サクライロノセカイ/リリカルなのはなお話

えびえもん兼いかじゅんのブログです。リリカルなのはの二次創作などを書いています。

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魔法少女リリカルなのは 烈火の翼 第21話

「『オォォ……アアアアアアァァァァッッ!!!!』」

狂喜の叫びと共に解放されたのは、空中に一旦は滞空させていた電撃の塊。

それが圧倒的な電撃の槍……というより、もはや“落雷”と称した方が良いだろうか。そのレベルの威力の電撃が落ちる。勿論、人が喰らえば即死、運が良ければ重傷になる代物だ。

だからこそ、標的となっている人物は当たる様なヘマはしない。足を止めず、即死級の落雷を避ける。

『当たったら死ぬんちゃう?』

「見りゃ分かるでしょうが。ギン、分かって言ってるでしょ」

疑問形で問いながらも、本人は確実に分かっているだろう事を言うのは、一本の脇差しサイズの刀になっている市丸ギン。
彼に応えるのは、その『刀』の資格者である高町なのは。

時空管理局本局の訓練場にて繰り広げられている戦いは、普通の魔導師が戦うには馬鹿らしい状態だった。

虚(ホロウ)に身体を乗っ取られたフェイト・テスタロッサが放つ雷撃は、無論の事で加減など知らない。雷撃は彼女の力だが、やっているのは彼女の意志ではないので当然だ。

一撃一撃が致命傷に繋がる電撃……そんな物を相手にしながらも全く恐れず、雷撃に砕かれ、破壊されていくフィールドを縦横無尽に駆け巡る者がいる。

何が面白いのか、愉悦の笑みを浮かべたフェイト――虚が額から電撃の槍を放った。ほんの一瞬で放たれたそれにも、かなりの威力が込められている事が分かる。

「ふっ!!」

だがそれは、標的であるなのはに到達する前に彼女が刀を振るい斬り払った。霧散する電撃、普通ではあり得ないが、確かにそうなった。

「『アアアアアアァァァァッッッ!!!!』」

自身の攻撃をあっさりと防ぐなのはを見て、再び虚が叫ぶ。防がれた怒り……いや、違う。愉悦の笑みは更に深まり、狂喜の叫びは止まる事を知らない。

ダブり声で叫んだまま、今まで動く事すらしなかった虚が……動く。
バチバチ、とスパーク音を鳴らし右手に電撃を集束させた――と思えたのは一瞬。

その右手をなのはに向けて突き出すと……それは、電撃の槍が可愛く見える程に巨大な雷撃となって彼女を襲った。

「チッ!!」

流石にこれは捌けない、そう判断したなのはは素早く大地を蹴り、雷撃の範囲内から離脱する。

標的を失った雷撃は、訓練場の壁にぶち当たり……爆音を上げて堅固な壁を破壊した。その光景には、なのはでも冷や汗を流す。

「反則レベルね……殆どチャージのタイムラグも無しに、こんな威力の攻撃を出せるなんて」

先程の攻撃は、魔導師で言うと砲撃の部類に属する物だろうが、それをチャージ時間も無く放ったのが問題だ。

タイムラグ無しにこれだけの攻撃が出来る。そのくせ、大して消耗した様にも見えない。

――これを生み出しているのが、虚の力ではなく“フェイト自身の力”というのは、もっと問題だが。
クラス的には『刀』の資格者クラスにも匹敵するだろう、今のフェイトの力。だが、なのははこの力に見覚えがあった。

タイムラグ無しでふざけた威力の攻撃を放ち、大した消耗も無くそれを振るえる。

似ている、彼の――クーゴのレアスキル『瞬間魔力放出』に。

『なのはちゃん!!』

「っ、分かってる!!」

ギンに警告される迄も無く、着地したなのはが直ぐ様再び大地を蹴って後方に飛ぶ。

瞬間、直前まで彼女が居た場所に直撃したのは……この訓練場の地面に張り巡らされた鉄板。上位クラスの魔導師の戦いにも対応する為、かなり強固に作られていた鉄板は、見事に同じ地面の鉄板に衝突して両方が砕けた。

一方、後方に着地したなのはが見たのは、虚が鉄板をひっぺがし、下の土を露出させていく光景。

「な、なんつーアホな出力してんのよ……」

幾ら戦闘の影響が在ろうが、その戦闘の為に張り巡らされた鉄板は、剥がすにはそれなりの力が必要な筈だ。

それを苦もなく触らずに剥がす……恐らく、というか確実に磁力を操ってひっぺがしているのだろうが、本当にふざけた出力である。

こりゃあ足止めも面倒くさい……と、なのはが考えていると浮遊していた鉄板が適当に投げ捨てられた。

すると今度は、鉄板をひっぺがした事で露になった土から黒い粒の様な物が吹き出てて来る。一瞬なのはも何か判断がつかなかったが、彼女の聡明な頭は直ぐに答えを叩き出した。

「成程、地中の砂鉄を操って……でも、一体何を――」

する気なのか、という彼女の考えは言葉にならなかった。空中にバラ撒かれていた砂鉄が、虚が操るフェイトの右手から電撃が出たのと同時に集い始める。

集った砂鉄が型を成し、鍔の無い剣……言うなれば『砂鉄の剣』となり――

「『アアアアアアアアアアァァァァァァッッ!!!!』」

相変わらずの凄まじい音圧を放ちながら、虚がなのはに向かってもうスピードで突進する。

「へぇ……上等じゃない!!」

対するなのはは、面白くなって来た、と言わんばかりに笑い、虚に向かって疾走する。

二人が互いの獲物をぶつけ、激しい火花を散らす。

それが……この戦い、第2幕の始まりの合図だった。









◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「あれ、ヴィータちゃんアイスは嫌い?」

「いや……嫌いじゃねーけどさ」

どうしてこうなった。かつて、烈火の騎士が思った事と全く同じ事をヴィータは考えていた。

ヴィータの返答に、良かった~っと気楽に返してアイスを食べ始めたのは金髪の自称男の子、ヒナギク。

状況を整理しよう。確か自分は、のろいうさぎを譲って貰った。そして、何故か連れられるがままに喫茶店に突入して、彼の奢りでこうしてアイスを――

(だから、どうしてこうなった?)

奇しくも、烈火の騎士も状況は違えど同じような思考をした事が在るのだが、当然ヴィータは知る由も無い。

まぁこんな感じで混乱しながらも、ちゃっかりアイスを戴くのはヴィータらしい。

ふと、少女が思い返したのは数日前の目の前の自称男の子との邂逅。
確か血を吐いて、シグナムに連れ出されてたよなコイツ……と、ある事が非常に気になったヴィータは、口に出して訊いてみる事にした。

「なぁ、アンタ身体は大丈夫なのかよ?」

「ん? ヴィータちゃん、心配してくれてるんだ」

「う、そりゃあ……まぁ」

笑顔のヒナギクに対し、ヴィータが言葉を濁しながら応えたのは罪悪感からか。

病気だとは本人が言っていたが、もともと自分が襲わなければあんな事にならなかったのかもしれないのだ……我ながら、自分勝手だと自嘲してしまう。

「大丈夫だよ。元々こういう体質だし、大丈夫だからこうやってここに居るんだもん」

けれど無邪気に笑い、そう言ってくれるヒナギクにヴィータは少し救われ……そういう問題じゃねーだろ、と再び自己嫌悪。

因みに、大丈夫と言っているヒナギクだが――あれだけ血を吐いて、大丈夫な訳が無い。

今頃、病院はてんわやんわの大騒ぎだと言えば、かなり分かりやすいだろう。

こういう時、一番に飛んで来そうな烈火の騎士と氷の姫君は今は仕事中なので、ヒナギクが病院に居ない事は当然ながら知る由も無い。

「でもさ……なんでアンタ、あんな下手くそな顔で笑うんだよ」

少し安心したから、なのだろうか。ヴィータがヒナギクと会って、一番気になっていた事を言葉にした。

直球ど真ん中、遠慮などしないのは少女の真っ直ぐな性格を表わしている様に思える。

「そんな下手くそだった? 私的には自信あったんだけどなぁ」

「あぁ下手だよ。今だって、アタシが訊いたら急に“あの時の”笑い顔になったじゃねーか」

あの時――ヴィータが見た、嫌でも記憶に残る『仮面』の笑み。

冷静に思い返せば、あんな笑顔は笑顔と言わない。あんな物……少し前の自分達、感情を押し殺していた自分達と同じ……いいや、もっと質が悪い。

そして、それを見抜けたのはその感情を押し殺していたヴィータだからなのかもしれない。彼女自身、意外に鋭い人間な所為も在るのだろうが。

「そっかぁ。どうして笑うかって訊かれると、前にも言った様に他の人を心配させない為だけど」

「それだけじゃ無いだろ。アンタの言い方だと、病気の事は身内にバレてる見たいだからな」

今更だろ、と付け足すヴィータにヒナギクは鋭いなぁ……と呟き、苦笑する。

ただ、ヒナギクが言った理由も本当の事だ。要は強がり、心配を掛けたくないのは本当だから。

でも、所詮は本心を隠す為の理由。言うつもりは無かったのにな、そう思いつつもヴィータちゃんならいっか、と何となく思い……ヒナギクは静かに語り始めた。

「未練……残したく無いから、かな」

「未練?」

「うん。もうすぐ私、死んじゃうから。人と触れ合ったらきっと、もっと生きたい、って思っちゃうから。だから……仮面を被って距離を取る」

――それは、もう彼が諦めてしまったいるという事。簡単に、ただ淡々と語るヒナギクに、ヴィータは怒りとも悲しみとも分からない感情を抱く。

ヴィータは出会って間もないが、ヒナギクの性格を何となく理解出来ていた。

何でもかんでも、彼は自分で背負って完結しているのだ、ヒナギクは。自分は辛い筈なのに、周りにそれを言ったりはしない。

――人に、迷惑を掛けたくないから。

「……そんな事してたら、アンタは“独り”になっちまう」

「そうだね。でも、人に必要の無い迷惑を掛けるくらいなら、その方が良い――でも、ちょっと不思議な事があるんだよね」

不思議な事? 脈略の無い突然の言葉に、ヴィータはそう言いながら首を傾げた。それに頷き、ヒナギクは話を続ける。

「うんうん。あのね……病気の事を知らない二人が居るんだけど、その二人の前だと偽れない、って言うか笑顔を偽りたくないのかな? 上手く言えないんだけど、その二人の前だと笑顔でいたい……けど、迷惑は掛けたくないんだよね~。それも、他の人とはなにか違う気がするし……」

「あー」

この彼の症状、どっかで見た事が在るなぁ。なんて思い、ヴィータは記憶を掘り返して見る。

そう、家でテレビドラマを見ているとき、こんな状態の登場人物がいた気がする。何かを自覚してない状態だったんだよな……と暫く悩み、漸く分かった。

――恋だ。

「アンタ、その二人に恋してるんじゃね?」

「ふぇ――えええええぇぇぇぇっ!?!?」

……やっぱ自覚無しか。顔を真っ赤に染めて叫ぶヒナギクを呆れた目で見て、やはり呆れた感じで思うヴィータ。

つまりだ、先程のヒナギクの言葉を直して見ると――

笑顔を偽りたくない=好きな人の前では、素直な気持ちでいたい。

迷惑を掛けたくないけど、他の人とはなにか違う=好きな人に変な我が儘(?)を言って嫌われたく無い。

――という事だろう。……今更な気がするが、相変わらずの乙女思考なヒナギクである。

「いやいやいやいや、そんなわけ無いって。きっと一時の気の迷いだよ、うん!!」

「……まぁ、アンタがそう思うなら、それで良いけどさ」

しかしまぁ、何でコイツは信用出来る人間にすら頼らないんだろうな、とヴィータは不思議に思ってしまう。

確かに辛い事を溜め込む人間はたまに居るが、ここまでのは初めて見た。もう、いつ死んでしまうか分からない……そう本人が言っているのに、なんで人を頼らないのか?

――違う。


ヴィータは思い違っている。そしてヒナギクも、自分の事を正確には理解していない。

彼は人を“頼らない”のではない……“頼れない”のだ。というより“頼ってはいけない”と思い込んでいるのだろう。

記憶。ヒナギクにとっては、決して開けたくない『パンドラの箱』なのかもしれない。









◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

刃と刃がぶつかり合い、激しい火花を撒き散らす。先程までは巨大な爆砕音が響いていたそこでは、打って変わって斬撃音が鳴り響いていた。

「『オオ、オアアアアアアアァァァァッ!!!!』」

絶叫と共に砂鉄の剣を振るうフェイト……虚に操られた今の彼女の斬撃スピードは、尋常ならざる物だった。

どうやら彼女の電撃は別の要素の様だが、身体能力は虚の力によって極度に引き上げられているらしい。

自らの敵を斬り倒す為、その尋常ならざる速度で剣を振るう。連続で振るわれるそれは、無数で狂気の軌跡となりなのはを襲う。

だが、なのははその刃を全て捌いていた。あらゆる方向から襲い掛かる、虚の確かな殺意を乗せた刃の軌跡を……彼女は全て刀で受け流す。

幾ら『神鎗』を所持しているとはいえ、今のフェイトの様に身体強化をしている訳では無い事を考慮すると、なのはのとんでもない技量が良く解る。

『この砂鉄、振動してチェーンソーみたいになっとるから、当たったらちょーーと血ィ出るかもね』

「そのくらいなら安いもんよ!!――って言うかギン、そういう事は先に言いなさいよね!?」

って言うか、そんなシロモノを相手にしても傷一つ付かない神鎗は、一体何で出来ているのだろうか?

そんな疑問を余所に、繰り出される斬撃を高速で刀を振るい防ぐなのは。

時に身体を伏せ、時に場所を変え、剣撃の乱舞を繰り返す二人。

互いに違うのは、虚が“攻め”でなのはが“守り”という点か。

それが、戦況を変える。一旦態勢を整える為か、なのはが横凪ぎに振るわれた砂鉄の剣を大きく後ろに飛び、避ける……が、途端に砂鉄の剣が鞭の様に伸びた。

「ちょっとギン、神鎗のお株取られちゃってるんだけど?」

『まぁあっちは、磁力で操っとるからなぁ』

自由度が違うんよ、そうギンが続けている間にも砂鉄の剣はなのはに向かって鞭の様に迫りくる。

しかし、なのはには少しも焦った様子が見られない。彼方(砂鉄の剣)が変幻自在なら、此方(神鎗)は伸縮自在。

なのはが刀の切っ先を定め、神鎗の能力を発動させた。伸びる刀身、そしてその伸縮速度は砂鉄の剣よりも迅い。

先に到達したのは、神鎗だった。切っ先の先にあったのは、振るって無防備になっているフェイト……の手にある砂鉄の剣の持ち手部分だ。磁力で繋がったそれは、神鎗という異物に阻まれ、一瞬効力を失い刀身は砂鉄に戻った――

「ッ!?」

――瞬間、刀身の部分が一気に爆せた。細かく鋭い無数の槍となり、なのはに襲い掛かる。

なのはが強引に刃を戻し――それもフェイトに当たらない様に――その場から退避した。それが出来たのは、彼女の反応速度が故だろう。だが、攻撃は砂鉄の剣より数倍迅く多い物。

「成程……確かに、ちょっと血が出ちゃうわね」

誰に言うわけでも無く、呟くなのはの左腕からは……避けきれなかった砂鉄の槍が当たり、血が流れていた。

ダラダラと流れる血は、止まる事を知らず真っ白な服の袖を赤く染める。

『あらら、想像以上やね』

「けど想定内。いつもの事だし、うら若き乙女のフェイトちゃんに怪我されるよりはマシだしね」

普通の人間から見れば“ちょっと”の怪我では無い筈だが、なのはは平然と立ち、虚と相対する。

フェイトを“助ける”為に。『出来損ないの魔法使い』では人を“救う”事は出来ないが“助ける”事は出来る――だから、高町なのはは倒れない。

彼女が神鎗を構えると、虚は再び電撃を右腕に集束させ――

「……来たわね」

その時、なのはが笑みを浮かべ何かを呟いた。しかし、虚にとってはそんな事は関係が無い。

一瞬で集束させた電撃、右腕を突き出して巨大な高圧電流を放つ。

なのはを呑み込まんと、スパーク音を鳴らし巨大な雷撃が迫る。が、彼女は動かない。動く必要など無い。

「はっ――」

誰かの笑い……それと同時に、雷撃が爆音を上げて阻まれる。それを成したのは、雷撃と同じ“巨大”な魔力。

一瞬でそれだけの魔力をただ単純に防壁にする、そんな事を出来る男は一人しかいない。

その男は鋼鉄の地面に太剣を突き刺し、笑みを浮かべなのはを見て、言う。

「なんだか面白い事になってんじゃねぇか――なのは」

彼の言葉になのはは……同じくにやりと笑い、応えた。

「遅かったじゃない。けど、アンタが来たから丁度クライマックスかしら――クーゴ」

それが――第三幕の開幕。この戦い、クライマックスへの合図だった。
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  1. 2012/03/25(日) 14:17:03|
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