サクライロノセカイ/リリカルなのはなお話

えびえもん兼いかじゅんのブログです。リリカルなのはの二次創作などを書いています。

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魔法少女リリカルなのは 烈火の翼 第28話

推奨ED、ポルノグラフィティ『ゆきのいろ』


────────────────────











何もない、暗闇の世界。どこかも解らぬ、闇一色の世界。その世界に二人の同じ、しかし違う人間が相対した。

片や、今にも泣きそうな表情で相手を見上げる……ヒナギク。片や、まるで迷子の相手をする様にしゃがみ視線を合わせる……紅 刹那。

同じ容姿なのに、どこか雰囲気が全く違う、不思議な二人。当たり前だ――既に、別の道を歩み始めているのだから。

「貴方が悩んでる理由、当てて見せましょうか?」

ふと、刹那が立ち上がりヒナギクを見下ろし、今度は悪戯っ子の様な笑みを浮かべる。そうして、今ヒナギクがここから出ようとしない“もう一つの理由”を簡単に言い当てた。

「大事な人に嘘ついたこと、後悔してるんでしょ?」

「ッ!?」

途端、酷く驚き、そして居たたまれない様な……そんな表情になるヒナギク。明らかに、図星のようである。

後悔、かは解らない。でも、あの時嘘をつき、今尚その事を心の奥底に隠していた。

――嫌われてしまったかもしれない。そんな、少年の様な悩みを表に出さないまま抱え込み、今の様な引きこもった状態になってしまっている。

通常なら、普通の彼ならばこうはならない。だが、それを可能にしてしまうのが“翼”の力。

自分から漏れだした“一部”の力でこれなのだから、困ったものだと内心ため息を吐く刹那。しかし、いつまでもこんな状態にしておく訳にはいかない。何せ、もう外に“迎え”が来ているし、自分が抑えて置くのにも限度と言う物がある。

――かったるい事は、あまりしたくないのに。

「仕方ないなぁ。じゃあまず感情の整理からね」

「?」

「烈火の魔法使い……あぁ、貴方には烈火の騎士か。彼女の事は、どう思ってるの?」

烈火の騎士、シグナムの事だろうか? 彼女の事……ずっと、一緒にいてくれると言ってくれた、大切な、大切な――

「……家族。よく、解らないけど、そんな気がする」

「そっか」

なんだか、目の前の人物に会ってから自分の気持ちが定まっていく……しっかりとした“自分”になっていく、そんな不思議な気持ちをヒナギクは感じた。

対して刹那は、その答えを聞いて“何故か”とても安心した様な安堵の表情を浮かべる。その理由は、やはり刹那にしか解らない。

「じゃあ……あの子は? 雪華ちゃんは?」

「……雪華ちゃん」

あの子への、想い。真っ直ぐで、天真爛漫で、でも仕事の事になると凄く必死で、凄く輝いてて。

そんな少女を、自分はどう思っているのか? 嘘偽りの無い、確固とした今の自分の気持ち、想い。

家族? いや、確かに一緒に暮らしてはいるが、何かが違う。友人? いや、これも何かが違う。じゃあ、一体何が――

『アンタ、その二人に恋してるんじゃね?』

(……あぁ、そっか)

もう、答えならとっくに出ていたのかもしれない。

出逢い、彼女の輝きを見た時、彼女と接した時間が刻まれた時、既にもう。

漸く、感情の整理がついたヒナギクが、ゆっくりと、自分にも言い聞かせていくように……言葉を紡いだ。


「――好き。私は、雪華ちゃんが……好きなんだ」


――それが彼の、彼だけの答え。出逢った時から、恋い焦がれていた。

その答えを聞き、美しく優しげな笑みを溢し、刹那はまた言葉を紡いだ。

「なら、こんな所にいないで、さっさと往きなさい。自分に嘘をつくのは、もうお終い。きっと、彼女は貴方の全てを受け止めてくれる」

「刹那、さん」

「私やさくらさん、烈火の魔法使いの『魔法』は奇跡を起こせるけど、決して万能じゃない」

そうだ、なのは達の使う魔法とは別物の『奇跡』を起こせる魔法とはいえ、決して万能などではない。
けど――

「でもね――愛や恋は、結構万能だから」

もう、彼らは大丈夫だろう。その想いさえ在れば、きっと何でも乗り越えて往ける。

だから後は……。

「でも、私は……」

「記憶がないって? 在るでしょ、ここに」

自然に、刹那が手を置いたのはヒナギクの胸。そこに詰まった、大切な物。

「なのはちゃんやさくらさん、桃子さんや士郎さん、烈火の魔法使いや……雪華ちゃん。皆との、大切な思い出はもうここに。貴方だけの、私とは違う大切な記憶が在るでしょう?」

「あ――」

そうだ、大切な記憶もう……ここに在ったのだ。何よりも大切な、皆との記憶。

もう大丈夫そうかな、と刹那は立ち上がり――純白の翼を、広げた。闇夜を照らす、純白の光はヒナギクを包み込み、外への道を繋げる。

「刹那さん……?」

「全部が終わった後でいいから、士郎さんと桃子さんの話もちゃんと考えなさいよ? さぁ――お別れです」

「待って!! 貴方は――」

「貴方に――蒼天の幸運を」

瞬間、ヒナギクは光と羽に包み込まれ――彼の“心”は、外の空間へと回帰した。

また、闇一色の世界の中で彼は一人になる。そして一つ、呟いた。

「そろそろ……潮時かな」

――その言葉を意味を知る者は、まだいない。彼の姿は暗闇へと消え失せ……歪んだ物語は、双天の魔法使いをも巻き込み加速を始めた。









◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

ドクン、ドクンと“翼”が作り出した空間が酷く震え――爆発的な衝撃が、真っ直ぐ響いた。

「くっ……!!」

咄嗟に動いたのは、やはり最強の魔導師と名高い女性、高町なのは。急ぎクロノ、そして本来は敵であるヴィータもわざわざ引き寄せて、広範囲に強力な防御フィールドを展開するワイドエリアプロテクションを作り出した。

次の瞬間、時空の翼を展開するヒナギクの更に後方。その空間に、確かな亀裂が走り――爆発的な紅蓮の業火が、一瞬にして辺り一帯を埋め尽くした。

「なっ……」
「シグナムかっ!?」

クロノが、ヴィータがその業火を見て驚きで目を見開くが、彼らの元にも炎が行き届く。そして、ワイドエリアプロテクションと炎が衝突――一瞬で、プロテクションを圧し込んだ。

(ッ……もうちょっと、加減してくださいよシグナムさん!!)

急ぎさらなる魔力を込め、辺りを包み込む炎から身を守りながら、未だ姿を見せない技を放った本人に文句を言う。

が、これでも加減は“している”のだ。この強固な歪みの結界をいとも簡単に破壊し、多少なりとも威力が落ちている筈なのに、高町なのはの鉄壁の防壁を圧し、尚広範囲に広がる業火。

――瞬発的な威力が一体どれ程であったのか、あまり知りたくはないことである。

だが、まだ終わりではない。何かが、信じられないことに業火の広がる亀裂の内部を突き進み、突入してくる。そんな馬鹿げた事を出来るのは、撃った本人を含め限りなく少ない。

だから、力の波動も含め、そして“氷結する炎”の光景を見て、誰が来たかは直ぐに理解できた。亀裂が、さらに広がる。そして、残り火とも言える業火をも氷結させ――姫君が姿を現した。

「――ヒナッ!!」

なびく“緋色”の髪。彼女そのものを表現するかのような、灼熱の炎髪。そして、己の師の名前を叫んだ事でやはりと思った。

氷雪系最強の刀、『大紅蓮氷輪丸』を展開し、氷華の翼で飛翔する氷の姫君――藤原 雪華。

残り火とはいえ、あの炎の中を突っ切って来るとは、全く予想外の登場の仕方だ。しかし、そんな事を考えている時間も惜しい。直ぐ様彼女に師の事を頼もうとし――急速に何かの力が強まって行くのをなのはは感じ取った。

「まさか……!!」

「このタイミングでか!?」

同じく、クロノも気が付いた。歪みを生み出していた力が、急速に翼へと集い出した。このままでは数秒もしない間に――この空間は、消滅する。

瞬時にそれを感じ取ったのだろう、雪華がヒナギクの元へと一気に飛翔する。が、それよりも速く……力の解放が始まった。

「雪華さん!! くっ!?」

衝撃がなのは達の元へも響き、変わらずプロテクションを解く事は出来ない。今プロテクションを解けば、自分達はたちまち吹き飛ばされてしまうだろう。

だが、雪華はその衝撃を何の防御も無しに、それどころか勢いを殺さずに迷いなく突っ込む。

当然、それによって――

「ッ!!」

『雪華!!』

雪華の受けるダメージは、その分増していく。けど――知ったことか。

氷華の翼が砕け、辺りに氷が散る――知ったことか。

衝撃に打たれ、口に血の味がする――知ったことか。

「関係……ない!!!!」

腕を伸ばす。その腕からも、血が溢れ出る――知ったことか!!

今は、目の前にいる大切な人の事だけを考える。こんな状態の自分を見たら、彼は泣くだろうか? でも、それでも、彼を救けたいから。だから、叫ぶ。

大好きな人の、名を。



「ッ……ヒナァァァァァアアアア――――――!!!!!」



……彼の表情が、辛うじて見える。驚きに染まった表情。そして、自分を見た彼の瞳は“確かな光を宿し”て――彼女の名を、呼んだ。

「ゆきか……ちゃん」

――刹那、安堵の表情を浮かべる雪華の指にヒナギクの指が触れ――強く、強く互いの身を抱き締めた。

翼が散る。二人が、そのまま離脱していく中、分離した力は……まだ生きていた。光が球体上の形となり、未だ強い光と衝撃を放っている。

「なのは!!」

「さっきよりマズいわ……このままじゃ、見境なく空間を破壊して現実空間にまで影響を及ぼしかねない!!」

ならどうする、と言うクロノの視線だけの言葉には答えず、神羅によって恐ろしく迅い思考速度を限界まで加速させる。

“アレ”を止める手段……ダメだ、今の自分達にその手段は存在しない。ならばせめて、“彼女”がたどり着くまでの時間稼ぎ――無理だ。

何か強い威力を持った力……それが在れば、僅かでも時間を稼ぐ事が出来るだろう。“彼女”が到着する、その僅か足りない時間を。

だが――手がない。今にも突撃していきそうな守護騎士のヴィータ……無理だ、彼女の攻撃が一番威力を発揮できるのは、おそらく接近戦。この障壁を常に展開していなければいけない状態では、とてもではないが接近は不可能。

クロノも、同じく無理だ。彼の場合、衝撃を貫いて尚時間を稼げる様な“火力”が足りない。

ならばその火力を持つ彼女自身――やれる物なら、とっくにやっている。

(この……己の未熟が恨めしい!!)

この空間に侵入する時に使った、転移用の魔力。さらに『ディバインバスター・エクスキューションシフト』で、温存していた魔力の半分以上を失い……今のこのプロテクション、想像以上に魔力を消費している。いや、彼女でなければとっくに崩れている、と言う方が正しいか。

衝撃を防ぎ切るだけのプロテクション、それを三人を囲み切るだけの範囲で、さらに長時間展開している。魔力が底を尽き掛け、障壁を圧し込まれ感覚が無くなり掛けている右腕を左腕で支え、そんな状態でも尚高速で動く思考を止めない。

破棄、破棄、破棄。思考しては、立案したプランを破棄して……彼女の気持ちとは裏腹に、無情にも光は輝きを増し――

「月……牙ッ!!」

刹那、響き渡るは運命を変える魔法使いの叫び。また空間に亀裂が奔り――真紅のドレス甲冑を身に纏った、芳乃シグナムが姿を現す。
天鎖斬月・緋炎から溢れる、灼熱の炎。それは、今までの牙とは比べ物にならない――烈火の刃。

鈴の音が鳴り、烈火の翼が、羽撃たく。


「天――衝ォ!!!!」


振り下ろされた刃から、真紅の牙が飛翔する。爆熱の炎が、光と激突し衝撃で空間が悲鳴を上げ――桜が包み込む。
数億を超える桜の、芸術的な迄の光景。

――最強の魔法使いが、運命を覆した。


「吭景――千本桜景厳」


一瞬で、空間が光に包まれる。だがそれは何処か――今までの物より、暖かな光だった――









◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

晴れ渡り、澄み渡る空。先程までの歪んだ空ではない、美しい光景……が、地上の方は全く美しくも何ともなかった。辺り一帯の建物は全て例外なく崩れ去り、本来人が歩くべき場所には瓦礫の山、山、山。

まるで、とんでもない災害でも起こったかの様な光景の中、瓦礫の山が微かに動き、凄まじい音と共に瓦礫が宙に舞った。

「……ふぅ。どうにか結界は維持されてる見たいね。まったくもう、今回ばかりは死ぬかと思ったよ。生きてる? クロノ君」

「……あぁ、どうにかな」

まず、瓦礫から這い出て来たのはなのは。その彼女に掴まれて現れたのは、クロノだ。

あの光が弾けた瞬間、どうにかクロノだけは掴んで衝撃に備える事は出来たが……と、一緒に吹き飛ばされた筈の守護騎士は何処へ行ったのかと視線と感覚を巡らせ――なのはは、接近する拳を左腕で受け止めた。

「な……!!」

「まったく、さっきの今で勘弁して欲しいんだけど――ねっ!!」

なのはに拳を振るったのは、見たこともない仮面を着けた男。いつの間に結界に……と言うクロノの驚きと疑問を考える間もなく、なのはと男の蹴りと拳が交錯する。

なのはが拳を受け止めたまま、右足で男の脇腹に向けて蹴りを放つ。が、それは男が一旦身を引いた事で回避された――それが狙いだ。
再び男が真っ直ぐ拳を向け、彼女に襲い掛かる。なのはもそれに“合わせる様に”拳を振るい……

「!!」

突如、なのはの拳を避ける様に身を退いた。その光景に驚き、怪訝そうに表情を変えるなのは。

そう、“男がなのはのしようとしている事を、解っていたかの様な行動”に、だ。

さらに、男は何故か後方に飛ぶ……直後、クロノの放ったバインドが男のいた場所に展開された。その光景に、今度はクロノが驚く。まさか、なのはとの攻防の中で仕組んだバインドが、あんなにもあっさり見切られるとは思わなかった。

――だが、男と一瞬の格闘戦を繰り広げていたなのはは、その光景を見てまた別の“可能性”を見つけ出していた。

あり得ない、当たって欲しくはない可能性を。

「…………あの守護騎士には、手を出すな」

「なに……待てっ!!」

謎の忠告を残し、二人の前から去る男にクロノは思わず身体を動かしそうになるが、なのはがそれを手で押し留めた。

「待って、今追うのは得策じゃないわ。こっちの消耗が激し過ぎる」

「だが!!……いや、そうだな、済まない。今の言葉を聞くに、あの男は守護騎士の仲間か?」

すぐに冷静になったクロノが、男の残した言葉からある程度の予測を立てる。確かに、今の男の行動は自分達と同じく歪みの内部から出てきた守護騎士の離脱の手助けだとすれば、ある程度の辻褄が合う。

だがやはり、直接打ち合ったなのはの予測は違う。段々と刺す様な痛みが増して来た頭に手をやりながら、なのはが言葉を放った。

「そうね……でも同時に、そうじゃないかも、しれない」

「どういう意味だ?……なのは?」

「貴方にとっても、私にとっても、在っては欲しくない可能性って事、よ……ごめんクロノ君、もう限界」

「なのは!?」

言葉が途切れ途切れになった辺りから変だとは思ったが、なんといきなり後ろに倒れ込むなのはを地面に触れる前に何とか抱き止める。
長身にしては、予測外に軽い彼女の体重に驚きながらも、いつもからは考えられないくらい顔色の悪い彼女に驚き、クロノは必死に呼び掛けた。

「な、なのは!! 大丈夫か!?」

「ちょっと休まないと、流石に無理かもしんない……」

「――なのはちゃん、外傷によるダメージなら平気やけど、『神羅』を使ったまま魔力を限界以上に酷使したら……まぁこないになるのも無理ないなぁ。ついでに、吹き飛ばされる時も君のこと護る防壁張ったみたいやしな」

突然掛けられた声にハッとなり、クロノが顔を上げた先に居たのは、白い羽衣に糸目の男。今まで何処にいたのか、と言う疑問が真っ先に浮かぶ青年、市丸ギンだった。

「ちょっとギン……なにアンタだけ、さらっとサボってんの、よ……」

「見学や、見学。大体、神鎗の能力上ボクが行っても役に立たんしなぁ」

「それもそう、ね。刀なしでも色々できる、さくらと違って情けない話よ……まぁ、良いわ。ちょっくら、“会いに行ってくる”か……ら……」

言いながら、弱々しく手を振り、下ろしたと思った瞬間には、彼女はもう深い寝息を立てて眠っていた。

それを見て、ホッと息をつくクロノだったが、同時に無力感に苛まれる。

(結局、僕には何も出来なかった……か)

偉そうな事を言ったくせに、結局は彼女に護られているだけだったのだ、情けない。

――しかし今は、自分の弱さに自己嫌悪するより、彼女を休ませる方が遥かに重要だ。やはり、思った以上に軽い彼女の身体を背負いながら、未だ混乱の中にあるだろうアースラに向けて進路を取る。

と同時に、彼女が意識を失う直前に言った言葉を思い出し、疑問に思った事を思わず口に出す。

「……誰に会いに行くんだ?」

「まぁ、この子も『魔法使い』やからね――但し、出来損ないの、ね」

……誰に会うかははぐらかしてないか? と言うクロノの疑念はさて置き、だ。

彼女とて『魔法使い』だ。使える魔法くらい、在るには在る――但し、制御不能の。こういう意味でも彼女は『出来損ないの魔法使い』。結局、別の理由による物が大きいのだが。

会えるかは、相手次第なのだ。が、彼女は確信している。陰ながらこの事態を収める手伝いをしてくれた“彼”ならば……と。

魔法使い達が、今ようやく交錯し始めた。歪んだ物語が、さらに加速する。









◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

ふと、目を覚ました時に目にしたのは、まず見慣れてきた病院の天井。そうして感じたのは、手から感じる暖かな感触。ベッドではない、なら何なのか……何処か怠い身体を動かし見た先に居たのは――

「起きた? もう夜だよ、ヒナ」

「ゆきか、ちゃん?」

長く絹糸の様に美しい緋色の髪、それとは対照的な冬獅郎やさくらと同じ碧眼。彼をあの場から連れ出した、想いの人の姿だった。

ぼやける思考をはっきりとさせ、状況を確かめる。今の時刻は、カーテンが閉められ月の光が漏れている事を見るに、もう夜なのだろう。

あの後、一体どうなったのか……そんな疑問が浮かんだ時、図ったかの様に雪華が口を開いた。

「あの後、意識がなくなったヒナを私がここまで運んだの。何とか病院の人達には、ヒナが抜け出したことはバレないで済んだみたいだよ」

「あの場は……?」

「大丈夫。ちゃんと収まったから、今は……ね?」

今は気にするな、と言う事だろう。その雪華の心遣いに感謝しながら、彼女の顔をじっと見つめる。

綺麗な髪、綺麗な瞳、綺麗な顔。そんな事を考えていると、何だか雪華の顔が紅く染まっていく。そういう処もまた、愛おしいと思うが……今は、伝えなければならない事があった。

「雪華ちゃんは……もう、私の身体のこと、知ってるんだよね?」

ヒナギクの言葉に、ハッと息を呑んだ雪華が……ゆっくりと、頷く。
そっか、と呟いたヒナギクが……一つ、一つ、彼自身の想いを語り始めた。

「最初に自分の身体の事を聞いた時ね、何だか“ああそうなんだ”って……凄く簡単に受け入れられた」

「……うん」

「なのはや裏月くん、さくら“さん”も、みんなが必死になって私を助ける方法を探してる時だって、何で私なんかの為に必死になってくれるんだろう、そんな事しなくても平気なのに……私は平気だよって、笑顔の『仮面』を被った」

そっちの方が、みんな心配しないだろうって。でも違った、少し考えれば解る事なのに、そんな事も解らない程にヒナギクは自分に関心を持たなかったのだ。

自分の価値、それが解らなかったから。

「バカだよね、ホント」

「……バカ、大バカだよ」

「ごめん……私は、所詮自分には過去も、そして未来もなくなったんだなって、諦めて、自分に嘘をついてたんだ。でも――雪華ちゃんに会って、全部が変わった」

出会った瞬間から、だったのかもしれない。

「どうでもよかった『今』が、生きる意味のなかった今が……とっても、価値のある物だと思える様になった。『未来』なんて、自分には無いって思ってたのに、この人とこれからも一緒にいたい、そう思えたんだ」

身体の気だるさは、もうとっくに何処かへ飛んで行った。起き上がり、じっと雪華の事を見つめる。そうして、今度は彼女が言葉を紡ぐ。

ゆっくり、縺れあった彼の未来を、そっと解いていく。

「過去なら……あるよ」

「え?」

「私と……ううん、私だけじゃない。みんなと一緒にいる『今』が、きっといつかの『昨日』になる。それが明日を、『未来』をくれる」

「……うん」

漏れそうになる嗚咽を我慢して、それでもスッと一筋の涙が頬を撫でる。そんな彼を、雪華は優しく抱き寄せ……言葉を、紡いだ。


「生きる意味が解らないなら――私が貴方の、生きる意味になる。貴方を明日へ飛ばす翼になる」

「…………ぁ」

縺れあった糸が、解けていく。

ずっと意味のなかった未来までも、とても意味がある様な、そんな気持ちになる。

――何処か暖かい、彼だけの雪の色、雪の華。


「――愛してる。貴方が、誰よりも好きです……ヒナギク」


――もう、言葉はいらない。

見つめ合う二人は、近づき、そして――ゆっくりと唇を重ねた

言葉では、『魔法』でも伝わらない熱い、愛おしい想い。

それは、『魔法』をも超える……いや、少し違うか。

――それは、どんな物をも超える最強の『魔法』なのだ。

倒れ込む二人に、やはりこれ以上の言葉は必要ない。

溶け合い、交わる二人の想い。この先に何があろうとも、それは離れる事はない。

『魔法』は奇跡だが、万能ではない。でも――『愛』と言う最強の『魔法』は、きっと万能だから……。















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ふっっっっっ、かああああああつ!!!!

本編がようやく復活しましたよ奥さん!!(ぇ

でも、復活第1話目が、ラストに烈火の翼 完 とか付けても違和感がない話なのはどうかと。違和感仕事し(ry

どうでしたでしょうか? ようやく進んだ本編のお話。正直、ラストの雪華の告白とかで往きずまったりしたりもしてるんですが、感動とかしていただけたら幸いです。

しかしまぁ、本編のモチベが戻った理由が外伝の2話目を書いてたら、その四千文字が消失して本編を書く気になったと言うのは何とも情けない話ですww

さて、次回はちょっとした間を挟む感じのお話になりますが、なかなか重要な物などがありますので、お楽しみに!!
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  1. 2012/11/30(金) 04:04:03|
  2. 烈火の翼
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

遂にカップルに!

少し遠回りをしましたが、コレでヒナギクも独りではないですね。

そして仮面……今出て来ても戦力がががry)

P.S.零番隊ェ……まさかの色物とは(^◇^;)

まあ美形オンリーだったらそれはそれで何時も通りになってしまいますがw

取り敢えず全員で来たら誰が霊王を守るんだと小一時間ry)
  1. 2012/11/30(金) 08:24:12 |
  2. URL |
  3. フルカスタム #G7LvmW4Y
  4. [ 編集 ]

>フルカスタムさん

はい、ようやくくっつきました。我ながら、早かったような遅かったような……ww

そしてヒナギク。まぁ元から彼の思い込み、見たいな部分も在りましたから。それを解いて送り出した存在は……この章では表に出る事はないですね。

仮面はまぁ……た、戦うことが目的じゃないのでww や、あの人達強いんですよ、強いんですけど話の都合上噛ませになってしまう(笑)仮面状態でないなら結構好きです、はい。てか仮面の強キャラだと虚化と被って(ry

感想ありがとうございました!!

PS.まぁ美形キャラはもういますからww でも最近のブリーチはホント楽しみになってますww や、元から楽しみでしたよ、はい。
  1. 2012/12/17(月) 17:37:04 |
  2. URL |
  3. いかじゅん #3/2tU3w2
  4. [ 編集 ]

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