サクライロノセカイ/リリカルなのはなお話

えびえもん兼いかじゅんのブログです。リリカルなのはの二次創作などを書いています。

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魔法少女リリカルなのはA's 通りすがりの魔法使い 第2話

人の印象と言うのは、近くで見ている人間と遠くで見ている人間によって違いがある物だ。

例えば『紅 刹那』と言う人物がどんな人間か、と言うのは人によって大分変わるだろう。

成績優秀スポーツ万能、そして学園の生徒会長――それが周りの人間から見た紅 刹那の印象。つまりは、『完璧な人間』と言うのが正しいだろうか。が、これは刹那の身近な人間からすれば簡単に覆ることだったりする。

例えば……おそらく今、彼との距離が(いろんな意味で)近いだろうシグナムに聞けば、こう返ってくる。

「アイツが完璧? ……確かにいろいろと器用で気が利く奴だが、別に完璧と言うほどでも無いだろう。ちょっとした事で、変に怒る奴だからな」

ちなみに、その“ちょっとした事”とは、初っぱなからセクハラまがいの事をしたりした事なのだが、まぁここでは割愛しよう。

もう一人、彼と親しい人物……弟子である高町シュテルに訊いてみたらこう答えるだろう。

「……まぁ、シグナムに会う前はそういう方でしたよ。『輪の中心に立つことはできても、輪の中に混ざる事はできない方』ですね。ですが、シグナムと出会ってからそれも変わりました。良い変化です」

珍しく嬉しげな笑みをこぼし、きっとそう言う筈だ。さてここでもう一つ、もし彼に誰かが戦いを挑んだらどうなるか? と訊いて見ると――

「アホだな」
「バカですね」

――と、一瞬で返ってくる。そして追撃で有り難い解説まで付いてくる事だろう。

「まぁ、神龍クラスをあっさりと鎮圧できる奴に挑む方が間違っているな」

「少なくとも、私を倒せない様ではシグナム……そして師匠には、天地がひっくり返っても勝てないでしょうね」

――ただ、それを知らずに挑んだならば、些か同情を禁じ得ないな。そう、シグナムは最後に締めくくった事だろうか。奇しくもそれは、彼女がつい最近に戦った少女が相手だったのだが……それを彼女は知る由もない。

翼が羽撃たく。時間を、空間を、あらゆる次元界を統べる純白の翼。二枚一対の実体を持った翼は、その力を振るい終えた直後に所持者の意思に従い羽を撒き散らし消え失せた。

舞い散る純白の羽は、幻想的な迄の美しさを醸し出す。しかしそれは、それを見た少女に対する何の慰めにもならず、その美しさですら持ち主の美しさを引き立てる背景にしか過ぎない……そんな人物こそ――紅 刹那。

「さてと、今度は俺から質問――」

「答える……つもりはねぇ!!」

いつもの彼とは違う口調で言った言葉は、ヴィータが武器を構え突撃した事により遮られた。まぁ確かに、ヴィータがわざわざ答える義理もない。何せ、強引に襲いかかった“犯人”と呼べるのは彼女だ。

だから、今から相手を倒す自分がその相手の話を聞く筋はない。そしてもう一つ――ヴィータの戦場の勘が告げている。こいつは危険だ……と。

そしてグラーフアイゼンが叩きつけられる瞬間――刹那が何かを呟いた。

「……全く、かったるいですね」

「なっ!?」

呟いたその瞬間、ヴィータの視界から彼は消え失せる。結果、グラーフアイゼンは地面に叩きつけられ、その威力でコンクリートの地面が叩き割られて粉塵を上げた。その粉塵を振り払い、一瞬にして消えた相手を探すヴィータを嘲笑うように、刹那は彼女の後ろ……離れた場所に立っていた――その手に、ヴィータが被っていた帽子を持って。

「じゃあ改めて、二つほど質問だ」

「んな……!?」

いつの間に、と言う言葉は続かず、手に持った帽子を何度も投げては取りを繰り返しながら、彼はヴィータを鋭い瞳で射ぬき言う。

「一つ目、お前の目的はなんだ? その反応を見るに、俺だけ狙ってる訳じゃないんだろ?」

「…………」

「ま、答える訳がないか。どうせ関係ないしな……二つ目、お前の目的は俺に危害を加えないとダメなのか?」

「――殺しはしねぇ」

つまりは、それが答えだった。殺すつもりは無いが、危害は加えると言う事だ。ふむ、どうしようかと考える刹那だが、その答えは既に出ていると言っていい。

その手には、いつの間にか蒼い刀が握られていた。そして、ヴィータに帽子を投げ返してから、告げる。

「じゃあ、一撃で決めるか。お前の全力の一撃……それで向かって来い――加減するのは、かったるいんだ」

その言葉に、ヴィータの瞳は明らかな怒りを灯した。バカにされているとも取れる言葉に、騎士としてのプライドが黙っていない。

「その言葉……後悔すんなよッ!!!!」『Gigant Form』

デバイスのカートリッジがロードされ、ヴィータは空中に躍り出る。そうして彼女がアイゼンを振り上げると――その大きさは、数十倍にまで膨れ上がった。人間など比べるだけ馬鹿らしく、言ってしまえば怪獣の様な大きさになったそれを、ヴィータはいとも簡単に操り……怒れる瞳で刹那を睨み付け、勢い良くグラーフアイゼンを振り下ろした。


「轟天爆砕――ギガントシュラァァァァァァァクッ!!!!」


それはまさに『巨人の一撃』。その圧倒的と言える一撃は、数秒足らずで彼に襲い掛かるだろう。だが、刹那は逃げようとはしない。

……必要ないからだ。彼が刀を水平に構え、左手で刀身に触れる。すると、彼の周りに冷気が渦巻き集束する。彼を包み込む渦となったそれは、一瞬にして刀と同化し力を与える。そうして瞳を開いた彼は、巨人の一撃をつまらなそうに見つめ、言った。

「はぁ……やっぱ加減するのも、かったるいんだけどな」

告げるは、その技の名。決するは、彼の名の通り――刹那の一瞬。


「舞い散れ――雪月華(せつげっか)」


瞬間、刹那の姿が消える。

――刃が煌めく。目に見えぬ程に、凄まじい速度で。数え切れぬ程に、凄まじい数が。

一瞬の交錯。たったそれだけ……それだけで、勝敗は明らかだった。ヴィータが不自然な形で崩れ落ち、巨大化した部分が“粉々に斬り裂かれた”デバイスと共に落下する。

全くの無傷で、ヴィータより早く地面に着地した刹那は、ポツリと呟いた。

「悪いな……ケガすると、怒る奴がいるんだ」

刀を払うように一閃させ、済まなそうに言う刹那の視線の先では、最後の力を振り絞ってデバイスが衝撃吸収用の魔法『ショックアブソーバー』を展開しヴィータを受け止めた。

彼女の展開した結界が消えていく……彼の“翼”の力で他の者にバレ無いように偽装していたとはいえ、根本的な部分は変わらないので当然と言える。つまり、外からの干渉を受ける様になったと言うこと。

何が刹那に接近する……身体を屈め高速で突進し、一撃で決めるべく拳を握りしめ――

「迅いね……けど、遅い」

「!!」

また、それとは違う何が割って入る。高速を遥かに上回る“神速”で間に入った何かは、相手の拳を手に持った刀の鞘で受け止め、一瞬の間も与えず相手を弾き飛ばす。
弾き飛ばされた相手も、ただ飛ばされるのでは無く受け身を取り体勢を整えた。

「チィ……!!」

その相手……仮面を付けた――体格的には男だろうか――人物は、再び仕掛け様と拳を構えた。が、その瞬間、金色の髪が“目の前で”フワリと揺らめく。

「だから、遅いよ」

ルビーレッドの瞳が男を射ぬき逃さず捉え、神速の動きが仮面の男の動きを止める。反撃する事も、ましてや逃れる事も出来ない男は……苦し紛れにも見える、反射的に展開した防壁に頼るしかない。

――それすらも、無意味なのだから。

「総天烈火(そうてんれっか)流抜刀術――閃華(せんか)・瞬(またたき)」

閃華・瞬。その名の如く、見えない“何か”が瞬き障壁を紙の様に斬り裂きそのまま仮面の男すらも横殴りに吹き飛ばした。

……今度はまだ見える範囲で閃光が華の様に煌めいた時には、仮面の男は公園の木を薙ぎ倒しながら土煙を上げて漸く止まる。恐らくやり手だろう仮面の男が、受け身を取ることすら出来なかった。

それだけの技を、突如現れた少女が繰り出したのだから驚愕だろう。ましてやそれが、まったくのノーマークだった人物ならば。

ウェーブのかかった金色の髪、彼女の家族とも親友とも旅仲間とも言える人物とは対極的な、ルビーレッドの瞳。そう、八神 はやての家に絶賛居候中の――リリィだった。

暫く観察するように土煙を見ていたリリィだったが、何やら表情を変えて刀を引き抜くと……折れた。そりゃあもう、凄く見事に真っ二つ。折れた刃は力なく地面刺さり、もはや刀としては機能してはくれない。

それを見たリリィが、困った様な表情で言った。

「えっと……峰で打っ叩いたのはマズかった?」

「そもそもな話、貴方の剣速に耐えられなかったのも原因でしょうに」

はぁ、とため息を吐きながら彼女の後ろに刹那が歩いてきた。いつもとは違う口調だったからか、リリィは少し違和感を感じる……が、今は敢えて無視して折れた刀の話に移った。

「や、この程度に耐え切れない様じゃ困るんだけどなぁ……」

「知りません。そう思うなら、さっさと兄の元に戻ってください」

「う……そのね弟くん、こういう形で別れたことなかったから、いざそうなると気まずくって……」

「それこそ知りませんよ。なんで、俺が兄さんと貴方の恋路をサポートしなきゃいけないんですか」

かったるい、とお決まりの口癖を最後に付けた刹那に、リリィは曖昧に笑いながら顔を赤らめる。まぁ、直球に“二人の恋路”と言われてしまうと凄く恥ずかしい。

だが、和やかな雰囲気は一気に霧散する。リリィが鋭く目を細め、言う。

「しっかし――案外しぶといね」

土煙の中から出てきたのは……先ほどより何処か動きがぎこちない、仮面の男。あばら骨の一本や二本……で、済んでいればラッキーだろうか。恐らくは、もっと逝っている。

「貴様……ぐっ!!」

「タフだね……あんまり喋らない方が良いよ。それとも、私が戦える事が不思議? まぁ当然か――はやてちゃんの家だと、貴方たちに気付かないフリしてた訳だしね」

唖然としているのか、それともどう動くか決めかねているのか、どのみち仮面で表情は見えない。

そもそも、相手が『ジャンヌ・ダルク』と言う人物を知っていれば、警戒も出来、このような結果にはならなかったのかもしれない。しかし、所詮は『かも』『もしも』の話。敢えて言うなれば……いないだけで寂しさを感じる程、大切に思っている人物を“何の力も無いのに旅の中で一人で自由にさせるか”……と言う事だ。

つまりは、今の状態も彼女の実力は信用しているが、それを心配が上回っているのだろう。本人は、絶対に認めはしないだろうが。

「それと……そっちの奴も出て来いよ」

今度は刹那。彼が髪を揺らし、そう言った先には無数の森林がそびえるだけ。だからこそ、彼ら程の腕ならば身を隠すことなど赤子の首を捻るより容易いこと。が、それも刹那には通用しない。

そして、同時にこれは警告ではない、“忠告”だ。フッと、口を僅かに上げた刹那が続けた。

「でないと……かなり痛いと思うぜ」

凄まじい“冷気”が流れ、妹と同じく凛々しく美しい声が響いたのは、その忠告から半瞬後のことだった。

「舞え、氷輪丸――氷柱舞(つららまい)」

冷気が勢いよく駆け巡った直後、リリィが相対する男とまったく同じ姿の仮面の男が、何かから逃れるように転がり出てくる。その“何か”は、2メートルは在ろうかと言う“氷柱”。それが次々に地面から姿を現し、仮面の男に迫り来る。

それは仮面の男が迎撃しようと、体勢を整えた時に彼の一歩手前で停止する。無論それは、術者の意思による物。 続きを読む
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  1. 2012/08/27(月) 00:33:30|
  2. 魔法少女リリカルなのはA's
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魔法少女リリカルなのはA's 通りすがりの魔法使い 第1話

「……で、結局どうするんですか?」

そう黙々と読書を続ける桜色の髪の女性と、感情の起伏が少ない表情で同じく黙々とゲームをカチカチカチカチ続ける栗色髪の少女に、現役中学生でシャーペン片手に宿題を片付けている少女――フェイト・テスタロッサは問い掛けた。
それに反応したのは、黙々と読書を続けていた女性だった。

「何がだ? お前が昨日の事を言っているのなら、私は別にどうこうするつもりは無い。第一、私達は厄介事に首を突っ込む為に来た訳ではないだろう」

「そうですけど――これ、社会化見学じゃなくて、ただのお泊まり会じゃないですか? それも長期間の」

「……間違ってはいない。が、文句ならおばあ様に言ってくれ」

鋭い瞳、桜色の髪をポニーテールに括った彼女――芳乃シグナムが、若干呆れを含みつつ言う。

そう、始まりはシグナム……そして、さくらの祖母である『悪戯好きの魔法使い』の連絡から始まった。

夏休み期間を利用した社会化見学、と言う名の長期間お泊まり会である。だが、かなりスケールがデカい。平行世界(しかも、自分と同じ存在がいる)への移動、広々としたアパートを借りて大々的なお泊まり会。で、介入したのはシグナムと、保護者役のさくらだけとはいえ、昨日のあの騒動だ。ちなみに、夏休みなのに冬の気候の場所で過ごす事には突っ込んではいけない。

「まぁ、おばあ様にとってはこれも予測範囲内なのだろうな」

「流石は、『悪戯好きの魔法使い』と言うことか」

二人の会話に、ヒョコっと台所から姿を現したのは艶やかな銀色の髪を揺らす、見た目は絶世の美女のと言う名が相応しいが、実は男なもう一人の保護者、旅の魔法使い……ジャンヌ・ダルクだ。

エプロンにお玉と、何処の主夫だお前はと言うツッコミはさて置き、ジャンヌの言葉に苦笑にも似た笑みを浮かべながら言葉を返した。

「昔から名前の通り、悪戯が大好きな人だからな。仕方がないさ――しかし、お前まだ課題が終わらないのか?」

「シグナムやシュテルと一緒にしないでください!! って言うか夏休み開始二日目で全部終わってること自体が可笑しいんですよ!!」

一気にまくし立てたフェイトは、呆れと怒りが含まれた表情で、若干息が上がっている。自分の名前が呼ばれたからなのか、ゲーム機の画面から目を離した少女――と言う割りには、高校生のシグナムと背が同じくらいなのだが――がフェイトに向かって、シグナムと共に言った。

「何を言っているのですか。ギャルゲーマーにとって、無駄な課題を1日で終わらせる事などデフォルトスキルですよ。寧ろ、半日で終わりました」

「なにその無駄なスキル!?」

「なに、昔さくら姉さんが『宿題は最初のうちに終わらせて、最終日に地獄を見てる友達を嘲笑うと良いよ』……と言っていたのでな」

「学園長さくらさん案外ドS!?」

わりかしどうでも良い(?)宿題スキルの原点と、フェイトの誉められても嬉しくない見事なツッコミスキルを披露した処で、台所に戻ったジャンヌを除いた三人の会話が別の話題になる。

「しかし、ずっと課題とにらめっこと言うのも気が滅入るだろう。息抜きにチェス――は、ボロボロで終わるから息抜きにならんか」

「ぐっ……ホントの事だから否定できない!!」

ダン、と机を叩いて悔しげに唸るフェイト。別に、と言うか決して彼女の頭が悪い訳ではない。寧ろ彼女は国語が少し苦手なだけで、中等部でもテストの順位は上から数えた方が早い秀才児だ。

が、如何せんシグナムが相手だと無理がある。前に遊びでチェスなどのゲームで挑み、片っ端からフルボッコにされたのは記憶に新しい。

ここでフォローを入れさせてもらうと、まさに相手が悪いとしか言いようがない。シグナムがもともと頭脳明晰なのに加え、実質的にシグナムを育てて来たのは、IQ180でアメリカの大学に飛び級で入り卒業し博士号まで持ち、彼女らの学園の主でもある天才学園長兼魔法使いにしてシグナムの姉、さくらだ。

もともと先生を目指していたせいか、はたまた元来の才能か人に教えるのが上手いさくらに育てられたシグナムは、必然的に頭も良くなる。彼女が物事を推理に例えて考察するのも、少なからず姉の影響があるのだろう……と、シグナムと時間を共にしてきた、学園の生徒会長は語っていた。

まだ悔しげに机を叩くフェイトに、シグナムは少し笑みを浮かべながら……何故かトランプのカードを取り出した。

「相手をする代わりに、さくら姉さんの教えを一つ語ろうか」

シグナムがトランプのカードクルリ、クルリと回し“表”のジョーカーの絵柄を見せ、それをテーブルの上に乗せた。そして、フェイトに向かって問い掛ける。

「フェイト、これは“表”か? それとも“裏”か?」

「え……表じゃないんですか?」

「正解だ。なら、これはどうだ?」

シグナムが手を切る様に振り、トランプのカードを半分回転させた。今度は、裏が表になった……まるで、“表”を隠すかの様に。

「えっと、裏が表になった……?」

「まぁある意味、正解だな。だが、こうも考えられないか? “表”と言う“真実”を、“裏”と言う偽装(つく)られたトリックで隠している、と」

「あ……」

そこまで聞いて、フェイトはなんとなくシグナムが言いたいことが分かってきた。要は、いつもの推理に例える癖なのだろう。

「幾ら廻そうとも、表は表だ。どんなに巧妙な裏(トリック)でも、どこかに必ず隠された“真実”がある。パズルの様にヒントを繋ぎ合わせ、隠された裏‐表‐を解き明かせ……これが姉さんの教えなのだが、理解できたか?」

「……なんとなく」

ちょっと難しい表情で、しかし“なんとなく”理解した表情で頷くフェイト。要は、偽装られたトリックに惑わされず、真実を導き出せと言うこと。

何でも良いが、ホント将来的に探偵事務所でも開くつもりなのではないかと、最近フェイトは思っていたりする。まぁ、その時は自分も一緒に探偵家業をするかも知れないが――

「――そろそろ、出てきたらどうです? 処刑人(エグゼキューター)いいえ、『出来損ないの魔法使い』」

「久しぶり、と言うべきかしら。殲滅者(デストラクター)いえ、『不屈の魔法使い』」

それぞれの名を呼び、それぞれの視線が交錯する。すっかり気を緩めていたフェイトが気付いた時には、彼女は既に部屋の中に侵入していた。

フェイトは驚き、シグナムは至って冷静に、いつの間にか戻ってきたジャンヌも冷静に、彼女を見つめる。

シュテルは相変わらず感情の起伏が少ないその表情で、そんな彼女と“瓜二つ”の女性は、ショートカットのシュテルとは違う長く無造作に伸ばされた、腰まで届く栗色の髪を揺らし、妖艶な笑みを浮かべた。

彼女の名は、彼女からすれば無いも当然なのだろう。だが、彼女と同じ構築体(マテリアル)はこう呼ぶ――処刑人(エグゼキューター)

「一応、訊いておきましょうか。今の貴方は敵ですか?」

「いいえ、と答えましょう。シュテルっち、今は夏休みでしょ? だから、それに合わせてあげようと思ってね」

「律儀な事です。それを言いに、私の所へ来たのでしょう?」

無表情が少し崩れ、若干呆れた表情を見せたシュテルに、出来損ないの魔法使いはただ笑みを浮かべ言葉を紡ぐ。それは恐らく、シュテルにしか理解できない物だ。

「そうね。まぁこの世界も面白そうだから、自由に行動したくってね……それでも貴方‐オリジナル‐以外に、私の願いを叶えられる人はいないでしょうけど」

「…………」

「ではまた、近いうちにお会いしましょう」

そう一方的に言い残し、“私の願い”の部分で珍しく表情を厳しくしたシュテルを敢えて無視して、出来損ないの魔法使いは一瞬にして消え失せた。彼女が残したのは、深い沈黙……それも、緊張感が解かれたフェイトのため息によって消え失せた。

「――ふぁぁ、なんであの人が……っていうか、結局なにをしに来たんでしょう?」

「アイツに敵意はなかった。ならば言葉通り、シュテルに会いに来ただけだろうな」

シグナムの言葉に、シュテルは静かに頷くことでそれを肯定した。彼女がどうやってこの世界に来たか……それは定かでは無いが、今の彼女からは“戦意”と言う物を感じられなかった。

――とはいえ、これは珍しい事では無い。彼方の世界でも、時折学園のメンバーを助け、時折シュテルと敵対し、またある時は自分に何のメリットもない人助けをする。

一見、掴み所のない人物に思えてくるのだが……シュテルには分かる。彼女も、何処か迷っているのだ。だが、それを頑なな迄に認めようとせず“願い”を叶えるために、シュテルに戦いを挑む。

今は戦うつもりは無い。しかし、いつかは決着を付けなければならないのだろう……。

(それでも……私は――)

「シュテル?」

ハッと我に返ると、自分を心配そうに見つめる長年の親友、フェイトが瞳に映った。どうやら、予想以上に思考に没頭してしまっていたらしい。心配をかけまい、と薄く微笑み彼女らしからぬ冗談を口にした。

「平気ですよ。はやてとユーノが、私がいない間に一夏の間違いを犯さないか心配していただけですから」

「そ、そう。冗談……じゃないみたいだね」

「えぇ、実際に想像したら段々とイラついてきました」

実際に想像してしまったシュテルにより、ギチギチギチと、片手に持ったゲーム機が地味に命の危機に瀕しているのをフェイトが必死に諌めるのを見ながら、シグナムとジャンヌがあっさりチェスの準備を始めていた。さらには、シグナムが火に油を注ぐ様な事を言う始末だ。

「まぁ、可能性的には無いとは言えんな」

「ちょ、シグナム!?」

「ならば、貴方の得意の“推理”で私達の行く末を予測してみてもらえますか?」

焦るフェイトを尻目に、シュテルは冷静にシグナムに言葉を切り返した。それにシグナムは、困ったように笑みをこぼして言った。

「前にも言ったが、私には“恋愛”と言う感情的な物は推理し難い。彼のシャーロック・ホームズも言っていたろう? 『恋愛は感情的なものだからね。すべて感情的なものは、何ものにもまして僕の尊重する冷静な理知と相容れない』……とな」

「なら、お前の場合は私の弟か?」

フフッ、と魔女の様な笑みを浮かべ、シグナムに追撃をかけたのは黙々と準備をしていた筈のジャンヌだった。相変わらず、ここぞと言うタイミングで介入してくる奴だな、と心の中で呟きつつ、シグナムも凛々しい表情に微かな笑みを浮かべ、チェスの台から黒のクイーンの駒手に取り応戦する。

「……そういうお前の相棒(クイーン)は、一体どこへ行ったのだ?」

「――ふんっ、いつもの気まぐれだ。すぐに戻ってくるさ」

相棒(クイーン)と言う単語を使い、妙な言い回しをするシグナムに強がって見せたジャンヌだが……何処か、寂しげな表情を一瞬見せたのをシグナムは見逃さなかった。

――やはり、似ているな。

無意識のうちに笑みをこぼし、シグナムは思った。この兄弟は、本当に似ている。強がって、弱い部分を見せまいとしている処も……でも、ホントは繊細で、寂しがりやな処も。流石は双子と言うか、なんと言うか。

「全く、早く素直になれば良いものを……」

「う、うるさいな。…………お前だって、私の弟相手に素直じゃないくせに」

「ぐっ――私とアイツは、別にそういう関係では無いし、私も意識はしていない!! ……筈だ」 続きを読む
  1. 2012/08/10(金) 00:10:34|
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