ただそれだけ……要は、目に見えない程に速く撃たれた銃弾、つまり不可視の弾丸(インビジブル・バレット)とは“ただの早撃ち”なのだ。ただし、不可視の。

そして、発射モードの変更により、普通の銃のような一つの弾丸……不可視の魔力弾は確かにシグナムに向かって迫り――その刹那、叩き落とされたのだ。

これも言うだけなら簡単だ。シグナムは、その未来予知じみた驚異的な直感力と、己の反射神経を駆使し……まるで居合いの様に、剣を振るった。迫り来る銃弾をも“超える速度”で。そうして銃弾よりも速い刃は、銃弾と衝突した時に銃弾のベクトルを強制的に変更させ……叩き落としたのだった。

だから、二つの音が響いたのだ。片方はシュテルが銃弾を放った音、もう片方はシグナムが銃弾を叩き落とした音。これが、二人の一瞬の攻防の正体だ。

「全く、本当にとんでもないですよ。私としては、これで終わりと思っていたものでしたからね……」

「なに、私の直感以外にも、お前の視線、風を切る音……その辺りで銃弾の行方は予想がついた」

「成程、私もまだまだ未熟ですね……」

正直まぁ、こんな方法で『不可視の弾丸』を止める者など普通はいないのだが、シュテルの“必殺の一撃”を止められたのもまた事実。それは“必殺技”と名乗るには、まだ未完成な技だったと言う事だ。

ならば諦めるのか――否、そんな訳がない。

剣技ではシグナムには敵わない、己の銃技も破られた。

だが……まだ彼女が『殲滅者(デストラクター)』たるその由縁、『黒の天使』の真の力を見せてはいない。だからこそ、シュテルは再び天へと舞い上がる。

舞い上がりながら、シュテルはシグナムを静かに見据え、告げる。

「シグナム、貴方の強さに敬意を払い、同時に我が殲滅者(デストラクター)の名の由来、お見せしましょう」

つまり、彼女が最も得意とする技で全力を出す……そう、シュテルは言っているのだろう。さらに、フランベルジュを構えるシグナムに再び言葉を放った。

「貴方も、そろそろ本気を出してはいかがですか?」

「……いや、転入そうそう“魔女っ子”扱いされるのは、さすがに遠慮したいのでな」

サッとシュテルから逃れる様に視線を逸らすシグナムに、シュテルだけではなくそれを聞いていたヴィータとクロノも首を傾げた――唯一、さくらだけは何故か曖昧な笑みを浮かべていた。

「まぁ、貴方が本気を出さなくとも構いません――」

『ドライブ・オン。武装コード、マギリングガンポッド『ルシファー』起動』

エクスシアが反応し、ライフルが回帰して長身型の大型ビーム砲が姿を現す。それをシュテルが構えると、砲身が中央から二分割されスパークが散り――

「――私は、手加減しませんがね」

――光が爆せた。シグナムが通って来た道を光が一線し、次の瞬間には轟音を轟かせ爆炎が一気に上がる。

一旦冷却を始めたルシファーを降ろし、爆炎を見つめるシュテルは……まさに、『殲滅者(デストラクター)』そのものと言えた。

『……改めて、圧倒的だな。彼女の砲撃能力は』

『結界、戦闘開始前に展開しといてよかったな……何にせよ、やっとこれで終わりかぁ』

なかなか、久しぶりに見応えのある戦いだったな……そうヴィータが締め括ろうとした――その時、クスクスと誰かの笑い声が聞こえた。二人が振り返る、そして見えたその声の主は……学園長、芳乃さくら。

そんな彼女は、笑いながらも爆炎から瞳を逸らさず、言った。

「ボク、あの程度の攻撃でやられる様な鍛え方、した覚えはないんだけどな~」

驚愕の言葉が放たれ――爆炎から烈火の炎が溢れたのは、まさにその瞬間だった。

爆炎すらも呑み込む、圧倒的な業炎……烈火の炎。その中から、真紅のドレス甲冑が姿を見せ、ギリギリで炎からさらに上空へ逃れた黒の天使を、ただ悠然と彼女を見つめていた。

「砲撃を炎で逸らし、流す様に防ぎましたか……ですが、次はそう簡単に往きますか?」

「さぁ、どうだろうな」

露出した美しい背中から、再び烈火の翼を羽撃たかせたシグナムが僅かに笑みを零し、天へと舞い上がる。

――だが、先程の様に長ったらしく斬り合うつもりなど無い。

フランベルジュの刃から炎の粒子を“微かに”辺りへ流出させながら、シグナムは戦況を冷静に把握していた。

あの大火力が相手だ……真っ正面から戦っては、不利になるのは至極当然。かといって、消耗を待つ様な戦い方をしても、あの馬鹿みたいな火力と魔力でここいら一帯を殲滅されかねない。いくら結界内とはいえ、それは些か遠慮したいものだ。

既にシュテルは、砲撃の準備に入った。翼と腰に装備されていた合計4門の武装をシフトさせ、もう数秒あれば砲撃を放てる状態――しかし、シグナムはもう既に“先手”を取っている。

打てる手は打った……そして、勝利条件は“揃っている”。シグナムが刃を真っ直ぐに上げ、振り下ろし、告げた。

「奏でろ、協奏曲第一番――サクライロノキセツ」

――瞬間、シュテルの周りに数え切れぬ無数の桜が舞った。それはシュテルの視界を遮り、乱舞するように美しく舞う。

(なっ……目眩まし――!?)

驚く間すら与えず――一輪の桜が“咲いた”。それは、連鎖的に他の桜をも咲かせ……桜の協奏曲を奏でる。目眩ましだけではない、咄嗟に強化したシュテルのバリアジャケットを貫く、とまではいかないものの砲撃体勢を崩しダメージを与えた。

だが、シュテルとてやられっぱなしではない。出力を弱め、炎の桜から片手で顔を庇いながら、ルシファーを凪ぎ払うように砲撃を放ち前方の桜を吹き飛ばす。

そして、見えた。距離を取ったシグナムが、“弓”を構え弦を引き、強き瞳がシュテルを捉えている。

――フランベルジュは、炎を司る武器。故に特定の形は持たない……その答えが、これだった。

炎の矢は既にシュテルへと定められ、今からでは回避も間に合わないだろう。

(ならばっ!!)

迎え撃つのみだ。両肩と両腰、ルシファーから前方にエネルギーを一気に集束。五砲門からのエネルギーは、たった一秒でシュテルの身丈の三倍以上の大きさに――なる時には、シグナムの指が弦から離れ……一匹の不死鳥が天を駆けた。

「奏でろ、幻影――ファントムフェニックス!!」

炎を纏う弓が、巨大な不死鳥の形を成してシュテルへと迫る。そしてそれより少し遅く、シュテルがルシファーのトリガーを引く。

「ディバインバスター・バーストモードッ!!」

スパークが空中に軌跡を描き、凄まじい魔力エネルギーの塊が不死鳥に向かい直進する。

桜色の光球と不死鳥が直進し、その勢いのまま激突……その瞬間、シグナムの姉と兄を除く誰もが光球と不死鳥の行方を見つめる中で――彼女だけが、微かに笑みを浮かべた。

激突した不死鳥が変化を起こす。巨大な翼で光球を包み込み、炎を溢れさせ……光球と共に、巨大な爆発を起こした。

「ッ!!」

凄まじい爆風が一気に辺りを包み込み、シュテルも思わず腕で顔を庇う。そうしながら、シュテルは今の攻撃の分析に思考を割いていた。 続きを読む
  1. 2013/02/10(日) 05:26:03|
  2. 烈火の魔法使いの出逢いの物語
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魔法少女リリカルなのは 烈火の魔法使いの出逢いの物語 D.C.(ダ・カーポ)クロス編『魔法使いの交差』

しんしんと桜が舞っている。


狂ったように舞っている。


驚くほどゆったりと。


音もなく。


天使の羽のような花びらの散りざまは、まるで永遠を思わせる一瞬―――


……ふわり、桜が舞い散る。ふわり、少女が舞い降りる。少女を守る様に舞っていた桜が、ひらりひらりと地面に落ちる。それすらも、芸術的な迄に美しい。

ゆっくりと、金髪の少女が立ち上がり辺りを見回す。周りにある木の全てが桜で、少女の目の前には枯れる事の無い巨大な“枯れない桜の木”……恐らく、これがこの島の全ての桜の中心。その証拠に、この桜に不思議な力が集まっているのが、少女には解る。

小さな手を翳し、少女が桜の木に触れる。その瞬間、少女の表情が何処か厳しい物へと変わった。一度、ため息を吐いてその表情を消し去り、枯れない桜に背を向けて少女は――『桜の魔法使い』は歩き出した。

これは、魔法使いが入り込み歪んだ、美しい旋律を奏で続ける――『ダ・カーポ』の様な物語。

(……なんか、変に目立ってるなぁ)

桜の魔法使い、その名の通りの少女――さくらが、年がら年中桜が咲き乱れる島『初音島』の商店街を歩きながら、視線だけで辺りを見回す。目立っている、とにかく目立っている。

あらゆる人間……店などを経営している人などから、集中的な視線にさらされていた。が、改めて自分の姿を確認して理解した。さくらの容姿は、金髪のツーサイドアップに身長は140㎝ジャスト。今が真っ昼間である事を考慮すると――はい、アウト。完全に小学生と間違われているのだろう。

若干、困った様に渇いた笑みを浮かべ、さくらは駆け足気味に商店街を後にした

(一応、背丈とかだけでも年相応の方がよかったかなぁ……)

狂ったように降り積もる桜を踏み締め歩きながら、うーんとそう考えるさくら。とはいえ、長年過ごしたこの姿を変えるというのは、今からでは自分ですら違和感があるし、妹とにも頼むから突然変えないでください、と言われてしまったことがある。

(でも見知らぬ土地だし……あ)

ふと少女が顔を上げたのは名案が思いついたからではなく、桜並木を越え目的の場所が見えたからだ。
見上げる先は、一つの学園。

『初音島』。それが、一年中桜が咲いているこの島の名前。そして、さくらが街並みを見ながら遠回りしてたどり着いたのは、目の前にそびえる『風見学園』。改装されていると言えど、何十年も存在している大きな学園だ。

が、彼女の目的はこの学園そのもの、ではない。彼女がここに来た目的は、この学園の中にいる、魔法使いの存在だった。

(いる……大きな力を持つ、魔法使いが)

いること自体に、全く問題はない。あの枯れない桜の力を調べた時点で、少なからず魔法使いがいることは解っていたし、これだけ力の強い魔法使いなら枯れない桜の存在を知らない訳がない。

ということは、あの枯れない桜の力を知っている……知っていて、何かしらの事情で管理、もしくは放置している可能性がある。害がないと見ているのか、それとも制御できると考えているのか。

どちらにしろ、それはさくらの管轄ではない。管轄も何もないのだが、さくらがこの地に来たのは枯れない桜そのものではない。

――かつて“あの人”が討滅した筈の存在が、枯れない桜に潜んでいるかもしれない。という可能性を知り、この地に来たのだ。

「……もう一回、調べて見ようかな」

小さく、そう呟くさくらの眼界には、下校を始めた学園の生徒達の姿。これ以上ここにいては、自分の姿では目立つだろうとさくらは背を向けて歩き出した。

――その後ろ、離れた場所から追い掛けてくる一人の学生に“何故か”気付かないまま……。

何度見ても、狂ったように咲き誇る巨大なこの『枯れない桜』は変わらない。あらゆる人間の想いを受け、叶える枯れない桜。魔法を知らない人にとっては噂でしかないが、その力を知る人にとっては噂では済まされない。

――その性質を利用する人物に、とってもだ。

だが、魔法使いの中でも高い能力……というより、叶う者はいないとされるさくらにも、この中に潜む存在だけを取り除く、というのは些か難しい。中の核になる存在に引っ付いているので、下手に取り除こうとすれば、枯れない桜自体がどうなるか分からない。

「さくらさん!!」

さてどうした物か……と考えていたさくらを後ろから呼ぶ声。

その声に、さくらが驚いたことは二つだ。一つは、突然この地に知り合いなどいない筈の自分の名前を、何故か呼ばれたこと。もう一つは――この距離まで接近されて、自分が気付かなかったこと、だ。
一般の人間なら、少女が気付かない訳がないのだ。だが、さくらが驚き振り向いた先にいたのは、優しげな顔付きの学生だった。

どこも先ほど下校していた学生達とは違わない……いや、一つ致命的な違和感があった。

――この『枯れない桜』から発せられる独特の雰囲気が、桜より小さいながら青年からも感じられる。
だから、さくらは気が付かなかった。目の前の枯れない桜の独特の雰囲気に紛れ、彼が接近していたことに。

まぁさくらが訝しそうに見つめる青年に、そんな自覚はないのだろうが。彼も、さくらとは違う意味で戸惑っていた。

友人と下校する途中、家族とも言える人がどこかへ行くのを見かけ、追い掛けたところ何故かこの桜の下にいたのだ。そして桜の目の前に立つ彼女の名前を呼んだのだが……反応はしてくれたが、何やら様子がおかしい。

しかし、それは当然と言える。彼の知る『芳乃さくら』と目の前にいる『芳乃さくら』は……違う人物なのだから。だがこれで、長い年月をかけた運命は重なる。重なり、歯車は動き出す。

なぜここにいるのか、当たり前だが違う人物だとは知る由もない青年はもう一度声を出そうとして――一瞬だけ、枯れない桜から黒い影が飛び出すのを見た。

「……え?」

が、彼が認知できていたのはそれだけだった。気付いた瞬間には、さくらが彼の目の前にいて――“黒い影”が、見えない光に弾き飛ばされていた。

そんなテレビのアニメの様な常識外れの現象は、まだまだ続く。弾かれた黒い影は人型に形を成し、だが腕は鋭い剣の様に尖っているという、常識外れなものが彼の目
の前で、確かに起こっていた。

「さ、さくら……さん?」

「ボクは確かに“さくら”っていう名前だけど、君の知ってる“さくらさん”じゃないと思う。それと、ここで起こってることは残念ながら夢でも冗談でもなく現実だからね」

……試しにいつの間にか目の前いた彼女の名前を呼んだら、余計に頭がこんがらがった上に夢や幻を見ている、というのも否定されてしまった。

一方、混乱の最中にいる青年を護る様に立つさくらは、持ち前の洞察力と理解力で、なぜ後ろの青年が狙われたかをおおよそ推理できていた。

そして、どこからか取り出した刀を手に――数年ぶりに再会した、全くもって会いたくもなかった黒い影に話し掛けた。

「……てっきり“あの人”に完全に討滅されたと思ってたけど、こんな場所を見つけるなんて。悪運が強いんだねぇ」

『貴様……あの忌々しい氷の小僧の後ろにいた、あの時の小娘か!!』

覚えられていて面倒なような、説明が省けて楽なような……それはともかく、さくらの皮肉に何かを通した様に低い声で影が答えた。

「貴方からすればボクは小娘だけど、ボクからすれば貴方は諦めの悪いただの老害だよ」

『ふん……あの小僧はいないらしいな』

「さぁ? あの人は時間にルーズだからね。どこにいるか何てボクは知らないよ」

そもそも、再会するならこんな奴ではなくあの人がよかったのだが、と心の中だけでさくらはぼやいた。

だが、黒い影はそうではなかったのか……さくらの言葉を聞き、声高々に笑い言う。

『ならば――好都合だ!!』

瞬間、凄まじい速度で黒い影の両腕が伸び、鋭い刃がさくら……いや、正確には状況を把握できず動けない――下手に動かれるよりずっとマシだが――青年に向かって迫り、

「何が好都合かは知らないけど――ボクも好都合だよ」

刹那のうちに、刃の部分が一瞬で斬り落とされた。斬り落とした部分が消滅するのを待たず、さくらは黒い影に向かい疾走する。

さくらが刃を振るう……しかしその時には、伸びた部分を切り離した黒い影が刃を再生させ、片方で刃を受け止め反撃――しかし、さくらは刃の軌道をあっさりと読み取り、逆に影の片腕をいとも簡単に斬り落とした。

低いうめき声を上げ下がる黒い影に、さくらは冷ややかな視線を向けて問い掛けた。

「それで……何が好都合なの?」

極めて冷静に、だが相手からすればバカにされた様に聞こえる問い掛けに……黒い影は、妖しく変わらず低い声で笑い、そして叫んだ。

『フフフ――こういうことだっ!!』

「うわ!!?」

驚き叫ぶ声は、さくらの後ろから……つまり状況を把握できていない――出来る筈もない――青年の物だった。

そうだ、影の狙いはあくまで青年。さくらの存在など、最初から眼中にないのだろう。地面から突き出たのは、黒い影と同じ無数の鋭い刃。それは四方八方から青年に迫り、逃げ道を無くし確実に仕留めるだろう。

事実、彼は身を屈めることしかできない。影の刃は本体の狙い通り青年へと迫り、彼はグッと目をつぶり――刹那、先程と同じ様に黒い影は残らず弾け飛んだ。そう、先程さくらが彼の前に立った時と同じ様に、だ。

なに、と驚愕に声を上げる黒い影に……戦力を見誤ったツケが、そのまま返ってきた。

「バカだね。狙われてるって分かり切ってる子に、何にもしないでボクが放っておくとでも思った?」

言葉を聞いた時には、後ろから強烈な“冷気”を黒い影が漸く感じ取り――もう片方の腕が、片から斬り裂かれていた。

『貴様……!!』

「咲け、竜霰架・斬(りゅうせんか・ざん)」

さくらが刀で斬り裂いた、その傷元から華が咲く様に黒い影が凍結して行き――

『くそっ……!!』

――氷結しきる直前に、突如消え失せた。倒した、訳ではない。今のは恐らく、本体の意思を持った分身体の様な物だったのだろう。

「やっ……た?」

「それも残念ながら、だね。倒してないよ」

言いながら、さくらは刀をいつの間にかあった背中の鞘に納めて、尻餅をついて呆然としている青年に駆け寄った。

「大丈夫? ごめんね、巻き込んじゃって……」

「い、いえ。あの……今のって一体……」

未だに呆然と――しない方がおかしい――している青年の問い掛けに、彼女はさてどうした物かと思考した。

一般人を巻き込みたくはない……とはいえ、自覚があるにしろ無いにしろ悪いが彼は一般人の枠組みではないだろう。それに、彼の言った『芳乃さくら』という人物も気になる。

悪戯好きの魔法使いからの情報で訪れたこの土地に、自分と同姓同名、しかも瓜二つの人物がいる。これを偶然と切って捨てることなど、当たり前だが出来ないだろう。
特に、目の前の謎は解き明かさないと気がすまない魔法使い、芳乃さくらにとっては……。

――解き明かして見せようじゃないか。と勝手に(?)俄然やる気になってしまったさくら。これを彼女の妹が見たら、また始まったとため息を吐くことだろう。これも本人に自覚なく、しっかり妹に受け継がれてしまうのだが、それはまた別の話だ。

「ま、ここまで来たら説明しない訳にはいかないか。キミ、名前は?」

「あ……さ、桜内(さくらい)。桜内 義之(よしゆき)です」

「桜内義之くん……か。良い名前だね」

気に入ったよ、とさくらは言いながら金色の髪を掻き上げ、そして――桜が舞い散るこの場所で、運命は交錯する。遥かな、時を超えて。

「それじゃあ、改めて自己紹介。初めまして、ボクは『桜の魔法使い』――芳乃さくら。よろしくね、桜内義之くん」

――ヒラリ、ハラリ、桜が舞い散り、物語は加速する―― 続きを読む
  1. 2013/01/15(火) 04:31:33|
  2. 烈火の魔法使いの出逢いの物語
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烈火の翼・裏設定その一


さくら「はろはろ~。いきなりですが裏設定を公表しちゃいますなのでござる!! 作者が地の文書くの怠いからテロップで司会進行を務めさせていただきます、さくらことらぶりーちぇりーふぇありーと!!」

無自覚な魔法使い「烈火の魔法使いこと芳乃シグナム……おい待て、さっさとテロップを元(?)に戻せバカ者!!」

怒鳴られて、渋々テロップを元に戻すどこかで見たことのある栗色の髪の女性の二人組スタッフ……

烈火の魔法使い「まったく……誰が無自覚だ、誰が!!」

らぶりーちぇりーふぇありー「ここには君しかいないんだけどなぁ……それはともかく、このコーナーでは『魔法少女リリカルなのは 烈火の翼』に関する裏設定を暴露しちゃいます!! さっそく題材をドーン!!」

なかなかノリノリな桜の魔法使い。カラカラと運ばれてきたホワイトボードに描かれていたのは……凄く上手い紅 刹那とジャンヌ・ダルクの絵。

らぶりーちぇりーふぇありー「今日はこの二人の容姿に関することについて明かしてみます!!」

烈火の魔法使い「というと?」

らぶりーちぇりーふぇありー「この子達の女性的な容姿ってね、実は『時空の翼』と『創造主(クリエイター)』の能力に関係してるんだ」

烈火の魔法使い「あの二人が持つ、極めて特殊な力ですよね。それがなぜ?」

らぶりーちぇりーふぇありー「この二つの力はね、女性的であった方が扱いやすいんだー。だから、この二つの力が勝手に二人の容姿とかを女性的に育つようにしたのさ」

らぶりーちぇりーふぇありー、ペシペシと棒でホワイトボードを叩きながら話を続ける

らぶりーちぇりーふぇありー「でもね、この二つの力も結構人間的な考え方でね。容姿を女性的にすれば扱いやすくなると思ってるからそうしたんだけど、二人はそんなことしなくても扱えてるんだよねー」

烈火の魔法使い「ちなみにこれは、あいつら二人の性格にも関係が?」

らぶりーちぇりーふぇありー「んー、あると言えばあるね。刹那くんの場合、一般的なイメージの才色兼備な性格。だけど、こっちはあんまり左右されなかったみたいだね。刹那くんの口癖が『かったるい』だったり、ジャンヌくんはほとんど彼自身の性格みたいだし。まぁでも――」

烈火の魔法使い「でも?」

らぶりーちぇりーふぇありー「二人とも、いろいろ理由ついてるけど、この二つの力がなくても何にも変わらないんじゃないかな~。結局もとの二人は根本的には変わらないし、容姿だって力がなくても今と同じになると思うよー」

なんだかんだ語った上での天才のあっけない答えに、スタッフ総出でずっこけた。

結局、力があろうとなかろうと育つ道は同じで。環境しだいということらしい。

烈火の魔法使い「さて、今日はここまでだ。楽しんでいただけたか?」

らぶりーちぇりーふぇありー「それじゃあ次があればまた次回!! See you♪」












────────────────────

……え? 男の娘に育った裏設定ですけど何か?(笑)

いやまぁ、かなり前に設定してたやつなんですけど、絶対本編じゃ使わないだろうと寝る前の暇潰しにしてみましたww

結局、最後にさくらが言ったように、あんまり関係ないんですけどね

翼と創造主がなくとも容姿とか性格は変わりません。言うて変わるのは髪の毛とかの伸びる早さくらいww(これも女性的に見えるから、ですww)

まぁ暇潰し程度ですけど、機会があればまた裏設定公開するかもです。あ、コメントとか待ってます(笑)

いつのまにか拍手とか入ってると、密かに小踊りしてしまういかじゅんでしたww
  1. 2013/01/06(日) 02:59:45|
  2. 小ネタ
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正月記念短編小説『運命共同体』

1月1日、元日。世間一般的にはお正月である。子供はお年玉を貰い、大人はいろいろと忙しい日なのである。

そんな中、元日の八神家にて、本来いる筈のない人物がそこでお節料理をせっせせっせと用意していた。金色の髪をなびかせ、なんで私はここにいるんだろうなぁ、なんて表情をしながら、ふと呟いた。

「……かったるいなぁ」

――いつもの、スペックと顔に似合わぬ口癖を。その呟きに反応したのは、彼にいつも付き添う栗色髪の女性……シュテルだった。

「そんな事を言わずに……せっかく誘ってもらったのですから」

「誰も誘って欲しい、なんて頼んでませんよ」

「あの……やっぱり迷惑でした?」

そんな彼の素っ気ない返答に、車椅子に乗ったままおずおずと言う、この家の主、八神はやてだ。その後ろには、彼の――紅 刹那の反応が気に入らないのだろう、やけに不機嫌な少女、ヴォルケンリッターのヴィータもいる。

特に取り繕う訳でもない刹那に変わり、シュテルが車椅子に乗ったはやてに目線を合わせ言う。

「いえいえ、師匠はこんな反応ですが、内心ではとても嬉しいのですよ」

「シュテル、勝手に私の内心を想像しない」

「ふんっ、気に入らないなら帰ればいいだろ!!」

刹那の反応がさらに気に入らなかったのか、思わず叫んだヴィータをはやてが叱り付ける――より早く、サクサクと刹那はリビングの扉へと向かいさっさとドアノブに手を掛けた。

「っ、師匠!!」

「この家の方が出ていけ、と言っているんです。私は帰りますよ」

何も、出ていけと言っている訳ではないのだが……そんな事を知ったことではないとばかりに、彼は扉を開き――瞬間、固まった。

「……お前、なんで帰ろうとしてるんだ?」

「――シュテル?」

名前を呼んでバッと振り向いた刹那に対し、シュテルも流石の反応で素早く目線を逸らした。

刹那の目の前に都合よく現れたのは、桜色の髪をポニーテールに括った不思議な雰囲気を持つ女性。それはそうだ、彼女は『魔法使い』なのだから。

烈火の魔法使い――芳乃シグナム。

「な・ん・で、貴方様がここにいらっしゃるのでしょうか?」

「なぜ不機嫌になる……シュテルに呼ばれたんだ。そのうち姉さんや主達も来る」

シグナムがそう言った瞬間、再び刹那がシュテルを睨むが、やはりシュテルは素早くスルー。そういう所は、実はオリジナルより優秀だったりするシュテルである。

ちなみに、かったるいかったるい言っていた刹那をこの場に連れてきたのもシュテルだったりする。あんまりにも素っ気ない刹那に業を煮やして、なんとか頑張って連れて来たのだ。

――まぁ、彼の過去を考えれば人に素っ気なくなっているのは、仕方のない話なのかもしれないが。だが、そんな彼をあっさりと動かすことが出来るのが、烈火の魔法使い、芳乃シグナムなのである。

「ほら、せっかく誘ってもらったのだから、何か話してから帰っても損はないだろう?」

「まったく、少しだけですよ」

このように、である。シグナムに先ほどのシュテルと同じ言葉を言われ、そさくさと戻って来た刹那にはやてとヴィータは顔を合わせて驚き、はやては思わず刹那に問い掛けた。

「せ、刹那さんって……魔法使いさんに何かあるんですか?」

「何かって言われても……うーん、無理やり私の命を拾った人?」

「無理やりとはなんだ、無理やりとは」

驚くはやてとヴィータに、そういえば大半の人間には説明していなかったなと思い、これも何かの縁だと気紛れに刹那は話し始めた。

「無理やりでしょう、確実に。人が親切に放置しても大丈夫だって言ってるのに、無理やり人のこと止めようとして……」

「人の目の前で勝手に消えようとするからだ。大体、最初に折れたのはお前だろう。文句を言うな」

「そりゃあそうですけど……あんな無茶されたら、折れるしかないでしょう――まぁですから、私はこの人に従うんですよ。この人が無理やり拾った命、責任を取ってもらわなきゃ困ります……だから、私はこの人が奴隷になれと言ったらなるし、何処かへ着いてこいと言ったら着いて行きますよ」

後半からの言葉は、恐らくはやて達に向けた言葉なのだろう。そしてヴィータとはやては、顔を合わせてまったく同じ事を思った。

((……無自覚?))

無自覚、なのだろう。でなければ、こんな平然と恥ずかしいことを言える筈がない。その無自覚が何なのか、とは敢えて言わないが。

そして刹那の言葉を聞いたシグナムは、困ったように笑みを浮かべて彼に問い掛けた。

「お前、それではもう私がいなくなったらどうする気だ」

「私を拾った貴方がいなくなるんです。何処へなりとも消えますよ。私は貴方の物なんですから」

「ならば、その表現は少し違うな。お前と私は――運命共同体だ。お前を助けたことが私の責任になるのなら、安心しろ、しっかりと背負ってお前と同じ運命を見つめてやる」

「……ふーん、物好きな人ですね、本当に」

シグナムの表現は、刹那には若干恥ずかしかったのか微かに顔が赤い。だが、それでもシグナムは平然としていた。

今度はシュテルも交ざり、確信しながら三人は思った。

(無自覚……やね)
(無自覚……だな)
(無自覚……ですね)

――近いのに遠い距離。変に察しがいいのに、鈍感。本当に、本当に摩訶不思議な関係の二人がどうなるかは……誰にも分からない。

ただ、三人は漠然と……上手く行けばいいなぁ、と願うのであった。













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ぎ、ギリギリセーフだよねって何度目かのフライング記念短編を上げてみた。

ちなみに、一時間で書いたのでめちゃくちゃ荒削りです(笑)感想等々もお待ちしてますー
  1. 2013/01/01(火) 23:55:27|
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魔法少女リリカルなのは 烈火の翼 第30話

人には誰しも、物事に対する“慣れ”と言う物が存在する。本人が絶対に慣れないと思っていても、案外簡単に慣れてしまう物なのだ。

海に没した街並。普通なら常識を逸した光景なのだが、この世界では常識となる世界の風景。

では、そんな世界のビルの上でテーブルを置き、平然と茶を飲む市丸ギンと言う人物がここに居る事は、果たしてこの世界の日常風景なのだろうか?

――そんな訳はない。そんな訳はないのだが……。

(……なぜ、こんなにも心が乱されるのか)

自分で自問自答しても、答えは出ない。大体、生前では男とこんなにも話した事はなかったのだ、仕方がないではないか、と相変わらず顔を隠す真紅のフードを被る女性、緋炎は動揺を表す様に、フードの下の灼眼の瞳を知らず知らずに揺らす。

――無視すればいいだろうに。

言葉が頭を過るが、それが出来たら苦労はしていない。無論、最初は彼の事など無視していた。が、勝手に人の世界に入り込んで勝手に話して勝手に居座る人に、そんな事では通用しない。

そうして、許可もなく勝手に上がり込んで来る彼に、いちいちいちいち注意していたら……まぁなし崩しこういう事になっていると言う訳だ。

「まぁでも、ここに来るのも久しぶりやなぁ。元気にしとった?」

「……久しぶり、と言うのは長い時間が経過している事を言います。貴方の久しぶりは、たった1日程度来ない事なのですか? 市丸ギン」

「いやぁ、緋炎先生の享受は頼りになるなぁ」

ほら、自分が皮肉を言ってもヘラヘラとした笑顔で返されてしまう。

――その笑顔の下に、一体どんな過去を秘めているのだろうか?

向かい合い、こうして茶の湯を共にしても皆目見当もつかない。別に興味がある訳でも……。

「そう言うたら、緋炎ちゃんはこの前まで何しとったん?」

――なかったのに、先に訊かれてしまった場合はどうすれば良いのだろうか? とりあえず、言葉を濁すことにする。

「……どういった意味で?」

「そのまんまの意味、やね。別に無理に聞こうとは思わんけど」

だが、それも彼にはお見通しなのだろう。そういう処が、気に入らないのだ。勝手に、スルリスルリと人の心に潜り込んで来るのに、自分の心はなかなか明かそうとはしない。

やはり、こういったタイプは初めてだからか、大分やりにくい。けれど、なかなか嫌いにはなれないのは、自分が思いの外他人との関わりが苦手ではなかったのか、それでも彼だからなのか……これも、考えても解らないことだった。

が、一応質問には答えねばなるまい。別段、隠す様な事でもないのだから。

「……聖職者ですよ、こんなんでも」

「聖職者って……シスター? なんや、緋炎ちゃんって何か崇めてたん?」

「いいえ。私は神様も信じていませんよ」

は? と流石のギンもこれには面食らう。シスターは基本的に何か……例えばその宗教の“神様”などを崇めている印象なのだが、緋炎は聖職者なのに神様すら信じていないと言っている。まことに、不思議な事も在るものである。

「じゃあ、緋炎ちゃんは何を信じてたん?」

「『愛』ですかね。親愛、敬愛……まぁいろいろと在りますが、未だに“恋愛”のファクターは不確定で興味深い物があります」

信じるのは、己の『愛』のみ……とでも言った処か。何にせよ、彼女がこの『天鎖斬月・緋炎』を宿す人物になった理由も、そこにあるのかもしれない。

かなり冷めてしまった茶を啜り、ギンはその事について尋ねてみる事にした。

「キミがこの天鎖斬月を宿す者に選ばれたんも、それが原因?」

「さぁ? 私を選んだのは蒼天ですから、今すぐ彼女に訊きに行けばよろしいのではないでしょうか」

さらっと、さっさと出ていけと遠回しに言った緋炎だったが、ギンは相変わらず飄々と答えた。

「うーん、ボクが気軽に出入りして話しとるのなんて、緋炎ちゃんくらいやしなぁ」

ピクリ、とギンにも解らないくらい微かに指を動かし動揺した緋炎だったが、それを気取らせない様に平然と茶を飲み干し話を続けた。

「言っておきますが、私とてこれだけの時間話をしたのは生前を含め貴方が初めてですよ」

――いや、あんまり動揺を隠せていなかった様である。これでは、貴方は“特別”ですよと言っている様な物だ。それに気付き、フードの下の顔を真っ赤に染める緋炎。
しかし幸い(?)にも、ギンはそれに気付く事なく、別の話題が気に掛かったらしい。

「初めてって……話し相手とかいなかったん?」

「……私がいたのは確か“聖王”とやらを崇める教会でしたが、そういう物を信じていない、などと言えば近づく人間はいないに決まっているでしょう」

確か、と曖昧に記憶している時点で本当に神様に興味がなかったのだろう。ただまぁ、聖王もギン達からすれば所詮はただの“人間”でしかないのだから、神様のように崇めているのは未だに違和感がある。

それはそれとして、要は彼女は煙たがられていたのだろう。そりゃあ、ある意味で聖王を侮辱しているのだから、そこに所属する聖職者としては大問題である。

「せやけど、何で信じてもない教会にいたん?」

「一応、拾ってくださった親代わりのシスターがいた教会でしたので」

「教会への恩返し?」

「いえまったく。一応教会で育ちましたが、生憎あの教会は好きでもなかったので」

……言いたい放題である。しょうがない、好きじゃない物は好きじゃないのだ。嫌いな物を今すぐ好きになれなど、到底無理な話だ。

――とはいえ、別に嫌なことばかりではなかったのだが。

「先程、話し相手はいなかったのか、と貴方は問いましたね?」

「言ったけど……なんや、誰かいたん?」

「まぁいるにはいました。彼女が勝手に話し掛けて来ていただけ……でしたが」

それに、付き人の様な少女には嫌われていた――まぁ、教会で自分を知っている人間は大半自分を嫌っていたが――ので、話し掛ける度に注意されていたが。

しかしまぁ、教会の異端児だった自分が、今やその教会で神聖化されている武具の内部人格。一方的に話し掛けて来たその少女は、今や教会の偉い人になっているときた。

運命とは、いやはや不思議な物だと思う。それを言ったら、こんなに長い間、陰口以外で男性の話を聞く事など前は思いもしなかった。
まぁただ、決して心地が悪い物ではないと――

「まぁでも、ボクはあの教会嫌いやないよ。美人さん多いし」

――その時、この世界の温度が一気に冷え込んだと言う。凍り付く空気。緋炎と言う名とは真逆に、彼女の周りは氷点下までまで冷え込みそうな勢いである。

(……あれ?)

ある意味その状況を作り出したギンが、ようやく雰囲気が変わった事に気付いた。特に、目の前の女性は何だか初対面の時より好感度が低くなった気がする。つか、好感度ってなに?

「あの、緋炎ちゃん?」

「知りません」

「は? なに――」

「知りません」

「え、いや」

「知りません」

「……もしかして拗ねとる?」

「知りません」

「や、冗談よ冗談。緋炎ちゃんが可愛いのは事実やけど」

「この――うるさいうるさいうるさぁぁぁぁぁいッ!!!!」

キレた。結局めんどくさくなったのかキレた。

ダン!!と拳をテーブルに叩きつけ、彼女にしては珍しく感情を表に出して叫んだ。

「そもそもお前はもう私に訊く事なんて無いでしょ!? もう心配事は解消されたんだから、さっさと帰りなさいよ!!」

「あ、やっと素になってくれた。見た時から猫被ってるって思うとおたんよ」

「うるさいうるさいうるさい!! 聖職者は色々とめんどくさいの!! お前は何回不法侵入してると思ってるの!?」

「聞きたい? しっかり数えとるけど」

「……いい」

――こうして、僅かばかりの平和な時間が過ぎて行く……。









◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

暴れ狂う雷撃。既に半壊状態の訓練場を破壊し、それでも尚止まる気配を見せない。いや、本人が止めていないのだ。

「っ……うぁ!!」

狂う雷の中心の少女……フェイト・テスタロッサが制御しようと必死に思考を動かすが、電撃は制御するどころかさらに暴れ狂い、一人の男へと強力な一筋の雷が向かい――何かに阻まれたように弾かれ、男は……クーゴは平然とフェイトに向かって叫んだ。

「さっきから言ってんだろ、頭で制御しようとすんな!! 先ずはお前自身の力に慣れろ。話はそっからだ!!」

「は、はい!!」

――その二人を中心に、遥か後方。出入口の近くに立つ、背の高い女性と年齢の割に背の低い……ゲフンゲフン、些か育ちが悪い少年がその異常な光景を普通に会話しながら見学していた。

「……こういった光景に短期間で慣れると、些か悲しくなるな」

「そうかしら、良い経験になるわよ。クロノ君」

時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンと処刑人(エグゼキューター)、高町なのは。

まぁ、あんな命懸けの事を経験すれば嫌でも慣れるだろう……一生涯、慣れたくはない物だが。

……あの誰にも知られることのなかった騒ぎから、既に一週間が経過しようとしていた。その間に、短い期間とはいえ物事は次々と変化を続けていた。

「で、クロノ君はこの前のことはどう上に説明するつもりかしら?」

この前のこと、とは勿論“闇の書事件”の最中に起こった『時空の翼』による出来事――一つ選択を間違えれば、なのはを含めた強大な戦力全てを敵に回すことに成りかねないことだ。

だが、クロノは平然と……当たり前のようにその問い掛けに答えた。

「何のことだ? ただ僕達は消えようとしていた人ひとりの命を助けようとし、無事に救出を完了。その中で“何故か”守護騎士の一人が協力をしてくれた……が、この出来事には証拠がなに一つとして無い。事実確認が出来ない“空想”は、報告する物ではないさ」

「……待ちなさい。あの翼のエネルギーは次元が違い過ぎて遠くからじゃ観測不能だけど、アースラの機器はエラーとはいえ観測していた筈よ?」

確かに、他にも結界内部にてクロノとなのはが守護騎士を追い詰めたが、彼らが観測不能の“何かを使い”あと一歩の所で取り逃がした、とでも“空想”を言えば言い訳は利く。

しかし、アースラのデータには言い訳できないレベルの理解不能なデータが残っている。明らかに守護騎士の仕業ではない上に魔法技術ですらないそれを、一体どうやって言い訳するのか。

するとクロノは困った様に肩を竦ませ、こればかりはどうしようも無いとばかりに言葉を放った。

「それがな、この一週間いろいろと忙しかったから言っていなかったが、あの時のアースラのデータは綺麗さっぱり消えていた」

「それって……」

「勿論、僕ではないさ。そんな権限は僕にはない。だが確かに、あの日の出来事のデータが、“まるで最初からなかったかのように”綺麗さっぱり消えていた。するつもりも無いが、僕がいくら声を荒げたところで、上の誰も信じないだろうな」

――時空管理局が誇る技術の結晶たるアースラの機器が、何の形跡も無く侵入され、剰えデータまでいじくり回されていた。

無論、そんな事を出来る人間は殆どいない。なのはが知ってる中でまず候補に上がるのは、管理局の技術者の誰一人として叶うものはいないと言われる天才、裏月だが……彼は個人的な案件で忙しいらしく、この一件には無関係だろう。 続きを読む
  1. 2012/12/29(土) 03:53:33|
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