サクライロノセカイ/リリカルなのはなお話

えびえもん兼いかじゅんのブログです。リリカルなのはの二次創作などを書いています。

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魔法少女リリカルなのは 烈火の翼 第27話


ただただ、闇だけが広がる世界。水面が揺れるように闇が揺る。そんな世界に一人、ヒナギクはいた。
もはや、なんでも良い。ギュッと膝を抱えて、涙で腫れた顔を隠す。寂しい、寂しい、でもどうしようも無い。大好きな人も出来た……けど、言える訳が無い。どうして、大好きな人にこれから自分は死にます、なんて言わなければいけない?

様々な想いが彼の中を駆け巡り、そして蝕んで行く。

『主、私はあなたの騎士です。あなたが望むなら、いつまでも共に歩みます』

「……いてくれるって、言ったのに」

誰に向けた訳でも無い、ただ無意味に空を切る言葉。しかし――

「――なら、一緒に居れば良いじゃないですか」

彼しかいないこの孤独な世界に、声が響き渡る。“誰かが”降り立ち、先程とは違う形で闇の水面が揺れる。

「小難しく考えないで、さっさと会いに行けば良いんですよ、かったるいですね」

「……?」

闇の水面を揺らして、ヒナギクの元へ歩み寄る“誰か”。誰なのだろう、どうでも良い筈だったのだが、ふと気になったヒナギクが顔を上げると……その人物を見て、彼の瞳が大きく見開かれた。

「貴方……は?」

「私は貴方、けど貴方は私では無い……名前を訊いているならば、お答えしましょうか」

ふわり、手で“金色”の髪を跳ね上げ、“蒼色”の瞳はヒナギクを映し出す――瓜二つの、相手を。

「『双天(そうてん)の魔法使い』……紅(くれない) 刹那(せつな)です、よろしくね」

しゃがみ込み、まるで迷子の子供に目線を合わせるかのように刹那は言う。

歪んだ物語は、本来あり得る筈の無い出逢いまで生み出して行く。

時空の双剣士が、遂に動き出す。それは……この歪んだ事件の終焉が、近い事を予期していたのかもしれない。









◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「何者だ……何故、私の名前を知っている?」

通常結界内、時空の歪みの影響もありアースラにすら感知されていないそこには、天鎖斬月を構えるシグナムと、闇の書の守護騎士一人、シャマルが相対していた。

油断なく天鎖斬月を構えるシグナムだが、目の前の人物に攻撃を仕掛ける気は一切起きなかった。

何か、言い様の無い違和感が彼女の中を駆け巡る。必死にその正体を探り続けるが、まるでもって解らない。そしてそれ以外にも、誰かに……主に呼ばれた様な気がしてならない。

しかし、目の前の女性を放置して行く事も出来ない……その迷いにより、天鎖斬月が一瞬だが震えた事にシグナムは気が付かなかった。

「そう……ヴィータちゃんの言う通り、覚えて無いのね」

彼女の問い掛けを訊いて、少し寂しげな表情になるシャマルに、シグナムはまた違和感を感じる。

まただ、何なのだこの違和感は……そう、正体を探るが変わらず解りはしない。

「シグナム。貴方は闇の書の守護騎士……ヴォルケンリッター・『烈火の将』よ」

「な……に?――グァッ!!」

守護騎士、ヴォルケンリッター、烈火の将。“闇の書以外”の全てのキーワードに、シグナムの違和感はさらに強くなり、仕舞いには頭を強く鋭い刺す様な痛みが奔る。
痛みに耐え切れず、左手で頭を押さえるシグナムに、様々な想いが駆け巡る。騎士、守護騎士……それは、自分に守らなければならない人物がいたのかもしれない。ならば今の自分は――

『……全く、世話の焼ける事です』

――瞬間、彼女の世界は変化した。

「!?」

声を出さずに驚いたのは、変化が突然だったのと自分が入り込んだ場所が“海の中”だと理解したからだ。だが、直ぐにしっかりと息が出来る事に気付き、辺りを見回して状況を把握する。

先程まで相対していた女性は、当たり前かもしれないがこの場にはいない。そして、単純に息が出来る海の中だと思っていたが、よく見ると自分の下には、普通の住宅街などがあり、明らかに現実空間では無い事を示唆してした。

「呼吸が出来る事に気付きましたか。案外、冷静ですね」

上から聞こえた声に反応し、シグナムが顔を上げると……そこには、真紅のコートに身を包みフードで顔を隠した女性がいた。見覚えの無い、が不思議な事に何処か見覚えがある、と言う矛盾した思いをシグナムは感じる。

「……何者だ、お前は?」

「言葉より、此方の方が解りやすいでしょう」

言いながら、真紅のコートの女性は右腕を振るう――するとその手には、紅緋色の刀が風を切る音と共に出現した。その刀を見て、シグナムは驚愕で声を静かに荒げ、同時に女性の正体をも理解する。

「天鎖斬月……!! ならばお前は……」

「そう、私は貴方が天鎖斬月と呼ぶ物の内部人格――」

女性が、顔を隠すフードを手で掴み、バッと自ら剥ぎ取った。それによって、女性の“金色”の髪が水の中で優雅になびく。

露になった女性の顔を見て、シグナムは驚愕で言葉すら出てこなかった。何故なら、その顔は――真紅の瞳を除き、己の主と瓜二つだったのだから。

「ある、じ……」

「同じなのは当然です。貴方の記憶に強く刻まれている人物の姿を、私は借りていますからね。まぁ彼と違い私は女性の人格ですので、多少の違いは在りますが――これ以上は、刃を交えながら語りましょう」

「なにっ……ッ!!」

その刹那、女性の姿がシグナムの視界から消え失せる。天鎖斬月を持ったシグナムをも超える速度のそれに反応出来たのは、彼女の天性の直感力と反応速度が成せる技だろう。

強引に純白の天鎖斬月を己の背に構えた時には、女性はシグナムの背後で既に紅緋色の天鎖斬月を振るう処で、反応こそ出来たがシグナムは振るわれた天鎖斬月の衝撃に、受け止めた己の天鎖斬月ごと吹き飛ばされてしまう。

何とか水中の中の空中で受け身を取り、天鎖斬月を構え直すシグナムは理解する。目の前の、内部人格と名乗った女性は自分より強い、と。一瞬刃を交えただけで解る……彼女は自分とは違い、この『天鎖斬月』の能力(チカラ)を全て引き出せている。

「大した直感力です。己以上の速力を持つ相手に、ここまで反応が出来るのですから。では、これはどうでしょう?」

タン、と空中を蹴り、今度はシグナムも反応出来る速度で接近し、真っ正面から斬り掛かる内部人格。それに合わせてシグナムも天鎖斬月を振るい受け止め、火花を散らし鐔競り合いが起こる。その鐔競り合いで互いの顔を見合せる中、シグナムが内部人格に問い掛けた。

「何故だ!? お前は何を目的として、こんな事をする!?」

「知りたければ、まず刃を交えなさい」

「くっ!!」

内部人格が力を込めた事で均衡が崩れ、シグナムは下に吹き飛ばされながらもビルの屋上に着地する。
仕方がない……そう呟き、天鎖斬月を両手で持ち力を込めるシグナム。今まで反応すらなかったのに、なぜ自分がここに呼ばれたのか、それは解らない。が、解らないなら相手の言葉を信じる他に道は無い。

決意したシグナムが、天鎖斬月を斬り上げるように振るい、己の必殺技と呼ぶに相応しい物を放つ。

「月牙天衝ッ!!」

放たれた必殺の斬撃は、純白の軌跡を描きながら猛然と内部人格に迫る。加減も何も無い一撃、当たればただでは済まないだろうその斬撃……だが、内部人格は表情を変えることなく、紅緋色の天鎖斬月を首元まで引き、そして振るった。

「――月牙……天衝」

猛然と突き進んでいた純白の月牙が、“何か”に衝突する。……それは真紅の、“炎の月牙天衝”。一瞬の間拮抗を保っていた二つの斬撃は――いとも簡単に、真紅の月牙が押し返し、そのままシグナムすらも呑み込んだ。

「ガハッ!!」

ビルに身体を叩きつけた所為で、大きく咽せながらもどうにか炎を振り払い立ち上がるシグナム。しかし、これでもう力の差は歴然だ。本来は同じ刀でこの差なのだから、如何に己が未熟者か良く解る……そう“的外れに”自嘲するシグナムに、もう攻撃の意志がない内部人格が問い掛ける。

「今、貴方の月牙が私の月牙に敗れた理由……解りますか?」

「何を……」

「純粋な力の差、と言うのは的外れです。そういう意味では、貴方は天鎖斬月を持つに相応しい技量が在りますし、その才もまだまだ伸びる余地が在りますから」

ならば何だ……そう瞳で問い掛けるシグナムに、内部人格はあくまで冷静に、的確に彼女の心を指摘した。

「シグナム、今の貴方の剣には迷いが在ります――貴方の、お婆さまに……“姉”に会うより前の記憶が、戻ろうとしているからですか?」

「っ!?」

言われた事が図星だったのか、彼女は少し目線を逸らして考える。そう、ヴォルケンリッター、烈火の将。

シャマル、ヴィータ、ザフィーラ。前者は己の事、後者は“仲間”だった者の名前。まだこれだけしか戻っていないが、これだけでも彼女の心を揺らすには十分すぎた。

「――それがどうしました?」

「……なん、だと?」

「貴方のお婆さまと――姉と過ごした時間が、偽りだったとでも?」

「なっ、違うっ!!」

「ならば、貴方の月剣‐ツルギ‐は、このような事で揺らぐ程に弱かったのですか? それとも貴方は――目の前の約束一つ果たせない騎士に、成り下がるつもりですか?」

このような事。自分の過去の記憶を、そのように断ずる彼女に戸惑いながらも、シグナムは後半の言葉に反応する。

――約束一つ果たせない騎士……約束?

「答えなさいシグナム。貴方は戦いたいのですか? 勝ちたいのですか? ただ生きたいのですか? どれです」

「私、は……」

――違う。私の求める物はどれでも無い。ならばなんだ? と自問自答し、思考の海に沈む。
様々な記憶が再生され、彼女の中を駆け巡る。そしてたどり着いたのは――言葉‐誓い‐。

『ねぇ、シグナム。もし良かったら……私と一緒に居てくれないかな?』

『お願い……お兄ちゃんを護って上げて』

「――そうだ」

そうだ、約束したではないか。戦いたい、勝ちたい、生きたい……否、どれでも無いだろう。

「……護りたい」

「聞こえませんね。答えなさい、貴方が護るべき人は誰? それを迷わないければ、貴方はもっと強くなれる」

「――私は……主を護りたいから戦う!! 例え何が在ろうと――それを、迷う事など無い!!」

シグナムの決意の叫びが世界に響き、世界が揺れる。まるで、主の成長を喜ぶかのように。そして、内部人格が初めて笑みをこぼす。その笑みの答えを知る前に、内部人格はシグナムの前に現れ、彼女の胸に指を置く。

「せいぜい50点……けど、ギリギリ合格です。今だけ力を貸して上げます……その大切な信念、忘れないでくださいね」

置かれた指から炎が燃え出し、シグナムの身体と天鎖斬月を包み込む。

「往きなさい、その信念のままに。そして、我が名を呼びなさい。決して引く事なく、決して消える事の無い我が『真実の愛』……我が名は――」

「――天鎖斬月・緋炎(ひえん)!!!!」

シグナムが叫ぶ。その護り刀、『天鎖斬月・緋炎』の名を。そして彼女は……現実世界へ回帰した。

「っ、シグナム?」

現実空間からすれば、僅か一秒にも満たない時間だった。だがその間に、シグナムの纏う空気が変わった事にシャマルは戸惑う。一瞬前までとは違う……戸惑いが、迷いが無くなっている。

瞬間、シグナムの姿が変化する。炎が巫女服を包み込んで姿を変える……肩と背中部分が露出し、スカートもミニスカートの上に、もう一枚彼女の足が見え隠れする物を着て、何処かドレスを思わせる真紅の騎士甲冑に。

シグナムが天鎖斬月を振るうと、包み込んだ炎が振り払われその姿を完全に現し、そして天鎖斬月も純白から――美しい、紅緋色へと姿を変えた。否、本来の姿を現した。

戸惑うシャマルを、シグナムは先程までとは違う優しげな瞳で見つめる。しかし、その瞳に迷いはなかった。

「済まない、シャマル」

「シグナム!? 貴方、記憶が……」

「お前達の事だけは、な。けど……私は往かなければならない。“私の”主の元へ。『烈火の魔法使い』――芳乃(よしの)シグナムとして、寂しがりやな主の元へな」

炎が再び集い、シグナムの露出した背中に一対の翼を――烈火の翼を生み出した。少し、寂しげに笑うシグナムが浮かび上がり……ヒナギクの元へと、飛翔する。

シャマルは、その後ろ姿を見つめるだけで何もしない。さっきの言葉を聞けば解る、ああ言ったら絶対に止まらない性格なのだ。だから彼女は、“かつての仲間”としてシグナムの武運を祈るのだった。









◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「いつっ……結構強いわね、この結界」

言いながら、触れた結界から弾かれた腕を見ているのは、この事態を察知して動いた人物の一人、藤原 雪華だ。彼女が足止めを喰らっている結界は、本命では無く他の物――つまり、シャマルが展開している結界だった。強力なのは当たり前だが、雪華はそんなこと知る由も無い。

兎に角、自分ではこの結界を破る事は難しい。結界に侵入直前の場所なので人はいないし、出来なくは無いが、かなり複雑なので解析に少し時間がかかる事は否定できない。となれば……。

「冬獅郎、ちょっと手伝ってくんない?」

「――その前に、まず質問に答えろ」

後ろを振り返り、当たり前のようにいる銀髪の少年、冬獅郎に雪華は言うが、返って来たのは了承では無く久し振りに聞く彼の真剣な言葉。

「何よ? 今じゃなきゃダメなの?」

「ダメだ。……お前、なんでそんなにヒナギクを救けたいんだ?」

「はぁ? そんなの――」

一瞬、ポカーンとなった雪華が直ぐに我に返り、冬獅郎の問いに答えようとするも……何かいろいろと頭に引っ掛かり――ボン!! と言う音が似合いそうな程に何故か顔を真っ赤にした。

「えっと……言わなきゃ、ダメ?」

「ダメ」

速攻で拒否られた雪華は、うー、あー、と顔を赤くしたまま唸る……しかし、素直に諦めたのか仕方ないなぁ、と言う表情になり、その口から語りだす。彼女の想い、そのものを。

「最初はね、興味本意だったの。素直に、自分に何の打算も無しに救けてくれる人なんて、普通はいないから」

「まぁ、そうだろうな」

「でも、私の“能力”でヒナの心の外面に触れて……ちょっとだけ解ったんだ。あぁ、この子は寂しいんだって」

触れただけで、解ってしまう。それが自分、自分の能力なのだ。だから……なのかもしれない。

必要以上に、何のしがらみも無い“雪華”として関わったのは。

「でもね、一緒にいて解ったんだ。ヒナは、本当に普通の男の子なの。少しの事で喜ぶし、料理を誉めたりたりすれば笑顔で『ありがとう』って言ってくれる。他にもいろいろあるんだけど……まぁ、私もヒナと一緒にいるうちに、いつもは自信持ってる事とかも変に不安に感じちゃうし――」

「あーあー解った解った。取り敢えず、もうぶっちゃけて言っちまえよ」

たくっ、何で人の惚気話を聞かねぇといけないんだよ、と呟く冬獅郎に雪華はアンタが聞いたんでしょ、と憮然とした表情でため息を吐き……そのまま言葉を紡ぐ。

「私がヒナを救けたい理由なんて、簡単よ――」

そう、理由は単純明快。そうなった理由は、いろいろ在るのだがやはりその“想い”は一つ。そうなる事に、理由など必要ないのだから。

「私がヒナの事……好きだからに決まってるでしょ」

何の躊躇いも無く、雪華は言った。そうだ、恋に理由なんていらない。ただ純粋に“好き”と言う感情は、素晴らしい物だから。けど、そこからどうなるかは本人達次第……恋と言う物は、数式の方程式では解けない。答えは自分で探し、自分で見つけなければいけないのだ。

「――って言うか!! 本人の前ならまだしも、何で冬獅郎の前で言わなきゃいけないのよ!!」

「はは、ワリィワリィ。ちょっと確かめたくって、さ」

――俺に、コイツ見たいな強さが在れば、ああはならなかったのかもな。

ふとそう考える冬獅郎だったが、すぐにその考えを否定する。所詮“可能性”の話だし、例えそうだとしても今を否定する事には成り得ない。

「全く……じゃあさっさと手伝ってよ――お兄ちゃん」

何処か嬉しげにそう言った雪華に、冬獅郎は呆気に取られるが……直ぐに笑みをこぼし、兄としての自分で応えた。

「あぁ解ったよ……たくっ、世話の焼ける妹だぜ」

微笑む二人の間には、いつの間にか一本の刀が突き刺さっており――二人が、それを掴み取る。

それを合図に、二人を強い冷気が包み込み始めた。

「往け、その想いのままに。そして、我が名を呼べ。決して衰える事なく、決して消える事の無い我が『氷炎の心』。乱れ咲け、雪の華。我が名は――」

「――大紅蓮……氷輪丸ッ!!!!」

雪華が叫ぶ。その氷結の刀の名、『大紅蓮氷輪丸』の名を。氷のように冷たく冷静に……されど、烈火の如く熱いその心で。

二人を包み込んだ冷気が、一気に爆せる。氷の結晶が彩る中心には……巨大な氷の竜を――氷華の翼を纏う、雪華がいた。そして、纏った氷華の翼が大きく動き、雪華が浮遊する。

ゆっくり、刀を結界方向に向け――氷華の翼が羽撃たき、雪華は飛翔した。


結界をいとも簡単に突破し、そのまま凄まじい勢いで加速し飛翔する雪華。緩める事なく、一直線に時空の歪みへと突き進む雪華の視界に火の粉……と呼ぶには大きく、美しい炎が舞い散っていく。

そして、彼女と平行するように飛翔する――烈火の翼を羽撃たかせる、シグナムが姿を現した。

二人がお互いの瞳を見て、全てを伝える。言葉などいらない、お互いが遣るべきことなど……一つしかないのだから。

炎と氷の軌跡が乱舞し、芸術的な迄の光景を生み出し加速する。

「アレね……!!」

「あぁ」

二人の視界に、先程まで遠目で確認していた空間の歪みを、今度は間近で確認する。近くで見れば良く解る、まさに空間の歪みだろう。本来の歪みに加え、武装局員が展開した結界までも取り込み、凄まじい強度を生み出している事は明白だった。

恐らく、なのはの砲撃魔法『エグゼキューター』でも、一撃では絶対に破れない代物だ。

――だが、出来る。と、シグナムが紅緋色の天鎖斬月……緋炎を強く握り締め、力を高めていく。臆す事など無い、己の刃に迷いも無い。炎が加速度的に増し、緋炎から圧倒的な炎が溢れ出す。

『そう、恐れないで。前へ突き進みなさい。烈火の翼を羽撃たかせ――信念の刃を、その手に。轟かせなさい……業火の炎を』

「あぁ!!」

炎が加速し、烈火の翼が羽撃たき、紅緋色の刃が煌めく。今なら出来る、己の持つ最大の奥義を。

「炎よ集え……全てを滅する業火の刃と化し――燃え上がれッ!!!!」

上昇し、さらに加速して時空の歪みへ突っ込むシグナム。天すら支配し、煌めく炎は――彼女の、信念の輝きそのもの。

シグナムが天をも隠す炎の刃を……振り下ろした。


「轟け我が業炎の刃!! これが私の――業火烈衝刃(ごうかれっしょうじん)!!!!!!」


最早、圧倒的と表現する事も馬鹿らしくなる巨大な炎が、振り下ろされた刃と共に時空の歪みに衝突――拮抗すらする事なく、その歪みを断ち切った。

が、ギリギリまで“加減した”とはいえ、舞い散る炎は消す事は出来ず、突き崩した歪みの内部に炎が侵入していく。
こんな状況ではとても突入など出来ず、技を撃ったシグナムも直ぐには動けない。――いや、出来る。その人物の名を、リリン! とチョーカーの鈴を鳴らし……力強く、シグナムは叫んだ。

「往け!! 雪華ぁ!!!!」

「――上等ッ!!」

氷輪丸を突き出し、先程よりもさらに雪華が加速する。それと同時に、空気中の水分すらも氷結。小さな氷吹雪が乱舞する中、目に見えぬ衝撃波を纏い、触れるもの全てを氷結させる彼女は氷の姫君……そして――


「咲き乱れ、全てを貫け――雪月華(せつげっか)!!!!!!」


――炎の中でも煌めく、一輪の華。彼女達は……どんな場所でも煌めく、紅と蒼の二輪の華だ。

烈火の騎士と氷の姫君の道が重なり合う時、歪んだ物語は、さらなる輝きを放つ――
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  1. 2012/11/15(木) 22:13:16|
  2. 烈火の翼
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

遂に対話が成功しましたか……

この調子で一気にヒナギクを助け出して欲しい限りです。
  1. 2012/11/17(土) 23:14:40 |
  2. URL |
  3. フルカスタム #G7LvmW4Y
  4. [ 編集 ]

実はアレで本来の型の半分にも満たないんですけどね、あの対話(ぇ

辛うじて上手く行ったのは緋炎ちゃんのデレですデレ(オイ)

果たしてヒナギクを助けられるのか……次回をお楽しみに!!

感想ありがとうございましたm(__)m
  1. 2012/11/30(金) 03:32:21 |
  2. URL |
  3. いかじゅん #3/2tU3w2
  4. [ 編集 ]

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