サクライロノセカイ/リリカルなのはなお話

えびえもん兼いかじゅんのブログです。リリカルなのはの二次創作などを書いています。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

魔法少女リリカルなのは 烈火の翼 第7話

別々の場所で展開される、二つの戦い。どちらも結界が展開され、内部では違いがあれども二人の天鎖斬月の所持者が戦闘を行っている。

まぁ何が言いたいかと言うと……そんなドが付くほどに派手な戦闘を行っていれば、ヒナギクが気が付かない訳がない、という事だ。

「あ、これなんかどうかな?」

「え~、でもこっちも良さそう何ですよね~」

お前らはどこの女子高生だ、と言いたくなるような会話を雪華と服を選びながらするヒナギクだが、その思考は服だけでなく戦闘の方にも向いている。と言っても、彼自身が戦闘に向かう訳にはいかない、ならばどうするか……。答えは簡単、彼の半身とも呼べる刀に頼めば良い話だ。

【さくら。聞こえる、さくら?】

【うにゃ。聞こえるよ、お兄ちゃん】

これは、彼らにしか聞こえない会話。しかし、他の人間が聞けたと仮定すると、驚くところはヒナギクをお兄ちゃんと呼ぶその声が、“自称”平凡な小学生、高町なのはと全く同じ声という事だろう。

ヒナギクにとって、この声は聞き慣れた物……なのだが。

【ねぇさくら。やっぱりその“お兄ちゃん”って言うのは……なのはと同じ声で言われると、恥ずかしいというか何と言うか……】

【にゃはは、お兄ちゃんはお兄ちゃんでしょ? それより、ボクは適当に援護に向かえば良いのかな?】

【うん。お願いね、さくら】

【了解だよ、お兄ちゃん】

あ、やっぱりお兄ちゃんは止めてくれないんだ……とか思いつつ、二人は会話を終えた。まぁ、彼女がどちらに向かうにしろ、多分これで大丈夫だろう。それくらい、ヒナギクはさくらに信頼を置いていた。それは、当然ながらシグナムやなのはにもだが。

「さて……」

そう静かに呟いたのは、天鎖斬月・蒼天を構えた裏月。呟くなり、裏月は掛けている自分の眼鏡を取り、しまい込む。どうせ、本来掛ける必要がないだて眼鏡だし、戦闘では必要ない物だからだ。

そんな無防備な行動をする裏月だったが、相対する仮面の二人は迂闊に動く事ができなかった。今、彼女らの頭には裏月と戦う等という考えはない。如何にして撤退するか、その考えしか彼女らにはなかった。

――しかし、そんな彼女らの考えを嘲笑うかのように、戦場に声が響いた。

「行け――群鳥氷柱(ぐんちょうつらら)」

響くと同時に、戦場に変化は訪れる。仮面の二人の周りに、幾つもの氷柱が突き刺さった。無論、ただの氷柱ではない。突き刺さった氷柱から冷気が溢れ、地面を氷結させていく。つまり、この攻撃は逃げ道を塞ぐ為の物。さらに、もう一つ変化が起きる。

「なにっ!?」

「くっ……」

舞い散るは桜。まるで、仮面の二人の逃げ道を塞ぐ様に、桜の刃が美しく舞う。氷と桜、相容れない筈の二つが、仮面の二人の逃げ道を塞ぐ。その光景は、どこか美しい芸術にも見えた。

「動かない方が良いよ? 動くと……綺麗な桜が、真っ赤な血で美しく染まる事になると思うから」

また別の声が響く。今度は、その姿を見る事が出来た。近くの建物の上、そこには刃の無い刀を持った少女が仮面の二人を冷たく見下ろしている。

少女の容姿は、高町なのはと瓜二つ。違いは、髪色と髪型が金髪のツーサイドアップになっている事や、背がなのはより5㎝ほど低いことか。低いと言っても、なのはの背が“なぜか”普通の小学3年生より高いので、140㎝はあるのだが。

その少女に合わせるかの様に、仮面の二人の後ろのは少し長めの刀――氷輪丸――を持った少年が、退路を断つ様に現れた。最後にもう一人……その一人は、裏月の近くに降り立った。

「なんや、ボクの出番がないやないの」

「市丸……お前ら尾行中じゃなかったか?」

「雰囲気ぶち壊しやなぁ」

ごもっともである。まぁただ、裏月に市丸と呼ばれた糸目の青年が来た時点で微妙に空気が崩れていた気がするが。それでも、天鎖斬月の切っ先を少しもずらさないのは流石と言える。

一方その頃……もう一つの結界内。つまり、なのはが展開した結界の内部では、ひたすら轟音が鳴り響いていた。その轟音が鳴る度に、破砕片が空中に飛び散り、時には破片と呼ぶには大き過ぎる程の砕かれた破砕も吹き飛ばされている。

そんな光景を一太刀で生み出していく相手と斬り合っている女性、シグナムは舌打ちを禁じ得ない。

技量や速度だけ見れば、天鎖斬月を持ったシグナムに分があると見ていいだろう。だが、彼女のコピーはそれを補うだけの圧倒的な力があった。ここまで一太刀でふざけた威力を出せる相手に、真っ正面から斬り掛かる等という愚策を取る筈がないシグナムは、自身の技量と天鎖斬月を用いて斬撃を受け流していく。

何度目かの攻防……自身のコピーの斬撃をいなしたシグナムが一度距離を取り後退し、天鎖斬月を構え直した。

「埒が明かない……か」

相対する相手――無表情の自分――を見据えながら、シグナムはポツリと呟く。その呟きは、事実問題を的確に表していた。結界内とはいえ、物を壊し過ぎるというのは少々気が引ける。

とは言っても、決して手がないわけでは無い。奥の手、なのは風に言えばとっておきが残っているし……何より試したい事もある。しかし、奥の手があるのはシグナムだけではなかったらしい。

――コピーのシグナムが、動いた。長剣の刀身の付け根にあるダクトパーツがスライドし、何かを排出する。

「あれは……!」

少し離れた場所で、その光景を見ていたなのはが排出された物の正体に気付く。排出された何か……弾薬の薬莢の様な物が地面に落ちて、乾いた音を立てる。瞬間、コピーのシグナムの魔力がいきなり上昇した。

(あの弾丸が魔力を瞬発的に上昇させた……間違いない。ベルカ式のカートリッジシステム)

なのはも資料でしか見た事がなかったが、あの特長からして間違いないのだろう。それだけの確信を少女は持っていた。そして、それは全く間違っていない。

「レヴァンティン……」
『Schlangeform.』

コピーのシグナムが初めて言葉を発する。恐らくは、手に持った長剣の名前なのだろう。レヴァンティンと呼ばれた長剣も、その声に反応し……変化する。

「くっ……チィッ!!」

今度こそ、シグナムは舌打ちを隠すつもりなどなかった。魔力を瞬発的に上げた相手に対抗するかの様に、シグナムも瞬発的に速度を上昇、一気に常人には捉えられない速力で移動する。

そんなシグナムが一瞬前まで居た場所に叩きつけられたのは、まるで蛇の様になった刃……レヴァンティンのもう一つの姿、連結刃だ。
その蛇の様な変則的な動きで、圧倒的な速力を叩きだすシグナムを攻める。だが、その不規則な動きをもシグナムは己の動体視力を持って全て見切り、その身体能力を持って全て避ける。

シグナムが避けた事で、ビルに連結刃が叩きつけられる。それにより、蛇の刃の動きが一瞬だけ止まる。たった一瞬、しかしこの戦いにはその一瞬が重要だった。

純白の天鎖斬月の刀身からチリ、という音を皮切りに刀身の色と同じ何かが溢れ出す。

そして、連結刃の根元……つまりはコピー体に向かって空中から――

「月牙天衝――」

天鎖斬月を一陣振るう。放たれたのは純白の――何物にも染まっていない――月牙天衝。純白の斬撃が、凄まじい速度でコピー体に迫る……が、コピー体は強引に連結刃を引き戻し、その場を飛び退く。結果、標的を無くした月牙天衝は純白の斬撃の柱を作るだけに留まる。しかし、そんな事は予測済だ……飛び退いたコピー体に向け射角を変更し――

「――双牙ァ!!」

シグナムが天鎖斬月を斬り戻す。その結果放たれるのは、もう一陣の月牙。文字どおり斬撃そのものがコピー体に向かって飛び……着弾と同時に、その姿を覆い隠した。

(直撃……いや)

(外したか……)

なのはとシグナムの思考が、同じ答えに辿り着く。一見、直撃した様に見えた月牙天衝。しかし、コピー体はギリギリで連結刃を戻し、月牙から強引に逃れた。が、当然ながら月牙天衝をその程度で避け切れる筈がない。

シグナムがビルを背に着地するのとほぼ同時……煙を払いながら額から血を流したコピー体が現れた。
全く、我ながらタフなものだな、などとシグナムは他人事の様に考えたが、直ぐ様思考を引き戻す。連結刃を戻した事で、再び長剣の状態に戻ったレヴァンティンが、もう一度カートリッジをロードした。

「炎……」

「紫電……一閃」

まるでシグナムの呟きに応えるかの様に、コピー体が何かを呟く。紫電一閃、その名前を聞いた瞬間、何故かシグナムは何か懐かしい感覚を感じ取った。

カートリッジがロードされたと同時に、レヴァンティンの刀身は真紅の炎に包まれた。

紫電一閃――その刃が振り下ろされる時、敵はその閃く一瞬の光を見る事も叶わず、ただ地に墜ちるのみ。
そして、それを再現するかのようにコピー体が突撃、さらに地をおもいっきり蹴って飛び――その刃を振り下ろした。

「な……っ!?」

同時刻、裏月たちの居る結界内では大きな揺れが起きた。ただの揺れではない……巨大な魔力の衝突によって起きる、謂わば共鳴反応の様な現象。

しかし、普通の魔力の共鳴現象ならば、いくら巨大でも違う結界内に影響を及ぼす事などあり得ない――原因の一つとして考えられるのは、裏月の持つ天鎖斬月・蒼天が一瞬だが反応……つまりこれは魔力の共鳴現象ではなく、天鎖斬月の共鳴現象という事だ。

その事が裏月の動揺を呼び、それを見逃さなかった仮面の戦士のうち一人が素早く地面に手をつけ、転移魔法を起動させた。

「逃がすかよ!!」

だがそれと同時、少年が叫びながら氷輪丸を振るい、氷結の斬撃で動きを封じ様とし、千本桜の刃を控えさせていたさくらは本体の刀を振るって千の刃全てを仮面の二人に向かって放つ。

二人の攻撃が同時に到達……した瞬間、光が辺りを包み込んだ。その光が晴れた時、残っていたのは氷結の後と――残された血の跡だけ。

「うにゃあ……逃がしちゃったね、冬獅郎(とうしろう)」

「ああ、手応えはあったが……上手く逃げられたな」

いつの間にか少年の近くに来ていたさくらが、指を可愛らしく口に添えながら彼の名前を呼ぶ。少年……冬獅郎もそれに応えて事実だけを言うが、その表情に失望などの感情は見られない。

手応えや血の跡を見るかぎり、決して浅くはない手傷を負わせた、それで十分だろう。それより……

「さっきの地震、どうやらもう一本の天鎖斬月の方で何かあったみたいだな。決着が付いたか……それとも」

「どっちにしても、あの子どんどん天鎖斬月を自分のものにしてるよ。流石は、お兄ちゃんの騎士を名乗るだけはあるよね~」

さくらの言葉は、見事に的を得ていた。彼女は驚異的なスピードで、天鎖斬月の力を引き出し始めている。先程の振動が、何よりの証だろう。

なのはが展開した結界内部……そこでは、見た人が呆れる様な光景があった。ひび割れるどころか、完全に砕けているシグナムの足下。しかしそんな状況でも、シグナムは天鎖斬月を両手で握りしめ、その刃でレヴァンティンを“受け止めていた”。そう、ジュエルシードによって引き出されたふざけた力と、カートリッジによって底上げされた斬撃を……彼女は真っ正面から受け止めるという、バカみたいな事をやってのけたのだ。

「な、なんつー無茶を……」

衝撃から顔を守るために、手で顔を庇っていたなのはが、かなり呆れを含んだ声でそう呟く。

というか、彼女がビルを背にした時点で“回避”という文字はもうなかったのかもしれない。

さて、これだけの一撃を放てば、当然ながら攻撃をした方には大きな隙が生じる。そして……一瞬の隙も見逃さなかったシグナムが、この隙を利用しないとお思いか?

――シグナムが天鎖斬月を振るい、レヴァンティンをおもいっきり弾く。それにより、がら空きになるのはコピー体の身体。

「月牙――」

シグナムが天鎖斬月を腰溜めする様に構える。刀身からは、月牙天衝を放つ時に溢れる筈の純白の剣圧は……溢れない。

ひたすら斬撃を圧縮する。一欠片も残さず、圧倒的な力となるものを圧し固める。

そして……シグナムが天鎖斬月を斬り上げる様に振るった。

「――龍閃ッ!!」

圧し固められた月牙……それは全てを喰らい尽くす龍の一閃。龍の形を成した月牙がコピー体に喰らい尽き、一瞬にして反対側のビルまで吹き飛ばした。

壁に突き刺さる様に吹き飛んだコピー体が、その手に握っていた剣を手放す。瞬間、突き刺さったのは一枚のカード。それによってコピー体の身体が吸い込まれ、一瞬光を放つと投げた持ち主、なのはの手元に戻り彼女は綺麗にそれを掴み取った。

「月牙龍閃(げつがりゅうせん)。通常、月牙天衝に求められる威力・飛距離・範囲・速度の内、月牙を極限まで圧縮させる事により、飛距離と範囲を犠牲に威力と速度を飛躍的に上昇させた月牙……まぁ言うだけなら簡単ですが、やる分には結構ムズいんですよね。っていうか、いつの間に使えるようになったので?」

「ついこの前だ。形だけなら以前から出来ていたのだがな。む、まだ腕が痺れているな……さて」

掴み取ったカードをいじくりながら、説明的な口調のなのはの質問に応えたシグナムが先程コピー体が叩きつけられた場所で立ち止まる。そこにあったのは……剣の模様をした小さなアクセサリー。

「これ、裏月に渡して調べてもらった方が良さそうだな」

「まぁデバイス関係なら、裏月さんが一番早いですからね。それより……」

「なんだ?」

「師匠のデート。もう尾行しなくて良いので?」

「――あ」

さてさて、シグナムの記憶から見事な迄にすっぽり抜けていたヒナギクのデートだが、ただいま食事の真っ最中だったりする。が、何故か雪華の表情は半笑い状態。

その理由は、ヒナが涼しい顔で食している“真っ赤な”ハヤシライスの所為である。

「ね、ねぇヒナ。それ、辛くないの?」

「辛いですよ。だから激辛ハヤシライスなんでしょう? でも、ラッキーですよね~、これを完食するだけで5万円が貰えるなんて」

言い忘れていたが、ヒナギクは凄まじい辛党だったりする。この事実を知っているのは、なのはを含めた高町家のメンバーと裏月やさくら達。因みに、シグナムが知らないのはヒナギクが彼女に遠慮して最近は作っていないからだ。

心なしか、雪華の目には店員が真っ青な表情をしている様に見える。ああ、今日の売り上げは赤字だな。どうでも良いが、ヒナギクの好物はオムライスとハヤシライスである。

「そういえばさ、ヒナが持ってるそのギターケースって、何なの?」

「ああ、これですか?」

激辛ハヤシライスをあっさり食べ終わり、普通に賞金を受け取ったヒナギクが、雪華の問いに応える為にギターケースを持ち上げた。てか、普通に賞金を受け取っている辺り、ヒナギクは変な所で遠慮がなかったりする。

「これね、ギターケースじゃないんですよ」

「ふへ? じゃあ何なの?」

「バイオリンケース。私の宝物です」

「へぇ~、ヒナってバイオリン弾けるんだ。ねぇねぇ、今度聴かせてくれない?」

「良いですよ」

「ホント!? やったー!!」

ヒナギクの了承が得られて、まるで子どもの様にはしゃぐ雪華を見て、純粋に可愛いな~、何て思うヒナギク。そうだ、このバイオリンケースは自分の宝物。彼の記憶……それの始めに持っていたのがこのバイオリンケースというだけなのだが。まぁ、ヒナギク自身が音楽を愛しているのも、一つの原因であったりする。

「ふぇ~……高そうなバイオリンだね。これ、何て名前なの?」

「ん、これはね――」

何より、このバイオリンを弾いていると、まるで誰かの心に触れている様な暖かい感覚を得る事が出来るから。そしてもう一つ……彼の唯一始めの記憶に残っている、このバイオリンの名前――

「ブラッディ・ローズ。それが、このバイオリンの名前ですよ」

……彼は知る由もない、このバイオリンは――彼の父親と兄の祈りが込められている事を。そして……彼の大嫌いな『運命』というものを、彼自身が知らずに背負っている事を――今の彼は知る由もない。









◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

数日後、なのはは暇潰しに海が見える場所を何となく歩いていた。ホントに、何となくである。

と言うのも、珍しくぽっかりと時間が空いてしまったのだ。裏月さんは、何か最近どこかに行っているし、自分の刀も同じくどこかに行っている。

(ま、裏月さんの交友関係にまで口を出すつもりもないし……ギンの放浪癖は何時もの事だしね)

と、なのはは思考を切り替える。彼女は、交友関係を広める事を好まない。というか、拒絶すらしているのかもしれない。だから、本当に親しい人くらいしか、自分から声を掛けたりしない。

でも、じゃあ何で――

「久しぶりだね、フェイトちゃん」

「あ――」

自分は一度しか会った事がない少女に、声を掛けてしまっているのだろう。少女が悲しそうにしていたから? だとすれば、自分はどうやらお人好しのようだ。

別に彼女の生まれに同情するつもりはない。冷たいが、彼女より生まれが酷い人間だっている。いや、人間としてすら扱われない者だって。

何て考えてしまう自分は、やはり冷たい人間だな、などとなのはは考えながらフェイトと同じ様に手すりに寄りかかった。

「どうしたの? 悩み事なら聞いてあげるよ。私で良ければね」

「えっと……あのね、私、何がしたいか分からないんだ」

「何がしたいか?」

僅か二回目の出逢いで、自分にあっさり悩み事を打ち明ける少女は案外天然なのかもしれない、とかなのはは考えながら少女に先を促す様に聞き返す。

「うん。母さんはね、自分のしたいようにすれば良いって言うんだけど……それが何だか分からなくて」

「……じゃあフェイトちゃん。質問するけど、フェイトちゃんは何であの青い宝石を集めてるの?」

「へ? それは……母さんにお願いされたからで――」

「じゃあそれで良いんじゃない? フェイトちゃんのお母さんは、やりたい様にすれば良いって言ってる。だったら、暗に自分のお願いを断っても良いのよ、って言ってるって事でしょ?」

「あ……」

「それを断らなかったのは、フェイトちゃんの意志。って事は、フェイトちゃんはお母さんのお手伝いがしたい。それで良いじゃん」

最後の言葉に、なのはは自然と笑顔を浮かべてフェイトを見ていた。それを見たフェイトも、自然と笑顔になっていく。

ちょっと強引だけど、元気づけられたなら結果オーライだよね? となのはは思う。実際、目の前で人が落ち込んでいるのを見ると気分が悪いのだ。そんな事を考える彼女は、やはりお人好しだ。

「済まないが……少し話を訊かせてもらえないか?」

「ッ!?」

しかし、そんな時間にも終わりは来る。いきなり、という訳でもないが、少女の少し後ろ辺りに居る黒髪の少年が声を掛けた事で、フェイトの表情が一転して強ばった。
そして少年から逃げる為に、一気に駆け出してしまった……。

「くっ、まて――なっ!?」

少年は駆け出したフェイトを追え……なかった。それを実行する瞬間、誰かに反対方向に投げ飛ばされていたのだから。

それを行った人物――高町なのはは、先程とは打って変わって冷たい表情で自身が投げ飛ばした少年を見つめていた。上手く受け身を取った少年を見て、何だか舌打ちをしたくなって来た。確かに早く来てほしいとは言ったが……些か、タイミングが悪すぎる。

「いきなり何するんだ!?」

「ふぅ……人の知り合いをいきなり恐がらせて、二言目がそれ? ちょっとは冷静になったらどう。管理局最年少執務官――クロノ・ハラオウン君?」

「な――っ!!」

唐突に自身の正体を言い当てられた焦りなのか、冷静な彼……クロノにしては珍しくデバイスを展開してそれをなのはに向け――た瞬間、自分のデバイスが手から弾き飛ばされた。思わずクロノは、驚愕で目を見開く。

彼が見たなのはの姿は、自分が認識した時には既に変わっていた。

執務官として実績のある彼が、なのはの動きを見逃した。それだけでも、クロノを驚愕させるには十分過ぎるが、さらに彼は無意識に一歩下がる。

「だから、ちょっとは冷静になりなって。それでも執務官なの?」

なのはの手に握られているのは、先程クロノのデバイスを弾き飛ばしたと思われる、蒼と白の一丁の銃。そして……背中に展開された白い機械的な翼。それだけの情報でも、クロノの頭脳は簡単に少女の正体を導き出す。

ゴクリ、と一度息を飲み、クロノは嫌に渇いた口を開いた。

「キミは――処刑人(エグゼキューター)……高町 なのは……!!」

「ふぅん、流石に私の事は知ってるんだ。まぁでも、一応自己紹介はしないとね」

さて、何と名乗ろうか? 自称平凡な小学生では、一切説得力がないし、通り名のエグゼキューターは先に言われてしまった……ならば、やはり自分に似合う名前は、これしかないだろう。

処刑人(エグゼキューター)と呼ばれるにふさわしい、自分には。一瞬、クロノは見逃したが、一瞬だけなのはの表情が悲しげになる。

それはまるで――

「じゃあ自己紹介――『出来損ないの魔法使い』……高町なのはだよ」

彼女自身が名乗る名を……正確に表しているようだった。また、歪んだ運命は加速する。

始まりの終わりは……もう、近づいている。そして、なのはが出逢うべくして出逢う翡翠の少年との出逢いも――すぐそこなのだろうか?
スポンサーサイト
  1. 2012/03/20(火) 21:18:34|
  2. 烈火の翼
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<魔法少女リリカルなのは 烈火の翼 第8話・前編 | ホーム | 魔法少女リリカルなのは 烈火の翼 第6話>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://freedomzer.blog.fc2.com/tb.php/9-97652203
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。