サクライロノセカイ/リリカルなのはなお話

えびえもん兼いかじゅんのブログです。リリカルなのはの二次創作などを書いています。

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魔法少女リリカルなのは 烈火の翼 第24話

過去。それは未来へと繋がる、記憶。そして、どれだけ望もうと取り戻せない物。

願い。それは誰もが持つ己の願望。そして、大切な者を失えば誰もが願うだろう……死んだ人間を蘇らせたい、過去を取り戻したい、と。

だが、やはりそれは決して叶わぬユメ。ヒトで在る限りは縛られる世界の理‐ことわり‐。しかし、もしそれに縛られない者がいるとしたならば? 差し詰め『理‐ことわり‐から外れし者』とでも言った処か。

外れし者達は世界の摂理に縛られず、存分にチカラを振るう事ができるだろう。ヒトの永遠の夢とされる『永遠の生命‐いのち‐』という物も手に入るのだろう。

――でも、それは本当に幸せなの?

過ぎたチカラは災いしか呼ばず、永遠の生命など辛い別れを繰り返すだけだろうに。

「おい!! 起きろよ、おいっ!!」

誰だろうか、誰かが必死に叫んでいる。銀髪の少年が、力なく倒れている少女を抱き上げて叫ぶ。

真っ白な雪が積もり、舞う。そんな中で、少年が抱き起こす少女の金色の髪も美しく舞う。けれど、少女の身体は全く動かない。だがそんな事は関係ないとばかりに、少年は必死に少女に呼び掛けた。

今まで呼んだ事のなかった少女の名も、叫ぶ。

「起きろよ……起きてくれ――さくらっ!!」

――ピクリ。少年の必死な叫びが通じたのか、少女の指が微かに動き、深く閉じられた瞳もゆっくりと開く。

少女のサファイアブルーの瞳が……少年の全く同じ色の瞳と彼の顔を映し出す。

「――やっ、と。名前……呼んでくれ、た……」

「ば、バカ!! 喋るんじゃねぇ、いま医者を――」

少年は医者を呼びに行こうと立ち上がる……それより前に、少女が少年の服を弱々しく手で掴み、ふるふると首を振る仕草をする。

途端、その意味を理解したのだろう。少年が怒りと悲しみが入り混じった表情になった。当たり前だ、それの示す意味は……少年にとって最も受け入れられない事なのだから。

「やっ……ぱり、何をしても、来ちゃうん……だね。ちょっと、嬉しい……か、な」

途切れ途切れだが、確かに紡がれていく言葉を聞き取り、少年の表情がさらに歪み……ポタリ、と少女の顔に雪では無い何かが当たる。
それは、少年の瞳から零れ落ちた涙。彼が泣く処なんて、初めて見た。自然と、力の入らない自分の手を動かし、指でその涙を拭う。

「泣か……ない、で」

「俺は!! お前を護るって、言ったのに!! 約束したのに!! なのに……なんで!! なんで何だよ!?」

――そうだ、俺は約束したんだ。彼女を護ると。でも、俺は何も出来てないじゃねぇか……。

溢れ出る涙が止まらない。感情が抑えきれない。幾ら力が在ろうと、自分は無力でしかないのだ。

「ごめん。ごめんな……!!」

「謝らな、いで。ごめんね――冬獅郎」

「っ……なんでだよ!?」

なんでお前が謝るんだ。約束を破ったのは俺なのに……そんな思いが少年の顔に出ていたのか、少女が困った様に微笑む。とても弱々しい笑み、だけど、彼には桜の花の様に美しく見えた。

「冬獅郎は、優しいから……きっと、自分の所為だって責めちゃう、でしょ?」

「なに言ってんだよ……」

「だって、ボクの傍に来て……くれた。ボクは何も、言わなかったのに……冬獅郎は来てくれたから――」

――それが、何よりも嬉しかったんだ。

それは言葉にはならず、唇の動きだけの物だった。もう長くない……少女には、それが良く分かっていた。前から覚悟はしていた事だ。でも、やっぱり未練はある。

彼が来る前から……彼が来てからはもっと、そう感じるようになった。

だから、これだけは伝えたい。自分の願いが叶わないのなら、言葉だけでも――

動かぬ身体に鞭を打ち、必死に身体を起こす。少年は涙を我慢しようと、目を閉じていてそれに気が付かない。

「とう、しろう……」

「なん――!?」

……少女の唇が、少年の唇に優しく触れる。触れ合うだけの、優しいキス。

ゆっくりと少女が離れ、また微笑んで――言った。

「――――――すき」

それは少女の想い。少女の全てを込めた告白。

茫然とする少年の目の前で、少女の瞳が閉じていき……ぐったりと、少年の腕に倒れた。

「お……い。起きろよ、起きろよ、さくら」

少年が茫然とした表情のまま、少女を揺すり起こそうとする。けど、彼女は動かない。まるで、死んでしまったかのように……。

――死んだ?

「――ふざけんなっ!!!!」

そんな思いを否定して彼は叫ぶ。動かない少女の身体を必死に揺すり、叫ぶ。

「俺はまだ何も言ってねぇ!! 答えてもねぇんだ!!!! 起きろよ……死ぬなよ、さくら!!!!」

それでも、少女の身体は冷たく動かない。最早、彼は溢れる涙を堪えようとはしない。

――桜が舞う。雪と共に。

「死ぬな……死ぬなよっ!!!!」

――儚く、幻想的な桜と雪。

「起きろよ――さくらぁっ!!!!」

――そのヒトヒラの桜が……さくらに触れる。

刹那、輝かしい光を放ち、辺りがそれに包まれた。

――ヒラリと、サクラユキが舞った。









◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「……ん」

ふと、目を覚ます。軽く力を入れ、ヒョイッと起き上がった少年……冬獅郎が見回す“世界”は現実空間では無い、切り離された幻想的な精神世界だった。

降りしきる美しい、雪。さらにそれは、瞬時に自由な形になり、可憐な雪の華を辺りに創り出している。実に自分の主らしい、自由で幻想的な空間だ。まぁ、ヒナギクに会ってからさらに明るくなった気がするが……。

『小僧……』

「あん?」

そんな彼の思考を遮ったのは、何処からか聞こえる誰かの声。それに戸惑った様子は見せないが、どこか少々めんどくさそうに眉を顰める冬獅郎。が、決して無視するような事はせずその声に応えた。

「んだよ……なんか用か『氷輪丸』?」

『ふん……小僧、お前がうなされていたから起こしてやったと言うのに、随分な言い様だな』

誰かの――氷輪丸の言葉を聞いて、何やら意外そうな表情になる冬獅郎。そうして、漸く思い出したのは先ほどまで見ていた夢の内容。
夢にしては珍しく、驚くほど鮮明に思い出せる内容。当然だ……何せ、昔の話と言えるほど過去の話では無いのだから。

「そう、か。悪かったな氷輪丸……」

『気にするな。それで、お前はどうするつもりだ?』

「何をだよ?」

『これからの事……藤原 雪華が好いている者の事についてだ』

「あぁ、ヒナギクの事か」

さらっと、雪華が聞いたら顔を真っ赤にして否定するであろう会話をする二人。しかも、氷輪丸は名前を伏せたのに冬獅郎は躊躇いなく相手を言い当ててしまった。

まぁ彼的にはそういう事……恋愛などに関しては、別に否定的では無いので構わないのだ。事務所的にも別段、恋愛禁止という事も無いのだから。

だからこそ、彼は己の主の現状を快く思っていない。

「……ま、アイツがこれ以上、自分の事を隠し続けるなら、忠告の一つや二つを入れてやるつもりだよ」

『ふむ、自分すら騙せない嘘、か……上手く言ったものだな』

「自分すら騙せない嘘なんて、辛いだけなんだよ。つく方も、つかれる方もな」

――嘘をつくなら、せめて自分を騙せる嘘をつけ……これは、冬獅郎の持論だ。まぁ、そんな嘘なんてつく物じゃない、というのも彼の持論だが。

どの道、自分の主に隠しごとなんて出来やしないんだがな……そう心の中で呟き、冬獅郎はさくらと同じサファイアブルーの瞳で、降りしきる雪の向こうの虚空を見つめる。

――結局、当人達次第なんだよな。他の人間が何を言おうと。

どれだけ口を出そうとも、決して変わらない真実。あの三人の物語が、これからどう動くのか――それは、冬獅郎にも解らなかった……。









◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

海に沈みし町に、真紅のコートを着た女性が佇んでいる。相変わらず、摩訶不思議な精神世界やなぁ……とは、今現在この世界に居る市丸ギンの率直な感想である。

「何の用です。市丸ギン」

と、ギンがこの空間に現れた瞬間に気付いていたであろう女性が、接近してきたギンに対して溜め息が混じりそうな声で言う。

こっちも、相変わらずな対応やね。そう思うギンだったが、何だかんだで反応してくれるのだと思うと、自然と笑みがこぼれて来る。

しかし、彼はそれを抑えつつ、すぐさま本題に入った。

「3ヶ月。経ってもうたね?」

……それは、彼女の予想が外れた事に対する侮蔑の声色では決して無い。それが解っているのか、フードの下から視線だけをギンに向けた女性は、そこから一切の躊躇いも無くビルの屋上から飛び降りた。

それを見たギンも、焦る事なく彼女に続いて飛び降りる。フワリ、と綺麗に着地し、何処かへ歩き出す女性。

「私が予想した3ヶ月とは、外部的な干渉……所謂イレギュラーな事項が起こらなかった場合による物ですよ。まぁ、物事にイレギュラーは常ですが」

「ほんなら、キミが言うイレギュラーって何なん?」

ひょうひょうと訪ねるギンに、女性はまた視線だけを彼に向けながら問いに答えた。

「蒼天の資格者による干渉と、彼の心境の変化、ですかね」

「心境の変化?」

頭にハテナマークを浮かべるギン。前者の蒼天の資格者……まぁそれは、天鎖斬月・蒼天を所持する裏月。そして彼が創った、ツインリンカーコアシステムの事だろう。
だが、ヒナギクの心境の変化、という物がどうにも解らない。

う~ん、と歩きながら考えるギンに、女性はフードの下でクスリと笑う。非常に珍しい事であったが、それをギンが見る事は叶わなかったようだ。

「貴方も変な処で鈍いのですね……ヒントを上げましょう。恐らく今、最も彼の感情を左右する二人についてですよ」

「あぁ、シグナムちゃんと雪華ちゃん――なるほどなぁ。そういう事やね」

笑いながら言うギンを見て、女性もフードの下で笑みを浮かべて、そういう事です、とギンの考えを肯定する。そりゃあ、そんなヒントを出されてしまえば、よほど鈍感でない限り誰でも気付くだろう。

――好意。ヒナギクの、二人に対する気持ちがこのタイミングで変化している。様々な要因が在るのだろうが、いくら本人が否定しようとも彼の感情が変化しているのは確かだ。

「……ここからどうなるかは、もう私にも予想が出来ません」

「それは、イレギュラーな事項が多すぎるから?」

女性は、ギンの言葉を首を左右に振って否定する。そうして、ピタリと立ち止まった先に在るのは――一本の刀。突き刺さった、紅とも緋色とも見える……紅緋色の天鎖斬月。

「人の感情は、曖昧に変化する物ですから。特に……“恋”という感情は。まぁ、恋が方程式で解けてしまっては困りますが」

「キミらしい答えやね」

その言葉に、彼女はフードの下でフッと笑い……天鎖斬月を掴み取る。

瞬間、溢れ出る圧倒的な炎。海の中だろうと一切衰える事なく、他の全てを圧倒する真紅の炎が広がる。

「正に、炎の天鎖斬月……司るものは『真実の愛』。シグナムちゃんは……どうなるんやろうねぇ?」

「少なくとも、この世界がこんな状態では、私は力を貸す気はありませんよ」

こりゃ手厳しいなぁ、と呟くギンを放置して、彼女はこの世界を見上げる。

「たとえこうなっているのが、彼女の意志で無くとも……これを打ち破るか否かは彼女の意志です」

「全く、悪戯好きの魔法使いさんも面倒な事をしたもんやね。そろそろ崩天(ほうてん)くんも、じっとしとるのに飽きてくる頃やしなぁ」

――そろそろ、本格的に動き出す頃やなぁ……。

静かに女性を見つめるギンが、これからの事を予見する。だが、歪んだ物語の行く末は……誰にも予測できなかった。









◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「ユーノくーん!!」

「あ、なのは」

無限書庫。無重力空間に全く戸惑うことなく、あっさりと浮かんで検索魔法を使っているユーノの元にたどり着くなのは。

「どうかした? こんな早い時間に……」

「早い時間って……もう、お昼前なんだけど」

なのはが己の腕時計を見せて時間を確かめさせると、アレ? とユーノが首を傾げて不思議がる。どうやら、集中のし過ぎで時間の感覚がおかしくなっている様だ。

少々冷や汗を掻きながら、コートを着たなのはは思う……あぁ、調べ物が終わったら早いとこ引き戻さないとマズいな、と。因みに、左腕の包帯をコートでユーノから見えないようにしているのは、まぁ彼女らしいか。

「ま、まぁ取り敢えず、闇の書の事について何か解った?」

「う~ん……それが、あんまり解って無いんだ。検索ワードとかも変えてはいるんだけど……」

「へ?」

ユーノの意外な答えに、驚いたようになのはが目をぱちくりさせる。
検索能力、並列処理の速度、そのどちら共が恐らく右に出る者がいないだろうユーノが、まだ解って無いと言うのだ。

その事に、なのはは何処か違和感を感じる。幾ら無限書庫が広いと言えど、何も『闇の書』に関する詳しい情報が見つからないと言うのはどういう事か。

更に思考を深めるなのはだったが……その答えと言える物を先に導き出したのは、彼女では無く目の前にいる少年、ユーノ・スクライアだった。

「……もしかしたらだけど、前提条件が違うのかも」

「前提条件?」

「うん。闇の書に関して調べてて、昔まで遡ったんだけど……ちょっと不自然な形で“闇の書”に関する出来事が途切れてたんだ。そしてそこに、闇の書の出生とかは一切記されていない」

不自然な形で情報が途切れていた、そこを聞いてなのはもユーノと同じ答えにたどり着き、表情をハッとさせる。

「それって――」

「そう。これは僕の予想でしかないんだけど……もしかしたら闇の書は、元は違う形だったんじゃないかな? 少なくとも、今みたいに破壊をもたらさない物だったのかもしれない」

「それが、何らの要因で姿を変えて今の『闇の書』と言う形になった。だから検索しても闇の書になってからの――所謂、解析不能の暴走状態の情報しかないから、全くマシな情報が出てこなかった」

引き継いだなのはの言葉に、ユーノは同意の意味を込めてコクリと頷く。

恐らくはそう。だから、闇の書に変わる以前の物が検索に引っ掛からないのだ。全く違う物ならば、検索ワードもまるで違う物になるのだから。

まぁ、ユーノの能力が在れば時間を掛けて、強引に探し当てる事も出来たかも知れないが。

だが、そんな事は関係ないと言わんばかりに、なのはは表情をパッと明るくさせ、ユーノを誉め讃える。

「凄い……さっすがユーノくん!! あったま良いっ!!」

「い、いや、なのはだって直ぐに解った事だし……でも、そうなると元の名前が解らないと、もう少し時間がかかるかも」

「それなら平気だよ」

あっさりとそう言われて、今度はユーノが目をぱちくりさせる番だった。そうしている間に、なのはがごそごそとポケットを探り、取り出したのは携帯だ。

「ねぇユーノくん、大雑把で良いから、闇の書に関する情報が一番古いのはどれくらいか、教えてくれない?」

「えっと……大体、古代ベルカ時代かな」

「ん、ありがと」

携帯を耳に付けて、相手からの応答を待つなのは。程なくして、相手が電話に出たのか会話が始まる。

「あ、月天さん。ちょっと調べて欲しい事が在るんですよ。古代ベルカ時代の魔導書について……えぇ、今起こってる『魔導師襲撃事件』の闇の書に関する事です。はい、じゃあお願いします」

たった数十秒にも満たない短い電話だったが、どうやら目的は達成できたらしく電話を切って、ユーノの方に向き直りなのはは笑顔を見せた。

「それじゃ、情報が来るまでお昼にしよっか」

「え……あ、うん」

そういえば、もうお昼だったっけ、と思い返しながらユーノはなのはによって休憩室まで引っ張られて行くのだった……後に、これが無限書庫の恒例行事となるのだが、今の二人は知る由もなかった。

と言う訳で、無限書庫に設置されている休憩室。もともとユーノとお昼を食べるつもりだったのか、なのはが作ってきたお弁当(自信作)を二人の中では恒例の雑談をしながら食してした。

で、そんな二人の会話が変化したのは、ユーノが何気なく気になった事を訊いた時だった。

「そういえばさ、ヒナギクさんってどれくらい強いの?」

「ん? 師匠? どうしたのユーノくん、藪から棒に」

「いや、ちょっと気になって……なのはの師匠って言うから、どれくらい強いのかなって」

本当に気になっただけらしいユーノは、少々興味が在る様な表情でそう言った。対するなのはは、まぁ良いけどね、と前置きをしてから、彼の質問に答え始めた。

「そうだねぇ……これは私の主観でしかないんだけど、私が“軽く”見積もって師匠が全く本気を“見せた事が無い”事を踏まえると――そうね、魔導師ランクに置き換えてSが軽く“十個”くらい付くんじゃないかな?」

「――は?」

マテマテ、彼女は今なんと言った? Sが軽く十個? いや、そもそも魔導師ランクはSSSまでしか無いから、それはもう計測不能なレベル……言ってしまえばランクXとかになるんじゃないか?

しかも彼女は、自分の主観で“軽く見積もって”と言い、さらに自分にも本気を見せた事が無いと言っている。それはつまり、なのはの予想より上を行く可能性の方が高いと――あぁ、だんだん頭が痛くなってきた。

箸を置いて、突如頭を抱え出したユーノの気持ちが理解できたのか、なのはは苦笑しながら彼を見る。

「まぁ、普通はそうなるよね。でも……師匠は自分から戦いたがらないからね。あんまり関係ないかも」

「え、そうなの?」

「うん。私が止めている所為でも在るんだけど、なんだかんだ言って本人が戦いをあんまり好きじゃないから。頼まれたら断れない性格も在って、ジュエルシードの時は結局介入して来ちゃったけどね」

アレも結局、ヒナギクにとっては頼み事の域を出ないことだったのだろう。事実、あのジュエルシード事件は彼が介入せずとも、なのは達が解決できたのだから。

「それでも戦う時は、相手よりちょっと上の力しか振るわないしね」

ただ、それをしても相手をいとも簡単に倒してしまうのは……彼の圧倒的“過ぎる”力の所為だ。

戦いを楽しみたい訳では無い――そうでないと、相手を“壊して”しまうから。だから、ヒナギクは相手を『敵』として認識しない。そうする必要が、全く無いのだから。

「どうして……」

「――過ぎた力は、災いしかもたらさない。たとえ過去の記憶が無くても、師匠はそれを本能的に理解しているんだと思う。記憶に無くても……魂に刻まれている物は、在るから」

それが解っているからこそ、彼は己の力を必要以上には振るわない。そして、必要以上に自分の心を相手に踏み込ませない。

なのはでも、ここまでの関係になるのに苦労したものだ。だが、それもあの二人によって変わりつつある。恐らく、師匠を変えるのは自分では無く――

「あれ? なのは、携帯鳴ってるよ」

「――あ、ホントだ。月天さんからかな……」

思考を引き戻し、急いで電話に出る。ろくに画面を見ないで出たが、やはり相手は自分の予想通りの人物だった。

『おうなのは。取り敢えず調べ終わったぜ』

「流石に早いですね。で、どうでした?」

『ビンゴ。古代ベルカ時代の資料を漁ってみたら、見事にそれらしい物もみっけた』

電話の相手、月天はそこで一度言葉を切り、そして続けた。

新しいキーワード、それは――

『『夜天』……夜天の魔導書だ』

――過去と現在が結び付き、奏でられる物語が終曲へと音色を鳴らし出す合図。

魔法使いたちと理から外れし者たちが動き……歪んだ物語は加速する。
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  1. 2012/07/07(土) 00:41:44|
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