サクライロノセカイ/リリカルなのはなお話

えびえもん兼いかじゅんのブログです。リリカルなのはの二次創作などを書いています。

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魔法少女リリカルなのは 烈火の魔法使いの出逢いの物語 D.C.(ダ・カーポ)クロス編『二人のさくらと枯れない桜』


「『芳乃さくら』……さくらさんと、同じ名前……」

「ふぅん、その様子だとボクと容姿も同じなのかな?」

は、はいと動揺しながら答える青年は桜内(さくらい) 義之(よしゆき)……偶然、と言って良いのだろうか、桜の魔法使い――芳乃さくらと黒い影の戦闘に巻き込まれた彼はさくらの手を取り立ち上がり、自分の知ってる“さくらさん”と違うところを見つけ様としていたが……

(ま、全く同じ……)

――その容姿、声、瞳の色。それら全てが自分の知る“さくらさん”と同じだ。

そんな“偶然”に驚きを隠せない義之の様子を見て、さくらは一人軽く思考の海に入り込んでいた。

(偶然……な訳ないよねぇ。おばあちゃんが知らせた場所に、ボクと同姓同名、しかも同じ容姿の人がいる――確信犯か)

まぁそんな事だろうと思った、と相変わらず狂った様に舞う桜の中で、静かにため息を吐いた。

だが、彼女の“悪戯”には大抵何かしらの訳がある。彼女なりの、何かしらの理由が。

今回は珍しく下調べをしなかった自分のミスもあるが、世にも珍し(とはいえ、“咲かせるだけ”ならば彼女にも簡単に出来るのだが)枯れない桜のある場所で、しかも過去に“彼”が討滅したはずの存在が現れたとなれば、逸る気持ちを抑えるのは難しいだろう。

はてさて、取り敢えず、だ。

「……謝りに行かないとね、その“さくらさん”って人に」

「え?」

「だって、君のその感じからして、たぶん義之くんの保護者みたいな人でしょ? だったら、君をこんなことに巻き込んだ責任取らないとね」

「え、いやでも……」

さくらの提案に対しやけに曖昧に言葉を濁す義之に、あぁと彼女も気付く。

前提条件が違った。桜内義之は確かに“異質”な存在ではあるが、魔法に関しては恐らく殆ど知らない人間なのだ。だから“さくらさん”という人物にしても、無関係だと思っているのだろう。

が、決して無関係ではない、とさくらは推論を立てた。あの黒い影に関しては、直接的な関係は無いに等しいだろう。

だが――と彼女は再び碧い瞳を向けたのは、聳え立つ『枯れない桜』。これについては、ほぼ確実に無関係とは言えない。ま、そういったことを含めて、直接聞くより調べて解き明かすのが自分の性格なのだろう、とさくら自身が思う。
そして、謝りに行くことについては、どうやら向こうが先にこっちに来てしまったらしい――

「義之くん!!!!」

この一帯に響く、いつになく必死な声。その声に義之が振り向くと……よほど焦って来たのだろう。木に手を付いて、荒い息を必死に整える彼女の――『芳乃さくら』の姿があった。

特に外傷も見えない義之の姿に、安堵の表情で胸に手を当て息を吐くさくら……だが、義之の隣にいる人物を見て息を呑んだ。

金髪のツーサイドアップ。小学生と見違えそうなその姿。碧い瞳。そのどれを取っても、義之の隣にいる人物は自分と瓜二つ。

魔法使いの碧い瞳は交錯し――時を超えた物語は、枯れない桜の下でゆっくりと動き出した。









魔法少女リリカルなのは 烈火の魔法使いの出逢いの物語 D.C.(ダ・カーポ)クロス編『二人のさくらと枯れない桜』









◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「この度は、義之くんをこんなことに巻き込んでしまい、申し訳ありませんでした」

そう言って、純和風の学園長室で自分と瓜二つの人物に深々と頭を下げるのは、『桜の魔法使い』であるさくらだ。

「そ、そんな謝らないでください!! 元はと言えば……」

「いいえ。『枯れない桜』に“アレ”が取り付いた元の原因は、此方にあります」

正確には過去に“アレ”を討滅しきれていなかった“彼”に責任があるのだが、それを含めて今は自分が責任に取るべきだと彼女は考えていた。

対して、この『風見(かざみ)学園』の学園長であるさくらは、目の前の彼女の謝罪に困り果てていた。後で説明する、という約束でこの場にはいない彼、桜内義之の言葉通りならば、彼女は彼を守ってくれたのだ。感謝しこそすれど、謝らせるのは筋違いだ。

とにかく、このままでは埒が開かないとばかりに、学園長のさくらが言葉を放った。

「それより、義之くんを襲ったのは……」

「――淀んだ意識の集合体、としか言えません」

というより、その言葉が一番あの“黒い影”の正体を現している、と言えるだろう。

「意識の集合体……」

「そう。“アレ”は人の『願い』や『想い』といった感情を食らい、力を強める――だからこそ、この『枯れない桜』を選んだ」

今度こそ、義之の無事な姿を見て一番は安堵したさくらの表情が、冷たく青ざめた。

それはつまり、あの『枯れない桜』が原因――義之を危険にさらしたのは、自分の考えの甘さが――

「ですが、枯れない桜に取り付いたのは本当に偶然です。何度も言いますが、元の責任は“私”にあります」

そんな彼女の表情を見て取ってか、すかさず何度目かのフォローを入れるさくら。だが、あの様子を見るに恐らく『枯れない桜』は――

(いや、そこだけで判断するにはまだ早い)

情報が足りていない段階で判断するのは、推理としては成り立たない。そうなる迄の段階……それがまだ抜け落ちている。

――キーワードは『桜内義之』、『枯れない桜』……の起源。まだその程度だろう。

「で、でもボクは――」

「だから――義之くんは私が絶対に守ります」

さくらの、何かを吐き出す様な言葉を敢えて遮り……彼女は『桜の魔法使い』としての言葉を放った。

「『桜の魔法使い』の名に誓って、義之くんには指一本触れさせません」

「どうして……」

「義之くんを巻き込んだ責任、もあります。けど――義之くんに対する個人的な興味も、あったりして……」

うにゃ? というのは学園長のさくらから出た声……一方の魔法使いはあぁやっぱりな、という感じで霧散した硬い空気を感じていた。

「いやその、私って他の人から見ると“好奇心旺盛”みたいで……不謹慎かもしれませんけど、元はと言えば『枯れない桜』の謎が気になってここに来たのが半分の理由なんです――繋がる気がするんです。私が“芳乃”の性で、貴方と同じ容姿な理由も、あの枯れない桜が握ってる気がして。その過程で、義之くんにも興味が出たんです」

「……それを解き明かしたら?」

「うーん……個人的な興味を満たしたいだけなので、言い触らしたりはしません。でも、私は解くと決めたらその謎は必ず解きます」

まぁ、解いたところでどうするのか、と聞かれれば……よほどのことで無い限り他人に何かを言ったり、それを咎めたりはしない。第一、勝手に相手の隠し事に土足で踏み込んでいる時点で、そんな資格はないと彼女は考えていた。

「……その謎がもし、許されないことだったなら?」

「それが貴方のことを指すのなら、もしかしたら謎を解き明かすだけで終わるかもしれませんね」

それこそ、どうしてと問いたくなった。自分は恐らく、許されないことをしたのだ。今はあり得ない“可能性”をこの世に生み出した、のだから。

だが、桜の魔法使いは優しげに笑みを浮かべる。それは何故か――遠い記憶の大切な人と、重なった。

「知ってますから、貴方と似た様な人」

「ボクと……?」

「えぇ。普段は飄々としてるくせに、寂しがりやなんです。それでいて傷つきやすくて、何でもかんでも抱え込む人を、二人ほど」

う……といきなりそんな事を言い当てられて、気まずそうに瞳を逸らすさくら。今頃、その問題の二人――甲斐性無しと悪戯好き――はくしゃみでもしてる頃だろうか。
そしてそんな人は、人が何でもかんでも不幸になるような事はしない。もしそうなったとすれば、恐らくは――

「ともかく、義之くんは私が守ります。それは……信じてください」

もう一度、信じてもらう為に深々と頭を下げる。だが、初対面の人物に“信じろ”なんて酷なことだろうとは思う。

しかし彼女は……芳乃さくらは、彼女を信じて見ようと思った。それは、運命の巡り合わせか、時を超えた必然だったのか……彼女自身も、信じてみたくなったのだ。

「――信じます、貴方を。……ボクも、力の限り義之くんを守りたいから」

――彼の、桜内義之の■■として。

「それに、何だか貴方は他人の様な気がしなくて……」

と言うより、同じ名前で同じ容姿で魔法まで使える、となると他人の気がしないのは当たり前だろう。
にゃはは、と場を和ませる様に笑い言うさくらに、魔法使いは確信を込めて微笑し……言った。

「他人じゃないですよ、きっと」

「……その謎も、貴方が解き明かす?」

「ふふっ、この短時間でそこまで私を……互いを理解できる、からね」

最初の重苦しい雰囲気はどこへやら、楽しげに笑う二人。容姿も相まって、他人から見れば二人は双子の一時にしか見えないことだろう。

そう他人ではない……全ての答えは、恐らく『悪戯好きの魔法使い』が握っているのだろう。

だが――他人に答えだけを聞いて解かれた謎など、何が面白い? 自分で調べ、自分で手掛かりを聞き、自分で推論を組み立てる。だからこそ、解いた時の快感が一層強くなる。

(……これ、誰に似たんだろ?)

ふと、たまに彼女はこう考えるが、悪戯好きの魔法使いに聞いたところ『誰の遺伝でもないねぇ……ただ、謎解きと研究に違いはあれど、集中するとご飯を食べるのも忘れるのは、私の姉に似たのかねぇ?』と、どこか懐かしそうに語っていた。

詰まるところ、この他の人曰く“超好奇心旺盛”は自分特有の物らしい。嬉しいのやら、悲しいのやら……。

――それはともかく、桜内義之を守る――まぁ、相手はしばらく引き籠もっているだろうし、万が一に備えて、だが――にしても、この地に隠された謎を解くにしても、今の自分の身分では弊害が出る。

しかし、目の前の学園長と自分の資格があれば……。ニヤっと突如指を唇に当て、表情を変えた桜の魔法使いを見て芳乃さくらは首を傾げた。

「それはそうと、一つちょっとしたお願いがあるんですよ――」

ちなみに、悪戯好きの魔法使いから続く桜の魔法使いの家系には一つ共通点があったりする。

――“ちょっとしたお願い”が、決して“ちょっとした”ではないことだ。









◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

翌日、桜内義之は教室の自分の机でボーっと考え事をしていた。

それは、悪友の板橋(いたばし) 渉(わたる)。友人の月島(つきしま) 小恋(ここ)、雪村(ゆきむら) 杏(あんず)、花咲(はなさき) 茜(あかね)の通称“雪月花”三人娘の声にも上の空な反応しかしなかった程だ。

彼が考えていることは、もちろん昨日のことである。本当にアニメの中みたいなこと――まぁ本当に多少なら魔法が使える自分に言えることではないのだが――があり、自分の保護者と同じ容姿の人物が助けてくれたのだ。気にならない訳がない……が。

(結局、さくらさんは『今日になったら分かる』、の一点張りだったしな……)

そう、珍しく早く帰ってきたさくらから聞かされたのは、その一点張りだけなのだ。結局、アレが何なのかも判らず仕舞い……まぁ、もう大丈夫だということらしいし、久しぶりにさくらさんが本当に楽しそうな笑顔を見せてくれたから、それは良いと言えば良いのだが……。

(気になる物は、気になるよなぁ)

結局、桜の魔法使いと名乗った彼女はどこに行ったのか、という疑問が全く解けずに、悶々としてまたため息を吐く義之。

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  1. 2013/02/18(月) 03:33:07|
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魔法少女リリカルなのは 烈火の魔法使いの出逢いの物語 第2話

漆黒の翼と烈火の翼が羽撃たき、赤黒い軌跡と真紅の軌跡を描き、高速で衝突、交錯する。互いの武器を叩きつけ、弾き、再び叩きつける。

それを何度か繰り返した後に、漆黒の翼を持つ天使が右手に持った小型のライフルが……一瞬の内に五つの煌めきを放ち、軌跡を描いた。元々早撃ちに適した銃とはいえ、それを放った者の技量も凄まじい物だ。

しかし、超速で放たれた赤黒い五本の熱線は、対象に当たる事なく過ぎ去った。相手は“放たれた瞬間には既に”、その射線上から逃れる様に動き、そのまま炎の剣を構え突っ込んで斬り掛かる……が、やはりそれも、相手が素早く左手の魔力で刃が構成された武器、マギリングサーベルで受け止めた事により、またもや振り出しに戻る。

そんな常人には見る事すら叶わない、超速の空中戦闘を繰り広げる彼女ら二人を確かに捉えていた人物は少なかった。

――その超速戦闘を一切見失う事なく捉えていた人物が、時計塔の一番上に立っていた。風で純白のコートと栗色の髪が揺らめくが、本人に一切ブレは無い。

時計塔の上に立つ彼女の瞳が、今一度『黒の天使』を捉えた時、彼女はフッと笑みを零した。

「――また会いましょう。『殲滅者(デストラクター)』、高町 シュテル……」

届く筈の無い言葉は、やはり風に呑まれ消え失せ――同時に、彼女の姿も、まるで幻影だったとでも言うかの様に消えた……。

一方、永遠に続くかと思われた超速戦闘は、少しずつだが着実に変化していた。お互いの武器を振るい、衝突し激しい火花とスパークを散らすその戦況は、少しずつ、少しずつだが烈火の翼で飛行する……芳乃 シグナムに傾いているのだ。

「はぁっ!!」

「くっ……ッ!!」

振るわれた炎の刃を受け止めたシュテルだったが、その動作が先程までより遅い動きだった故に、力の優劣が完全にシグナムに傾いた。それをシュテルより速く把握したシグナムが、己の剣を強引に押し込み、斬り払ってシュテルを叩き落とす。

無論、シュテルとて何もせずにただ落とされる訳ではなく、降下しながらも凄まじい速さで右手を斜めに振るい、今度は八つの連なる閃光が瞬き、八つの熱線が放たれた。だが、シグナムはそれすらもあっさりと避けてシュテルに追い付き、再び刃を振るう。

何とかそれをサーベルで受け止めたシュテルは、それ以上は刃で彼女と互角に戦うのは無理と判断し、押された勢いに抗うことなく、翼の粒子を逆に噴出しシグナムから逃れる様に加速、そしてクルリ――と身体を回転させ、怪我の一つも無く地上に着地した。

そうして息を整えたシュテルが、少し遅れて地上に降りたシグナムを称賛と共に迎えた。

「想像以上、想定より上の強さ……素晴らしいです、シグナム」

「お褒めいただき、光栄な事だな。が、お前もまだ本気では無いだろう?」

「……そうですね。ならば、少し手札を見せましょうか――貴方に見切れれば、ですが。エクスシア、マギリングライフル・モードチェンジ」

『Yes Master.』

言いながら、シュテルは己の構えを“解いた”。マギリングサーベルも仕舞い、発射モードを変更したライフルは……シグナムから見えないようになる。

最初は彼女の無形の構えに、警戒で目を細めたシグナムが――唐突に、その頭脳に電流が走り、そして僅か一秒足らずでシュテルの構えの意味を“推理”し、目を見開いた瞬間――

「!!」

「ッ!!」

――“二つ”の音が辺りに響き渡り、二人の構えは変化していた。不屈の魔法使い、シュテルはライフルを撃ち“終えた”状態で、目を見開いて驚愕しており、そして烈火の魔法使い……シグナムは、彼女の視線を受け止めたまま、振るい“終えた”炎の剣を下ろした。

「……最早、未来予知の領域に入った直感力ですね。まさか、私の『不可視の弾丸(インビジブル・バレット)』を見切るとは」

もう、この勝負を見る大半の人間にとっては、未知の領域であり理解の範囲外の状態だろう。

彼女ら二人の攻防は、本当に“一瞬”の出来事だったのだから。まず、シュテルの『不可視の弾丸(インビジブル・バレット)』……これは、言葉にするだけなら簡単だ。

あの無形の構えからシュテルは――“目に見えない程のスピードで”マギリングライフルを抜き放ち撃った。ただそれだけ……要は、目に見えない程に速く撃たれた銃弾、つまり不可視の弾丸(インビジブル・バレット)とは“ただの早撃ち”なのだ。ただし、不可視の。

そして、発射モードの変更により、普通の銃のような一つの弾丸……不可視の魔力弾は確かにシグナムに向かって迫り――その刹那、叩き落とされたのだ。

これも言うだけなら簡単だ。シグナムは、その未来予知じみた驚異的な直感力と、己の反射神経を駆使し……まるで居合いの様に、剣を振るった。迫り来る銃弾をも“超える速度”で。そうして銃弾よりも速い刃は、銃弾と衝突した時に銃弾のベクトルを強制的に変更させ……叩き落としたのだった。

だから、二つの音が響いたのだ。片方はシュテルが銃弾を放った音、もう片方はシグナムが銃弾を叩き落とした音。これが、二人の一瞬の攻防の正体だ。

「全く、本当にとんでもないですよ。私としては、これで終わりと思っていたものでしたからね……」

「なに、私の直感以外にも、お前の視線、風を切る音……その辺りで銃弾の行方は予想がついた」

「成程、私もまだまだ未熟ですね……」

正直まぁ、こんな方法で『不可視の弾丸』を止める者など普通はいないのだが、シュテルの“必殺の一撃”を止められたのもまた事実。それは“必殺技”と名乗るには、まだ未完成な技だったと言う事だ。

ならば諦めるのか――否、そんな訳がない。

剣技ではシグナムには敵わない、己の銃技も破られた。

だが……まだ彼女が『殲滅者(デストラクター)』たるその由縁、『黒の天使』の真の力を見せてはいない。だからこそ、シュテルは再び天へと舞い上がる。

舞い上がりながら、シュテルはシグナムを静かに見据え、告げる。

「シグナム、貴方の強さに敬意を払い、同時に我が殲滅者(デストラクター)の名の由来、お見せしましょう」

つまり、彼女が最も得意とする技で全力を出す……そう、シュテルは言っているのだろう。さらに、フランベルジュを構えるシグナムに再び言葉を放った。

「貴方も、そろそろ本気を出してはいかがですか?」

「……いや、転入そうそう“魔女っ子”扱いされるのは、さすがに遠慮したいのでな」

サッとシュテルから逃れる様に視線を逸らすシグナムに、シュテルだけではなくそれを聞いていたヴィータとクロノも首を傾げた――唯一、さくらだけは何故か曖昧な笑みを浮かべていた。

「まぁ、貴方が本気を出さなくとも構いません――」

『ドライブ・オン。武装コード、マギリングガンポッド『ルシファー』起動』

エクスシアが反応し、ライフルが回帰して長身型の大型ビーム砲が姿を現す。それをシュテルが構えると、砲身が中央から二分割されスパークが散り――

「――私は、手加減しませんがね」

――光が爆せた。シグナムが通って来た道を光が一線し、次の瞬間には轟音を轟かせ爆炎が一気に上がる。

一旦冷却を始めたルシファーを降ろし、爆炎を見つめるシュテルは……まさに、『殲滅者(デストラクター)』そのものと言えた。

『……改めて、圧倒的だな。彼女の砲撃能力は』

『結界、戦闘開始前に展開しといてよかったな……何にせよ、やっとこれで終わりかぁ』

なかなか、久しぶりに見応えのある戦いだったな……そうヴィータが締め括ろうとした――その時、クスクスと誰かの笑い声が聞こえた。二人が振り返る、そして見えたその声の主は……学園長、芳乃さくら。

そんな彼女は、笑いながらも爆炎から瞳を逸らさず、言った。

「ボク、あの程度の攻撃でやられる様な鍛え方、した覚えはないんだけどな~」

驚愕の言葉が放たれ――爆炎から烈火の炎が溢れたのは、まさにその瞬間だった。

爆炎すらも呑み込む、圧倒的な業炎……烈火の炎。その中から、真紅のドレス甲冑が姿を見せ、ギリギリで炎からさらに上空へ逃れた黒の天使を、ただ悠然と彼女を見つめていた。

「砲撃を炎で逸らし、流す様に防ぎましたか……ですが、次はそう簡単に往きますか?」

「さぁ、どうだろうな」

露出した美しい背中から、再び烈火の翼を羽撃たかせたシグナムが僅かに笑みを零し、天へと舞い上がる。

――だが、先程の様に長ったらしく斬り合うつもりなど無い。

フランベルジュの刃から炎の粒子を“微かに”辺りへ流出させながら、シグナムは戦況を冷静に把握していた。

あの大火力が相手だ……真っ正面から戦っては、不利になるのは至極当然。かといって、消耗を待つ様な戦い方をしても、あの馬鹿みたいな火力と魔力でここいら一帯を殲滅されかねない。いくら結界内とはいえ、それは些か遠慮したいものだ。

既にシュテルは、砲撃の準備に入った。翼と腰に装備されていた合計4門の武装をシフトさせ、もう数秒あれば砲撃を放てる状態――しかし、シグナムはもう既に“先手”を取っている。

打てる手は打った……そして、勝利条件は“揃っている”。シグナムが刃を真っ直ぐに上げ、振り下ろし、告げた。

「奏でろ、協奏曲第一番――サクライロノキセツ」

――瞬間、シュテルの周りに数え切れぬ無数の桜が舞った。それはシュテルの視界を遮り、乱舞するように美しく舞う。

(なっ……目眩まし――!?)

驚く間すら与えず――一輪の桜が“咲いた”。それは、連鎖的に他の桜をも咲かせ……桜の協奏曲を奏でる。目眩ましだけではない、咄嗟に強化したシュテルのバリアジャケットを貫く、とまではいかないものの砲撃体勢を崩しダメージを与えた。

だが、シュテルとてやられっぱなしではない。出力を弱め、炎の桜から片手で顔を庇いながら、ルシファーを凪ぎ払うように砲撃を放ち前方の桜を吹き飛ばす。

そして、見えた。距離を取ったシグナムが、“弓”を構え弦を引き、強き瞳がシュテルを捉えている。

――フランベルジュは、炎を司る武器。故に特定の形は持たない……その答えが、これだった。

炎の矢は既にシュテルへと定められ、今からでは回避も間に合わないだろう。

(ならばっ!!)

迎え撃つのみだ。両肩と両腰、ルシファーから前方にエネルギーを一気に集束。五砲門からのエネルギーは、たった一秒でシュテルの身丈の三倍以上の大きさに――なる時には、シグナムの指が弦から離れ……一匹の不死鳥が天を駆けた。

「奏でろ、幻影――ファントムフェニックス!!」

炎を纏う弓が、巨大な不死鳥の形を成してシュテルへと迫る。そしてそれより少し遅く、シュテルがルシファーのトリガーを引く。

「ディバインバスター・バーストモードッ!!」

スパークが空中に軌跡を描き、凄まじい魔力エネルギーの塊が不死鳥に向かい直進する。

桜色の光球と不死鳥が直進し、その勢いのまま激突……その瞬間、シグナムの姉と兄を除く誰もが光球と不死鳥の行方を見つめる中で――彼女だけが、微かに笑みを浮かべた。

激突した不死鳥が変化を起こす。巨大な翼で光球を包み込み、炎を溢れさせ……光球と共に、巨大な爆発を起こした。

「ッ!!」

凄まじい爆風が一気に辺りを包み込み、シュテルも思わず腕で顔を庇う。そうしながら、シュテルは今の攻撃の分析に思考を割いていた。 続きを読む
  1. 2013/02/10(日) 05:26:03|
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魔法少女リリカルなのは 烈火の魔法使いの出逢いの物語 D.C.(ダ・カーポ)クロス編『魔法使いの交差』

しんしんと桜が舞っている。


狂ったように舞っている。


驚くほどゆったりと。


音もなく。


天使の羽のような花びらの散りざまは、まるで永遠を思わせる一瞬―――


……ふわり、桜が舞い散る。ふわり、少女が舞い降りる。少女を守る様に舞っていた桜が、ひらりひらりと地面に落ちる。それすらも、芸術的な迄に美しい。

ゆっくりと、金髪の少女が立ち上がり辺りを見回す。周りにある木の全てが桜で、少女の目の前には枯れる事の無い巨大な“枯れない桜の木”……恐らく、これがこの島の全ての桜の中心。その証拠に、この桜に不思議な力が集まっているのが、少女には解る。

小さな手を翳し、少女が桜の木に触れる。その瞬間、少女の表情が何処か厳しい物へと変わった。一度、ため息を吐いてその表情を消し去り、枯れない桜に背を向けて少女は――『桜の魔法使い』は歩き出した。

これは、魔法使いが入り込み歪んだ、美しい旋律を奏で続ける――『ダ・カーポ』の様な物語。

(……なんか、変に目立ってるなぁ)

桜の魔法使い、その名の通りの少女――さくらが、年がら年中桜が咲き乱れる島『初音島』の商店街を歩きながら、視線だけで辺りを見回す。目立っている、とにかく目立っている。

あらゆる人間……店などを経営している人などから、集中的な視線にさらされていた。が、改めて自分の姿を確認して理解した。さくらの容姿は、金髪のツーサイドアップに身長は140㎝ジャスト。今が真っ昼間である事を考慮すると――はい、アウト。完全に小学生と間違われているのだろう。

若干、困った様に渇いた笑みを浮かべ、さくらは駆け足気味に商店街を後にした

(一応、背丈とかだけでも年相応の方がよかったかなぁ……)

狂ったように降り積もる桜を踏み締め歩きながら、うーんとそう考えるさくら。とはいえ、長年過ごしたこの姿を変えるというのは、今からでは自分ですら違和感があるし、妹とにも頼むから突然変えないでください、と言われてしまったことがある。

(でも見知らぬ土地だし……あ)

ふと少女が顔を上げたのは名案が思いついたからではなく、桜並木を越え目的の場所が見えたからだ。
見上げる先は、一つの学園。

『初音島』。それが、一年中桜が咲いているこの島の名前。そして、さくらが街並みを見ながら遠回りしてたどり着いたのは、目の前にそびえる『風見学園』。改装されていると言えど、何十年も存在している大きな学園だ。

が、彼女の目的はこの学園そのもの、ではない。彼女がここに来た目的は、この学園の中にいる、魔法使いの存在だった。

(いる……大きな力を持つ、魔法使いが)

いること自体に、全く問題はない。あの枯れない桜の力を調べた時点で、少なからず魔法使いがいることは解っていたし、これだけ力の強い魔法使いなら枯れない桜の存在を知らない訳がない。

ということは、あの枯れない桜の力を知っている……知っていて、何かしらの事情で管理、もしくは放置している可能性がある。害がないと見ているのか、それとも制御できると考えているのか。

どちらにしろ、それはさくらの管轄ではない。管轄も何もないのだが、さくらがこの地に来たのは枯れない桜そのものではない。

――かつて“あの人”が討滅した筈の存在が、枯れない桜に潜んでいるかもしれない。という可能性を知り、この地に来たのだ。

「……もう一回、調べて見ようかな」

小さく、そう呟くさくらの眼界には、下校を始めた学園の生徒達の姿。これ以上ここにいては、自分の姿では目立つだろうとさくらは背を向けて歩き出した。

――その後ろ、離れた場所から追い掛けてくる一人の学生に“何故か”気付かないまま……。

何度見ても、狂ったように咲き誇る巨大なこの『枯れない桜』は変わらない。あらゆる人間の想いを受け、叶える枯れない桜。魔法を知らない人にとっては噂でしかないが、その力を知る人にとっては噂では済まされない。

――その性質を利用する人物に、とってもだ。

だが、魔法使いの中でも高い能力……というより、叶う者はいないとされるさくらにも、この中に潜む存在だけを取り除く、というのは些か難しい。中の核になる存在に引っ付いているので、下手に取り除こうとすれば、枯れない桜自体がどうなるか分からない。

「さくらさん!!」

さてどうした物か……と考えていたさくらを後ろから呼ぶ声。

その声に、さくらが驚いたことは二つだ。一つは、突然この地に知り合いなどいない筈の自分の名前を、何故か呼ばれたこと。もう一つは――この距離まで接近されて、自分が気付かなかったこと、だ。
一般の人間なら、少女が気付かない訳がないのだ。だが、さくらが驚き振り向いた先にいたのは、優しげな顔付きの学生だった。

どこも先ほど下校していた学生達とは違わない……いや、一つ致命的な違和感があった。

――この『枯れない桜』から発せられる独特の雰囲気が、桜より小さいながら青年からも感じられる。
だから、さくらは気が付かなかった。目の前の枯れない桜の独特の雰囲気に紛れ、彼が接近していたことに。

まぁさくらが訝しそうに見つめる青年に、そんな自覚はないのだろうが。彼も、さくらとは違う意味で戸惑っていた。

友人と下校する途中、家族とも言える人がどこかへ行くのを見かけ、追い掛けたところ何故かこの桜の下にいたのだ。そして桜の目の前に立つ彼女の名前を呼んだのだが……反応はしてくれたが、何やら様子がおかしい。

しかし、それは当然と言える。彼の知る『芳乃さくら』と目の前にいる『芳乃さくら』は……違う人物なのだから。だがこれで、長い年月をかけた運命は重なる。重なり、歯車は動き出す。

なぜここにいるのか、当たり前だが違う人物だとは知る由もない青年はもう一度声を出そうとして――一瞬だけ、枯れない桜から黒い影が飛び出すのを見た。

「……え?」

が、彼が認知できていたのはそれだけだった。気付いた瞬間には、さくらが彼の目の前にいて――“黒い影”が、見えない光に弾き飛ばされていた。

そんなテレビのアニメの様な常識外れの現象は、まだまだ続く。弾かれた黒い影は人型に形を成し、だが腕は鋭い剣の様に尖っているという、常識外れなものが彼の目
の前で、確かに起こっていた。

「さ、さくら……さん?」

「ボクは確かに“さくら”っていう名前だけど、君の知ってる“さくらさん”じゃないと思う。それと、ここで起こってることは残念ながら夢でも冗談でもなく現実だからね」

……試しにいつの間にか目の前いた彼女の名前を呼んだら、余計に頭がこんがらがった上に夢や幻を見ている、というのも否定されてしまった。

一方、混乱の最中にいる青年を護る様に立つさくらは、持ち前の洞察力と理解力で、なぜ後ろの青年が狙われたかをおおよそ推理できていた。

そして、どこからか取り出した刀を手に――数年ぶりに再会した、全くもって会いたくもなかった黒い影に話し掛けた。

「……てっきり“あの人”に完全に討滅されたと思ってたけど、こんな場所を見つけるなんて。悪運が強いんだねぇ」

『貴様……あの忌々しい氷の小僧の後ろにいた、あの時の小娘か!!』

覚えられていて面倒なような、説明が省けて楽なような……それはともかく、さくらの皮肉に何かを通した様に低い声で影が答えた。

「貴方からすればボクは小娘だけど、ボクからすれば貴方は諦めの悪いただの老害だよ」

『ふん……あの小僧はいないらしいな』

「さぁ? あの人は時間にルーズだからね。どこにいるか何てボクは知らないよ」

そもそも、再会するならこんな奴ではなくあの人がよかったのだが、と心の中だけでさくらはぼやいた。

だが、黒い影はそうではなかったのか……さくらの言葉を聞き、声高々に笑い言う。

『ならば――好都合だ!!』

瞬間、凄まじい速度で黒い影の両腕が伸び、鋭い刃がさくら……いや、正確には状況を把握できず動けない――下手に動かれるよりずっとマシだが――青年に向かって迫り、

「何が好都合かは知らないけど――ボクも好都合だよ」

刹那のうちに、刃の部分が一瞬で斬り落とされた。斬り落とした部分が消滅するのを待たず、さくらは黒い影に向かい疾走する。

さくらが刃を振るう……しかしその時には、伸びた部分を切り離した黒い影が刃を再生させ、片方で刃を受け止め反撃――しかし、さくらは刃の軌道をあっさりと読み取り、逆に影の片腕をいとも簡単に斬り落とした。

低いうめき声を上げ下がる黒い影に、さくらは冷ややかな視線を向けて問い掛けた。

「それで……何が好都合なの?」

極めて冷静に、だが相手からすればバカにされた様に聞こえる問い掛けに……黒い影は、妖しく変わらず低い声で笑い、そして叫んだ。

『フフフ――こういうことだっ!!』

「うわ!!?」

驚き叫ぶ声は、さくらの後ろから……つまり状況を把握できていない――出来る筈もない――青年の物だった。

そうだ、影の狙いはあくまで青年。さくらの存在など、最初から眼中にないのだろう。地面から突き出たのは、黒い影と同じ無数の鋭い刃。それは四方八方から青年に迫り、逃げ道を無くし確実に仕留めるだろう。

事実、彼は身を屈めることしかできない。影の刃は本体の狙い通り青年へと迫り、彼はグッと目をつぶり――刹那、先程と同じ様に黒い影は残らず弾け飛んだ。そう、先程さくらが彼の前に立った時と同じ様に、だ。

なに、と驚愕に声を上げる黒い影に……戦力を見誤ったツケが、そのまま返ってきた。

「バカだね。狙われてるって分かり切ってる子に、何にもしないでボクが放っておくとでも思った?」

言葉を聞いた時には、後ろから強烈な“冷気”を黒い影が漸く感じ取り――もう片方の腕が、片から斬り裂かれていた。

『貴様……!!』

「咲け、竜霰架・斬(りゅうせんか・ざん)」

さくらが刀で斬り裂いた、その傷元から華が咲く様に黒い影が凍結して行き――

『くそっ……!!』

――氷結しきる直前に、突如消え失せた。倒した、訳ではない。今のは恐らく、本体の意思を持った分身体の様な物だったのだろう。

「やっ……た?」

「それも残念ながら、だね。倒してないよ」

言いながら、さくらは刀をいつの間にかあった背中の鞘に納めて、尻餅をついて呆然としている青年に駆け寄った。

「大丈夫? ごめんね、巻き込んじゃって……」

「い、いえ。あの……今のって一体……」

未だに呆然と――しない方がおかしい――している青年の問い掛けに、彼女はさてどうした物かと思考した。

一般人を巻き込みたくはない……とはいえ、自覚があるにしろ無いにしろ悪いが彼は一般人の枠組みではないだろう。それに、彼の言った『芳乃さくら』という人物も気になる。

悪戯好きの魔法使いからの情報で訪れたこの土地に、自分と同姓同名、しかも瓜二つの人物がいる。これを偶然と切って捨てることなど、当たり前だが出来ないだろう。
特に、目の前の謎は解き明かさないと気がすまない魔法使い、芳乃さくらにとっては……。

――解き明かして見せようじゃないか。と勝手に(?)俄然やる気になってしまったさくら。これを彼女の妹が見たら、また始まったとため息を吐くことだろう。これも本人に自覚なく、しっかり妹に受け継がれてしまうのだが、それはまた別の話だ。

「ま、ここまで来たら説明しない訳にはいかないか。キミ、名前は?」

「あ……さ、桜内(さくらい)。桜内 義之(よしゆき)です」

「桜内義之くん……か。良い名前だね」

気に入ったよ、とさくらは言いながら金色の髪を掻き上げ、そして――桜が舞い散るこの場所で、運命は交錯する。遥かな、時を超えて。

「それじゃあ、改めて自己紹介。初めまして、ボクは『桜の魔法使い』――芳乃さくら。よろしくね、桜内義之くん」

――ヒラリ、ハラリ、桜が舞い散り、物語は加速する―― 続きを読む
  1. 2013/01/15(火) 04:31:33|
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魔法少女リリカルなのは 烈火の魔法使いの出逢いの物語 第1話

「……私は休んで来いとは言いましたが、人を連れて来いと言った覚えはありませんよ」

心なしか呆れた様な表情で、生徒会室に入って来た刹那とシグナムを迎え入れたシュテルが、そう言う。まぁ、この休日に人を連れて来るとは思っていなかったし、何より自分の師匠にして珍しい行動を取るのだな、と言うだけなのだが。

シグナムはそれに少々困った表情になっているが、刹那は笑顔でシュテルに返事を返した。

「いやぁ、迷子になっていたのを放って置けなくて」

「まっ……!!」

「成程、それなら仕方がないですね」

「良いのか!?」

良いらしい。っていうか、シュテルとしても特に関係はなかったようだ。どうせ、書類整理は全て終わっているのだし。と、シグナムの突っ込みを華麗にスルーしたシュテルが、彼女の分の紅茶を素早く入れ、自身の座ったソファーのテーブルに置き座るように促す。それに従って、シグナムが反対側のソファーに座り、刹那もシュテルの隣に座った。

「では自己紹介にしましょう。私は生徒会副会長・高町 シュテルです。以後、お見知り置きを」

「芳乃 シグナムだ。よろしく」

ペコリ、と礼儀正しく頭を下げたシュテルに習い、シグナムも頭を下げて自己紹介をして顔を上げる。すると、シュテルは分かりにくいが、何処か驚いた様子になっており、その理由はすぐに本人の口から語られた。

「芳乃……では、貴方が学園長の?」

「学園長……あぁ、さくら姉さんの事か。そうだな、私はあの人の妹だ」

「それで、こんな時期に転校なんて事も可能だった訳ですね」

「あぁ。まぁちゃんと試験は受けたし、合格もしたからな?」

一応言っておく、といったう感じで言うシグナムに、シュテルは分かってますよと返す。いくら身内とはいえ、学園長がそういう事をする人物ではないと知っている故の返事だ。

「改めて、よろしく頼むシュテル。私の事はシグナムで良い」

「はい。ではシグナム、私の師匠の事は……もうご存知でしょうね。この学園の生徒会長・紅 刹那。私の師匠で、こんなんでも男ですので」

「ちょっと待ちなさい。“こんなん”とはなんですか、“こんなん”とは」

こんなん……まぁ、刹那の女性的な容姿を言っているのだが、それを訊いた本人は若干怒りを含めた表情でそう言う。ただ、弟子の冗談と分かっているのか本気で怒っている訳ではないらしい。

そこから、何気ない雑談を交え、話題はシュテルの年齢に移る。

「それはそうと、シュテルはまだ中学生だろう?」

「えぇ。この身長の所為で、よく高校生と間違われますが。それが何か?」

因みに、シュテルの身長は170㎝前半。シグナムと殆ど同じであり、彼女が高等部である事を考えると中学生にしてはかなり高い方だろう。ただ、シグナムと違って胸は無いのだが。

ついでに言うと、刹那の身長は高く見積もっても150㎝後半。本人も気にしているのか、身長の話題になった途端になんともまぁ微妙な表情になってしまった。

「いや……中等部のお前が、どうして副会長をしているのか、と思ってな」

「成程、その事ですか。その理由は、そこにありますよ」

シュテルが目線だけで示した場所に、シグナムが視線を向けると……そこには、大量の紙の束、束、束。下手したら崩れてしまいそうな程、大量の資料や学園の書類が積み重ねられていた。

その光景を見て、シグナムは何となくその“理由”とやらを理解し、そして詳しい説明は刹那が引き継いだ。

「多分、シグナムさんの予想通りですよ。この学園、基本的に中等部と高等部が一緒に企画をやる事が多いんです。で、会長は高等部から、そして副会長は……」

「中等部から。それも、“会長が信頼出来る人間”から選ぶのです。つまり私ですね」

「そういう事か。刹那から、信頼されて選ばれたと言う訳だな」

「凄いでしょう。えっへん」

途中で言葉を引き継いだシュテルが、グッと膨らみの無い胸を張り誇らしく言うが……感情の起伏が少ない所為で、なんか変にシュールである。

「でも、シグナムさんも大変なタイミングで転校してきましたね。正式な転校日は休みを明けてから、火曜日でしょう?」

「そうだが……何か在るのか?」

「えぇ。その日に、ちょっとしたお祭り騒ぎが。まぁでも、参加しなければ普通に屋台を楽しめますよ」

「――さて、それはどうでしょうね?」

ニヤリ、と言う文字が似合いそうな位、不敵に笑うシュテルに、あぁこの子は何か企んでるな、と刹那には解ったが、屋台と言う言葉を訊いて、さっそく食い物巡りの計画を立てているシグナムは気付かなかった……。


さて、と言う訳で何の問題も無く休みが明け、さらに準備期間を1日挟んで火曜日。桜並木の通学路、そこには大量の店、店、店。クラス全体と言う訳では無く、個人のグループを組み、それぞれの店を開くので、必然的に店が多くなるのである。因みに、予算は学園から割かれる他、個人でも出せるのでいろいろな店が出来たりする。当たり前だが、お金持ち学校だから出来る芸当だ。

で、そんな中、転校生・芳乃シグナムは最初の店辺りで展開されている店の地図を開き、そして力強く己に宣言した。

「よし、回るか」

「――相変わらずだなぁ、お前」

ふと、後ろから掛けられた聞き覚えのある声に、シグナムは反応して後ろを振り返った。そこにいたのは、この学園の生徒だろう男子。オレンジ色の髪に、整った……と言うより、何処か不良にいそうな顔立ち。勿論、不良などでは無い。

友人か、はたまた恋人か。詳しく見ている人間がいれば、そう考察したかもしれない。が、彼らの関係は予想の斜め上を行く物だった。

「裏月(りげつ)兄さん? どうしてここに?」

「どうしても何も、俺もこの学園の生徒だしなぁ」

そう言われましても、と言わんばかりの表情の彼は――なんと、シグナムの兄だ。しかも、血の繋がった。こう言っては何だが……似てない。まるで似てない。強いて似てると言えば、その意思の強そうな瞳かもしれない。

「まぁ、それはそうですが……」

「それよりさ、お前“企画”に出場するのか?」

「企画?」

なんだそれ? と言う反応のシグナムに、裏月はほれ、と一枚の紙を渡す。そこに記されていたのは……その“企画”に関しての物だった。

「なになに……『守護騎士・選抜レース』――なんだこれは?」

「まんまだろ。生徒会長、まぁ今は刹那の奴を守護する為の騎士、それを選抜する為のレースだとさ。会長の騎士って奴は、この学園の伝統なんだとよ」

「ほぉ……けど、これは事前エントリー式ですので、どのみち私は出れないでしょう」

「あん? 在るじゃねぇか、お前の名前」

え? と疑問を浮かべながら、紙の裏のエントリーした人物の名前を見て行くと……あった、自分の芳乃シグナムと言う名前が。

――なんでだ? と言うシグナムの疑問は、まぁ当然の物であろう。彼女はエントリーした覚えは無いし、何より今日転校してきた彼女に事前エントリーなど無理だ。ならば何故……そう思案するシグナムだったが、その思考は裏月によって遮られた。

「取り敢えず、エントリーしちまってるんだから、レース会場に行って来いよ。もう少しで始まるぜ」

「仕方ない……では、これをよろしくお願いします」

「ん?」

ぽん、と裏月に手渡したのは、シグナムが持っていたガイドブックと財布。それを持っていた本人は、あっという間に走り去ってしまったので、裏月はガイドブックの中身を見ると……赤い丸印が大量にあった。主に、飲食関係の物……つまり、ここを回って食べ物を買って置いてくれ、と言う事だろうが――メチャクチャ数が多い。

分割して食べるんだろうが、それでも多い。だから、思わず彼がこう言ったのも、仕方がない事なのかもしれない。

「――だるっ!!」

そしてその頃、レース会場の本部。様々な機器が取り付けられたそこで、テントの解説席も同時に設置されていた。

『と言う訳でレース開始3分前だ。解説は僕、クロノ・ハラオウンと』

『何か連れて来られた。八神 ヴィータが担当だ』

設置されたテント内で、マイクを通して言う黒髪の少年と赤髪の少女(中学生にしては背が低い)が、このレースの解説役だ。そこ、チビチビコンビとか言わない。

『さっそくルール説明だ。このレースは、妨害だろうが飛ぼうが何しようがオッケーの競技で、最初のゴールした人物が勝者となる。レースと言うより、バトルロワイヤルだな』

『お前がぶっちゃけてるからアタシもぶっちゃけるけどさ、誰が優勝すると思う?』

『そうだな、やはり優勝候補筆頭の殲滅者(デストラクター)じゃないか? 他に目立つ候補の参加者もいないしな……じゃ、スタートだ』

『いきなりかよ!? ぶっちゃけ過ぎだろお前!!』

ヴィータのツッコミは虚しくスルーされ、クロノのあっさりとした開始の合図で広い敷地の各地にいる全員が一斉に走り出し……一つのモニターに映る参加者達が、一斉に一人の人物に襲い掛かった。

『あぁ!? 何してんだアイツら!!』

『多分、完全にノーマークの人間を潰して、自分が強いと言う事をアピールしたいんじゃないか? まぁ、一点に狙われた人物は運が悪いとしか――』

瞬間、そのモニター内の“襲い掛かった”一人が吹き飛ばされる。

『――なに?』

『なっ……』

クロノは静かに目を見開き、ヴィータも驚愕を隠せずにいる。吹き飛ばされたのは、一人だけではなく二人、三人、四人と次々に吹き飛ばされて行き、一分にも満たない時点でその地点では一人を除き全滅した。

その残った一人が、ポニーテールに括られた“桜色”の髪を手で跳ね上げ、言う。

「さてと――遣るからには、真面目に遣らせてもらう」

少女……芳乃シグナムは、その宣言と共にゴールに向かって激走した。“一人を除いた”他の人物とは比べ物にならない速力で、一気に走る。

同時に、レースに参加している人物達がその除いた一人によって、次々に脱落していると言う報告が本部に入って来ていた。何が起こっているのか……やはりこれも、一部の人物を除き、理解が出来ていなかった。

『脱落しているのは確実に、殲滅者(デストラクター)の物だが……あの人は一体、何者だ?』

「――にゃはは、やっぱりこうなっちゃったか」

『が……学園長!?』

不意に、気配も無く現れた人物に、ヴィータとそしてクロノもまた驚きを隠せない。140㎝程の小柄な体型に、金髪のツーサイドアップの髪、サファイアブルーの瞳……この少女こそが、この学園の学園長、さくらである。

『学園長、なぜここに?』

「……自慢の妹の活躍を見に、かな」

さくらがそう、満面の笑みで言う中、既にレースの参加者は二人になっていた。一人は無論、ゴールに向かって激走するシグナムだ。……そのシグナムが、ザザザッと走りを止め、目の前に静かに立ち塞がる人物を見つめる。

「お待ちしていました、シグナム」

「やはりお前か、シュテル」

ペコリ、と自身のスカートを摘みお辞儀をするシュテルに、シグナムは大して疲れも見せず、まるで彼女がいる事が解っていたかのように言った。

「おや、私がいる事が予想出来ていたので?」

「簡単な消去法だ。私を知っていて、尚且つ転校したばかりの私をあっさりとエントリーさせた人物……可能性として一番高かったのがシュテル、お前だったと言うだけだ」
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  1. 2012/10/05(金) 17:46:48|
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魔法少女リリカルなのは 烈火の魔法使いの出逢いの物語 プロローグ

無限に存在する世界。同じ物など無いそれは、時に摩訶不思議な変化の事象を生み出す。

誰かが、部屋の一室で本棚から一冊の本を選び取り、それを開き呟く。

「……大分かけ離れてるし、あんまり関係ないけど……ま、いっか。暇潰しにはなるしね」

開かれた本がパラパラ、と独りでにページを捲り始め、光を放ち出す。また、新たな歪んだ物語が動き始める。

「ホント、不思議な世界だよねぇ。特に、『出来損ないの魔法使い』は大分変わっちゃってるし。って言うか、人物――事象の逆転?」

誰に言う訳でも無く、本を持った金髪の人物は彼にしか解らない事を言う。

「まぁいっか。それじゃあ始めよう? 烈火の物語からも外れた、歪んだ物語を……」

本が光を強める。始まる……歪んだ、そして桜に包まれた物語が――









◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

長く、広い敷地。長い、長い通学路の横には木が立ち並び、それらは全て満開の“桜”を咲かせている。因みに季節は春を過ぎ、完全な季節外れでは在るが、桜は全く関係なく咲き誇っている。

「本当に、年がら年中咲いているのだな」

ふわり、一陣の風が吹き、呟いた人物の咲き誇る桜と同じ色のポニーテールの髪が揺れた。静かな驚きを微かに含んだその少女は、さらにその通学路の先にある時計塔を見つめる。

とても長い時計塔。彼女の姉曰く、この学園の生徒会室として使用されていたりと、かなりお金持ちな学園と一発で分かる。

そしてこの桜は……。

(さくら姉さんは、また随分と派手な『魔法』を使った物だな)

彼女たち『魔法使い』の産物。この桜は、彼女の姉である『桜の魔法使い』が生み出した『魔法』……言ってしまえば“枯れない桜”だろうか。

(生み出した理由が、噂される願いを叶える“枯れない桜”に対抗してだと言うのは、どうかと思うがな……)

そう、本人曰く「思わずやっちゃった。テヘペロ☆」……らしい。テヘペロ、のレベルでは無いのだが、散らすのも勿体ないのでそのままなのだ――良いのか、それで。

相も変わらない姉だな……と、声には出さず思った少女が、ゆっくり辺りを見渡す。流石に完全休日と言う事もあり、人の出入りは完全に無いと言っていい。だからこそ、少女はこうしてゆっくりとしていられるのだが。

「取り敢えず、散策でもしてみるか」

そう呟いた少女が、その足を動かし数キロ以上ある敷地の中へ歩き出すのだった。

同時刻、時計塔の屋上。つまり、この学園の生徒会室。休日ともあり、誰も人がいない……と思いきや、意外な事に二人の人物がその場にいた。

二人いるうちの一人は、見ただけで高価と分かる椅子に座り、これまた高価と分かる机の上に積まれた書類の山を、さっささっさととんでもない速度で処理していく。それを行いながら、その金髪の人物は、言う。

「……かったるい」

「――と言いながら、とんでもない速度で書類整理をしているのは師匠でしょう」

そう事実を言い返したのは、近くのソファーに座り同じく書類整理を行う、茶髪のショートカットの少女。一旦作業を止め、感情の起伏が少ないその表情と青い瞳で、師匠と呼んだ金髪の人物を見つめる。

対して師匠と呼ばれた金髪の人物は、その美しい美貌を誇る――まぁ、男なのだが――表情を崩し、しょうがないでしょ、と言う表情に変わる。ちなみに、その間も手の動きは止まっていない。

「しょうがないでしょ。こんな書類の束、さくらさんだけに任せる訳にはいかないんですから……」

「それで、朝っぱらから書類と格闘ですか。まぁ“企画”も近いのですから、仕方がない気もしますが……取り敢えず、師匠は少し休んでください。後は私が片付けます」

そう言う少女の感情の起伏は少ないが、その強い瞳で見られても金髪の人物は動じる事なく、えーと不満げに声を上げた。それを見た少女が、はぁ、とため息を吐いてから、まるで言い聞かせるように再び言葉を紡ぐ。

「良いですか? 私は今さっきこの生徒会室に辿り着きました。が、師匠は朝から4時間近く書類と格闘。いくら師匠が丈夫でも人の身体は休息を求める物です。そして、残りの書類は私だけでも片付けられます。つまり、休日にも関わらず生徒会長たる師匠がこれ以上働く必要は無いのです。お分かりですか? さっさと休みなさいと言う事ですコノヤロー」

「あーはいはい分かりました。相変わらず、シュテルの説教はかったるいですね……って言うか、さりげなく最後に毒を吐くのは止めなさい」

うんざりした表情の彼を見て、少女――高町シュテルは、よろしい、と言う表情になり書類を片付けて行く。その間に師匠と呼ばれた彼は、しょうがないですね、と呟いてから出口の扉へ向かい、

「じゃあ30分位で戻りますから、書類整理はお願いしますね」

「了解です。15分で片付けて、紅茶でも用意しておきますよ」

そう言って、シュテルが返事をするのを聞いてから生徒会室を後にした。この時の彼は夢にも思わなかっただろう――これが、運命めいた出逢いの切っ掛けになるなどとは。

時間は少しほんの経ち、5分くらいした処だろうか……今現在、先程の少女はと言うと――

「……どこだ、ここは?」

――そりゃあもう、盛大に迷っていた。まぁ、こんな数キロ超の敷地内を地図も土地勘も無しに散策していれば、誰でもこうなってしまうだろう。とはいえ、少女は特に困った様子はない。ほー、なかなか綺麗だなと大きな湖を見た感想を呑気に言っている。

って言うか喩え迷っても、あの目立つ時計塔を目指して行けば問題ないのだ。

「――珍しいですね」

ふと、優しげな声が聞こえ同時に人の気配を少女は感じる。自分がここまで接近されてでしか気配を感じれなかった事に少し驚きながらも、表情には出さずに声の方向へ視線を向けると……今度こそ、言葉を失ってしまう。

「部活以外で、休日にこの学園に来る人は少ないんですけど」

そこにいたのは、女性でも見惚れてしまう程に美しい人物だった。腰まで届く金色の髪、まるで少女の様な顔立ちだが、何処か大人びた雰囲気を感じさせる。濁りの無い蒼い瞳が、少女の姿を映し出す。

「綺麗ですよね、この湖。私も気に入ってるんですよ、芳乃(よしの)さん」

「あ、あぁ――ん?」

何とか反応を返した少女は、ふと不思議な事に気付く。……何で目の前の人物が、自分の名字を知っているんだ、と。はて? と少女が内心不思議がっていると、それを読み取ったのか微笑を交えて目の前の人物が言う。

「この学校、登校も私服オッケーでしょう? だから、変な人が入り込んだ時の為に私は生徒の名前と顔を全員分覚えてるんです。貴方は、転校生の芳乃 シグナムさんですよね?」

「あぁ。そう言うお前は、この学校の生徒会長か?」

少女の……芳乃シグナムの言葉に、今度は相手が少し驚いた様子を見せる。無論、自分の事を見抜いたシグナムに対しての驚きだ。

「知ってたんですか?」

「いいや、この中等部と高等部があるこの学園で、全校生徒を全員覚えている人間など生徒会長くらいな物だろう……そう推理しただけだ」

当たっていたらしいな、と言うシグナムに彼はまぁそうですよ、と言う意味を込めて頷く。良い推理力……どちらかと言えば、直感力に近いかもしれない。そこにも彼は興味を持ったが、他にも……自分が会長だと気付いても態度をあからさまに変えないと言う事にも興味を持つ。

――けど、ならばこれはどうだろうか?

「じゃあこれは推理できました? 私、こんな容姿で男なんですよ」

「ほぉ、それは流石に推理できん。提示されているピースが足りないからな」

……そこから、どちらも喋る事なく沈黙が流れる。シグナムは特に表情を変えていないが、彼はキョトンとして呆気に取られていた。先に言葉を発したのは、その彼だ。

「……驚かないんですね?」

「なにを驚く必要がある? 結局、人は外見も大事なこともあるが、最終的に重要なのは内面だ――そう、私はお婆さまと姉さんから学んだのでな」

要は、お前の外見がどうだろうが関係ない……と言っているのだろう。フォロー、になるののだろうか? まぁ一つ解るのは――彼女が、珍しいくらい真っ直ぐだと言う事だ。思ったことをハキハキ伝え、相手が生徒会長だろうと同じ生徒なのだから遠慮はしない……ただそれだけなのに、何かが可笑しいのか込み上げる笑いを彼は必死で堪え、それに気付いたシグナムが疑問げな表情で問う。

「なんだ、どうした?」

「ふふっ、別になんでもないです」

「そうか――自己紹介」

笑顔で言う彼を不思議に思ったが、それを追及するよりもシグナムには言いたい事があった。

「え?」

「まだだろう? 私は芳乃 シグナムだ。お前は?」

お前は私の名前を知っているが、私はお前の名前を知らない……だから、改めて自己紹介、と言う事だ。

――本当に、初対面なのに迷いなく好感が持てるくらい、真っ直ぐな人だ。だから、と言う訳ではないが、彼は偽りの無い満面の笑みで彼女に答えた。

「私は――紅(くれない) 刹那(せつな)です。よろしくね、シグナムさん」

出逢いが物語を生み、そして動かして行く――喩えそれが、歪んだ物語だとしても。魔法使い達の物語は動き出し……加速する。
  1. 2012/10/02(火) 21:47:41|
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