サクライロノセカイ/リリカルなのはなお話

えびえもん兼いかじゅんのブログです。リリカルなのはの二次創作などを書いています。

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魔法少女リリカルなのは 烈火の翼 第22話

「おいおい、来てやったのに遅かったは無いだろ」

「実際遅かったじゃない。大体、アンタが面白そうって判断したから来たんでしょ?」

なのはの呆れ気味な言葉に、クーゴはまあなと同意しつつ、突然右手を前に突き出す。

その瞬間、彼らに向かって放たれた雷撃は何かに弾かれ消滅した。が、そんな事は知ったことかとばかりに雷撃を放ち続けるのは……金髪の少女フェイト、を操る虚(ホロウ)だ。

「『オオオアアアアアアァァァァッ!!!!』」

無視するな、そう言わんばかりの叫びを放ち、雷撃を二人に連続で飛ばす。

だが、クーゴはそれを涼しい顔で防ぐ。防ぎ続ける。虚の音圧と雷撃の爆音、さらには生み出される煙と爆炎は最早“戦場”と言っても差し支え無いだろう。

「おい……あのガキの力」

「察しが良くて助かるわ。多分、アンタのレアスキルがあの子に移って、あの子風に変わった物よ」

虚の攻撃を防いでいたクーゴの表情が変わり、フェイトの力を見抜いたのとほぼ同時になのはも自身の推測を口に出した。

クーゴのレアスキル『瞬間魔力放出』……その力がフェイトに移っている。

巨大な力によるメリットも……無論、デメリットも。

「……レアスキルって、人に移るもんなのかよ?」

「前例は無いわね。ただ、あの子の出生の関係で、そういった“チカラ”を自分の身体に取り込み易い体質なのかもしれない」

フェイト・テスタロッサの出生……それはつまり、アリシア・テスタロッサの『クローン』であるという逃れようの無い事実。

どこまで技術が進歩しようと、クローンという物は科学の力で生み出された物に他ならない。

母――人の身から生み出された“ヒト”の魂より、クローンとして生み出された“ヒト”の魂は小さい。だから、様々な物を取り込み易い……と、なのはは推測していた。

「まぁ今回の場合、上手くフェイトちゃんの中に入り込んだ虚が彼女にもっと強い力を与える為に、アンタのレアスキルを取り込んだ……と考えて良いわね。で、大して力がデカくなかった虚は機会を待って、そしていま暴走した」

暴走した要因は、確実に魔力を奪われた事によるフェイトの意識の低下だろう。フェイトの中に虚が入り込めたのは、いま暴れている虚が“小さい”為だ。

普通、虚が成長した人間に入り込むのは不可能なのだ。今回の様な例外――もしくは、生まれた時から虚の力を持っているか、内部に虚の力を“持った”武器を使いこなす……例外を除きこの二つしか、虚の力を使いこなす方法は無い。

……例外的に虚の力を持った人物は、基本的に“例外無く”暴走するだろうが。今のフェイトの様に、虚に意識を乗っ取られて。

「そうかい。まぁ理由なんて、あのガキの出生に何か興味は無ぇからどうでも良いとして、どうすんだよ。あのガキ倒すだけなら、わざわざ俺を呼ぶ必要なんざ無ぇだろ」

今も変わらず放たれる雷撃を防ぎつつ、クーゴが言う。そうだ、フェイトを“倒す”だけならクーゴを呼ぶ必要性は一つも無い。

如何に今のフェイトの力が強大でも、所詮はただ闇雲に暴れる“獣”だ。

なのはの力を以てすれば、いくらでも“倒す”方法など在る。それこそ、処刑人(エグゼキューター)の名のままに。

しかしそうしないのは……虚に操られたフェイトを傷付けないため。事実、なのははフェイトに“傷一つ負わせていない”。唯一反撃と呼べたのも、砂鉄の剣を破壊した時だけだ。

――変わりに、彼女の左腕はこの戦闘ではもう使い物にならないだろうが。

「クーゴ、一瞬でいい。フェイトちゃんの動きを“完全”に止めて。攻撃も、指一本動かせない様に」

「……無茶苦茶言うなお前。あのガキの動きを完璧に止めろなんて」

「出来ないなら良いわ。成功率は下がるけど、私一人でやる」

言うなり、最初ほど多くは無いが血が流れる左腕を無視して前に出ようとするなのは――を器用にも右手で魔力の壁を作り雷撃を弾きながら、左手で肩を掴んでクーゴが止める。

その表情は、まてまて逸るな、と言っている様に見えた。

「誰も出来ないとは言って無ぇよ。ただ、完璧に止めるには少し時間が掛かる。大雑把に止めるなら簡単だが、完璧に止めるとなると少しばかり制御する時間がいる。その間、俺は完全に無防備だ」

「10分在れば十分よね。その間、私があの子を足止めするわ」

「――出来るのか?」

それは、その左腕で“足止め”をこなせるのか、そうなのはに問い掛けていた。

しかし……彼女は愚問ね、とばかりに薄い笑みをこぼし応える。

「切り札、一枚切らせてもらうけどね。合図は私が飛び出したら、良いわね?」

「なのは――」

返事はせず、なのはの名前を呼ぶクーゴに彼女は何よ、と応えて彼を見ると……そこには、自信満々という表情のクーゴがいて、なのはが見ると同時に言葉を放った。

「――10分もいらねぇ。4分で十分だ」

「……了解」

ただ、そう返事をするなのはも、さらに笑みを深めて瞳を閉じた。

――瞬間、なのはの中で何かが弾けた。

本当に刹那の時で、なのはが纏う空気がまるで違う物に変化する。
静かに冷たく、だが何処か熱く、彼女の胸がドクン、ドクンと鳴る。
なのはが瞳を開く……彼女の中で弾けた何かによって、彼女の思考はクリアに澄み渡り、雷撃も、爆炎も、視界に映る何もかもがスローに見えた。

覚醒した彼女は……阿修羅をも超え、『神羅』となりて――敵の全てを凌駕する。

「ギン――言葉はいらないわね」

『当たり前や。何年キミと一緒にいる思うとんの』

ただ、虚を見据えるなのはの言葉に、ギンは然も当然とばかりに応える。

そうだ、二人の間に言葉はいらない。隠し持っていた切り札を解き放ったなのはが――動いた。

「『アアアアアアアアァァァァァァッ!!!!』」

爆炎を切り払い、突っ込んで来る者を……高町なのはを認識した虚が、クーゴから彼女へ標的を戻し、電撃の槍を撃つ。

それは、凄まじい速度と威力を以ってなのはに迫る殺意の電撃。その電撃になのはは走る速度を――落とさない。その速度を維持したまま、己の額に迫る電撃の槍を難なく避けた。

「『!?』」

虚の表情が今までの様な愉悦の笑みから、驚愕の物へと変わる。

今までの様に切り払った、もしくは大きく飛び退いたのならまだ分かる。しかし、なのはは電撃の槍を“避けた”のだ。紙一重で、ほんの少し顔を右に反らしただけで、最小限の動きで雷撃の槍を回避した。

あり得ない、自分が支配しているこの人間の力は、普通の人間では太刀打ち出来ないはず――

『キミ、戦ってる途中にボケッとしとる暇あるん?』

気付いた時には、もう遅い。虚の間近に迫る刀……つまり今の思考の一瞬でなのはに接近されていた事を示していた。

虚の仮面に迫る刀。だが、虚は強化されたフェイトの身体能力を発揮し、なんとバク転で横凪ぎに振るわれる刀を回避、そこから再び電撃の槍を撃つ。

けれども、やはりそれも当たらない。なのはは“紙一重”で電撃の槍を回避しながら、全く速度を落とさずに虚に迫る。

理解が出来ない。虚の攻撃は、全て当たらない。先程までとは明らかに違う、なのはの動きに戸惑いを隠せない虚。

最短距離で虚に迫り、牽制の攻撃を放ち、反撃は最小限の動き……何一つ無駄の無い動きで避ける。

今のなのはに、フェイトを操る虚“程度”の攻撃など当たらない。当たる筈が無い。

――全て“見えている”のだから。どう動けば良いかなど、考えるまでもなく頭に浮かぶ。

今の彼女はまだ未熟ながらもその身に御神の血を持つ者……『神羅(しんら)』のチカラを扱う者なのだから。

「『オオオオオアアアアアアァァァァ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!!!!』」

虚が吠える。音圧が強化ガラスを粉々に砕き、爆風を巻き起こし、雷撃が出鱈目に放たれる。

しかし、それすらもなのはにとっては“無駄”でしかない。落とされる落雷の間を擦り抜け、時に身体を回転させ、全く無駄の無い動きで避ける。

そうして、何度も攻防を繰り返した時、何故か距離を取ったなのはが、

「……4分」

小さく、だが確かにそう呟き、神鎗を静かに構えた。周囲の音が消えた様に、ゆっくりと、右腕を上げ、止めた先に在るのは――虚の仮面。

神鎗を構えたなのはに漸く気が付いた虚が、その身を翻し切っ先から逃れ

「『!?!?』」

――られない。その場に縫い付けられた様に、動けなくなった虚の周りには……目には見えない、一瞬だけ敵を拘束する魔力の塊が在る。

だから動けない。一瞬、高が一瞬。しかし、然れど一瞬。

そう、なのはには“一瞬”在れば十分だ。狙う標的は、刀で正確に貫かなければいけない仮面の“額”。1ミリのズレでも、それは失敗を意味する。

だがしかし――今のなのはにとって、それは一瞬あれば造作もない事だった。

神鎗を突き付けた彼女の唇が、言葉を紡ぐ。

「――――卍解」

それは……小さき虚が破滅へと向かう一言。

無音の一瞬。そこから少しの間を置き、強烈な風が吹き荒れる。

なのはと虚の間にあったのは、刀の長い刀身。それが虚の仮面を一瞬で……音の“五百倍”の速度で空間を斬り裂き、仮面の額“だけ”を貫いていた。

仮面が砕け散る。虚にとっての幸運は、小さき彼を消滅させた物が、彼が相手どるには分不相応すぎた物という、何の慰めにもならない事だったのかもしれない。

“神”をも“殺”すその“鎗”に。

「…………神殺鎗(かみしにのやり)」



既に刀を納めたなのはが、聞こえていない事を知りつつも、虚への祈りの様に……そう、呟いた。









◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「んで? 結局、何の為にそのガキの動きを止めたんだよ?」

使用しなかった太剣をしまい、ビシっとクーゴが指を差したのは、器用にも片手だけでなのはが背中に背負う、内部の虚が消滅し気絶したフェイト。

それを見たなのはは、説明するのめんどくさいな~、とか思いながらも、彼を呼び出したのはなのはなので説明しない訳にもいかない彼女は、一度疲れた様に――実際、疲れているのだが――溜め息を吐いてから応えた。

「今回の虚は、小さい分再生能力が優れてるタイプだったからね。確実に“核”を貫かないと駄目だったのよ」

「あー、成程な。だから動きを止めて、確実に消滅させたかった訳か」

「そういう事。まぁ、普通の強い虚には弱点になる核が無いから、その分再生能力が優れていた……ってとこかしら。どちらにしろ、フェイトちゃんの中に隠れられたら手出しが出来ないから、逃がしたくなかったのよ」

つまりは、小さい分再生が容易だったのだろう、あの虚は。倒された今となっては、どちらでも構わないのだろうが。

説明に納得した様な様子のクーゴを見るなり、なのはが訓練場の瓦礫を退かしながら出口に向かう。

「どこ行くんだ?」

「決まってるでしょ、フェイトちゃんを医務室に運ぶのよ。ただでさえ負担掛けちゃいけない状態だったのに、これだけ無理やり暴れさせられたとなると、暫くは目覚めないだろうしね」

「ほんなら、なのはちゃんもついでに治療受けんとやね?」

「面倒ね……こんなの放っといても治る――ッ!!」

――しまった!! なのはがそう思った時には、もう遅い。振り向いた彼女の視線の先には、携帯電話で何処かに電話をかけるギンの姿。

「させるかぁっ!!」

「おっとっと」

瞬間、なのはが右腕の服の袖の裏から折り畳み式ナイフ、所謂バタフライナイフ――何でそんな物を仕込んでんだ……というクーゴの疑問は最もだ――を取り出しながら紅い刀身を展開し、ギンの携帯電話めがけて迷いなく投げつけた。

そんな行動が迷いなく一瞬で出来る彼女にも驚きだが……投げ付けられたナイフを空いている手であっさり止めるギンにも、驚きを通り越して呆れるしかない。


「もしもし、先生さん? 明日辺りに怪我人一名、勿論なのはちゃんなんやけど、連れていくからよろしくですわ~」

「ちょっとギン!?」

「はいはい、ほんなら明日はよろしくお願いしますわ~……よかったやん、ベッドはいつも空いてるわよ、やってさ」

「良くないわよ!!」

電話が終わり、相変わらずの薄笑いで言うギンに、バタフライナイフを取り返しながら噛み付くなのは。

その顔は怒りと同時に、何処か面倒な事になった……という表情をしている気がした。

「キミ、こうでもせんと病院行かないやろ? 今回は『神羅』まで使ったんやし、良い機会やん」

「自分の体調管理くらい、自分でしてるわよ!! ……っていうか、何で事ある毎に私を入院させようとするのよ、あの先生は」

「行くたびに、キミが大怪我しとったからね」

まさに正論、ギンに何も言い返せないなのは。そりゃあ、行くたびに大怪我をしていれば、そんな事にもなるのだろう。

そして今のなのはの思考は……どうやって言い訳して早めに帰ろうか、何て事を考えていた。反省する気は、まるで無いらしい。

何はともあれ、取り敢えず“一件”落着。そう、まだ“一件”しか解決していない。

――まだ、この出来事は序章にしか過ぎないのかもしれない。


「ありゃぁ、もうこんな時間なんだ……」

「らしいな」

なのは達とは別の場所、そして別の時間でそう言葉にしたのは、沈みゆく夕日を残念そうに見るヒナギクと、彼を見つめるヴィータだ。
沈みゆく夕日……その美しい自然の光景ですら、ヒナギクの美しい容姿を引き立てる物にしか過ぎない様に見える。過大評価ではなく、現実に彼を見ているヴィータにはそう思えた。

そして、ヒナギクがこういう言い方をするのは、帰る時間が来たという事なのだろう。だからか、ヴィータは今まで触れなかった事に……触れた。

「……ヒナギクってさ、記憶喪失なんだよな?」

「そうだよ~。それがどうかした?」

「何か思い出せないのかよ? 例えば……兄弟が居たとか――!?」

ヴィータが、突如なにかを恐れる様に後退る。肌を貫く様な、冷たさ。空間を、時間を、全て支配されている様な、恐ろしい感覚。

『兄弟』。その単語が出た瞬間、ヒナギクが“変わった”。空間も、普通の人間が消えた様に思える。

……“アレ”は誰だ? ヒナギクではない、“何か”が今の彼。

「そうですね。居ますよ、この世で一番、大っ嫌いな――クソ兄貴が」

言葉の一つ一つが、ヴィータの肌を突き刺すように、痛い。相手はただ立っているだけなのに、何一つ動ける気がしない。

殺気を向けられたら、一瞬で気絶してしまいそうな、そんな感覚。

格上なんて言葉じゃ済まされない……最早『別次元』だ。

「誰だよ……テメェ……!!」

それでも、ヴィータは吠える。ヒナギクでは無い“何か”に、必死に叫ぶ。

ヒナギクの姿をした“何か”が、ゆっくりと振り返る。夕日をバックにした彼は、ヴィータの目が確かなら――一対二枚の、美しい天使の様な純白の“翼”を背中から出現させていた。

「……私はこの子、だけどこの子は私ではない。とでも言っておきましょうか」

「なん、だと……!?」

「私は――」

“何か”がゆっくりと唇を動かし、言葉を紡ぐ。しかしそれは、

――チリン。

鈴の音によって、ヴィータの耳に届く事はなかった。同時に、支配されていた空間が、時間が、貫く様な冷たい気配が、全て消え去り……“何か”も翼と共に消え失せた。

「あれ? どうしたのヴィータちゃん」

「……へ?」

――覚えて無い?

今、ヴィータの前に現れた“何か”は、ヒナギクの記憶には無いらしい。その証拠に、身構えるヴィータを不思議そうに見つめるヒナギク。

そう、ヒナギクだ。いつの間にか、ヒナギクに戻っている。

わ、訳が解らねぇ……と混乱するヴィータの耳に、今度は誰かの叫び声が聞こえて来た。

「おぉぉぉぉぉぉにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃちゃあああああああああああっん!!!!」

「あー、流石にばれちゃったか」

全力疾走、オリンピック選手も真っ青な速度で直進しながら叫ぶ人間を見て、ヒナギクは呟く。

……覚えているだろうか。ヒナギクは今、入院していなければならない身体なのだ。それなのに外に出ている事が身内の誰かに知れれば――まぁこうなる。

「まぁぁぁぁぁぁぁぁあああああてぇぇぇぇぇぇぇええええええっ!!!!!!」

「待てと言われて、大人しく待つ人はいないよ。じゃあね、ヴィータちゃん!!」

「あ、おい!!」

引き止めようとした時には、もうヒナギクは遥か前方にいた。

はやっ!! とヴィータが思う暇も無く、今度はヴィータの隣を金髪の髪をツーサイドアップに括った少女が、やはり凄まじい勢いで通り過ぎた。

だからはやっ!! と今度こそヴィータが思った時、チリン――先程と同じ鈴の音を少女は隣から聞き、ふと隣を見て……驚愕で目を見開いた。

「まったく……早すぎるぞ、さくら。――ん?」

首に鈴付きのチョッカー、桜色の髪を黄色いリボンで括った女性が……シグナムが自分を不思議そうに見ていたのだ。

数秒の間、彼女にジーーっと見つめられたヴィータは少々だじろぐが、少女が何か言うより先にシグナムが口を開いた。

「お前、何処かで会った事ないか?」

「へ、あ、ね、ねねねねねぇよ!!」

ヴィータ、きょどり過ぎ。お分かりだろうが、シグナムはあの時――結界をブチ破って現れた時――ヴィータの姿を見ていない。丁度、雪華が遮る形で現れたし、目の前で自身の主が倒れていたのだから。

そして、それよりずっと前にも……。

(うぅん……少なくとも、おばあ様と暮らしていた時には会って無いな。ならそれより前……は、私、子供の頃からおばあ様と一緒だったよな?)

きょどる少女の様子を見て、ますます深く考え込むシグナム――何かとんでもなく重要なキーワードを入れてさらっと考えているのは、決して気のせいではない。

シグナムの記憶は、既に戻りつつある。朧気な記憶が多いが、それでも思い出して来ているのは確かだった。まぁ、都合よくヒナギクの元に現れた理由が解らないのは、本人も気になる事ではあるが――

(……ま、『悪戯好きの魔法使い』のおばあ様の事だから、どうせ私に何かしたのだろうな)

――どうやら、そこら辺の理由は大体理解できているらしかった。目の前の少女の事も、どうせ他人のそら似なのだろう……そう結論付けたシグナムが、まぁ良いか、と呟き、視線をヒナギクとさくらが走って行った方に向ける。

「さてと、私は主とさくらを追わねばならんのでな。これで失礼する」

「え……お前、アレに追い付けるのかよ?」

「アレって……まぁ、主が遊び半分で逃げているのならば、行き先を予想して先回り出来るさ」

探偵みたいな言い方だな、オイ。そう思うと同時に、ヴィータは彼女が自分の事を覚えていない事に少し寂しさを感じる。

――けどまぁ、ちゃんと自分の主を見つけてるんなら、良いか。

何でこんな場所に居るかは、訊かない。今は“他人”なのだから、訊ける筈が無い。自分の事を覚えていないのは……まぁ自分も、全部覚えている訳では無いのでよしとしよう。

ただ一つだけ、言いたい事があった。

「おい」

「ん、何だ?」

「……護れよ。ヒナギクを……お前の主をな!!」

そう言われて、シグナムは少し驚いて目を見開くが、叫びに応える様に笑みをヴィータに見せて……言った。

「当たり前だ。私は主の騎士で――主を笑顔にする『魔法使い』だからな」


違(たが)えた道は交わらず、夜天の騎士“だった”者と闇の書の騎士は別の道を行く。

けれども、主を護るというその心は同じ。

歪んだ物語は――急速に加速する。









◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

翌日、ミッドチルダのとある病院。その待合室には、結構目立つ古びた本を読み進める女性……高町なのは。

ペラリ、ペラリとゆっくりとだが本を読み進めるなのは――が、突然とあるページで表情を変える。

「なにこの『刀』……色が付いてない。いや、色が無いって言うより――私じゃ、色を表現出来ない?」

律儀に色まで付いていた書籍の中で、唯一色が無かった。というよりなのはの予想通り“ヒト”には認識出来ない、表現出来ない色と言うべきか。

じっと彼女が見つめる『刀』は、形状的には天鎖斬月に近い気がする。だが、明らかにそれとは異なる物だ。

なのはが、人目も憚らず言葉を紡いでいく。

「三つのチカラと、永遠に結ばれし愛を示せ。さすれば、全てを征するチカラは現れん。煌(きら)めく黒(くろ)にて天(てん)を崩(くず)す、その名は――」

……煌めく黒で全ての天を征し、全てを崩し、全てを護る。

「――煌黒崩天丸(らんこくほうてんまる)」

――それは“最強”にして“無敵”の証。煌黒崩天丸。

また、別の場所。そこに居る誰かが、呟く。

「ここにもいない……か」

凛々しい声、女性の様な声の誰かは、その綺麗な“銀髪”を2本の三つ編みにし、つむじの辺りで結った、ロングストレートの髪型。

そしてサファイアブルーの瞳……男の子ではあるが、ヒナギクを“美少女”と言うに相応しいのなら、この人物は“美女”と表現するに相応しいだろう。

「何処にいるのだろうな、お前は」

人探し。それが、この人物の目的らしい。

だが、思う。もし逢えたとしたら、一体なんと言えば良いのだ?

――本来、会う資格も無いというのに……。

「我ながら勝手な『兄』だな……私は」

自嘲する様に呟いた彼のサファイアブルーの瞳が、悲しげに揺れる。

「勝手にお前を恨んで、勝手に家を出て……お前を独りにして、壊したんだ――刹那」

最後の言葉は探し人に向けた者、探し人の名前。

そして、戒めの様に自分の言い聞かせる――業‐カルマ‐

一瞬、彼の左腕から光が放たれたと思うと、彼の目の前には光の扉が現れ……迷いなく、それを潜る。次の“世界”に行く為に。

兄弟の道は未だ交わらず、物語は次の幕を開き始めた――
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  1. 2012/03/25(日) 14:28:17|
  2. 烈火の翼
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