サクライロノセカイ/リリカルなのはなお話

えびえもん兼いかじゅんのブログです。リリカルなのはの二次創作などを書いています。

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魔法少女リリカルなのは 烈火の翼 第26話

翼がはためき、時空が歪む。それは、地球から近くも遠い異世界にいる住人にも感じ取れる程に強大な力だった。

研究室にも見えるその部屋では、壁に寄りかかっている一本の蒼い刀が何かを感じ取るかの様に震えていた。その刀の持ち主たる人物が、不思議げに刀の……天鎖斬月の名を呼ぶ。

「蒼天……?」

また別の場所……とある家の道場では、黒髪の男性が座禅を組み目を閉ざしていた。だが、膝の上に置いた長刀が震え出すと同時に、瞳をゆっくりと開き、その力の名を呟いた。

「時空の……翼か」

同時に、『刀』をその身に宿す人物達も確かに“それ”を感じ取っていた。

「お兄ちゃん……」

さくらが、呟きと共にその表情を引き締め、力の波動の発生源へと地面を蹴って急ぐ。

「これは……!!」

「あらら……こりゃ難儀な事になってもうたね」

冬獅郎が驚愕の表情で発生源を見つめ、ギンは表情さえ変えないものの、その声色は何処か真剣さを帯びた物になる。

そして――

「……主?」

「――ヒナ?」

烈火の魔法使いと氷の姫君も、彼の異変を感じた。

動き出した運命が、歪んだ物語をも巻き込み――加速する。









◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

機動戦艦アースラ、そのブリッジ。時空管理局の技術がふんだんに組み込まれている情報機器……しかし、その技術力を以てしても現状観測されている“空間”の情報は全て『Error』の文字を表すだけだった。

「なにこれ……一体、何が起こってるの?」

幾らキーを叩いても、その事実は変わりようが無い。自然と震える手を押さえて、通信主任であるエイミィ・リミエッタがそう言う。

その問いに答えられる人間はアースラクルーの中にはいない……だが、アースラクルー以外の協力者が答えられる人物だ。

「なのは、今起こっているこの現象……君は知っているんじゃないか?」

「…………」

何とか今起こっている現象――空間の歪み――から逃れた人物であるクロノが、壁に寄りかかるなのはに問い掛ける。彼女は腕を組み、見定める様な瞳でクロノを見つめるが、やがて堅く閉ざされたその唇を動かした。

「歪みの現象の原因だけを答えるなら、時空の翼……別名『神の翼』が原因よ」

「時空の翼?」

執務官で知識が豊富なクロノも、その名前には全く聞き覚えが無く、首を傾げるしかない。まぁ知らなくて当然なのだ……普通は人間レベルで、干渉できる物ではないのだから。

彼の疑問を的確に読み取ったなのはは、そのまま言葉を紡ぐ。

「知らなくて当然よ。本来、人間レベルが干渉できる代物じゃないんだから」

「そ、それほどの物なのか?」

「えぇ……“時空”の翼。その名の通り、時空間を自在に操る翼よ。崩壊する空間をつなぎ止める事も、逆に空間を崩壊させる事だって、時空の翼にとっては造作もない事なの。空間を――世界を創る事もね」

彼女の説明に、クロノは驚きを隠せず、そして幾らなのはの言う事でも信じられないと言う思いが強かった。ただそれは、ある意味当然とも言えた。

世界を創る……もはやそれは神の領域なのだ。まるで神さまの真似事が出来、世界の理をいとも簡単に崩壊させる。

「当然、その翼の持ち主を転移させる事だって出来るわね……例えば、可能性の世界である平行世界への移動も可能よ」

「……なんだか、今まで関わって来たロストロギアが可愛く見えるな」

「言ったでしょ。人間レベルが干渉できる代物じゃないのよ――ま、私はそろそろ行くわ」

話す事は話した、まるでそう言うかの様にアースラブリッジを立ち去ろうとするなのは。それを見たクロノは、考え込んでいた思考を急いで変えて彼女を止める。確かに話す事は話したが、相対的に彼女の謎が増えた気がする。が、彼が言いたいのはそこではない。

「行くって……まさか、空間の歪みの中にかっ!?」

「当たり前でしょ。なに寝呆けたこと言ってんのよ」

「危険すぎる!! だいたい、転移魔法が使えないのにどうやって……」

「一応、持って来といて正解だったわ」

クロノの問いには答えず、そう言いながらなのはは何処からか宝石を取り出し、それを投げて遊ぶ。それは――かつて、シグナムをミッドチルダに転移させた事のある宝石。

「それは……?」

「あの空間の歪みの中でも転移が可能な物……まぁ、一回きりだから一方通行だけどね」

「なら、僕も着いて行く」

――なんですと? 正直、彼女がクロノに驚かされたのは、これが初めてだったのではないだろう。それくらい、なのはは驚いてしまった。と言うか、自分の話を聞いていたのだろうか、彼は?

「……ちゃんと話し聞いてた? 一度突入したら、戻って来れないかもしれないのよ?」

「関係ないな。もう僕は決めたぞ」

「なんで、そうまでして?」

「――泣いていたんだ、あの人。とても、寂しそうな目をしていた」

そう言うクロノに、なのはは驚愕を隠せなかった。彼が己の師匠に接触したのは、ほんの数十秒。その間にそれを――自分ですら気付いても入り込めなかった、師匠の本質を見抜いたと言うのか……。

「最初は、迷子のような目をしていると思った……けど、転移する瞬間、少し違うと気付いた――あの人は、不安に押し潰されそうになってるんだ。だから、と言う訳じゃないが、助けたい」

「……もう一度訊くよ。戻って来れない可能性の方が大きい、それでも着いて来る? 君には執務官として、これからするべき事だって……」

「――目の前で泣いている人を見捨ててまで、執務官を名乗るつもりは無い!!」

「ッ!!」

――彼の決意を聞いた刹那、なのはの記憶の中に蘇ったのは……

『決めたよ、ギン。これから私は……“出来損ないの魔法使い”として進む。だから何が起こっても、絶対に挫けない!!』

……かつて、『出来損ないの魔法使い』として進む事を決めた、己自身。救う事は出来ずとも、助ける事は出来る。だから、己の信じる道をただ進む。

同じなのだ、その時の自分と……今のクロノの瞳が。絶対に、その心に決めた己の信念を曲げない強き瞳――ギンから聞いた話が確かならば、だが。
クロノの瞳を見つめ、そしてはぁと溜め息を吐くなのは。それは、彼女がある意味降参した合図でもあった。

「まったく、どうして私の周りはこう頑固者が多いのやら……」

「なに、みんな君ほどじゃないさ」

相変わらず、自分の事を入れない彼女に対してクロノが鋭く突っ込みを入れた。すると、なのははムッとした顔になり、クロノはまさに“してやったり”と言う表情になる。

今の二人の瞳には、絶望など微塵も存在しない。在るのは――未来へと繋がる、希望。









◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

アースラの機器ですら観測不能の、空間の歪みの内部。そこは既に、別の空間と化していると言っても過言ではなかった。正確には、元の空間を基にして新たに創り出された空間……と言うのが正しいのかもしれない。

「いつぅ……」

と、地面に崩れ落ちた瓦礫の中から赤毛の少女、ヴィータが痛む腕を押さえながら這い出る。痛みに耐えて見上げる先は、空間の歪みの中心。つまり、ヒナギクが止まる上空。

表現が難しい程に歪んだ空間、その中心に佇む穢れの無い純白の光。以前、ヴィータがほんの少しだけ見た“何か”とはまた違う。
……あの時とは違う感じで『別次元』の力を感じる。

「悪いザフィーラ……」

スッと目だけを動かし、地面に倒れ伏せピクリとも動かないザフィーラにそう言う。自分が先程の衝撃波――ビルがいとも簡単に倒壊する程の――を喰らい、腕を負傷する程度の怪我ですんだのは、間違いなくザフィーラのお陰だ。

そして、こうなったのもある意味自分の所為とも言える。自分がしっかりと、今のシグナムの状況を伝えていればこんな事には……そう後悔するが、誰もヴィータを責める事はできない。こんな事になるなど、誰にも想像ができなかったのだから。

「ヒナギク……」

彼の名を呟き、飛行魔法を行使して一定の高度へ浮かび上がった。そうして滞空した先には、純白の翼から神々しい光を放ち、蒼い瞳は虚ろで何も映す事の無い……ヒナギク。

今の彼を力で抑えるのは『不可能』であり『無意味』だ。だから、言葉で説得するしかない。

「聞いてくれヒナギク。シグナムは無事なんだよ。さっきのは、アタシの所為で誤解があって……」

「…………?」

ヴィータの言葉に微かに、本当に微かにヒナギクが首を傾げる。その瞳は、変わらず誰も捉えていない。反応したのも、シグナムの名前だけだった。

その事に少女は嫌な予感に捕われる。

他の物を捉えず、まるで外部の全てを拒絶するかのような――

『そんな事してたら、アンタは“独り”になっちまう』

『そうだね。でも、人に必要の無い迷惑を掛けるくらいなら、その方が良い――』

「あ……」

思い出したのは彼との会話、それを皮切りにキーワードが繋がり出す。

独り……そうだ、今の彼は全てを拒絶している。確証は無い。ただの妄想か推測に過ぎない。が、少女のこの推測を裏付けるかの様に歪んだ空間が変化を始める。

「うわっ!?」

再び衝撃波が放たれた。ただ、先程とは違い物理的な威力がなかったのが幸いし、ヴィータは辛うじてその場に踏み止まる事が出来た。

しかし、状況はさらに悪化する。捻れ、歪んだ空間が“動き出している”。それも、中心であるヒナギクに向かって……まるで、この空間が“閉じ始めている”かのように。

「……ヤバいな」

ガシャン、と己の武器であるグラーフアイゼンを構えるが、それで何か変わる訳でも無い。力で抑えられない、と言うのはもう理解しているし、そもそも自分が勝てる筈が無いと言うのも十分に理解している。

――でもそれは、何もしない事の言い訳にはならない。きっとシグナムなら、そんな事を言うんだろうな……こんな状況でもそんな事を考える自分は、案外余裕が在るのかもしれない。いや、もうやけくそ気味なだけか?

「っと、余計なこと考えてる場合じゃねーな」

そうしている間にも歪みは加速し、翼の光が増しているように感じられる。

「こうなりゃ……なるようになれだっ!!」

もう、自分の頭でとやかく考えても答えは出ない。だったら、一か八かでも力ずくでヒナギクを正気に戻す!!

実に単純で、実に純粋な答え。まぁ、このまま何もしないよりはマシだ……そんな考えの下だろう――そしてそれは、決して間違った選択では無いのが恐ろしい。

「そこの子、退かないと怪我するよ!!」

「は――んなっ!?」

ヴィータへの警告と共に、翼の光に負けない程にまばゆい桜色の光が見え、出かけた足を止めて上空を見上げると――数十を超える星々が光り輝き、その中心には一人の女性が腕を掲げ滞空していた。

「クロノくん、ちょっくら技借りるよ!!」

もう何度目だろうか、とてつもなく嫌な予感がしたヴィータはおもいっきり方向転換し、その場を離脱する。それより半秒遅れる形で――なのはは右腕を勢いよく振り下ろした。

「ディバインバスター――エクスキューションシフトォ!!」

数十の光から一斉に放たれたのは、巨大な魔力砲撃。それはまさに――聖なる流星。降り注ぐ断罪の光は、先程までヴィータがいた辺り一帯の全てを呑み込み、凄まじい爆発と粉塵を巻き上げた。

「……って!! 遣り過ぎだろそこのバカ!!」

「誰がバカよ!?」

振り払えない程の煙りが撒き上がる中、ヴィータが近づいてくるなのはに向かってビシィ、と指を差すと、なのはもすかさず反論する。

「バカはバカだろ!? それともアレか? お前は悪魔か!?」

「残念、処刑人よ!! だいたい、あの程度じゃ師匠は傷一つ負わないから平気なの!!」

「そんくれぇ知ってるんだよ!! けど他にやり方があるだろ!?」

「在るわけ無いでしょ!! 私が全力でやって、やっと牽制になるくらいなのよ!?」

ギャースカギャースカ、あーでもないこーでもない、といった感じで口論を繰り広げる二人。状況は……分かっているのだろうが、あんまり関係ないのだろう。

と言うか、

「なぁ、君たちは初対面だよな? 一応」

「「当たり前よ(だ)!!」」

見事、この二人の口論を見た人間が思う事を代弁したクロノに対し、やはりと言うかきっちり息を合わせて断言するなのはとヴィータ。
仲良いなお前ら……そして、なのはの悪魔に対する返しが、ある意味酷くなっているのは気のせいだろうか?

「それよりなのは、まずこの空間の状態を説明できるか? このまま放置すると、どうなるかをだ」

「あぁ、そうだったわね」

クロノの冷静な判断により、漸く話は進む。チラリ、となのはが見たのは『ディバインバスター・エクスキューションシフト』が呑み込んだ一帯の、その中心部分。

今は煙りに覆われているが、中心部分にはヒナギクが“無傷”でいる事だろう。そして、彼を中心に動き出していた空間は……今のところ、完全に停止している。

「そうね、まずさっきの現象を放置してたら、私達は“異物”として外に弾き出されてたわね――そして、師匠はこの空間ごと消滅してた」

なのはの言葉に、クロノとヴィータは驚愕を隠す事など到底無理な話だった。話が飛躍し過ぎている……と感じるのも無理は無いだろう。が、なのはとしてもそうとしか説明できないし、時間的にも詳しく説明している暇はない。

「な、なんでそうなるんだよ!?」

「――あの翼は、持ち主の願いを叶える物でもあるの」

「……どういう事だ?」

問うたのは、比較的冷静なクロノ。比較的なので、内心では焦る気持ちを抑えている状態だ。と言うか、こんな空間に突入して冷静な人間は普通いない。

そんな彼の気持ちを見抜いてか、それとも必要な説明だと判断したのか、なのはは間を開けずに言葉を放った。

「時空の翼は、持ち主の強い想いや感情によって、その力を発揮するのよ。今の師匠の感情……つまり“孤独”と言う感情に従い、創り出した世界を閉じようとしている。まぁ、なんでそうなったかは訊かないで欲しいわね。説明が難しいくらい、いろんなもんが入り交じってるから」

「ちょっと待ってくれ、君の言うことが確かなら……とっくにこの世界は閉じているはずだろう?」

またもや疑問を投げ掛けたのは、確信をついたクロノだ。クロノの言う通り、なのはが説明した通りの力を時空の翼が持っているのなら、この空間は一瞬にして閉じていてもおかしくはない。だから、そうならないのには理由がある……と、クロノは推測していた。

彼の問いかけになのはの表情が若干驚きに変わり、そして呆れたような表情になる。まるで、どれだけ察しが良いのよ、とでも言いたいかのようだった。

ふぅ、と溜め息にも似た息を吐いてから、彼女はクロノの問いかけに応えた。

「……本来、あの翼は師匠の力じゃないからね。師匠の実力にも一切関係してないし。だからだよ」

「……それって、もしかしてヒナギクの中にいる奴なのか?」

クロノが首を傾げるしかできない中、ヴィータには何か思い当たる節があった。ヒナギクの中にいる人物――あの時、ヴィータの前に現れたヒナギクではない“何か”の事だ。

中にいる奴……と言う表現は、ヴィータから見た率直な表現ではあるが、やはり強ち間違ってはいない。

「――ちょっと待ちなさい」

ヴィータがその言葉を放った瞬間、なのははそう言うなり少女の肩を力強く掴む。え、何か地雷踏んだ? 何て感想はともかく、流石に焦るヴィータだったが、なのははそこから怒りとも取れる表情で言葉を一気に紡いだ。

「ねぇ、何で貴方が刹那さんの事知ってるのかしら? って言うかそもそも、何でアンタ達は私が時間かけてやった事を数時間や数秒でやるのかしら? イジメ? イジメよね? イジメなのよね!?」

「い、痛い痛い痛い!! お、落ち着けよお前!! 指が食い込んでんだよ!! やっぱお前悪魔だろ!?」

「と、取り敢えず僕の事も含んでいるのはよく分かった。だから落ち着いてくれ」

クロノによって強引に引き離されたなのはが、はぁはぁと珍しく荒くなった息を整えながら心を静める。彼女がここまで荒れるのも珍しい……が、正直解らなくはない。そりゃあ、自分が何年もかけて漸く理解できた師匠の事を、一部とはいえあっという間に理解されては理不尽に怒りたくもなる。

……しかし、そんな悠長な事をしている暇はなくなったらしい。

「――そろそろ限界ね」

急に表情を引き締め、何処かを見つめ出すなのはに二人はハッとなり、同じ方向を見る。そう、なのはの言う通りそろそろ限界。そもそも、こんなに悠長に話をしていたのも特にやる事がなかったからだ。それもそのはず……目的は――ヒナギクの意識を此方に向ける――既に、最初の攻撃で完了しているのだから。彼方が動き出すまで、まだもう少し掛かる。

「師匠を止める方法は一つしかない。それは、師匠の感情を左右する人物が“自らの意志で”この場にたどり着くこと」

「じゃあ僕らのするべき事は、足止めか?」

「正解。ま、ここまではこっちの目論み通りよ」

再び光が瞬き、衝撃波が煙りをあっという間に吹き飛ばす。そこにいたのは、先程と変わらない虚ろな瞳のヒナギク……しかしその目は、確かに三人を捉えていた。

フッと笑みを溢し、なのはは言う。

「ちょっとした賭けだったのよ。師匠が無意識下で他の人間を巻き込まない為に、私達を異物として外に弾き出そうとしているなら……それにあらがえば別の方法での排除手段になるんじゃないかってね。要は力強くかしら」

「……ちなみに結果は?」

「聞く必要ある? 明らかにこっちの事を認識してるわよ……さぁ、こっからはかなり分の悪い賭けよ。ここまで来たなら、きっちり付き合ってもらうわよ、二人とも」

なのはの問いかけに、二人はそれぞれ得物を構えることで応える。ここまで来たら、もはや敵も味方も無い。目的は全員一緒だ。その応えを見て、満足気に頷くなのは。

とはいえ――

「……ただ、あっちは私達をこの空間から弾き出せば勝ちだし、実力差が在り過ぎて三人で挑んでも話にならないのよね……しかも私、さっきので半分くらい魔力持ってかれちゃってるし」

「「おい!!」」

一番頼りになりそうな人物が、こんな意見で大丈夫なのか……そんな思いを込めて、クロノとヴィータは真ん中に立つなのはに叫ぶ。

って言うか割とマジで、今は彼女の指示に従うしかないのだ。幾ら二人の勘が鋭いと言えど、この空間に対する根本的な知識が足らない。

しかし、焦る二人に対しても慌てなさんな、と言った感じの表情のまま……己のデバイスに指示を出した。

「エクスシア、システム起動と同時にフルドライブ始動。出力は80%でお願い」

『……承服しかねます、マスター』

「――どういう事かしら?」

なのはの静かな怒りを含んだ言葉と共に、彼女が空気が変わる。既に、彼女の切り札である神羅を使っている為だ。

彼女の纏う異質な空気に、クロノのヴィータは驚くが……それよりも、デバイスが明確に持ち主の意志を拒絶した、と言う方にさらなる驚きを見せた。

『言葉通りの意味です。その指示には承服しかねます』

「時間が無いの。さっさとしなさい」

『承服しかねます。死にますよ、マスター』

「――じゃあどうしろってのよ!?」

彼女の激情を表す様に彼女の纏う異質な空気がより濃くなり、ヴィータとクロノは口を挟む事すら叶わない。今のなのはには、それほどの迫力がある。

「分かってるでしょ!? 私と師匠の命、どっちが大事か比べるまでもないのよ!!」

『そういう問題ではありません。それに、命は比べられる物では無い』

「綺麗事を言ってる場合じゃないのよ!! 早く、起動して……!!」

突然言葉が途切れたのに気付いた二人が、その理由に気付き驚愕する。

泣いている……あのなのはが泣いているのだ。彼女の性格を知るクロノは、信じられないと言う思いになる。

「もう……あんな師匠は見たくないの!!」

『マスター……』

「私は、御神の“欠陥品”で、出来損ないの魔法使い……だから、師匠を“救う”事はできない。けど、師匠の助けになる事くらいなら……出来るかもしれないのよ!!」

それは、悲痛な叫び。どこまでも他の人間の為に願い、その力を振るい続ける。それが高町なのはが『出来損ないの魔法使い』である証。

純粋過ぎる願い……しかし、彼女は“出来損ない”なのだ。己の願いですら、完全に叶える事は出来ない。

――人の心は、決して救えない。

「エクスシアッ!!!!」

もはや、本当に一刻の猶予も無い。また空間が収束を始め、このままでは物理的どころか元の方法で弾き出されてしまう。

『……Yes Master.』

己の主の叫びに、遂にエクスシアは動き出す。システムを一瞬で立ち上げ――フルドライブのロックを解除する。

『mode(モード)・unlimited(アンリミデッド)――』

起動……する筈だった。しかし、またも運命は変わる。歪んだ物語の、名のもとに。

「な、なんだ!?」

「……シグナム?」

ドクン、空間が震える。何かに、共鳴するかのように。何かを、感じ取るかのように。

クロノもそれに気付き声を上げ、ヴィータは共鳴先の存在を何故か感じる。

そしてなのはは……呆然と、その存在“達”を感じ取った。

「シグナムさん、雪華さん――刹那さん?」

時は遡る……まるで、くそくらえな運命を覆すかのように――
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  1. 2012/11/15(木) 21:16:10|
  2. 烈火の翼
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

初対面であの迷言が飛び出すとはwww

しかし神の翼……危な過ぎですねぇ……
  1. 2012/11/17(土) 21:11:36 |
  2. URL |
  3. フルカスタム #G7LvmW4Y
  4. [ 編集 ]

只でさえAs編の本来の戦闘を大分省いてるので、あの迷言を出すならここしかないと思ってましたww

時空の翼は、作中でもダントツレベルで危ないです。ただ、そんな翼にもいろいろあったりなかったり……

感想ありがとうございました!!
  1. 2012/11/30(金) 03:29:15 |
  2. URL |
  3. いかじゅん #3/2tU3w2
  4. [ 編集 ]

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