サクライロノセカイ/リリカルなのはなお話

えびえもん兼いかじゅんのブログです。リリカルなのはの二次創作などを書いています。

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魔法少女リリカルなのは とある魔法使いと烈火の騎士のお話 プロローグ


出逢いは平凡。けど、その後は決して平凡な物ではない。

よくある出逢い。でも、出逢い人物は普通ではない。

これは物語。繰り返す、始まりと終わり、そして始まりと繰り返す一つの物語。

――一人の魔法使いと、本来の道を歩む烈火の騎士が出逢ってしまう、始まりの物語。

まだ熱さが本格的に残る、8月下旬の街。田舎過ぎず都会過ぎず、海と山近くにあり空気も澄んで綺麗な街、海鳴。

ミンミンと鳴り響く蝉の鳴き声を聞き流し、麦わら帽子を被った一人の少年が、ポツリと思った。

(さくらさん……まだかなぁ)

麦わら帽子からは長い金色の髪を覗かせ、その容姿は女優ですら素足で逃げ出す程に美しい――男なのだが。

そんな彼が、公園のベンチでボーっと待っているのは彼女……などではなく、立派な彼の保護者となっている人物である。いつもは時間には間に合わせる人なのだが、今日は珍しく遅れるとの知らせをさっき携帯で受け取った。

だから、涼しい場所で待っていれば良いのだがそんな気分ではなく、かといってただ待つのも――

(……かったるい)

という訳である。噴水があり、美しい草木があり、騒がしい子供の遊び声も聞こえる。だが、飽きる物は飽きるのだ、仕方がない。だが、動くのもかったるい。かったるい星人、ここに極りである。

とはいえ、本当にすることが無いのは困った物だとは思う。はてさて、どうしたものかと思ったその時――一陣の風が吹いた。

それは突然で、無意識に手で麦わら帽子を押さえる前に、麦わら帽子は空へと舞い上がり彼の芸術的なまでの容姿が露になる。しかし、注目されるのは慣れた物なのか、視線を特に気にも止めずに麦わら帽子の行方を追いかけ――一人の女性が、流される帽子を手に取った。

偶然か必然か、運命の悪戯か、麦わら帽子を手に取った桜色の髪をポニーテールに括った、凛々しい女性はゆっくりと彼へと近づき、彼の容姿を気にもせずに麦わら帽子を突き付け、言った。

「…………お前のか?」

――瞬間、会話は完全に途切れたと言っていい。いやそりゃあ、麦わら帽子が飛んだところを見ていてわざわざキャッチしてくれたのだろうから、彼女は彼が帽子の持ち主だと解っている筈だ。

なのに、わざわざ持ち主か聞くだろうか普通? 持ち主が解っていて聞くのは天然か……不器用な人かどっちかだろう。おそらく、彼女は後者に当たる。

その凛々しい容姿に反して、不器用とは何かおかしく思い、彼は思わず吹き出しで笑ってしまった。

「な、なんだ突然?」

「いえ、何でもないです。ありがとうございます」

しっかりお辞儀をし、彼は麦わら帽子を受け取る。彼女も、何やら釈然としない様子だったが普通に帽子を渡してくれた。

――珍しくて、そして面白い人だ。なにが珍しいかは、彼にしか解らない。しかし、初対面で面白い人というのは失礼な気がする、と麦わら帽子を被りながら彼はクスリと小さく笑った。

だが、いくら大きくない街と言えど、偶然会うなど二度はないだろう。それに、遠目から待っていた人が走ってくるのが見える。

お別れ――けど、その前に“かったるい”気まぐれを起こして見るのも、たまには良いかもしれない。そう思い、彼女の瞳を見つめたまま、彼は言った。

「紅(くれない) 刹那(せつな)です。私の名前……ついでに、こんなのでも男なので」

「刹那……か。私はシグナムだ」

普通の人は驚く筈の後半の告白をあっさりとスルーしながら、彼女は……シグナムは平然と自分の名前を言う。不器用かと思えば、突然のことにも軽く対応する器用な面もあるらしい。

やはり、面白いと思いながら、刹那は地面の置いてあったバイオリンケースを持ち、シグナムとのすれ違い様に口を開いた。

「じゃあ“また”――シグナム」

それは何故か、本人も解らぬ程に確信を込めた言葉だった。離れて行く二人の距離……だが、それでも何故か確信があった。

「お待たせ刹那くん……って、何かあったの? なんか嬉しそうだけど」

1分もしない内に現れたのは、小学生くらいの可憐な少女。金色の髪をツーサイドアップに括り、碧い瞳は見る物の視線を釘付けにする程に澄んでいる。

一般から見れば、彼らは姉妹になるのだろうが、全く違う。刹那が“弟”で彼女が“姉”である。

はて? と彼が上機嫌なのを不思議に思い、唇に人差し指を当てる彼女に、彼は微笑んだ。

「――まぁ、たまにはかったるい事をするのも悪くないって、思っただけです」

その笑みを見て、さらに先ほど何やら話している様に見えた刹那とシグナムの光景を思い出し、彼女はははーんっとニヤリと笑いからかう様に言った。

「……一目惚れでもした?」

「――ばっ!! 姉さん何言ってるんですか!? なんでそんな……か、かったるいことを……」

「ちなみに、刹那くんがボクを姉さんって呼んでくれる時は大体図星で、『かったるい』を言い淀む時は、嬉しい時か恥ずかしい時だよねぇ」

全て正確に言い当てられ、真っ赤に染まった顔を隠す様に麦わら帽子をさらに深く被り、刹那はずかずかと歩き出した。

「行きますよ!! かったるいんですよ私は!!」

「はいはい。急がない急がない」

そうして、二人の魔法使いは公園から姿を消す。

そう――これが始まり。よくある平然な熱い夏の、よくありそうな出逢い。

そんな時に始まった――歪んだ物語の一つだ。



















────────────────────

え?なんでこんな話を書いたかだって?いやその……ツイッターでいろいろありました(((

てな訳で、このお話はもともと自分の初期作品を今リメイクしたらどうなるかって感じです。だからこそ、自分の作品にしては珍しい普通のシグナムが出てます。

ま、それでも原型を留めて無いうえに、もう一人の芳乃さくらこそ『桜の魔法使い』も普通に出てますけどねww

多分、しばらくは刹那とシグナムとさくらしか出てこないかもしれませんねー。まぁさっさと原作に入る可能性もなきにしもあらず(笑)

それではまぁ、このお話に次回があればまた。感想等々もお待ちしています。次回をお楽しみに!!
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  1. 2013/02/20(水) 03:26:27|
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魔法少女リリカルなのは 烈火の魔法使いの出逢いの物語 D.C.(ダ・カーポ)クロス編『二人のさくらと枯れない桜』


「『芳乃さくら』……さくらさんと、同じ名前……」

「ふぅん、その様子だとボクと容姿も同じなのかな?」

は、はいと動揺しながら答える青年は桜内(さくらい) 義之(よしゆき)……偶然、と言って良いのだろうか、桜の魔法使い――芳乃さくらと黒い影の戦闘に巻き込まれた彼はさくらの手を取り立ち上がり、自分の知ってる“さくらさん”と違うところを見つけ様としていたが……

(ま、全く同じ……)

――その容姿、声、瞳の色。それら全てが自分の知る“さくらさん”と同じだ。

そんな“偶然”に驚きを隠せない義之の様子を見て、さくらは一人軽く思考の海に入り込んでいた。

(偶然……な訳ないよねぇ。おばあちゃんが知らせた場所に、ボクと同姓同名、しかも同じ容姿の人がいる――確信犯か)

まぁそんな事だろうと思った、と相変わらず狂った様に舞う桜の中で、静かにため息を吐いた。

だが、彼女の“悪戯”には大抵何かしらの訳がある。彼女なりの、何かしらの理由が。

今回は珍しく下調べをしなかった自分のミスもあるが、世にも珍し(とはいえ、“咲かせるだけ”ならば彼女にも簡単に出来るのだが)枯れない桜のある場所で、しかも過去に“彼”が討滅したはずの存在が現れたとなれば、逸る気持ちを抑えるのは難しいだろう。

はてさて、取り敢えず、だ。

「……謝りに行かないとね、その“さくらさん”って人に」

「え?」

「だって、君のその感じからして、たぶん義之くんの保護者みたいな人でしょ? だったら、君をこんなことに巻き込んだ責任取らないとね」

「え、いやでも……」

さくらの提案に対しやけに曖昧に言葉を濁す義之に、あぁと彼女も気付く。

前提条件が違った。桜内義之は確かに“異質”な存在ではあるが、魔法に関しては恐らく殆ど知らない人間なのだ。だから“さくらさん”という人物にしても、無関係だと思っているのだろう。

が、決して無関係ではない、とさくらは推論を立てた。あの黒い影に関しては、直接的な関係は無いに等しいだろう。

だが――と彼女は再び碧い瞳を向けたのは、聳え立つ『枯れない桜』。これについては、ほぼ確実に無関係とは言えない。ま、そういったことを含めて、直接聞くより調べて解き明かすのが自分の性格なのだろう、とさくら自身が思う。
そして、謝りに行くことについては、どうやら向こうが先にこっちに来てしまったらしい――

「義之くん!!!!」

この一帯に響く、いつになく必死な声。その声に義之が振り向くと……よほど焦って来たのだろう。木に手を付いて、荒い息を必死に整える彼女の――『芳乃さくら』の姿があった。

特に外傷も見えない義之の姿に、安堵の表情で胸に手を当て息を吐くさくら……だが、義之の隣にいる人物を見て息を呑んだ。

金髪のツーサイドアップ。小学生と見違えそうなその姿。碧い瞳。そのどれを取っても、義之の隣にいる人物は自分と瓜二つ。

魔法使いの碧い瞳は交錯し――時を超えた物語は、枯れない桜の下でゆっくりと動き出した。









魔法少女リリカルなのは 烈火の魔法使いの出逢いの物語 D.C.(ダ・カーポ)クロス編『二人のさくらと枯れない桜』









◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「この度は、義之くんをこんなことに巻き込んでしまい、申し訳ありませんでした」

そう言って、純和風の学園長室で自分と瓜二つの人物に深々と頭を下げるのは、『桜の魔法使い』であるさくらだ。

「そ、そんな謝らないでください!! 元はと言えば……」

「いいえ。『枯れない桜』に“アレ”が取り付いた元の原因は、此方にあります」

正確には過去に“アレ”を討滅しきれていなかった“彼”に責任があるのだが、それを含めて今は自分が責任に取るべきだと彼女は考えていた。

対して、この『風見(かざみ)学園』の学園長であるさくらは、目の前の彼女の謝罪に困り果てていた。後で説明する、という約束でこの場にはいない彼、桜内義之の言葉通りならば、彼女は彼を守ってくれたのだ。感謝しこそすれど、謝らせるのは筋違いだ。

とにかく、このままでは埒が開かないとばかりに、学園長のさくらが言葉を放った。

「それより、義之くんを襲ったのは……」

「――淀んだ意識の集合体、としか言えません」

というより、その言葉が一番あの“黒い影”の正体を現している、と言えるだろう。

「意識の集合体……」

「そう。“アレ”は人の『願い』や『想い』といった感情を食らい、力を強める――だからこそ、この『枯れない桜』を選んだ」

今度こそ、義之の無事な姿を見て一番は安堵したさくらの表情が、冷たく青ざめた。

それはつまり、あの『枯れない桜』が原因――義之を危険にさらしたのは、自分の考えの甘さが――

「ですが、枯れない桜に取り付いたのは本当に偶然です。何度も言いますが、元の責任は“私”にあります」

そんな彼女の表情を見て取ってか、すかさず何度目かのフォローを入れるさくら。だが、あの様子を見るに恐らく『枯れない桜』は――

(いや、そこだけで判断するにはまだ早い)

情報が足りていない段階で判断するのは、推理としては成り立たない。そうなる迄の段階……それがまだ抜け落ちている。

――キーワードは『桜内義之』、『枯れない桜』……の起源。まだその程度だろう。

「で、でもボクは――」

「だから――義之くんは私が絶対に守ります」

さくらの、何かを吐き出す様な言葉を敢えて遮り……彼女は『桜の魔法使い』としての言葉を放った。

「『桜の魔法使い』の名に誓って、義之くんには指一本触れさせません」

「どうして……」

「義之くんを巻き込んだ責任、もあります。けど――義之くんに対する個人的な興味も、あったりして……」

うにゃ? というのは学園長のさくらから出た声……一方の魔法使いはあぁやっぱりな、という感じで霧散した硬い空気を感じていた。

「いやその、私って他の人から見ると“好奇心旺盛”みたいで……不謹慎かもしれませんけど、元はと言えば『枯れない桜』の謎が気になってここに来たのが半分の理由なんです――繋がる気がするんです。私が“芳乃”の性で、貴方と同じ容姿な理由も、あの枯れない桜が握ってる気がして。その過程で、義之くんにも興味が出たんです」

「……それを解き明かしたら?」

「うーん……個人的な興味を満たしたいだけなので、言い触らしたりはしません。でも、私は解くと決めたらその謎は必ず解きます」

まぁ、解いたところでどうするのか、と聞かれれば……よほどのことで無い限り他人に何かを言ったり、それを咎めたりはしない。第一、勝手に相手の隠し事に土足で踏み込んでいる時点で、そんな資格はないと彼女は考えていた。

「……その謎がもし、許されないことだったなら?」

「それが貴方のことを指すのなら、もしかしたら謎を解き明かすだけで終わるかもしれませんね」

それこそ、どうしてと問いたくなった。自分は恐らく、許されないことをしたのだ。今はあり得ない“可能性”をこの世に生み出した、のだから。

だが、桜の魔法使いは優しげに笑みを浮かべる。それは何故か――遠い記憶の大切な人と、重なった。

「知ってますから、貴方と似た様な人」

「ボクと……?」

「えぇ。普段は飄々としてるくせに、寂しがりやなんです。それでいて傷つきやすくて、何でもかんでも抱え込む人を、二人ほど」

う……といきなりそんな事を言い当てられて、気まずそうに瞳を逸らすさくら。今頃、その問題の二人――甲斐性無しと悪戯好き――はくしゃみでもしてる頃だろうか。
そしてそんな人は、人が何でもかんでも不幸になるような事はしない。もしそうなったとすれば、恐らくは――

「ともかく、義之くんは私が守ります。それは……信じてください」

もう一度、信じてもらう為に深々と頭を下げる。だが、初対面の人物に“信じろ”なんて酷なことだろうとは思う。

しかし彼女は……芳乃さくらは、彼女を信じて見ようと思った。それは、運命の巡り合わせか、時を超えた必然だったのか……彼女自身も、信じてみたくなったのだ。

「――信じます、貴方を。……ボクも、力の限り義之くんを守りたいから」

――彼の、桜内義之の■■として。

「それに、何だか貴方は他人の様な気がしなくて……」

と言うより、同じ名前で同じ容姿で魔法まで使える、となると他人の気がしないのは当たり前だろう。
にゃはは、と場を和ませる様に笑い言うさくらに、魔法使いは確信を込めて微笑し……言った。

「他人じゃないですよ、きっと」

「……その謎も、貴方が解き明かす?」

「ふふっ、この短時間でそこまで私を……互いを理解できる、からね」

最初の重苦しい雰囲気はどこへやら、楽しげに笑う二人。容姿も相まって、他人から見れば二人は双子の一時にしか見えないことだろう。

そう他人ではない……全ての答えは、恐らく『悪戯好きの魔法使い』が握っているのだろう。

だが――他人に答えだけを聞いて解かれた謎など、何が面白い? 自分で調べ、自分で手掛かりを聞き、自分で推論を組み立てる。だからこそ、解いた時の快感が一層強くなる。

(……これ、誰に似たんだろ?)

ふと、たまに彼女はこう考えるが、悪戯好きの魔法使いに聞いたところ『誰の遺伝でもないねぇ……ただ、謎解きと研究に違いはあれど、集中するとご飯を食べるのも忘れるのは、私の姉に似たのかねぇ?』と、どこか懐かしそうに語っていた。

詰まるところ、この他の人曰く“超好奇心旺盛”は自分特有の物らしい。嬉しいのやら、悲しいのやら……。

――それはともかく、桜内義之を守る――まぁ、相手はしばらく引き籠もっているだろうし、万が一に備えて、だが――にしても、この地に隠された謎を解くにしても、今の自分の身分では弊害が出る。

しかし、目の前の学園長と自分の資格があれば……。ニヤっと突如指を唇に当て、表情を変えた桜の魔法使いを見て芳乃さくらは首を傾げた。

「それはそうと、一つちょっとしたお願いがあるんですよ――」

ちなみに、悪戯好きの魔法使いから続く桜の魔法使いの家系には一つ共通点があったりする。

――“ちょっとしたお願い”が、決して“ちょっとした”ではないことだ。









◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

翌日、桜内義之は教室の自分の机でボーっと考え事をしていた。

それは、悪友の板橋(いたばし) 渉(わたる)。友人の月島(つきしま) 小恋(ここ)、雪村(ゆきむら) 杏(あんず)、花咲(はなさき) 茜(あかね)の通称“雪月花”三人娘の声にも上の空な反応しかしなかった程だ。

彼が考えていることは、もちろん昨日のことである。本当にアニメの中みたいなこと――まぁ本当に多少なら魔法が使える自分に言えることではないのだが――があり、自分の保護者と同じ容姿の人物が助けてくれたのだ。気にならない訳がない……が。

(結局、さくらさんは『今日になったら分かる』、の一点張りだったしな……)

そう、珍しく早く帰ってきたさくらから聞かされたのは、その一点張りだけなのだ。結局、アレが何なのかも判らず仕舞い……まぁ、もう大丈夫だということらしいし、久しぶりにさくらさんが本当に楽しそうな笑顔を見せてくれたから、それは良いと言えば良いのだが……。

(気になる物は、気になるよなぁ)

結局、桜の魔法使いと名乗った彼女はどこに行ったのか、という疑問が全く解けずに、悶々としてまたため息を吐く義之。

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  1. 2013/02/18(月) 03:33:07|
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魔法少女リリカルなのは 烈火の翼 バレンタイン記念小説『なのはの最悪のバレンタイン』前編


ゆっくり、ゆっくりと空間が構築されていく。そこで、女性は目を覚ました。

(夢の中で、目を覚ましたってのもおかしい気がするけど……ね)

あぁ、もうこの感覚は解る。間違いなく“人の夢の中”だ。珍しく、自分の記憶が“再生”されなかったと思えばこれだ。

(これ、安眠妨害で訴えられないかしら?)

いや、その場合はプライバシーの侵害とやらで自分が訴えられてしまうのだろうか?と自分の能力に対して、非常に他人事の様に考える女性、高町なのは。

『他人の夢を見る』。この能力こそ、出来損ないの魔法使いである彼女が唯一持っている魔法にして、唯一制御できない魔法。

他人の夢ほど自分勝手な物もなく、他人の夢ほど見せられて暇な物はない、とこの能力を持って実感したなのは。

――さて、本日は誰の夢なのか……と、浮遊感のある身体で視線を巡らせて、

(……私?)

気付く。目の前に広がる光景は、見慣れた自分の故郷……そして、視線の先にいたのは――自分だったのだから。正確には、今の彼女より身長は遥かに低く、学生服を身に纏い、友人達と話をしながら通学しているという、今の彼女からすれば遠過ぎる“普通”の日常風景。

(って事は、この夢は私の知ってる人の夢か)

父か母か、兄か姉か、はたまた友人か。誰かは知らないが、随分とまぁ酔狂な夢を見ているなとは思う。

そうして、誰の夢かと思考を巡らせているうちに――彼女の意識は、現実世界へと回帰した。












魔法少女リリカルなのは 烈火の翼 バレンタイン記念小説『なのはの最悪のバレンタイン』













◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「師匠、どうしたんですか? なんか考え込んでるみたいですけど……」

「なんでもないわフェイトちゃん。それと、師匠は止めなさいと何回言えば解るのかしら?」

あはは、すいませんと直す気が全くないフェイトを見て、一つため息を吐いて喫茶店の飲み物に口をつけるなのは。

彼女達にしては、珍しく二人揃った休日。なので、取り敢えず喫茶店で時間を潰してみたが……やはり、なのはの頭に浮かぶのは今日見た夢の内容ばかりだった。

誰があんな夢を見たのか、謎は深まるばかり……可能性としては、フェイトが見たとも考えられるのだが。

「ど、どうかしましたか師匠?」

「いや、立派に育ってくれておねーさんは嬉しいな。って思っただけよ?」

「そう思うなら、その全く笑ってない表情止めてくれません!?」

――無駄なところ(胸)ばかり育ちおって……と、極めて個人的な事情になってしまうので、考えるだけ無駄な様である。

そういえば、と彼女がガラスから外を見ると妙に女性達が浮き足だってるな、と先程から思っていた。そうして、彼女にしては珍しく今さらながらに気が付いた。

「そういえば、明日ってバレンタインだったっけ?」

「わ、忘れてたんですか? ユーノには……」

「何でユーノくんが出てくるのか知らないけど、互いに仕事入ってるんだから会う訳ないでしょ」

断言した途端、フェイトがガックリとうなだれた事に何故かイラッとするなのは。

何だか、みんな誤解している。なのはがユーノに持っているのか、個人的な興味のみだ。決して、皆が期待している様な物ではないと断言できる。

その“興味”という感情を理解しきれていないのは、彼女自身であると本人はまだ気が付いていない様だが。

――ユーノからの着信を携帯が示したのは、その時だった。

「ユーノくんから……?」

何だろう、彼は今日も仕事の筈だが……と、何やら期待した表情のフェイトの頭にチョップを入れて黙らせ、なのはは携帯の着信に出た。

『な、なのはさん!! 司書長が……司書長がぁ!!!!』

――ユーノからの着信なのに、聞こえてきたのは無限書庫の司書の声だった。なのはともよく話す、人当たりの良い司書の一人だ。

そんな司書が、ユーノの携帯を使ってなのはに切羽詰まった声で連絡を取る……なのはならば、異常があったのだと理解するのに一秒もかからなかった。

「――すぐに行きます。事情は移動しながらでお願いします」

すぐに立ち上がり、喫茶店の会計を手に走り出すなのは。彼女の表情を見たフェイトが、異常があったのだと理解し彼女に続く。

目指すは、ユーノ・スクライアが司書長を勤める『無限書庫』――どうやら、バレンタインの様に甘い1日にならないのは確かな様である。














◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「なんですか……あれ?」

フェイトが茫然自失と呟いた場所は、時空管理局が誇る情報機関『無限書庫』

その名の通り、無限とも思える本が収められているのだが……その空中で、真っ黒い巨大な“卵”の様な物が浮いていた。さらには、無重力空間である筈の無限書庫に、何故か重力が存在しており、フェイトと司書、そしてなのはは設置されている柱の上でそれを見下ろしていた。

ポツリ、卵を見たなのはが呟く。

「ロストロギア『ユメミノタマゴ』……また、面倒なのが出たものね」

「な、なんですかそれ……」

「発動時、捕えた対象を夢の中に強引に引きずり込み、その人が持ってるうちに秘めた“願望”や“願い”を見せて、永遠の眠りにつかせるロストロギア。相手の欲求を満たすだけあって、脱出できた例はなし。さらに、時間が経てば対象を完全に吸収し転移してジ・エンドってね」

極めてふざけた様子で答えるなのはだが、その目は全く笑っていない。今までの事例が確かなら、残された時間は少ない上に取り込まれたユーノは助からない可能性の方が……。

瞳を閉じて、また開くなのは。見据える先は、ユーノを助ける道のみだ。

「時間がありません。なんでこうなったかは後回しで、私が今すぐ突入して――無限書庫司書長・ユーノ・スクライアを救出します」

「で、出来るんですか!?」

「と、言うより、私にしか出来ないでしょう」

司書の驚きにも淡々と答え、突入準備の為にエクスシアの翼を展開して飛び立とうとするなのは。

正確には、彼女の構築体(マテリアル)であるシュテルも同じく強引に突入可能なのだろうが。今彼女を待っている時間は残念ながら無い。

「フェイトちゃんはこのまま待機。自己の判断で行動しなさい。ただし、攻撃したりしないこと」

「な、なら私も――」

「言ったでしょ。これは“私しか突入出来ない”のよ」

誰もが突入できるならば、助けられた事例くらいある筈だ。だが、それが無いのだから普通の人間は突入出来ない。本来は、彼女とて例外ではない。

――身体の半分以上がデータで構築されている、なんてふざけた身体でなければ。

「あと一時間もしないうちに突入できなくなって、ランダムに転移して誰かの手に渡ります。その前に、ユーノ・スクライア司書長を救出して――ユメミノタマゴを中から破壊します」

時間がない、その言葉通りになのはは機械的な翼を羽ばたかせ、一気にユメミノタマゴへ突撃する。

後ろからフェイトの「師匠!!」と叫ぶ声を聞き流し、ユメミノタマゴに触れ――己の身体を操り、中へ強制的に入り込んだ。

――どうやら、人生最悪のバレンタインになりそうだ、と思いながら、出来損ないの魔法使いは夢の中へと侵入する。

歪んだ物語が、また加速した。














────────────────────

なんで前編なのかって?書き始めたのがほんの二時間前で、これ絶対間に合わんだろって思ったから先に上げただけですよ(←ダメ人間)

てな訳で、バレンタイン記念小説……バレンタイン関係なくねな話になりました(←バカ)

お話はなのは、そして前編では名前だけ出てきたユーノがメインになります。ぶっちゃけ、書きたい話が全部後編に回ってしまったというね()

まあ、最初の夢の話も伏線とし、ロストロギアの中に突入したなのはを後編では描きたいと思います。そしてユーノと……?

では、感想等々もお待ちしています。次回をお楽しみに!!
  1. 2013/02/14(木) 16:47:19|
  2. 烈火の翼
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魔法少女リリカルなのは 烈火の魔法使いの出逢いの物語 第2話

漆黒の翼と烈火の翼が羽撃たき、赤黒い軌跡と真紅の軌跡を描き、高速で衝突、交錯する。互いの武器を叩きつけ、弾き、再び叩きつける。

それを何度か繰り返した後に、漆黒の翼を持つ天使が右手に持った小型のライフルが……一瞬の内に五つの煌めきを放ち、軌跡を描いた。元々早撃ちに適した銃とはいえ、それを放った者の技量も凄まじい物だ。

しかし、超速で放たれた赤黒い五本の熱線は、対象に当たる事なく過ぎ去った。相手は“放たれた瞬間には既に”、その射線上から逃れる様に動き、そのまま炎の剣を構え突っ込んで斬り掛かる……が、やはりそれも、相手が素早く左手の魔力で刃が構成された武器、マギリングサーベルで受け止めた事により、またもや振り出しに戻る。

そんな常人には見る事すら叶わない、超速の空中戦闘を繰り広げる彼女ら二人を確かに捉えていた人物は少なかった。

――その超速戦闘を一切見失う事なく捉えていた人物が、時計塔の一番上に立っていた。風で純白のコートと栗色の髪が揺らめくが、本人に一切ブレは無い。

時計塔の上に立つ彼女の瞳が、今一度『黒の天使』を捉えた時、彼女はフッと笑みを零した。

「――また会いましょう。『殲滅者(デストラクター)』、高町 シュテル……」

届く筈の無い言葉は、やはり風に呑まれ消え失せ――同時に、彼女の姿も、まるで幻影だったとでも言うかの様に消えた……。

一方、永遠に続くかと思われた超速戦闘は、少しずつだが着実に変化していた。お互いの武器を振るい、衝突し激しい火花とスパークを散らすその戦況は、少しずつ、少しずつだが烈火の翼で飛行する……芳乃 シグナムに傾いているのだ。

「はぁっ!!」

「くっ……ッ!!」

振るわれた炎の刃を受け止めたシュテルだったが、その動作が先程までより遅い動きだった故に、力の優劣が完全にシグナムに傾いた。それをシュテルより速く把握したシグナムが、己の剣を強引に押し込み、斬り払ってシュテルを叩き落とす。

無論、シュテルとて何もせずにただ落とされる訳ではなく、降下しながらも凄まじい速さで右手を斜めに振るい、今度は八つの連なる閃光が瞬き、八つの熱線が放たれた。だが、シグナムはそれすらもあっさりと避けてシュテルに追い付き、再び刃を振るう。

何とかそれをサーベルで受け止めたシュテルは、それ以上は刃で彼女と互角に戦うのは無理と判断し、押された勢いに抗うことなく、翼の粒子を逆に噴出しシグナムから逃れる様に加速、そしてクルリ――と身体を回転させ、怪我の一つも無く地上に着地した。

そうして息を整えたシュテルが、少し遅れて地上に降りたシグナムを称賛と共に迎えた。

「想像以上、想定より上の強さ……素晴らしいです、シグナム」

「お褒めいただき、光栄な事だな。が、お前もまだ本気では無いだろう?」

「……そうですね。ならば、少し手札を見せましょうか――貴方に見切れれば、ですが。エクスシア、マギリングライフル・モードチェンジ」

『Yes Master.』

言いながら、シュテルは己の構えを“解いた”。マギリングサーベルも仕舞い、発射モードを変更したライフルは……シグナムから見えないようになる。

最初は彼女の無形の構えに、警戒で目を細めたシグナムが――唐突に、その頭脳に電流が走り、そして僅か一秒足らずでシュテルの構えの意味を“推理”し、目を見開いた瞬間――

「!!」

「ッ!!」

――“二つ”の音が辺りに響き渡り、二人の構えは変化していた。不屈の魔法使い、シュテルはライフルを撃ち“終えた”状態で、目を見開いて驚愕しており、そして烈火の魔法使い……シグナムは、彼女の視線を受け止めたまま、振るい“終えた”炎の剣を下ろした。

「……最早、未来予知の領域に入った直感力ですね。まさか、私の『不可視の弾丸(インビジブル・バレット)』を見切るとは」

もう、この勝負を見る大半の人間にとっては、未知の領域であり理解の範囲外の状態だろう。

彼女ら二人の攻防は、本当に“一瞬”の出来事だったのだから。まず、シュテルの『不可視の弾丸(インビジブル・バレット)』……これは、言葉にするだけなら簡単だ。

あの無形の構えからシュテルは――“目に見えない程のスピードで”マギリングライフルを抜き放ち撃った。ただそれだけ……要は、目に見えない程に速く撃たれた銃弾、つまり不可視の弾丸(インビジブル・バレット)とは“ただの早撃ち”なのだ。ただし、不可視の。

そして、発射モードの変更により、普通の銃のような一つの弾丸……不可視の魔力弾は確かにシグナムに向かって迫り――その刹那、叩き落とされたのだ。

これも言うだけなら簡単だ。シグナムは、その未来予知じみた驚異的な直感力と、己の反射神経を駆使し……まるで居合いの様に、剣を振るった。迫り来る銃弾をも“超える速度”で。そうして銃弾よりも速い刃は、銃弾と衝突した時に銃弾のベクトルを強制的に変更させ……叩き落としたのだった。

だから、二つの音が響いたのだ。片方はシュテルが銃弾を放った音、もう片方はシグナムが銃弾を叩き落とした音。これが、二人の一瞬の攻防の正体だ。

「全く、本当にとんでもないですよ。私としては、これで終わりと思っていたものでしたからね……」

「なに、私の直感以外にも、お前の視線、風を切る音……その辺りで銃弾の行方は予想がついた」

「成程、私もまだまだ未熟ですね……」

正直まぁ、こんな方法で『不可視の弾丸』を止める者など普通はいないのだが、シュテルの“必殺の一撃”を止められたのもまた事実。それは“必殺技”と名乗るには、まだ未完成な技だったと言う事だ。

ならば諦めるのか――否、そんな訳がない。

剣技ではシグナムには敵わない、己の銃技も破られた。

だが……まだ彼女が『殲滅者(デストラクター)』たるその由縁、『黒の天使』の真の力を見せてはいない。だからこそ、シュテルは再び天へと舞い上がる。

舞い上がりながら、シュテルはシグナムを静かに見据え、告げる。

「シグナム、貴方の強さに敬意を払い、同時に我が殲滅者(デストラクター)の名の由来、お見せしましょう」

つまり、彼女が最も得意とする技で全力を出す……そう、シュテルは言っているのだろう。さらに、フランベルジュを構えるシグナムに再び言葉を放った。

「貴方も、そろそろ本気を出してはいかがですか?」

「……いや、転入そうそう“魔女っ子”扱いされるのは、さすがに遠慮したいのでな」

サッとシュテルから逃れる様に視線を逸らすシグナムに、シュテルだけではなくそれを聞いていたヴィータとクロノも首を傾げた――唯一、さくらだけは何故か曖昧な笑みを浮かべていた。

「まぁ、貴方が本気を出さなくとも構いません――」

『ドライブ・オン。武装コード、マギリングガンポッド『ルシファー』起動』

エクスシアが反応し、ライフルが回帰して長身型の大型ビーム砲が姿を現す。それをシュテルが構えると、砲身が中央から二分割されスパークが散り――

「――私は、手加減しませんがね」

――光が爆せた。シグナムが通って来た道を光が一線し、次の瞬間には轟音を轟かせ爆炎が一気に上がる。

一旦冷却を始めたルシファーを降ろし、爆炎を見つめるシュテルは……まさに、『殲滅者(デストラクター)』そのものと言えた。

『……改めて、圧倒的だな。彼女の砲撃能力は』

『結界、戦闘開始前に展開しといてよかったな……何にせよ、やっとこれで終わりかぁ』

なかなか、久しぶりに見応えのある戦いだったな……そうヴィータが締め括ろうとした――その時、クスクスと誰かの笑い声が聞こえた。二人が振り返る、そして見えたその声の主は……学園長、芳乃さくら。

そんな彼女は、笑いながらも爆炎から瞳を逸らさず、言った。

「ボク、あの程度の攻撃でやられる様な鍛え方、した覚えはないんだけどな~」

驚愕の言葉が放たれ――爆炎から烈火の炎が溢れたのは、まさにその瞬間だった。

爆炎すらも呑み込む、圧倒的な業炎……烈火の炎。その中から、真紅のドレス甲冑が姿を見せ、ギリギリで炎からさらに上空へ逃れた黒の天使を、ただ悠然と彼女を見つめていた。

「砲撃を炎で逸らし、流す様に防ぎましたか……ですが、次はそう簡単に往きますか?」

「さぁ、どうだろうな」

露出した美しい背中から、再び烈火の翼を羽撃たかせたシグナムが僅かに笑みを零し、天へと舞い上がる。

――だが、先程の様に長ったらしく斬り合うつもりなど無い。

フランベルジュの刃から炎の粒子を“微かに”辺りへ流出させながら、シグナムは戦況を冷静に把握していた。

あの大火力が相手だ……真っ正面から戦っては、不利になるのは至極当然。かといって、消耗を待つ様な戦い方をしても、あの馬鹿みたいな火力と魔力でここいら一帯を殲滅されかねない。いくら結界内とはいえ、それは些か遠慮したいものだ。

既にシュテルは、砲撃の準備に入った。翼と腰に装備されていた合計4門の武装をシフトさせ、もう数秒あれば砲撃を放てる状態――しかし、シグナムはもう既に“先手”を取っている。

打てる手は打った……そして、勝利条件は“揃っている”。シグナムが刃を真っ直ぐに上げ、振り下ろし、告げた。

「奏でろ、協奏曲第一番――サクライロノキセツ」

――瞬間、シュテルの周りに数え切れぬ無数の桜が舞った。それはシュテルの視界を遮り、乱舞するように美しく舞う。

(なっ……目眩まし――!?)

驚く間すら与えず――一輪の桜が“咲いた”。それは、連鎖的に他の桜をも咲かせ……桜の協奏曲を奏でる。目眩ましだけではない、咄嗟に強化したシュテルのバリアジャケットを貫く、とまではいかないものの砲撃体勢を崩しダメージを与えた。

だが、シュテルとてやられっぱなしではない。出力を弱め、炎の桜から片手で顔を庇いながら、ルシファーを凪ぎ払うように砲撃を放ち前方の桜を吹き飛ばす。

そして、見えた。距離を取ったシグナムが、“弓”を構え弦を引き、強き瞳がシュテルを捉えている。

――フランベルジュは、炎を司る武器。故に特定の形は持たない……その答えが、これだった。

炎の矢は既にシュテルへと定められ、今からでは回避も間に合わないだろう。

(ならばっ!!)

迎え撃つのみだ。両肩と両腰、ルシファーから前方にエネルギーを一気に集束。五砲門からのエネルギーは、たった一秒でシュテルの身丈の三倍以上の大きさに――なる時には、シグナムの指が弦から離れ……一匹の不死鳥が天を駆けた。

「奏でろ、幻影――ファントムフェニックス!!」

炎を纏う弓が、巨大な不死鳥の形を成してシュテルへと迫る。そしてそれより少し遅く、シュテルがルシファーのトリガーを引く。

「ディバインバスター・バーストモードッ!!」

スパークが空中に軌跡を描き、凄まじい魔力エネルギーの塊が不死鳥に向かい直進する。

桜色の光球と不死鳥が直進し、その勢いのまま激突……その瞬間、シグナムの姉と兄を除く誰もが光球と不死鳥の行方を見つめる中で――彼女だけが、微かに笑みを浮かべた。

激突した不死鳥が変化を起こす。巨大な翼で光球を包み込み、炎を溢れさせ……光球と共に、巨大な爆発を起こした。

「ッ!!」

凄まじい爆風が一気に辺りを包み込み、シュテルも思わず腕で顔を庇う。そうしながら、シュテルは今の攻撃の分析に思考を割いていた。 続きを読む
  1. 2013/02/10(日) 05:26:03|
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