サクライロノセカイ/リリカルなのはなお話

えびえもん兼いかじゅんのブログです。リリカルなのはの二次創作などを書いています。

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魔法少女リリカルなのは 烈火の翼 第23話

記憶。それは、その人物を成形する為の大切なオモイデ。これがなければ人格は成り立たず、無くせばその人格は消滅する。

「完璧……か」

何もない、その空間には何もない。丘だけが聳えるの空間で、金髪のストレートの髪をなびかせる誰が呟く。

記憶。大切なオモイデ。しかし、その大切なオモイデも、人によってはそう成り得ないのだ。

「完璧って何ですか? 完璧だと、人に頼ってはいけないの? 完璧って、人と触れ合う事もできないの?」

“彼”は完璧だった。誰よりも強かった。誰よりも才能があった。

――だから、誰にも頼る必要は無い? いいや、その答えは“否”だ。どれだけ完璧だろうと、一人では出来ない事が絶対にある。人は独りでは生きられない。それが“ヒト”なのだから。

そして同時に、ヒトという種族はどうしようも無く愚かだ。外面だけで判断し、勝手に“評価”を下す。無論、そうではないヒトもいるが。

『なに言ってるんだ、■■くんならそのくらい簡単に出来るだろう? 何せ“完璧”なんだから』

『■■くんは一人でも平気だよね? “完璧”なんだから』

『じゃあこれは■■くんに任せよう。大丈夫だよね? “完璧”なんだから』

気付いた時にはそうだった。たとえ自分から頼ろうとしても、誰も相手にせず“完璧”だからと、一人で出来るだろうと、そう言って頼る事もできなかった。

――いつしか、頼る事を忘れた。

「待ってたって、泣いたって誰も助けてくれない? だから助けを呼べ、手を伸ばせ? それが出来る人は良いですよ。――手を伸ばしたって、誰も助けてくれなかったら、どうすれば良いんですか?」

――それは……もう、自分を殻に閉じ込めるしかないんですよ。

だから願った。完璧なんていらない。今までのオモイデだって必要ない。普通が良い

でも、彼は“普通”という物を知らなかった。忘れていた。己が完璧だった故に“普通”には成れなかった。

けれど、時空を統べる翼は応えた。己の主の歪んだ願いを……叶えた。

キオク。大切な筈のオモイデ。

「私は貴方、だけど貴方は私ではない――貴方は、私と違って愚かでは無いから」



















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「お兄ちゃんはもうちょっと自分の身体をだねぇ――ちょっと聞いてるの、お兄ちゃん!?」

「はいはい聞こえてるよ、さくら。そのお説教、もう何回目だと思ってるの?」

「何回も言わないとお兄ちゃんが言う事をきかないからでしょ!?」

まるで噴火しかけの火山……いや、もう噴火した火山か。病院の一室に響く叫びの声の主は、金髪の少女さくらの者。そして彼女のお説教をさらさらっと受け流しているのは、病室のベッドに座るヒナギクだ。

彼の言う通り、さくらの説教はもう何十回と繰り返されていた。それもそのはず……何せ、先日ヒナギクは自分の身体の事を全く気にせず病院を抜け出し、大騒ぎになったばかりなのだから。

しかしそれでも、これ以上は他の外に迷惑が掛かるだろう、とベッドの脇の椅子に座るシグナムと雪華が助け船を出した。

「ま、まぁまぁさくら。主も反省しているだろうし、これくらいにしたらどうだ?」

「そうよさくらちゃん。それに、ヒナを休ませてあげましょ?」

「うにゃぁ……」

意外という程でも無いが、予期せぬヒナギクへの助け船にさくらが唸る。そうして少し悩んむ素振りを見せたさくらが、ため息を吐いて再び言葉を放った。

「……分かった。でも本当に、無理だけは絶対にしないでよ、お兄ちゃん」

「分かってる」

真剣な表情のさくらに、ヒナギクもふざけた表情も無く応える。それを聞いたさくらが、今度こそ諦めた様にため息を吐き、シグナムと雪華に一言かけて病室を出ていった。

「……ふぇぇ。ありがとう二人とも、助かったよ」

「どういたしまして。でも――」

「私達も心配していたのをお忘れなく」

雪華の言葉に続けて言うシグナムに、ヒナギクは苦笑しながら、分かってますよ、と応えた。ヒナギクが病院を抜け出したと聞いた時、シグナムはまだ何とか冷静さを保っていたが、雪華なんて聞いた瞬間に仕事を放り出して反射的にヒナギクを探しに行こうとした程だ(無論、電話口のさくらとその場に居た冬獅郎によって説得されたが)

「本当に心配したんだからね。こんな事はもう無しにしてよ……っと。案外難しいわね……」

「全く、貸してみろ。こんな物はな、こうして簡単に……出来ないな」

二人揃ってあれ? となりながら頑張ってリンゴを剥いている雪華とシグナム。相変わらず不器用な二人に、自然と笑みを隠せないヒナギク。

こういう不器用な所もまた、変わらず愛おしい。そんな事を考えながら、ヒナギクは危うい手付きの二人からリンゴとナイフをスッ、と取り去る。

「「あ……」」

「二人とも不器用すぎだよ」

言いながら、ヒナギクは二人とは比べ物にならない程に無駄の無い手付きでリンゴを剥き、はいっとお皿を二人に差し出した時には、リンゴが見事にウサギ型に出来上がっていた。

思わず、シグナムと雪華は「おー」とぱちぱちと拍手をした程に手際が良かった。本当に、ヒナギクの器用さには素直に評価するしかない。

「はぁ、相変わらずヒナは器用よね~……羨ましい」

「そうだな。流石です、主」

「あはは、誉めても何も出ないよ」

……相変わらず、シチュエーションの役割が逆な気がする事にはもう突っ込まないで置こう。

それはそれとして、雪華はともかくシグナムは完全に不器用という訳では無い。ヒナギク程では無いにしろ、器用になる方法はある。

――同性の雪華相手ならまだしも、ヒナギクを前にしては恥ずかしくて絶対に出来ない方法だが。

まぁ、主が帰って来るまでの間なら家事をこなしてやろう。そう心に決め、シグナムは雪華と同じタイミングで最後のリンゴを口に入れた……。

「「って!! これはヒナ(主)の見舞いの品だ(です)よ!?」」

「あれ? そうだっけ?」

「「そうだ(です)よ!!」」

可愛らしくキョトンと小首を傾げるヒナギクに、思わず揃ってツッコミを入れる雪華とシグナム。

さらっと渡されたので、さらっと食べてしまった二人である。だが、二人のツッコミにも何が可笑しいのか楽しげにヒナギクは笑う。

「ふふ、いいよ別に。そんなにお腹も減ってない――」

瞬間、お約束と言わんばかりに、きゅう~と可愛らしくお腹が鳴る。
誰の物かは……顔を真っ赤にしたヒナギクが言うまでも無く示していた。

「…………もう、お嫁に行けないよぅ……」

「へ、いやいや、この程度で結婚には関係しないから!! あと、お嫁になら私が貰ってあげるからね!!」

「お前な……」

さりげなく入れた雪華の言葉は、どうやらヒナギクには聞こえなかったらしいが、隣に居るシグナムにはきっちり聞こえてらしく、彼女はため息混じりに呆れ気味な言葉を放つ。

が、見舞いの品を食べてしまったのは自分でも在るので、この状況はどうにかしなければいかんな、と暫し思考し……。

(やはり、これしかないな)

シグナムは己の右腕をヒナギクからは見えない角度に隠し、ギュっと握り拳を作る。

それに気付いた雪華がシグナムを見ていたが、全く気にする事もなく形をしっかりとイメージして拳を開くと……ポンッ、という音が出そうな程に見事な桜餅が現れた。

「はい主。桜餅、お好きでしたよね?」

「ふぇ……ありがとうシグナム!! どこから出したの!?」

「ふふふ……ひ・み・つ、です」

桜餅を受け取りながら興奮気味に訊くヒナギクに対して、人差し指を唇につけて可愛らしくそう言った。

――隣で雪華が盛大に吹き出し、笑いを必死に堪えているのは、正直悪くないと思います。

そんなこんなでヒナギクが桜餅を美味しそうに食べている間に、先程の光景を見た雪華がこっそりシグナムと小声で会話する。

「ちょっとシグナム、今の何よ?手品とかの部類じゃないわね」


「まぁ、一応『魔法』だな」

「魔法? 今のが?」

雪華が目をぱちくりさせるのも無理は無いだろう。彼女の知識内にある魔法とは、なのは達が使っている様な物。少なくともその中に、食べ物を出す魔法なんて存在しない。

つまりは、彼女達の『魔法』とは全く性質の異なる物なのだ。

「あぁ、私のは手から“和菓子”を出す『魔法』だ」

「か、変わった『魔法』ね。手から和菓子を出すなんて。役に立つの?」

「微妙だな。私の出す和菓子は私のカロリーを消費するから、私が食べても結果的にはマイナスだ」

先ほど出した桜餅も、当然ながらシグナムのカロリーを使っている。しかもヒナギクが食べているので、シグナムには還元されず、たとえ彼女が食べていたとしても結局はプラマイ0。食べる時間などを含めれば、寧ろマイナスになるだろう。

出す食べ物の違いは有るが、これはさくらの『果物を出す魔法』と同じ性質だ。

自分の使う『魔法』なのに、自分には何のメリットも無い……シグナムの言う通り、非常に微妙と言わざるを得ない。

「確かに微妙ね、この魔法。使う意味が全く無いじゃない」

「そうか? 少なくとも――」

言葉と共にシグナムが視線を移す。その視線を追う雪華が見たのは……シグナムが出した桜餅を食べ、とっても可愛い満面の笑みを浮かべるヒナギクの姿だった。

「――食べた者を笑顔に出来る、良い『魔法』だと私は思うがな」

「……ま、確かにそうかもしれないわね」

ヒナギクの笑みを見て、二人の表情も自然と綻ぶ。そう、確かに自分には意味の無い魔法なのかもしれない。

けれど、大切な人を笑顔に出来るだけで、それは意味の有る魔法になるのかもしれない。

人を笑顔に出来る『魔法』に……。












◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「さぁて、なのはちゃん? こんな怪我をしてしまった理由を話てもらおうかしら」

「……“ちょっと”無茶をして」

「――貴女の“ちょっと”は一切あてになりませぇぇぇぇぇぇんっ!!!!」

声だけで地震でも起きそうな音量に、流石の処刑人‐エグゼキューター‐高町なのはも耳をギュっと塞いで何とか耐える。

地球から見ると異世界のミッドチルダ、その病院の診察室(防音設備万全)。そこには、暴走フェイトとの戦いにて左手を負傷したなのはと、ギンが電話で話していたこの病院の先生の一人である女性がいた。

なのは的には別に病院に行く程の怪我では無いと思っているのだが、それはギンと怪我の具合を見たクロノが全く許さず、守護騎士たちにも目立った動きが無い事から、半日ほどの時間を貰い彼女はこの病院に来たわけだが……予想通り、先生から説教に近い叫びを戴いた訳である。

「まったく、どうして来るたび来るたび怪我をしてくるのかしら。この前ほどでは無いにしろ、今回も酷い怪我じゃない」

「この前って……もう一年くらい前の話じゃないですか」

「“まだ”一年よ!! あれだけ大怪我をして、下手したら左腕が動かなくなってたのよ!?」

「あーはいはい分かってますよ。ホント、先生とこの回復力がなかったら今ごろ私の左腕は動いてませんしね」

「分かってるなら無茶しない!! はい、治療おしまい」

丁寧に包帯の巻かれた左腕をペシっと叩かれ、ちょっと痛いかも……なんて思いながら、彼女は一年近く前の怪我を思い出していた。

アレは確かにヤバかったなぁ……まぁ自分の所為なのだが。そりゃあ、外部から集束させた魔力を自分の左腕に“全て”込めれば、大怪我もする。何せ、自分の許容範囲を超えた魔力を全て……しかも左腕一本に取り込んだのだ。

許容を超えた魔力によって耐えきれなくなった左腕は、必然的に崩壊していく。さらにはそれを直ぐに解放するならまだしも、なのははその状態のまま直接“殴って”攻撃をした。最早、集束“砲撃”ですらない。

(まぁただ、そんな無茶したお陰でいろいろ掴めた気がするから、結果オーライかな?)

掴めた変わりに、全治2ヶ月の大怪我を負ってしまっては世話がないが。と言うか、彼女の常人離れした驚異的な回復力と、先生の的確な処置が無ければ一生左腕が使い物にならなくなった可能性も在るのだ。

怪我をした事への反省は一切無い辺り、彼女の性格と周りの人間の苦労がよく分かる。

「それじゃ、そろそろ帰ります。依頼も残して来たままなので」

「はいはい。今度ケガしてきたら、ベッドに縛り付けてやるからね」

「あ、あははは……慎んで遠慮させていただきます」

流石にそれは勘弁、とばかりに言うなのはが右腕で診察室のドアを開けようとする。その時、偶然服の袖が捲れて彼女の右腕に刻まれた傷の跡を先生が見た。

一瞬いたたまれない気持ちになった彼女は、立ち去ろうとするなのはに思わず声を掛けた。

「ねぇ、その右腕の傷は治すつもり無いの?」

立ち去ろうとするなのはが、ピタリと足を止め、己の右腕を見つめる。この傷痕は、治そうと思えば直ぐに治せる。ミッドチルダの技術力を以てすれば直ぐにでも。

それをしないのは……なのはの意志だ。

「治せませんよ……これは、私が『出来損ないの魔法使い』っていう証なんですから」

「貴女はいつまで出来損ないなの?」

「――出来損ないは、どこまで行っても出来損ないですよ」

これ以上は話ても無駄、そう言わんばかりに靴音を鳴らし今度こそ診察室から立ち去るなのは。

彼女は人を“助ける”ことは出来る、けれど人を“救う”ことは出来ない。ただ、それだけ。

――過去の呪縛は未だ消えず、歪んだ物語はまた加速する。
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  1. 2012/03/26(月) 23:57:36|
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