サクライロノセカイ/リリカルなのはなお話

えびえもん兼いかじゅんのブログです。リリカルなのはの二次創作などを書いています。

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気になる人の寝顔


なんとなく家を訪ねてみたら、お話しようと思っていた相手が椅子に座ってぐっすり眠っていました。

もしそれが、その人が貴方にとって気になる人だったら……貴方はどうしますか?

「…………すぅ」

「うにゃ?」

ぱちくり、物珍しそうに目を瞬かせたのは、金色の髪と別に本人はいらないのに、実に女性的に恵まれた容姿を持ってしまった青年、紅 刹那だ。

彼の目の前には、これまた非常に美しい容姿と桜色の髪を持つ女性、芳乃シグナムが……安らかな寝息を立てて熟睡していた。読書中だったのだろう、今にも手から落ちそうな本を刹那はスッと取りテーブルに置き、何処からか取り出したタオルケットを掛けてやる。

「さて……」

起きる気配は全く無いし、熟睡している彼女を起こしてまでする用事は自分には無い。

と言う訳で――

(別に他意はないですよ、他意は)

誰に言い訳しているのだろうか? 心中でよく判らない言い訳をしながら、刹那は椅子に座り手の届く範囲で、尚且つ目の前にいるシグナムの寝顔を観察し始める。

他意はない、他意は。若干、顔がいつもより熱を帯びてきた気がするが、気のせいだ。気のせいったら気のせいだ。

暫く穏やかな寝顔を見つめていた刹那が、スッと手を伸ばし人差し指を立て……ぷに、とシグナムの頬っぺたに触れた。

「う……ん……」

(柔らかい……)

僅かに身動ぎしたが、相変わらず起きる気配のないシグナム。そんな彼女の様子を余所に、刹那は何度も頬っぺたをつっつき、やがて短い距離をさらに詰め、じっくりと彼女の顔を観察する。

こうして見ると、まだあどけなさが残る顔。それなのに、戦っている時は相手を圧倒的する鋭い表情を見せたり、時折『魔法使い』……彼女の姉と同じ魔女の様な表情をしたりするのだから、驚き物だ。

「テスタロッサ……その資料は私の研究成果だ、間違っても燃やすなよ……」

……どういう寝言なのだろう、一体。まぁシグナムがここに来る前の事を考えれば、判らなくはないが……どうしてフェイトちゃんなのだろうか? と言う疑問が当然の如く浮かんだが、きっと天然少女は夢の中でも天然少女なのだろう、と間違ってはいないがさりげなく酷い解釈をする刹那。

――同時に、小さな苛立ちが彼の中で波を立てる。自分が目の前にいるのに、全く別の人間の夢を見るなんて……そんな、独占欲にも思える感情を彼はすぐに消し去る。

(……かったるい)

どうして、自分がそんな勝手な感情を抱く必要が有るのか。思わず、心の中でいつもの口癖を呟く刹那。そうして、ゆっくりとシグナムから離れた――その時、その彼の手を引き止めるように掴み、言った。

「――刹那……あんまり泣くなよ、バカ者」

「なっ……」

バカはどっちだ、誰の所為だと思ってる……なんて事を言いかけたが、ギリギリで踏み止まる。

(ホント、どんな夢を見てるんだか……)

全く、と先程より赤くなった顔を誤魔化すように心の中で呟く。ただ、その表情は慈愛に満ちて、とても穏やかな優しい表情だった。

――ふと、彼がまたシグナムの顔を間近で見つめる。しかも、先程よりも近く、いつの間にかテーブルを挟んでいない状態になっていたので、殆ど距離がない。

(……あの時のお礼と、いつもの仕返しかな)

お礼は、自分が今ここに、彼女の傍で生きていられる事へのお礼。仕返しは、セクハラじみたデリカシーのない発言と、いっつも時間に遅れる事への仕返し。

ゆっくり、その状態から顔を近付け――誰も見ていない二人の影が、そっと重なった。

それは、僅か数秒にも満たない時間で、一つになった影がまた二人に戻り、刹那は時間にしては十分程前に歩いた道を引き返し……部屋のドアを閉める時、小さくだが呟いた。

「――またね」



……完全な余談だが、妙に上機嫌な状態で彼が帰って来たのを星光の名を持つ少女が目撃し――帰宅した姉と主が、“何故か”顔を真っ赤にした彼女を目撃したのは、まったくの余談である。













────────────────────

烈火の翼を書けるだけの気力が戻ってきたので、先行して書いてみた小ネタ。ちなみに、別パターンは寝ぼけたシグナムが刹那を押し倒して……まぁいろいろなる話。でも、押し倒しネタは『なろう』で投稿していた初期作品でやってたので没に。

……さらにちなみに、最後“何故か”顔を真っ赤にしていた彼女ですが……どうしてかは、ご想像にお任せします(笑)
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  1. 2012/10/18(木) 02:36:38|
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続くか不明な小ネタ


コツリ、コツリ、爆音の中でゆっくりと足音が響く。

――それは、破滅への足音。破滅を導く鎮魂歌(レクイエム)

「くっ……ハァ!!」

それを否応なく聞いている一人の少女が、ボロボロのコートから十本のナイフ『スティンガー』を構え、勢いよく爆炎の中へ投げ入れ……凄まじい爆音を上げ爆発した。
投げた少女自身も、思わず身を庇う程の衝撃――だが、破滅の足音は止まらない。

「……っ」

無意識に、恐怖から後退る少女を嘲笑うかの様に……破滅をもたらす者がその姿を見せる。

白い羽衣が揺らめき、爆炎の中から現れた筈なのだが、それは汚れ一つ存在しない。

炎をバックに立つ彼女の姿はまさに――白の天使‐死神‐。今の彼女の瞳は、『ヒト』と言う存在を映していない。ただ、無感情に目の前の『モノ』を映し出す。

「そろそろ、つまらないオニゴッコは終わりにしましょう」

紡ぎ出された言葉は、終わりを示す物。どんな犯罪者だろうと畏縮させる絶大な殺気が、一瞬にして少女へと叩きつけられ少女は恐怖からか、ビクリと身体を震えさせまた一歩後退る。

それを見た天使‐死神‐は、ふぅ、とつまらなそうにため息を吐き、呟いた。

「貴方を作った人、大分物好きなのね。テロでも起こしたいなら、中途半端な感情なんて消した方がいいのに」

「ドクターを――!?」

「それで意気がってるつもりなら、この程度の殺気に耐えられる様にして来なさい、小娘」

なんと言おうとしたのか……それすらも忘れ、彼女が“この程度”と称する殺気に押し潰されそうになる。

そんな少女を見て、やはり彼女は何時もの微笑も見せずただ無感情に言葉を紡ぐ。

「まったく、レジィおじさんの依頼だから受けたけど、今までで一番価値の無い依頼だわ。選択する意思の一つ無い……そんな奴らを相手にしないといけないんだもの」

「意思の無いだと……!!」

「驚くようなこと? ただ作られ、作った人間にただ命ぜられるがまま、自分の意思もなく動く……まったく反吐が出るよ」

それを自覚すらしていない、その事実がさらに彼女を苛立たしくさせる。

――クダラナイ。こんな事を考えているだけで、ただの時間の無駄なのだ。

流れる様な動きで彼女が構えたのは、一本の短刀。それを見た少女が、刀の長さから距離を計る――それが無駄だという事は、理解出来る筈もなかった。

彼女の力の正体が解らない……いや、例え解ったとしても少女には“見る”ことすら不可能だろう。

「サヨウナラ――お人形さん」

――何故、興味もない『モノ』にそんな言葉を残したのか……それは彼女自身――処刑人(エグゼキューター)、高町なのはにも解らなかった。

「死せ――神殺鎗」

その刹那。少女には知覚できずに何かが煌めき――歪んだ物語が、加速した。













────────────────────


気晴らしに書いてみた、続くかすら不明な小ネタ。続くとしたら、もう誰だかバレバレな少女の成長(精神的な)物語になるでしょう、多分
  1. 2012/10/15(月) 21:58:32|
  2. 小ネタ
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魔法少女リリカルなのは 烈火の魔法使いの出逢いの物語 第1話

「……私は休んで来いとは言いましたが、人を連れて来いと言った覚えはありませんよ」

心なしか呆れた様な表情で、生徒会室に入って来た刹那とシグナムを迎え入れたシュテルが、そう言う。まぁ、この休日に人を連れて来るとは思っていなかったし、何より自分の師匠にして珍しい行動を取るのだな、と言うだけなのだが。

シグナムはそれに少々困った表情になっているが、刹那は笑顔でシュテルに返事を返した。

「いやぁ、迷子になっていたのを放って置けなくて」

「まっ……!!」

「成程、それなら仕方がないですね」

「良いのか!?」

良いらしい。っていうか、シュテルとしても特に関係はなかったようだ。どうせ、書類整理は全て終わっているのだし。と、シグナムの突っ込みを華麗にスルーしたシュテルが、彼女の分の紅茶を素早く入れ、自身の座ったソファーのテーブルに置き座るように促す。それに従って、シグナムが反対側のソファーに座り、刹那もシュテルの隣に座った。

「では自己紹介にしましょう。私は生徒会副会長・高町 シュテルです。以後、お見知り置きを」

「芳乃 シグナムだ。よろしく」

ペコリ、と礼儀正しく頭を下げたシュテルに習い、シグナムも頭を下げて自己紹介をして顔を上げる。すると、シュテルは分かりにくいが、何処か驚いた様子になっており、その理由はすぐに本人の口から語られた。

「芳乃……では、貴方が学園長の?」

「学園長……あぁ、さくら姉さんの事か。そうだな、私はあの人の妹だ」

「それで、こんな時期に転校なんて事も可能だった訳ですね」

「あぁ。まぁちゃんと試験は受けたし、合格もしたからな?」

一応言っておく、といったう感じで言うシグナムに、シュテルは分かってますよと返す。いくら身内とはいえ、学園長がそういう事をする人物ではないと知っている故の返事だ。

「改めて、よろしく頼むシュテル。私の事はシグナムで良い」

「はい。ではシグナム、私の師匠の事は……もうご存知でしょうね。この学園の生徒会長・紅 刹那。私の師匠で、こんなんでも男ですので」

「ちょっと待ちなさい。“こんなん”とはなんですか、“こんなん”とは」

こんなん……まぁ、刹那の女性的な容姿を言っているのだが、それを訊いた本人は若干怒りを含めた表情でそう言う。ただ、弟子の冗談と分かっているのか本気で怒っている訳ではないらしい。

そこから、何気ない雑談を交え、話題はシュテルの年齢に移る。

「それはそうと、シュテルはまだ中学生だろう?」

「えぇ。この身長の所為で、よく高校生と間違われますが。それが何か?」

因みに、シュテルの身長は170㎝前半。シグナムと殆ど同じであり、彼女が高等部である事を考えると中学生にしてはかなり高い方だろう。ただ、シグナムと違って胸は無いのだが。

ついでに言うと、刹那の身長は高く見積もっても150㎝後半。本人も気にしているのか、身長の話題になった途端になんともまぁ微妙な表情になってしまった。

「いや……中等部のお前が、どうして副会長をしているのか、と思ってな」

「成程、その事ですか。その理由は、そこにありますよ」

シュテルが目線だけで示した場所に、シグナムが視線を向けると……そこには、大量の紙の束、束、束。下手したら崩れてしまいそうな程、大量の資料や学園の書類が積み重ねられていた。

その光景を見て、シグナムは何となくその“理由”とやらを理解し、そして詳しい説明は刹那が引き継いだ。

「多分、シグナムさんの予想通りですよ。この学園、基本的に中等部と高等部が一緒に企画をやる事が多いんです。で、会長は高等部から、そして副会長は……」

「中等部から。それも、“会長が信頼出来る人間”から選ぶのです。つまり私ですね」

「そういう事か。刹那から、信頼されて選ばれたと言う訳だな」

「凄いでしょう。えっへん」

途中で言葉を引き継いだシュテルが、グッと膨らみの無い胸を張り誇らしく言うが……感情の起伏が少ない所為で、なんか変にシュールである。

「でも、シグナムさんも大変なタイミングで転校してきましたね。正式な転校日は休みを明けてから、火曜日でしょう?」

「そうだが……何か在るのか?」

「えぇ。その日に、ちょっとしたお祭り騒ぎが。まぁでも、参加しなければ普通に屋台を楽しめますよ」

「――さて、それはどうでしょうね?」

ニヤリ、と言う文字が似合いそうな位、不敵に笑うシュテルに、あぁこの子は何か企んでるな、と刹那には解ったが、屋台と言う言葉を訊いて、さっそく食い物巡りの計画を立てているシグナムは気付かなかった……。


さて、と言う訳で何の問題も無く休みが明け、さらに準備期間を1日挟んで火曜日。桜並木の通学路、そこには大量の店、店、店。クラス全体と言う訳では無く、個人のグループを組み、それぞれの店を開くので、必然的に店が多くなるのである。因みに、予算は学園から割かれる他、個人でも出せるのでいろいろな店が出来たりする。当たり前だが、お金持ち学校だから出来る芸当だ。

で、そんな中、転校生・芳乃シグナムは最初の店辺りで展開されている店の地図を開き、そして力強く己に宣言した。

「よし、回るか」

「――相変わらずだなぁ、お前」

ふと、後ろから掛けられた聞き覚えのある声に、シグナムは反応して後ろを振り返った。そこにいたのは、この学園の生徒だろう男子。オレンジ色の髪に、整った……と言うより、何処か不良にいそうな顔立ち。勿論、不良などでは無い。

友人か、はたまた恋人か。詳しく見ている人間がいれば、そう考察したかもしれない。が、彼らの関係は予想の斜め上を行く物だった。

「裏月(りげつ)兄さん? どうしてここに?」

「どうしても何も、俺もこの学園の生徒だしなぁ」

そう言われましても、と言わんばかりの表情の彼は――なんと、シグナムの兄だ。しかも、血の繋がった。こう言っては何だが……似てない。まるで似てない。強いて似てると言えば、その意思の強そうな瞳かもしれない。

「まぁ、それはそうですが……」

「それよりさ、お前“企画”に出場するのか?」

「企画?」

なんだそれ? と言う反応のシグナムに、裏月はほれ、と一枚の紙を渡す。そこに記されていたのは……その“企画”に関しての物だった。

「なになに……『守護騎士・選抜レース』――なんだこれは?」

「まんまだろ。生徒会長、まぁ今は刹那の奴を守護する為の騎士、それを選抜する為のレースだとさ。会長の騎士って奴は、この学園の伝統なんだとよ」

「ほぉ……けど、これは事前エントリー式ですので、どのみち私は出れないでしょう」

「あん? 在るじゃねぇか、お前の名前」

え? と疑問を浮かべながら、紙の裏のエントリーした人物の名前を見て行くと……あった、自分の芳乃シグナムと言う名前が。

――なんでだ? と言うシグナムの疑問は、まぁ当然の物であろう。彼女はエントリーした覚えは無いし、何より今日転校してきた彼女に事前エントリーなど無理だ。ならば何故……そう思案するシグナムだったが、その思考は裏月によって遮られた。

「取り敢えず、エントリーしちまってるんだから、レース会場に行って来いよ。もう少しで始まるぜ」

「仕方ない……では、これをよろしくお願いします」

「ん?」

ぽん、と裏月に手渡したのは、シグナムが持っていたガイドブックと財布。それを持っていた本人は、あっという間に走り去ってしまったので、裏月はガイドブックの中身を見ると……赤い丸印が大量にあった。主に、飲食関係の物……つまり、ここを回って食べ物を買って置いてくれ、と言う事だろうが――メチャクチャ数が多い。

分割して食べるんだろうが、それでも多い。だから、思わず彼がこう言ったのも、仕方がない事なのかもしれない。

「――だるっ!!」

そしてその頃、レース会場の本部。様々な機器が取り付けられたそこで、テントの解説席も同時に設置されていた。

『と言う訳でレース開始3分前だ。解説は僕、クロノ・ハラオウンと』

『何か連れて来られた。八神 ヴィータが担当だ』

設置されたテント内で、マイクを通して言う黒髪の少年と赤髪の少女(中学生にしては背が低い)が、このレースの解説役だ。そこ、チビチビコンビとか言わない。

『さっそくルール説明だ。このレースは、妨害だろうが飛ぼうが何しようがオッケーの競技で、最初のゴールした人物が勝者となる。レースと言うより、バトルロワイヤルだな』

『お前がぶっちゃけてるからアタシもぶっちゃけるけどさ、誰が優勝すると思う?』

『そうだな、やはり優勝候補筆頭の殲滅者(デストラクター)じゃないか? 他に目立つ候補の参加者もいないしな……じゃ、スタートだ』

『いきなりかよ!? ぶっちゃけ過ぎだろお前!!』

ヴィータのツッコミは虚しくスルーされ、クロノのあっさりとした開始の合図で広い敷地の各地にいる全員が一斉に走り出し……一つのモニターに映る参加者達が、一斉に一人の人物に襲い掛かった。

『あぁ!? 何してんだアイツら!!』

『多分、完全にノーマークの人間を潰して、自分が強いと言う事をアピールしたいんじゃないか? まぁ、一点に狙われた人物は運が悪いとしか――』

瞬間、そのモニター内の“襲い掛かった”一人が吹き飛ばされる。

『――なに?』

『なっ……』

クロノは静かに目を見開き、ヴィータも驚愕を隠せずにいる。吹き飛ばされたのは、一人だけではなく二人、三人、四人と次々に吹き飛ばされて行き、一分にも満たない時点でその地点では一人を除き全滅した。

その残った一人が、ポニーテールに括られた“桜色”の髪を手で跳ね上げ、言う。

「さてと――遣るからには、真面目に遣らせてもらう」

少女……芳乃シグナムは、その宣言と共にゴールに向かって激走した。“一人を除いた”他の人物とは比べ物にならない速力で、一気に走る。

同時に、レースに参加している人物達がその除いた一人によって、次々に脱落していると言う報告が本部に入って来ていた。何が起こっているのか……やはりこれも、一部の人物を除き、理解が出来ていなかった。

『脱落しているのは確実に、殲滅者(デストラクター)の物だが……あの人は一体、何者だ?』

「――にゃはは、やっぱりこうなっちゃったか」

『が……学園長!?』

不意に、気配も無く現れた人物に、ヴィータとそしてクロノもまた驚きを隠せない。140㎝程の小柄な体型に、金髪のツーサイドアップの髪、サファイアブルーの瞳……この少女こそが、この学園の学園長、さくらである。

『学園長、なぜここに?』

「……自慢の妹の活躍を見に、かな」

さくらがそう、満面の笑みで言う中、既にレースの参加者は二人になっていた。一人は無論、ゴールに向かって激走するシグナムだ。……そのシグナムが、ザザザッと走りを止め、目の前に静かに立ち塞がる人物を見つめる。

「お待ちしていました、シグナム」

「やはりお前か、シュテル」

ペコリ、と自身のスカートを摘みお辞儀をするシュテルに、シグナムは大して疲れも見せず、まるで彼女がいる事が解っていたかのように言った。

「おや、私がいる事が予想出来ていたので?」

「簡単な消去法だ。私を知っていて、尚且つ転校したばかりの私をあっさりとエントリーさせた人物……可能性として一番高かったのがシュテル、お前だったと言うだけだ」
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  1. 2012/10/05(金) 17:46:48|
  2. 烈火の魔法使いの出逢いの物語
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魔法少女リリカルなのは 烈火の魔法使いの出逢いの物語 プロローグ

無限に存在する世界。同じ物など無いそれは、時に摩訶不思議な変化の事象を生み出す。

誰かが、部屋の一室で本棚から一冊の本を選び取り、それを開き呟く。

「……大分かけ離れてるし、あんまり関係ないけど……ま、いっか。暇潰しにはなるしね」

開かれた本がパラパラ、と独りでにページを捲り始め、光を放ち出す。また、新たな歪んだ物語が動き始める。

「ホント、不思議な世界だよねぇ。特に、『出来損ないの魔法使い』は大分変わっちゃってるし。って言うか、人物――事象の逆転?」

誰に言う訳でも無く、本を持った金髪の人物は彼にしか解らない事を言う。

「まぁいっか。それじゃあ始めよう? 烈火の物語からも外れた、歪んだ物語を……」

本が光を強める。始まる……歪んだ、そして桜に包まれた物語が――









◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

長く、広い敷地。長い、長い通学路の横には木が立ち並び、それらは全て満開の“桜”を咲かせている。因みに季節は春を過ぎ、完全な季節外れでは在るが、桜は全く関係なく咲き誇っている。

「本当に、年がら年中咲いているのだな」

ふわり、一陣の風が吹き、呟いた人物の咲き誇る桜と同じ色のポニーテールの髪が揺れた。静かな驚きを微かに含んだその少女は、さらにその通学路の先にある時計塔を見つめる。

とても長い時計塔。彼女の姉曰く、この学園の生徒会室として使用されていたりと、かなりお金持ちな学園と一発で分かる。

そしてこの桜は……。

(さくら姉さんは、また随分と派手な『魔法』を使った物だな)

彼女たち『魔法使い』の産物。この桜は、彼女の姉である『桜の魔法使い』が生み出した『魔法』……言ってしまえば“枯れない桜”だろうか。

(生み出した理由が、噂される願いを叶える“枯れない桜”に対抗してだと言うのは、どうかと思うがな……)

そう、本人曰く「思わずやっちゃった。テヘペロ☆」……らしい。テヘペロ、のレベルでは無いのだが、散らすのも勿体ないのでそのままなのだ――良いのか、それで。

相も変わらない姉だな……と、声には出さず思った少女が、ゆっくり辺りを見渡す。流石に完全休日と言う事もあり、人の出入りは完全に無いと言っていい。だからこそ、少女はこうしてゆっくりとしていられるのだが。

「取り敢えず、散策でもしてみるか」

そう呟いた少女が、その足を動かし数キロ以上ある敷地の中へ歩き出すのだった。

同時刻、時計塔の屋上。つまり、この学園の生徒会室。休日ともあり、誰も人がいない……と思いきや、意外な事に二人の人物がその場にいた。

二人いるうちの一人は、見ただけで高価と分かる椅子に座り、これまた高価と分かる机の上に積まれた書類の山を、さっささっさととんでもない速度で処理していく。それを行いながら、その金髪の人物は、言う。

「……かったるい」

「――と言いながら、とんでもない速度で書類整理をしているのは師匠でしょう」

そう事実を言い返したのは、近くのソファーに座り同じく書類整理を行う、茶髪のショートカットの少女。一旦作業を止め、感情の起伏が少ないその表情と青い瞳で、師匠と呼んだ金髪の人物を見つめる。

対して師匠と呼ばれた金髪の人物は、その美しい美貌を誇る――まぁ、男なのだが――表情を崩し、しょうがないでしょ、と言う表情に変わる。ちなみに、その間も手の動きは止まっていない。

「しょうがないでしょ。こんな書類の束、さくらさんだけに任せる訳にはいかないんですから……」

「それで、朝っぱらから書類と格闘ですか。まぁ“企画”も近いのですから、仕方がない気もしますが……取り敢えず、師匠は少し休んでください。後は私が片付けます」

そう言う少女の感情の起伏は少ないが、その強い瞳で見られても金髪の人物は動じる事なく、えーと不満げに声を上げた。それを見た少女が、はぁ、とため息を吐いてから、まるで言い聞かせるように再び言葉を紡ぐ。

「良いですか? 私は今さっきこの生徒会室に辿り着きました。が、師匠は朝から4時間近く書類と格闘。いくら師匠が丈夫でも人の身体は休息を求める物です。そして、残りの書類は私だけでも片付けられます。つまり、休日にも関わらず生徒会長たる師匠がこれ以上働く必要は無いのです。お分かりですか? さっさと休みなさいと言う事ですコノヤロー」

「あーはいはい分かりました。相変わらず、シュテルの説教はかったるいですね……って言うか、さりげなく最後に毒を吐くのは止めなさい」

うんざりした表情の彼を見て、少女――高町シュテルは、よろしい、と言う表情になり書類を片付けて行く。その間に師匠と呼ばれた彼は、しょうがないですね、と呟いてから出口の扉へ向かい、

「じゃあ30分位で戻りますから、書類整理はお願いしますね」

「了解です。15分で片付けて、紅茶でも用意しておきますよ」

そう言って、シュテルが返事をするのを聞いてから生徒会室を後にした。この時の彼は夢にも思わなかっただろう――これが、運命めいた出逢いの切っ掛けになるなどとは。

時間は少しほんの経ち、5分くらいした処だろうか……今現在、先程の少女はと言うと――

「……どこだ、ここは?」

――そりゃあもう、盛大に迷っていた。まぁ、こんな数キロ超の敷地内を地図も土地勘も無しに散策していれば、誰でもこうなってしまうだろう。とはいえ、少女は特に困った様子はない。ほー、なかなか綺麗だなと大きな湖を見た感想を呑気に言っている。

って言うか喩え迷っても、あの目立つ時計塔を目指して行けば問題ないのだ。

「――珍しいですね」

ふと、優しげな声が聞こえ同時に人の気配を少女は感じる。自分がここまで接近されてでしか気配を感じれなかった事に少し驚きながらも、表情には出さずに声の方向へ視線を向けると……今度こそ、言葉を失ってしまう。

「部活以外で、休日にこの学園に来る人は少ないんですけど」

そこにいたのは、女性でも見惚れてしまう程に美しい人物だった。腰まで届く金色の髪、まるで少女の様な顔立ちだが、何処か大人びた雰囲気を感じさせる。濁りの無い蒼い瞳が、少女の姿を映し出す。

「綺麗ですよね、この湖。私も気に入ってるんですよ、芳乃(よしの)さん」

「あ、あぁ――ん?」

何とか反応を返した少女は、ふと不思議な事に気付く。……何で目の前の人物が、自分の名字を知っているんだ、と。はて? と少女が内心不思議がっていると、それを読み取ったのか微笑を交えて目の前の人物が言う。

「この学校、登校も私服オッケーでしょう? だから、変な人が入り込んだ時の為に私は生徒の名前と顔を全員分覚えてるんです。貴方は、転校生の芳乃 シグナムさんですよね?」

「あぁ。そう言うお前は、この学校の生徒会長か?」

少女の……芳乃シグナムの言葉に、今度は相手が少し驚いた様子を見せる。無論、自分の事を見抜いたシグナムに対しての驚きだ。

「知ってたんですか?」

「いいや、この中等部と高等部があるこの学園で、全校生徒を全員覚えている人間など生徒会長くらいな物だろう……そう推理しただけだ」

当たっていたらしいな、と言うシグナムに彼はまぁそうですよ、と言う意味を込めて頷く。良い推理力……どちらかと言えば、直感力に近いかもしれない。そこにも彼は興味を持ったが、他にも……自分が会長だと気付いても態度をあからさまに変えないと言う事にも興味を持つ。

――けど、ならばこれはどうだろうか?

「じゃあこれは推理できました? 私、こんな容姿で男なんですよ」

「ほぉ、それは流石に推理できん。提示されているピースが足りないからな」

……そこから、どちらも喋る事なく沈黙が流れる。シグナムは特に表情を変えていないが、彼はキョトンとして呆気に取られていた。先に言葉を発したのは、その彼だ。

「……驚かないんですね?」

「なにを驚く必要がある? 結局、人は外見も大事なこともあるが、最終的に重要なのは内面だ――そう、私はお婆さまと姉さんから学んだのでな」

要は、お前の外見がどうだろうが関係ない……と言っているのだろう。フォロー、になるののだろうか? まぁ一つ解るのは――彼女が、珍しいくらい真っ直ぐだと言う事だ。思ったことをハキハキ伝え、相手が生徒会長だろうと同じ生徒なのだから遠慮はしない……ただそれだけなのに、何かが可笑しいのか込み上げる笑いを彼は必死で堪え、それに気付いたシグナムが疑問げな表情で問う。

「なんだ、どうした?」

「ふふっ、別になんでもないです」

「そうか――自己紹介」

笑顔で言う彼を不思議に思ったが、それを追及するよりもシグナムには言いたい事があった。

「え?」

「まだだろう? 私は芳乃 シグナムだ。お前は?」

お前は私の名前を知っているが、私はお前の名前を知らない……だから、改めて自己紹介、と言う事だ。

――本当に、初対面なのに迷いなく好感が持てるくらい、真っ直ぐな人だ。だから、と言う訳ではないが、彼は偽りの無い満面の笑みで彼女に答えた。

「私は――紅(くれない) 刹那(せつな)です。よろしくね、シグナムさん」

出逢いが物語を生み、そして動かして行く――喩えそれが、歪んだ物語だとしても。魔法使い達の物語は動き出し……加速する。
  1. 2012/10/02(火) 21:47:41|
  2. 烈火の魔法使いの出逢いの物語
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魔法少女リリカルなのはA's 通りすがりの魔法使い 第3話

加速する。月夜に彩られし結界空間にて、二色の流星が縺れ合い加速する。だが白と金色、二つの流星には明確な違いが在った。

金色の流星は、比較的読み易い軌道で天を駆けている。その直線的な軌道を、持ち前の速さで補っているといった処か。

対して白の流星は、金色の流星に優に追い付く速さで在りながらも、その動きは変則的で“読めない”。たった一つ、しかし決定的な違いが戦場のイニシアチブを大きく左右していた。

金色の流星――フェイトの視界から、白の流星が唐突に消え失せる。

「ッッ!!?」

途端、それを理解したフェイトが急激な制動をかける。当然、急激な制動にとてつもない衝撃がフェイトを襲うが、構っていられないとばかりにそのままバルディッシュを“後方”に振るう。

激しい衝撃が響く。それは、バルディッシュと真紅の刃を持つ魔王の月剣‐つるぎ‐がぶつかり合い、交わった証。攻撃を受け止められたにも関わらず、白の天使は相変わらず真意が解らない微笑を浮かべていた。その笑みが、フェイトの神経をさらに逆撫でする。

「なにを、笑っているんですか!?」

「フフッ、まだこのレベルには“着いて来られる”んだな、ってね」

「――!!」

明らかな挑発。しかし、今のフェイトにそれを判断するだけの冷静さは残されていなかった。速さも、技術も、目の前の女性には通じない事がこの数分間で解った。

――ならば、虎の子の新装備を発動させるのみ。

「バルディッシュ、カートリッジロード!!」

『Yes sir.』

バルディッシュがそれに答え、カートリッジを排出しようと6連装リボルバーから、カートリッジを炸裂させようと――その一瞬、何かがスライドした排出口の間に挟まった。

「なっ……!?」

フェイトが言葉を失いながら、“それ”を漸く認識し、そして己の思慮の浅さを後悔する他なかった。
――それは、戦闘開始じ彼女が何処かへ飛ばした誘導兵器……いや、これを見る限りただの誘導兵器ではない。

理のマテリアルたる彼女が使うそれは、近接型空間制圧兵器『ソードビット』……最初は加減していた状態で、使う必要が無いから待機させたのかと思っていたが、違う。彼女は機を待っていた……そしてそれが、この一瞬の隙だったのだ。

「さて、只でさえ相性の悪いインテリジェントデバイスに無理やりカートリッジシステムを組み込んだのに、こんな事をすればどうなるか――解るよね?」

「っ……バルディッシュ!?」

通常、意思を持つインテリジェントデバイスならば、この様な異常が起こると自動で対処する。が、今は“付け焼き刃”とも言えるカートリッジシステムを搭載し、大した調整も無く実戦投入――つまり、如何なインテリジェントデバイスと言えど即座に対処など出来る筈がない。

バチバチ、とスパークを上げカートリッジ部分から異常を来すバルディッシュ。急ぎ対処をするバルディッシュだが、フェイトはそこに隙を生み出してしまう。

「潜在能力は合格点――けど、精神と肉体はダメダメね」

瞬間、真紅の刃がフェイトへ襲いかかり――


「ディバイン……バスタァァァァァァ――――!!!!」


桜色の輝きが、戦姫の叫びと共にフェイトの目の前に煌めいた。それは、今までの彼女の砲撃より巨大な物。しかし、真紅の刃を振るった者は瞬間的に加速し、その砲撃をいとも簡単に避ける。

「なのは……?」

……思わず、砲撃の主の名を呼んだフェイトが疑問形となり呼んだのは、様々な疑問が沸き上がったからだった。

なのはは、あんなにも精密に――カートリッジと言う“付け焼き刃”が在るのに――射撃をする事が出来たか? しかも、この高速戦闘の中で、確実に自分に当たらないよう正確に。さらに、何時もの優しげな瞳はそこに無い。対象ですら無いフェイトが怯む様な、その獅子の瞳は一瞬にして視界から消えた処刑人(エグゼキューター)を確かに捉え、睨み付けていた。

ふと、なのはを見下ろす彼女の微笑が変わる。今までのように真意の解らぬ微笑ではなく、まるで獲物を見定める様な笑みへ。

「魂が引っ張られてる……か。面白いじゃない」

「…………」

『Accel Fin.』

白の天使が羽を羽撃たかせ、魔王の月剣と十のソードビットが滞空する。

獅子の子が両足に桜色の羽を展開し、砲撃形態のレイジングハートを真っ直ぐ構え加速魔力がブーストを掛け始めた。

二つの魔力が加速し始め、強烈な風圧を生み出して……爆発した。

「レイジングハートッ!!」

『Load Cartridge.』

まず動いたのは高町なのは。砲撃モードのレイジングハートの照準を真っ直ぐ処刑人に構え突撃、さらにカートリッジを二発排出する。その一瞬後に魔法使いが動く。そのスピードはなのはの飛行魔法をも圧倒的に凌駕し、しかし射線はなのはに合わせたまま引き離して往く。

対するなのはは、処刑人を逃さず睨み付け――二十を超える誘導弾を展開、一気に解き放つ。それは縦横無尽に飛び……その時、なのはの表情が一瞬苦痛に歪んだのを魔法使いは見逃さなかった。

(あの誘導弾……本来は足を止めて使う物じゃない)

彼女の戦略眼はその誘導弾の性質をあっさりと見抜き、同時に少女がどれだけ無理をしているかを理解する。

十のソードビットで誘導弾を迎撃しながら、魔法使いは振り返り思考する。いくら少女が自分に“引っ張られ”技量などの部分が異常なまでに急速成長しているとはいえ、それイコール少女の肉体が成長している訳ではない。そして、一方的に引っ張られると言う事は、精神的に“未熟”なのだ。

それは、己の知る『不屈の魔法使い』の足下にも及ばない程に未熟で、自分と言う存在がどれだけ知り合いの人間に影響を及ぼすかを理解しておらず、同時に己の存在をどれだけ度外視しているかがよく判る。

そしてそれ以上に、そういった自分の面を“自覚していない”と言うのが厄介だ。それでは『出来損ない』ですらなく……ただの『未熟者』だ。

(雷帝は合格点……でも不屈は私的には赤点ね。信念が定まってない心、私から見ても危うい)

急速に、少女への興味が薄れていくのを彼女は自ら感じていた。興味を失った訳では無い、しかし“今の”少女と戦う価値が無いことを……出来損ないの魔法使いは悟っていた。

ソードビットと誘導弾が乱舞する間を掻い潜り、再び桜色の砲撃が迫り来る。彼女はそれを――一瞬にして斬り伏せた。そして、背に隠されていた鞘に剣をあっという間に納める。

彼女の白いコートが揺らめき、修復されたバルディッシュを持ちフェイトが未だ警戒を解かないなのはの隣に合流する。奇しくもそれは、彼女らが対面した時と同じ状況。しかし、その心中はまるで違っていた。

「……興が削れたわ」

「どういう、意味ですか?」

「そこのフェイトちゃんなら未だしも、今の貴方は私が斬る価値もない。況してや、私の願いを叶えることも出来やしない」

ただ冷徹に見つめ、見定める瞳は高町なのは本人など見てはいなかった。少女の心の奥にある想い……ここにはいない、翡翠の守護者の少年を見ていた――同時に、この先の“歪んだ物語”に於いて、少女が直面する歪んだ運命を。

フフッ、と出来損ないの魔法使いが笑う。同じ存在であり、真逆の存在でもある少女に忠告の一つや二つ入れてやるのも、まぁ悪くはないだろう。

「――いつまでも大切な人が当たり前の様に傍にいると、思わない事ね」

「え?」

「それでもキミが絶望へ突き進むと言うなら……覚えておきなさい。“不屈”は折れないから不屈なんじゃない。例え折れたとしても、絶望が心を掬おうとも、何度でも、再び立ち上がる。それが――『不屈の魔法使い』よ」

視線が交錯する。なのはの視線には、先程までの獅子の光は消えている。少し喋り過ぎたかしら……と、白いコートと栗色の髪を翻らせ、出来損ないの魔法使いは二人の視界から消え失せる――瞬間、まるで予言の様に言った。

「さようなら、また会いましょう。フェイト・テスタロッサちゃん……そして『未熟な魔法使い』」









◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「……終わったみたいだね。あっちも」

同時刻、全ての結界が消えた時点で戦闘は終結したと言っていい。それは、異常なまでの過剰戦力が揃っていた、さくら達の戦いも同じ事だった。

既に結界は解かれ、さくらと刹那の二人は静けさを取り戻した公園をゆっくりと歩いていた。少なくとも、先程まで戦闘を行っていたとは思えない程に、柔らかな表情で。

「まぁ、全部が終わったとは言えませんけどね。結局、あの仮面の二人はさくらさんが見逃してますし」

「言ったでしょ? ボクは必要以上に関わるつもりはないし、あの場には用事があったから来ただけだよ」

つまりは、この世界の事はこの世界にいる人物で、決着をつけてくれ、と言う事だろう。まぁ、もう大分関わっているのだから今さらだとは思うが。

刹那は帽子を被り直し、なんだか面倒な事になりそうだな……と思ったのだが、今までの出来事からして非常に今さらだと諦めた。と言うか、そこら辺は折り合いを付けないとやっていけない。

実際、己の騎士がいきなり関わってしまった時点で、もうこうなるのは決まっていたのかもしれない。

「……で、あの赤い子に渡した物って何なんですか?」

「超高純度の人工リンカーコア……要は物凄い魔力の塊だね。昔シャマルちゃんが回収した物を、何でか知らないけどおばあちゃんが持っててね。今回、あの子に渡すように頼まれたんだよ」

赤い子とは、無論のこと刹那の手によって気絶させられていた少女、ヴィータ。そして“おばあちゃん”とは……此方も無論のこと『悪戯好きの魔法使い』

非常に、嫌な予感しかしないと刹那は思った。だけどしょうがない、悪戯好きの魔法使いなのだから。

「なんか、随分とかったるそうな物を引き受けたんですね?」

「しょうがないよ。おばあちゃんがするこの手の悪戯で意味がなかった事なんて無いし、ここにシグナムちゃん達を連れてこれたのも、おばあちゃんのお陰だしね」

ぶっちゃけ、無理やり予定を組まされた気がするのだが……と、もう何回目かのツッコミを心の中で入れる――と同時に、ここに来た時に別れた騎士の事を思い出す。今頃どうしているのか……まぁ弟子と兄がいるので生活面での心配はしていないが、その他の事、例えば恋愛の事とか――

「あ、今シグナムちゃんのこと、考えてるでしょ?」

「にゃ!? にゃんで私がシグナムのこと……」

「にゃはは、口調と声が元に戻ってるよ」

動揺してるね~と言う、相変わらず楽しげなさくらの言葉にハッとなり、刹那を赤くなったその表情を隠すように帽子を被り直し、コホンとわざとらしく咳をしてから言葉を放った。

「何で俺がアイツのこと……か、かったるいんですよ」

「にゃはは、刹那くんが『かったるい』を言い淀む時は、嬉しい時か恥ずかしい時だよねぇ」

「ぐっ……」

「ごめんね、色恋に疎い妹で。でも、キミならシグナムちゃんを任せられるし……今からさくらお姉さんって呼んでもいいよ? あ、『お義姉ちゃん』かな?」

「さ、さくらさん!!」

最後の方は、もう微笑ましくと言うかニヤニヤしながらと言うか、完全に楽しんで――実はかなり本気――刹那をいじくり回すさくら。
刹那は完全に素の状態に戻り、顔を真っ赤にしながら再び反論しようとするが……ふと、さくらが表情を変え何処かを見つめていることに気が付く。

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  1. 2012/10/02(火) 02:42:13|
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