サクライロノセカイ/リリカルなのはなお話

えびえもん兼いかじゅんのブログです。リリカルなのはの二次創作などを書いています。

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魔法少女リリカルなのは 烈火の翼 第8話・前編

「『出来損ないの魔法使い』……だって?」

「…………」

クロノの呟きとも疑問とも思える言葉を聞いても、なのはは何も言わない。ただ、冷ややかな表情でクロノを見るだけ。

そしてその少年、クロノはまさに信じられないといった表情だ。しかし、それも当然なのかもしれない。目の前の少女が“あの”エグゼキューターならば、出来損ないな筈がない……少年が言いたいのはそういう事だろう。

――そんな事を考えている時点で、的外れも良いところなのだが……少年には、いや、殆どの人には理解できないだろう。理解できるのは、少女の事をよく知る人間、もしくは少女の“信念”を読み取る事の出来る人間だけだ。

最も、前者はともかく後者に属する者はたった一人、“彼”しか今のところいないのだが。まぁ、二人目が現れるとも思えないし、今は関係がない事だ。とにかく、それを理解できないクロノは、思わずなのはに向かって叫んでしまう。

「ふざけないでくれ!! 君がエグゼキューターなら……出来損ないなんて言える筈がないだろう!!」

処刑人(エグゼキューター)。そう呼ばれるだけの“実力は”なのはにはある。だが、こんなものは少女が欲しいものではないし、エグゼキューターだからそう……など勝手な価値観の押し付けだ。……人は、そういう生き物なのだろうが。

まぁクロノの気持ちが、少女に理解できない訳ではない。恐らく、無意識のうちに悔しい、という感情が少年の心に渦巻いている。仮にも、彼は執務官だ。それなりのプライドがあるのだと思う。
それが、目の前の少女の方が格上だと認めるのを拒んでいる――いやまぁ、身長で圧倒的に負けているので、真面目な話それもあるのかもしれないが、いちいちそれを指摘してやるほど少女は少年に興味を持てない。それどころか、もう興味を失いかけているくらいだ。

「別に貴方に理解できるとは思えないし、理解してもらいたいとも思わないよ」

言いながら、なのはは武装を解除してクロノに背を向けて歩きだしてしまった。思わず、クロノは追い掛ける為に駆け出しそうになるが、ふとなのはが立ち止まって、もう一度だけ振り向く。

「言ってなかったけど、私達は依頼うんぬん関係なしに、今回は単独で行動させてもらいますから。ハラオウン提督にもそう伝えておいてくれます?」

「な、何を――」

「貴方達がさっきの子やジュエルシードをどうしようが勝手ですけど、何かあった時はこっちも勝手に動きますよ、って事だよ。二度は言わないから、きっちりと伝えてね」

当然返答など聞かない。言うなり、なのはは今度こそ振り替えることなく歩きだした。さて、これで管理局……と言うか、戦艦アースラの艦長、リンディ・ハラオウン提督はこっちにちょっかい掛けてくる事はないだろう。彼方から直接依頼が来れば別だが、それはそれで貯金が増えるので構わない。

ま、それは殆ど無い可能性だ。――なのはの予想では、恐らく解決“だけなら”アースラメンバーでも出来るだろう。が、そうなると自分たちの町やあの少女が無事に済むかは……残念ながら保証できない。

まぁそういう訳だから、こっちはこっちで適当にやるとするか、という事である。それに、そろそろ頼れる最強の増援も到着する頃だろうから。

そう考えを巡らせながら、なのははその場を後にした。

所変わって、場所はこの前の車椅子の少女が住んでいる家。冬獅郎とさくらが手傷を負わせた仮面の二人が仕掛けた結界は、当然ながらとっくのとうに解除されている。
さて、ではそんな家の中には誰が居るかと言うと……

「ま、また負けた……」

「にゃはは、18連鎖って……」

「えげつねぇな……」

「まぁ、裏月くんにこの手のゲームで挑むこと自体、間違ってるんちゃう?」

「はっ、百年早えぇんだよ」

何故か、裏月と車椅子の少女、八神はやてがぷよ〇よで勝負していた。因みに、ただいまはやてが絶賛20連敗中である。何でこんな事態になっているかと言えば……数日前、つまり仮面の二人が逃亡してからの話に遡る。

「逃がして良かったん?」

「良いって訳じゃねぇが、今無理に捕まえる必要も無いだろ。今はジュエルシードの回収……いや、プレシア・テスタロッサの方を優先したいしな」

市丸の質問に、裏月は何ともない風に応える。事実、裏月にとって優先したいのはジュエルシードの問題だろう。仮面の二人の問題は、極力同時進行でやっていけばいい。

天鎖斬月を手放して、服装を元に戻しながら裏月はこの場を離れようとした。既に結界は解かれているので、長居は無用だ……が、どうやらもう少し長居をしなければならないらしい。

「あ、お兄さんみーっけ!」

「あ?」

そんな声を聞いて、裏月は何事かと後ろを向く……と、彼の額に汗が垂れるのを市丸は見た。そこに居たのは、先ほど裏月が別れた筈の車椅子の少女だ。

ここで、二人が別れる時の会話を思い出して欲しい。裏月と少女がした条件……もうあっさりと満たされているのである。

さらっと裏月の服を掴み、かなり良い笑顔で少女は、言う。

「私の勝ちやな、お兄さん」

「……ああ、俺の負けだよ」

こんな事だったら、もっと面倒な条件にしておくんだった、何て思っても後の祭り。結局、少女の誘いを受けて今現在に至るという訳である。

何で他の面々まで居るかって? 全員そろって「面白そう」の一言でついて来ましたが、何か?

「さてと、ちょっとトイレでも言ってくるから、誰か変わってろよ」

「じゃあボク。ボクがやるよっ!!」

「よし、勝負やさくらちゃん!!」

名乗り出たさくらにコントローラーを渡し、裏月は立ち上がって部屋を出る。何か後ろから、はやての叫び声が聞こえるが……多分気のせいでは無い。

部屋を出た裏月が目指す先はトイレ……ではなく、別な部屋の前で立ち止まった。彼は部屋の扉を迷いなく開き、そこからも迷いなく歩いて本棚の前で再び立ち止まった。

「コイツか……変な魔力出してんのは」

立ち止まった彼が見つけたのは、まるで封じられているかの様に鎖に縛られた、一冊の本。微力だが、魔力を出している事から、恐らく裏月の相棒と同じ魔導書の類なのだろう。

何の反応も無い魔導書に対して、裏月は目を閉じて腕を静かに翳す。その彼の翳した手から、何か薄い光の様な物が魔導書を包み込むように溢れた。

(……成程な。強引にシステムに介入しようとすれば、仕掛けられたシステムトラップが発動する仕組みか。コイツは、迂闊に手が出せない訳だ)

今、彼は魔導書に干渉して何が在るかを単純に探っている。これは彼の特有の能力……この手の物に対しての『干渉』だ。それを使って、魔導書の情報や機能を的確に読み取って行く。

プログラムに介入してシステムを動かすのではなく、システムに干渉して情報を読み取るのだから、裏月が発見したシステムトラップが発動しない、という仕組みだ。

読み取って行くにつれ、なぜ仮面の二人がわざわざ少女の家を“監視”するだけに止めていたかが、これで何となく裏月には解った。発動して何が起こるかまではまだ解らないが、発動まで手出しが全く出来ないとは……厄介な魔導書だな、と裏月は考える。

もう少し情報を読み取ろう、そう考えて裏月が深く干渉した瞬間……彼の表情が少し歪む。

「中に……誰か居るのか?」

干渉を行っていた裏月が小さく呟く。今、彼が読み取ったのは情報じゃない……“ヒト”の心だった。

(これは、深い悲しみ? それだけじゃねぇ……強い怒り。それも他人じゃなく、自分に向けられた物。そして何より――)

ここまで強く引き込まれると、もう裏月の意志では止まらない。勝手に中の人物の感情が、彼に向かって流れ込んで来る。

深い悲しみ、強い怒り。そんな感情がストレートにぶつけられる。だが、もう一つ。隠して押さえ込んでいる感情が伝わる。瞬間、裏月の瞳から……一筋の涙が流れ、それを皮切りにとめどなく涙が溢れだす。

止まらない、止められない。何時ぶりだろうか、こんなにも涙を流すのは。最後の感情それは、

――孤独。

始まりの終わりを待たずして始まる……新たな物語の始まりの合図なのかもしれない。









◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「む、無茶だよフェイト!! ジュエルシードを強制的に暴走させるなんてっ!!」

「だけど……もう時間がない。管理局が来た以上、もう迂闊に動けない。だったら、残りを一気に回収するしかないから」

「そ、それはそうかもだけどさ……」

マンションの一室、そこではフェイトと使い魔のアルフが口論を繰り広げていた。と言っても、反対していたアルフはあっさり言葉に詰まってしまう。

彼女たちが話しているのは、残りのジュエルシードの事。彼女たちのジュエルシード回収は、シグナムとヒナギクが一度妨害を行った事以外は、極めて順調と言えた。が、今は管理局が来たことにより状況は逆転した。恐らく、自分たちが回収し損ねているジュエルシードは、殆ど回収されてしまっている。

ならばどうするか、答えは簡単だ。残りのジュエルシード……今まで手が出せなかった海の中のジュエルシードを一気に回収すれば良い。

「ごめんアルフ。でも、もう決めたことだから……」

「ああ、もう!! わかったよフェイト。アタシも協力する」

「……ありがとう、アルフ」

自分の使い魔に微笑み、フェイトはマンションの扉を開ける。海の中のジュエルシードを強制的に暴走させて、まとめて封印。言葉にするのは簡単だが、実行するのは無茶と言えた。

何せ、封印するジュエルシードは全部で六個。暴走させる為に使う魔力を計算に入れると、とてもでは無いが少女の魔力でも足りない。それでも少女はやるのだろう、母の願いを叶える為に。

しかし、そのために自分を犠牲にするなど、絶対に少女の使い魔としては許容できない。だから、アルフは少しでも負担を減らす為に言葉を放った。

「ねぇ、フェイト。ユーノに協力してもらおうよっ!!」

「――ダメだよ。ユーノはまだ万全じゃない。それに……迷惑はかけられないから」

「フェイト……」

だが、それも全く功を成さない。確かに、ユーノに協力を頼めば負担は減るだろう。けれど、今の彼は本調子ではない。アルフが治療したとはいえ、魔力まで回復した訳ではないのだ。今も、睡眠をとっているのがその証拠だ。

結局、アルフの意見もこれ以上出ないまま……フェイトは賭けを実行した。


二人の会話に少し遅れ、場所は戦艦アースラ内部。そこでは、執務官のクロノとアースラの艦長であるリンディが会話をしていた。その内容は……この前のなのはの話だ。

「全く、貴方も厄介な人の機嫌を損ねてくれたわね……」

「う、すいません」

「いいえ、良いのよ。彼女がまさかあの少女に接触していたなんて、誰も予想できなかったんだから」

「……その少女の行方は、まだ掴めませんね。一体、何の目的でジュエルシードを回収しているのか……」

あの時、クロノがフェイトに接触したのは、完全に狙っての行動だった。彼らがここに到達した時、偶然アースラが彼女たちがジュエルシードを回収する映像を捉えていたのだ。

だからこそ、一度目の接触で事情を訊いてしまいたかったのだが……それはなのはによって妨害されている。

「ふぅ、失敗したわね。あれ以降、彼女たちは目立った行動に出ていない。もう少し冷静に行けば良かったわ……まさか、あの子が関わっているなんて」

「あの、艦長。もしかして、エグゼキューター……高町なのはと知り合いなんですか?」

まるで高町なのはの事を詳しく知ってる様な口振り。気になったクロノは、おずおずと言った感じでリンディに質問する。

質問を聞いたリンディは……何かを思い出したのか、疲れた表情でため息を吐き、そして口を開いた。

「まぁ、一応ね。でも私、あの子の事は少し苦手なのよね」

「は、はぁ……」

なにやら、過去に何かあったらしい。彼にしては珍しく、かなり興味が湧いてしまいもう少し聞き出そうとクロノが口を開いた――その瞬間、けたたましい警戒音が鳴り響いた。

「艦長!! 捜索区域の海上にて大型の魔力反応を感知しましたっ!!」

「なにっ!!」

「あ、あの子、何て無茶をっ!!」

局員の言葉と共にモニターに映し出されたのは……暴走したジュエルシードが作り出した竜巻と戦う、フェイトとアルフだった……。

同刻、海が見える丘。そこには、ジュエルシードの反応を感知したなのはが居た。暴走している場所から大分離れているが、それでも結界越しから数本の竜巻や雷撃が見える。

「……随分と無茶をするね。あれじゃあ、どうぞ倒してくださいってジュエルシードに言ってるも同じだよ」

呆れた表情を浮かべて、誰に言う訳でもなくなのははそう言った。ただ、なのはの言っている事は正しい。本当に、こんな行動は無謀もいいところだ。

「さて、どうしようかな……」

奮闘するフェイトとアルフを冷静に見ながら、なのはは呟く。恐らく、アースラの面々は参加などしないだろう。彼方にはジュエルシードを抑えられる優秀な艦長が居るのだから、わざわざ行動を起こす必要もない。

ならば、後はこちらがどう動くかなのだが……と、なのはの視界に一人の少年の姿が目に入った。
ハニーブロンドの髪に翡翠の瞳……なのはの記憶が確かなら、ジュエルシードを発掘した人物、ユーノ・スクライアだ。だが、その体は今にも倒れそうな程に弱っているらしい。

当然ながら彼の目的はあのジュエルシードだろう……が、こんな弱った状態でどうしようと言うのだろうか? 思わずなのはは近づき、その身体を支える。

「え? 君は……」

「ねぇ、こんな状態でどうするつもり?」

「――行かないと。フェイト達を……助けないといけないんだ」

ユーノの返しに、なのはは再び呆れた表情になる。まぁなのはが言っても、彼女を知る人物ならお前も似たようなものだ、とでも言われるだろうが、何とも無茶というか何と言うか……自分がこの状態なのに、なお他人を助けようとするのか。

しかし、そんな彼を見てなのはは、また彼女にしては珍しく少年に興味を持った。その証拠に、わざわざ少年に魔力を流し込んだのだから。

「あ……魔力が」

「私の魔力を分けて上げたから、十分動ける筈だよ」

「あ、ありがとう!! えーと……」

「なのは。私は、高町なのはだよ」

「ありがとう、なのは!!」

お礼を言うなり、ユーノはあっという間に飛行魔法で結界内に突入して行った。時間がないのは分かるが、いくらなんでも急ぎ過ぎだろう。しかも、なのはの事も一切訊いて来なかったし……彼の行動に、なのはは苦笑とも取れる笑みをこぼした。

「さてと、私はどうするか――なーんて、最初っから決まってるんだけどね。って、電話?」

なのはが行動を起こそうとすると、図ったかのように彼女の電話が鳴り響く。面倒なので、彼女はディスプレイに表情された名前も見ずに電話に出た。

「もしもし、今ちょっと忙し――って、依頼ですか? 因みに内容は――」

どうやら、電話の相手は親しい人物だったらしい。こんな状況なのに、彼女は話を聞いてしまう……いや、相手が相手なので、こんな状況だからこそ、と言った方が正しいかもしれない。

「――はは、こういうのをナイスタイミングって言うんでしょうね。いや、こっちの話ですよ。依頼、了解しました。じゃあ今はちょっと忙しいというか、今すぐ依頼に入らないといけないらしいので、また後で連絡します。はい、じゃあまた――レジィおじさん」

電話を切ったなのはが、携帯を閉じてポケットの中に突っ込む。全く、本当にナイスなタイミングという物は在るらしい。どちらにしろ、自分は介入以外の行動は無い様だ。まぁ、こっちもそれを望んでいたのだから、好都合だ。

少女は、自身の首に掛けられた蒼白い宝石に問い掛ける。やはり、仕事ならばこちらだ。

「往ける? 『エクスシア』」

『Yes Master.貴方の信念を貫き、その心のままに、行動を。私は、その為の月剣‐つるぎ‐です』

ある程度の自我を持つ自身のデバイス……その言葉に、そっか、と呟きながら頷く。ならば往こう……その心のままに――

「エクスシア、システム起動」

『Yes Master.』

たった一言、その一言でなのはの姿が変わる。まず、服は蒼いミニスカートと白いパーカーというかなりラフな格好――バリアジャケットを纏う。さらに、背中には左右5対の計10枚の白い機械的な翼、両腰部には折り畳まれた武装と補助的なスラスターの役割を果たす物が装備された。最後に、蒼と白にカラーリングされたライフルをその手に、掴む。

『『エンジェルエクセリオン・エクスシア』システムオールグリーン。武装名、マギリングガンポッド『ルシファー』を除き全起動確認。飛翔形態をエクセリオンモードに固定。進路クリアー、発射タイミングをマスターに譲渡します』

「了解――高町なのは。エクスシア、目標へ飛翔します!!」

ウイングを展開し、白い粒子が噴出する。両腰のスラスターからも、同じく魔力粒子が噴出し――その瞬間、高町なのはは翔んだ。

――飛翔する翼。己の信念を貫く、自由の月剣‐つるぎ‐が……遂に動き出した。

それは、始まりの終演を予期していたのかもしれない。
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  1. 2012/03/21(水) 14:58:02|
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