サクライロノセカイ/リリカルなのはなお話

えびえもん兼いかじゅんのブログです。リリカルなのはの二次創作などを書いています。

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魔法少女リリカルなのは 烈火の翼 番外編Ⅰ

ミッドチルダ、首都クラナガン。地球からすれば異世界だが、気候に変わりがある訳では無く、日が完全に沈んだクラナガンでは土砂降りの雨が降り注いでいた。

――この雨を、今の今程に恨んだ事はなかった。せめて雨が無ければ、せめて通信機が壊れていなければ、少なくとも人がいて必死に逃げる自分に気付いてくれたかもしれない。

「はぁ、はぁ……くそっ!!」

走る、走る、ひたすら走る。最早、雨など気にならない程に彼は必死になって逃げていた。そうしなければ、彼自身の無事が保証できない――だが、その努力は全くの無駄に終わる。

「おい、どこに行く気だよ?」

「なっ……うわっ!?」

立ち止まった……いや、突如“氷結”した地面により立ち止まる事しかできなかった。降り注ぐ雨の中、それでもしっかりと聞き取れるその声。立ち止まった彼に対し、刀を突き付け言う男は……言うなれば、彼にとっての“死神”だろう。

「何なんだ……何なんだよ、お前は!?」

「俺か? 俺は――」

彼の問い掛けに男は答えた……が、その答えは強い雷の音によって掻き消され、誰にも届く事なく消え失せ――彼の全ては、凍り付いた。

やがて、二つの人影は一つになり、雨に濡れていたその場は、全てが氷結している。

「……はは、あははは――フハハハハハハハッ!!!!」

笑う。刀を持った、彼だった者が笑う。天に響く、その不気味な笑い声は……この事件の、幕開けだったのかもしれない。









◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

首都クラナガン。前日の雨も降り止み、見事な晴天となったのだが……時空管理局にとっては、心は晴天とはならなかったらしい。

忙しく動く局員たちの挨拶に返事を返しながら、一般人は立ち入りを禁止されたその場所に二人の人物が現れた。

「これは……酷いな」

「うわぁ、ホントに氷の世界って感じやなぁ」

一面が銀世界、全てが氷結したその現場に到着したのは執務官のクロノ・ハラオウンと、その臨時補佐の八神 はやてだ。

氷の世界……そう称したはやての言葉は、的確に現場の状況を表していた。この晴天の中でも、全く溶ける気配も無く、それどころか空域一帯の気温を大幅に下げる程に巨体な氷結世界。吐く息が白く見え、バリアジャケットが無ければ凍えてしまいそうな気候だった。

「これまでも何件か見てきたが、これが一番酷い状態だな。今回の被害者は……」

「状況と、今までの被害者から推察するに、昨日から行方不明のソウジ・クサカ三等空尉や。魔導師ランクは極めてAAAランクに近い、AA+。そして珍しい属性変換『氷結』の持ち主――ただ、今までと被害者との相違点は、やっぱり“行方不明”と言う点やね」

「あぁ。今までは、全員が重症を負わされていたのだが、今回は行方不明か……」

それに加え、今までに無い程の高ランク魔導師が行方不明。前までの同一犯と思われる事件は、『氷結』の魔力変換を持っているとはいえ、比較的魔導師ランクが高い人間はおらず、言い方は悪いが重症だけで済んでいた。そしてそこには、全員が犯人を見る前に倒されており、それなりの実力者と言う見解だった。

――しかし、今はその評価を上方修正せざるを得ないと言う事だ。この氷結世界に加え、極めてAAAに近い魔導師を倒せるだけの者……普通の局員には、太刀打ちすらできないと考えても良いだろう。
はやてとの会話の中で、情報を整理しながら思考するクロノが、ポツリと呟き、はやてもそれに反応する。

「たったこれだけの情報では、無限書庫と言えど動けない。完全に後手に回っているな……」

「そうやね……これ以上、大きな事件に成らんとええんやけど……」

だが、はやての願いも虚しく……この事件は、様々なチカラを巻き込み――歪んだ物語と共に、加速する事になる。

数日後、私立聖祥大学付属小学校の屋上。時刻としてはお昼時。つまりはお昼休みの時間帯である。もちろん、小学校としては当たり前のお昼休みに、はやて達は屋上でお昼ご飯を食べている真っ最中だった。

「――って言う感じなんやけど、まぁ大変なんよ」

「へぇ~、やっぱり忙しいんだね、はやてちゃん」

「……いや、そもそもそんな事をアタシ達に話して平気なの?」

「ん、はやてが話したのは事件の概要だけだから、全然平気だよ」

もぐもぐ、もぐもぐとお弁当を食べ、たまに他の三人……はやてとすずかとアリサの弁当からおかずを強奪する、白い髪止めで金髪をポニーテールに括ったフェイトが、一度手を止めアリサの質問に答えた。

はやてが話した事件と言うのは、ここ最近多発している魔導師――それも氷結の変換資質を持つ――が襲撃される事件の概要。あくまで概要なので、簡単に言うとニュースで放送される様な内容と変わりは無い。

「うんうん。それに、こっちに魔法に関わる何かが起こるなんて、本当に例外的な事なんよ。だから平気や」

――まぁ、その本当に例外的な事が起こってしまったのが、過去のジュエルシード事件や闇の書事件などなのだが。本当に、呪われてるんじゃないかなぁ、なんてかなり失礼な事を考えながら、フェイトは再び弁当へ箸を伸ばし……ピタリ、と動きを止めた。

「? フェイトちゃん、どないしたん?」

いきなり不自然に動きを止めたフェイトに、はやてが声を掛けるが……フェイトはそれに反応する事なく箸を置き、じっと思考の海に入り込む。

(なに……この感じ。“何か”が近づいて来る変な感覚……)

険しい表情で思考に没頭するフェイトを見て、アリサとすずかも同じく声を掛ける。が、やはりフェイトは気付かない。

それほど、彼女は感じた“何か”に集中している証で、同時に彼女の感覚が強い警告を鳴らす。

(知ってる……私は、この“何か”を知っている。思い出すんだ)

瞳を閉じて、フェイトは必死に記憶の糸を手繰り寄せる。思い出せ、自分はこの“何か”を知っている筈だ。強い『感情』に引き寄せられる、彼らを――

(そうだ……これは――!!)

漸く記憶の糸を掴み取り、手繰り寄せたフェイトが立ち上がり強く虚空を睨み付ける。その先に在るのは、海鳴の丁度中心に当たる空。
そして、その青空が一瞬黒く歪み――世界の“時”が停止した。

「……ね、ねぇ、やけに静かじゃない?」

フェイトを除く三人の中で、最初に違和感に気付いたのはブロンドの髪を持つ少女、アリサだった。

他の二人もアリサの疑問を聞き、漸く気が付く。そう、先程とは違い何の音もしない。自動車が走る音も、誰かが会話をする声も何もかも。まるで、自分たちだけが世界に取り残されてしまった様な、そんな状態。

この異常事態の中、はやては展開前のデバイスを取り出し、アリサとすずかを守るように動き、フェイトは変わらず虚空を見つめる……いや、ただ見つめているだけでは無い。

バチッ、と前髪が火花によって跳ね、彼女の姿が純白のコートを羽織った、もう少し成長すれば似合いそうな姿に変わる。ただの火花だったそれも、徐々に強力な電撃へと変化し、スパーク音を鳴らし出す。完全に戦う準備を整え、迎撃状態にフェイトは入る。

「ふぇ、フェイトちゃん……これ、何が起こってるのか解るん?」

「少しだけね――来るよ!!」

「来るって……!!」

フェイトの警告に疑問を感じながらも、彼女が見つめる方向に視線を移した時……はやては、絶句する事しかできなかった。

『オオオオオオオオオオッ!!!!』

フェイトが睨み付けていた空。それが突如にして歪み、巨大な黒い穴を生み出し、その中から見たことも無い生物が飛び出して来たのだ。

人型もいれば、獣型の生物もいる。だが、確実に解るのは人から外れた生物であること。そして、その数は一体や二体ではない。百、二百……いや、下手をすれば千は下らない。

得体の知れないそれに、アリサとすずかは悲鳴を上げ、はやても二人を守りながらも怯むしかない。

――けれど、フェイトは少しも怯まない。知っているのだ……この生物達を。一時とはいえ、彼らのチカラをその身に宿した事が在るのだから。だから彼女は知っている、彼らの名前を。

「やっぱり『虚(ホロウ)』……はやては二人を守って!! この数が相手じゃ、下手に動いても逃げられない!!」

「う、うん!!」

言いながら、迫る虚(ホロウ)の大群を睨み付け狙いを定め、さらに電撃の集束率を高めるフェイト。
そして、先ずは一撃。

「いっけぇっ!!」

額に電撃を収縮、それを一気に解き放った。放たれた閃光は、光り如きの速さで一筋の“槍”となりて虚の大群に到達、そのまま電撃の槍を横凪ぎに払い次々に爆炎を上げていく。しかし、やはり数が桁違いに多い。フェイトの一撃で大量に倒した筈なのだが、それを物ともせず虚の大群がさらに迫る。

「まだまだ!!」

だがしかし、物量戦ならばフェイトも負ける気は無い。右手に電撃を集束――そう思った瞬間、彼女が右手を虚に向けて突き出す。

バチバチ、バチィ!! と言うスパーク音を鳴らし、フェイトが右手の電撃を解放する。放たれたのは、先程の槍よりもさらに大きい“砲撃”サイズの電撃が虚に襲い掛かり、呑み込み、後続の虚もろとも消滅させた。

「やった!!」

「――まだだ」

フェイトの圧倒的な力に、はやてが歓喜の声を上げる……が、そのフェイト本人が否定し、まだ爆炎を睨み付ける。

そして数秒程度の時間で、爆炎から次々と虚の大群が再び進撃を始めたのだ。多勢に無勢とは、まさにこの事だ。千を超える虚の大群が、別な場所にバラけて進撃しているにしろ、その数が圧倒的な事には変わりは無い。

流石のフェイトにも、少しずつ焦りが生まれる。幾らフェイトが強かろうと、多勢に無勢に加え、守る対象が後ろにいるのだから下がる事もできない。

――そしてこの虚を“操る”敵の正体も、全く解っていないのだから。

それでも、フェイトの心に“諦め”と言う文字は無い。何故なら彼女は……一人ではないのだ。

「――散って、千本桜」

響く声、舞い散る桜。それは、フェイトが待ち望んでいた人物がたどり着いた合図であった。

桜の刃が煌めきを放ち、フェイト達に接近する虚を蹴散らし、その魂すらも浄化させて往く。

「大丈夫、フェイトちゃん?」

「さくらさん!!」

千を超える虚に対し、まさに名の通り千の桜にて対抗する。その刃を操る着物を羽織った少女、さくらがフェイト達の近くに現れ、金色のツーサイドアップの髪を揺らし、フェイトと合流した。

その間にも、桜の刃は縦横無尽に駆け巡り、いとも簡単に虚を消滅させる。

「来てくれたんですね!!」

「まぁこれだけの異常事態だと、ボクだけが動かない訳にはいかないからね」

これだけの異常事態……『刀』をその身に宿すさくらでさえも、そう称するだけの状況。当たり前だ、虚の大量発生現象など自然現象では“あり得ない”。

「取り敢えず、この虚を片付けよう。話はそれからだよ」

「はい!!」

力強く答えたフェイトが、再び電撃を集束させ虚を蹴散らしに掛かる。さくらも千本桜を操り、それに続くが……その表情は、どこか不安げだ。

同時刻、別な場所でも虚との戦闘が行われていた。とは言っても、フェイト達の所へ向かった虚ほど数は多くなく、決着は一瞬でついた。

白い刃と真紅のドレス甲冑が煌めき、一瞬にして虚が駆逐される。斬り裂かれた虚たちが倒れ、そして残骸も残さず消え失せる。

「これは一体、何が起こっているのだ?」

「少なくとも、普通じゃ無い事だけは確かね」

虚を駆逐したのは、純白の天鎖斬月を持つ女性、芳乃 シグナム。そしてその隣で、両手に持った二丁の銃で彼女と共に虚を倒した、珍しい緋色の長髪を持つ女性、藤原 雪華だ。

近くの虚を粗方片付けた二人は、会話をしながら時が停止した海鳴を歩き出した。

「時間が止まっている……いや、どちらかと言えば空間凍結か?」

「そうね。勘だけど、そっちの方が正しいと思う」

なんで勘でそんな事が解るのか……と言うツッコミは誰も入れる人間はいないし、もう身内の中では二人の直感力は異常、と言う結論に達していたりする。

「私達が無事なら、恐らく他の面々も無事な筈だ。この近くならジャンヌもいるだろうから、合流して主の下へ急ごう」

「う、うん。そうね……」

シグナムの提案に返事をする雪華だが、その表情はどこか不安げで……違いは在れど、さくらと似通った表情だった。

そして二人は言う。そこにも想いの違いは在れど、互いに大切な者の名前を。

「こんな時に、どこ行ったのよ――お兄ちゃん」

「一体、どこ行っちゃったの――冬獅郎」

すれ違い、交差する想い。それは、歪んだ物語でさえ動かす力となる。

理(ことわり)から外れし者達が、動き出す。くそくらえな運命を振り払う者達が、交錯する。真実は偽りの中に埋もれ、その時『絆』は試される。

歪んだ物語は――加速する。
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  1. 2012/11/15(木) 22:23:50|
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  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

冬獅郎の失踪と同時にこの事件……

メンバーが揃えば何とかなると思いますが、一体何が起こるのか……
  1. 2012/11/18(日) 20:47:50 |
  2. URL |
  3. フルカスタム #G7LvmW4Y
  4. [ 編集 ]

冬獅郎が何を思って失踪したのか……まさにメンバーが揃えば、な状況です。

感想ありがとうございましたm(__)m
  1. 2012/11/30(金) 03:33:55 |
  2. URL |
  3. いかじゅん #3/2tU3w2
  4. [ 編集 ]

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