サクライロノセカイ/リリカルなのはなお話

えびえもん兼いかじゅんのブログです。リリカルなのはの二次創作などを書いています。

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魔法少女リリカルなのは 烈火の翼 第15話

何処か薄暗いバー。そこのバーカウンターに、一人の男がグラスを持って座っていた。と、黒髪のオールバックヘアーの男が持ったグラスの中身をおもいっきり口に飲み込み、力強くグラスをバーカウンターに叩きつけ……。

「マスター。お代わり」

「却下です。飲み過ぎですよ、クーゴさん」

酒のお代わりを要求したが、即刻でグラスを拭く一人の老人がそれを却下する。老人の言い方から察するに、カウンターに座る男性はクーゴという名前らしい。

「……いやいや、客の要求断んなよマスター」

「クーゴさんだからですよ。だいたい、つまらないならそこら辺の強い人に勝負でも挑んだらどうです」

「挑む奴が居ねぇんだよ……もともと断られた奴は論外だし、戦って倒した奴らは、自分はまだ修行がたりない、とか言いやがるし」

そう言って、だらしなくカウンターに顔をくっ付けるクーゴ。完全に脱力状態……老人もといマスターは諦めた様にグラスを入念に拭き続ける。まぁ、この光景はここ最近はしょっちゅうだったりするので、仕方ないのかもしれない。

暫くすると、クーゴが顔を上げた。のだが、やはりその表情は完全に脱力状態だ。

「あーあ。やっぱりアイツしかいねぇんだよなぁ、俺とまともに戦えんの」

「あぁ。クーゴさんがしょっちゅう話している女性ですよね」

「うんな話してた?」

「因みに、これで話題に上がるのは四十回目ですよ」

そんなに……てか律儀に数えてたのなマスター、なんて思いながらため息を吐くクーゴ。実際、彼が満足いくような戦いが繰り広げられるのは、その女性くらいしか彼は出会ったことが無い。

ただ、それだけに――

「くそっ、やっぱり決着付けたかったな……」

「仕方がないのでは? だいたい、クーゴさんが本気を出す様な相手と場所の許可無しで戦って気付かない程、管理局も無能では無いでしょう」

「まぁ、解ってるけどよぉ……」

世界とは、やはり思い通りにはいかないものだと改めて彼は思う。いやまぁ、盛り上がり過ぎた自分も悪いのだが。

それでも大して大事にならなかった理由は……まるで図った様にマスターが口を開く。

「少しは自重してくださいね。殆ど大事にならなかったのも、その相手の女性が管理局相手に顔が利いたからなのですから」

「わーてるよ。はぁ……何か面白れぇ事、無いもんかねぇ」

本当に解っているのだろうか、この男は? それはともかく、その男、クーゴが何となく呟いた言葉が実現されるのは――もう少しなのかもしれない。


「困ったな」

「うん。困ったわね」

一人の女性が呟いた言葉に、もう一人の女性が合わせた様に呟き返す。そして、二人同時に仲良くう~んと唸った。

8月。そんな夏真っ只中の日に仲良さげに会話をするのは、この家の主ヒナギクの騎士、シグナムと絶賛居候中の人気アイドル、藤原 雪華である。

そんな二人が、一体何を悩んでいるかと言えば……。

「お昼……どうしよっか?」

「主が居ないと、なぁ」

直面しているお昼という名の食糧難であった。どうしてこうなったのかというと、シグナムの言うようにこの家の家事全般を受け持つ人間、つまりヒナギクが諸事情により外出中のため留守なのだ。

何時ものヒナギクならお昼くらい用意していくのだろうが、今日はそれも無い上に冬獅郎やさくらも外出中。

――ここまで言えば解るだろうが、この騎士とアイドル……生活能力的な物が低かったりする。二人共、しっかり努力はしているのだ。
ただ、それがなかなか実らないというか……まぁそういう事だ。

「――作るか」

「何を?」

ポツリ、と呟いたシグナムの言葉に雪華が素早く反応する。しかし、会話の流れから雪華も何を作るか解っているようだ。

「当然、料理をだ……料理一つ出来ないなど、騎士の名折れっ!!」

正直、特に関係ないと思います。が、そんなツッコミを入れてくれる人間はこの場にいない。つまりは、立ち上がったシグナムを止める者はいない。

そして、同じく立ち上がり挑戦的な笑みを浮かべる雪華を、それは同じだった。

「上等ね……料理一つ出来ないなんて、アイドルの名折れよ!!」

だから、別に料理に騎士もアイドルも関係ないと思います。なんてツッコミを入れる人物は、やはり居るはずも無い。

「フッ……面白い。ならば――」

「そうね。さすれば――」

「「勝負だ(よ)!!」」

――この時点でオチが読めたという人達は、多分当たっていると思われる。とりあえず、これから調理されるであろう食材達に……合掌。









◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

全てが海。海に沈んだ町。それが、この世界を表現するにふさわしい言葉。

そして、その現実とは掛け離れた世界に佇むのは、恐らく一人の女性。恐らく、というのは彼女が真紅のコートと顔をスッポリと覆うフードを着けているため、体つきでしか判断できないからだ。

女性は、自分一人しかいない世界をビルの上から見渡し――

「おぉ、お久やね~」

――訂正しよう。今は二人だけがいる世界を見渡し、ため息を吐きながら振り向く。もし、フードの下の表情を見ることが出来たならば、彼女は今確実に疲れ気味な表情を浮かべている事だろう。

「勝手に入って来ないでください、私はそう言いましたよね? 市丸ギン」

「えぇやないの。そない固い事言わんでも」

女性の諌言に対して、気にした様子も無く平然と言葉を返す市丸ギンは、何処からか取り出したちゃぶ台を設置し、またまた何処から取り出した湯飲みを二つ取り出し両方にお茶を注ぐ。

どうでも良いが、場所を考えるとかなりシュールな光景である。

「ほらほら、美味しいお茶や。それと、ボクの事はギンで良い言(ゆ)うたやろ?」

「…………戴きます、市丸ギン」

女性は礼儀正しく座り、お茶を飲むがギンの呼び方は直さない。しかし、やはりというかギンは特に気にした様子も無く薄笑いでお茶を飲む。

暫く言葉を交わす事なくそうしていた二人だったが、唐突に女性の方が言葉を放った。

「それで、何の用ですか?」

「遊びに来たに決まっとるやん。それと、敬語口調やなくてもえ……「帰ってください」……ちょっとした冗談やないの、後半以外」

ちゃっかり冗談の中に本気を入れるのが、彼らしいというか何と言うか。

……もう一度お茶を飲んだギンが、いきなり真剣な表情になり糸目の瞳を薄く開く。これは、彼が冗談無しの話をする時の状態。

「単刀直入に訊くわ。あの子、あとどんくらい保つと思う?」

「貴方の主に……訊ける訳が無いでしょうね」

「キミが一番客観的に言ってくれそうやから、キミに訊くんよ」

ギンの真剣そのものの言葉を聞いた女性が、もう一度お茶に手を付け、フードの下で息を吐き……極めて冷静に告げた。

「保って3ヶ月。それが私の見立てです」

「やっぱり、そんくらいなんやね……後は、裏月くん次第か」

全く、相変わらず世界は優しくないわ、そうぼやくギンを見ながら、彼女はフードの下で一瞬悲しげな表情を見せる。それにどんな意味が込められていたかは……彼女にしか解らない。

そんな彼女に呼応してか、緋色とも紅とも見える刀――天鎖斬月は海に沈んだ町でも煌めき、突き刺さっていた――









◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

深夜のミッドチルダ市街地。深夜という事もあり、問題が起こりやすいその場所は、ほぼ常に管理局員が見回りをしている。

なぜ、唐突にそんな事を言うかと言えば……。

「ここも異常無し、だね」

今まさに、時空管理局嘱託魔導師、フェイト・テスタロッサが深夜のミッドチルダを見回りしているからである。

今から4ヶ月前に起きた、ジュエルシード事件。事件の容疑者とされるフェイトの裁判は既に終了して、管理局への奉仕活動という形で決着が付いている。まぁ情状酌量の余地があり、処刑人‐エグゼキューター‐が関わっていたというのが大きいのだがここは割愛しよう。

そしてプレシア・テスタロッサ。彼女に関しても、過去の記録が掘り返されてやはり情状酌量の余地がある。が、ジュエルシードを発動させた事もあり、いろいろてこずっているらしい。そこはやはり、少年執務官君の活躍に期待しよう。

「ん……?」

辺りを見回し、異常が無いと判断したフェイトだったが、突然何かの物音が聞こえる。そして、音の発信源だと思われる公園に足を踏み入れた。

その場所は、昼はかなり人気のある公園だが、夜には全くと言っていいくらい人気が無くなる場所だった。

クロノもそう言っていたが、何か異常があると悪い。そう思ったフェイトが公園に足を踏み入れると……木の近くに一人の男性が居た。
何をしている訳でも無い。ただ、そこに一人佇んでいるだけ。しかし、こんな深夜にこんな人気の無い公園にいるのは流石に怪しい。

「あのすいません」

「あん? 何だよ」

取り敢えず話だけでも訊こう。そう考えを纏めたフェイトが男性に話しかけると、男性がまるで不良の様な返事をする。

そんな返事に少しだじろぎながらも、フェイトは続けて言葉を放つ。

「ここで、何をしているんですか?」

「……別に何もしてねぇよ」

一瞬、男性が答えに迷った様にフェイトには見えた。ますます怪しい……また疑念を深めたフェイトは、しっかり話を訊こうと自分の役職を告げた。

「私は時空管理局嘱託魔導師、フェイト・テスタロッサです。話を訊かせてもらえますか?」

「やだよ。めんどくせぇ」

言うなり、フェイトに背を向けて立ち去ろうとする男性。これには流石に、驚愕で目を見張るフェイト。当たり前だ、地球でいえば警察に当たる人間の言う事を軽く無視して立ち去ろうとしているのだから。

「ちょ、待ってください!!」

立ち去る男に向かってそう言いながら――何と威力を弱め牽制程度とはいえ、フォトンランサーを一般人に向けて放ってしまうフェイト。放った瞬間、しまった、と考えるフェイト。

――この時のフェイトは、言ってしまえばかなり焦っていた。嘱託魔導師と言ってもなりたて、しかも自分は元犯罪者。

……だから、迷惑を掛けてしまった皆の為にも人一倍頑張らないといけない。そんな風に、少女は考えてしまっていたのだ。

「え……?」

――パスン。そんな音を立てて、フォトンランサーが男の近くで消滅した。突然の出来事に、何が起こったか理解が出来ないフェイト。
そして、少女の魔法を消したと思われるオールバックの髪の男は、立ち去ろうとする足を止めて振り向き、フェイトと相対し……口を開いた。

「お前――『弱い』な」

ただ平然と、そう口にする男性の表情は、とてもつまらなそうに見えたが、何処か期待しているようにも見えた。

「気が変わった。来いよ、相手になってやる」

これが彼らの出会い。

――記録上、あの処刑人‐エグゼキューター‐と引き分けたとされる男、クーゴと。

――後に『最強無敵の電撃姫』として、処刑人‐エグゼキューター‐と同じく世界中の犯罪者を震え上がらせる執務官、フェイト・テスタロッサとの。

少女のちょっとした誤解が入った、初めての出会いだった。
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  1. 2012/03/24(土) 20:19:32|
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