サクライロノセカイ/リリカルなのはなお話

えびえもん兼いかじゅんのブログです。リリカルなのはの二次創作などを書いています。

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魔法少女リリカルなのは 烈火の翼 外伝『出来損ないの魔法使い』その一

『高町なのは』

その名を聞けば、どんな犯罪者でも震え上がりひれ伏すと言う、最強の魔導師とも名高い女性。別名“処刑人(エグゼキューター)”……そんな彼女の魔法使いとしての名は、己自身も認める『出来損ないの魔法使い』

最初に聞けば皆が不思議に思う……それだけの実力を誇っていながら何故“出来損ない”なのかを。

――これは、この世界の『高町なのは』の生き方の証そのもの。ならば、見てみようではないか。彼女自身が語る事の無い、見てきた者達にしか判らない彼女の貫く意志を。

――これは、一つの歪んだ物語。ただ、己の選んだ道を突き進む魔法使いの物語――









◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

後に『最強無敵の電撃姫』として名を馳せる事になる少女、フェイト・テスタロッサが己の人生を本当の意味で“始めた”事件“ジュエルシード事件”……その約3年も前。

時空管理局・首都防衛隊。通称『ゼスト隊』はこの時代でも健在であった。多少の違いは在れど、その実力は確かに本物である。

そんなゼスト隊の訓練場では、隊のぼぼ全員が目を丸くして目の前の少女を見ていた。自分達は確か“ある人物と模擬戦をする”と言う事で集まった筈……だが、今目の前にいるのは紛れもなく“少女”だった。

その少女が、隊の騒めきを気にした様子もなくにっこりと笑みを浮かべ自己紹介をする。

「初めまして皆さん。この度、皆さんと模擬戦を行う事になりました、高町なのはです」

「……あの君……じゃなくて、貴方が俺達の相手を?」

「はい。何か問題でも?」

戸惑い。彼らがその感情を持つのも無理は無い。彼らの目の前にいるのは、せいぜい九歳か十歳そこらの少女。その少女が、自分達“全員を纏めて”相手をする。

まぁ、己の実力に自信を持つ彼らが少女を侮るのも無理はなかった。そしてそれは、流石のゼスト・グランガイツと言えども例外ではなかったと言える。

親友より与えられた資料を見ながらも、部下のクイントと共にさっそく模擬戦の準備を行っているなのはを逃さず観察していた。

「高町なのは……暫定オーバーSランクの実力を持つ、レジアスも太鼓判を押す程の魔導師……か」

「はっきり言って、危ないですよ。あの歳でそれだけの力を持つのは……」

「あぁ。かもしれんな」

そう、正確な年齢は入って来てはいないが、あの歳でオーバーSなどという強大な力を持ってしまってはどうなるか……下手をすれば、自分の力に溺れてしまう事だってあり得る。

注意するに越した事はない――部下のクイントとそう結論付けていたが、ゼストは少し違っていた。彼の“親友”たるレジアスが“太鼓判を押した”と言う部分に引っ掛かりを感じていた。

果たして自分の親友は、自分の力に溺れる様な人間に太鼓判を押すような人間だっただろうか? ……否、断じて否だ。

だから、ゼストには少女が“単なるオーバーSの魔導師”とは思えなかった。


――そして、その予感は的中する事となる。


模擬戦開始から僅か3分……その状況を逃さず見ていたクイントは唖然と、ゼストは目を大きく見開き驚きを隠せずにいた。

「……戦闘終了、ですね」

土煙が晴れる。何人もの人間が倒れ伏せ、痛みに呻くその中心に――高町なのはは、白いコートをはためかせ傷一つ負わず立っていた。
その表情に先程の様な笑みはなく、感情の起伏が少ない表情がただ終わった戦場を見つめ……ふと、なのはとゼストの目が合った。僅かばかりの交錯――瞬間、ゼストは出口に向かって歩き出した。向かうは無論、少女の待つ訓練場へ。

「隊長!?」

「どうやら、俺は彼女を見誤っていたらしい」

「え……?」

それだけ言い残し、ゼストは扉の向こうへと消える。数分もしない内に訓練場にたどり着いた時には、倒れ伏せていた隊員達も立ち上がっていた。

「た、隊長!?」

「下がっていろ、俺が出る」

既にバリアジャケット展開、己の槍を持ち首都防衛隊隊長、ゼスト・グランガイツ自らが少女と相対する。

白と茶色のコートがはためき、二人の視線は再び交錯する。ゼストの鋭い眼光を見ても、なのはは一瞬も怯まない。その強き瞳は、強者たるゼストを鋭く見つめていた。それを見て彼は、彼女の“強さ”を確信した。

「一つ詫びよう。お前のその瞳……力に溺れる様な物ではない。何か、強い覚悟を決めて突き進む者の瞳だ。お前の強さを見誤った俺の未熟を、今ここで詫びる」

「ではその詫びの代わりに、私と全力で戦ってもらえますか?」

「心得た。全力を以って、お前と闘おう」

言葉と共に、ゼストが己の得物たる槍を構える。それだけでも、戦士としての強き重みが感じられる。
対するなのはは、背中に機械的な白い翼を展開……その時、ポツリと呟いた。

「さて――貴方は私に何をもたらしてくれますか?」

その問い掛けにならない問い掛けは、一陣の風へと流され消える。しかし、『強き信念』を宿す瞳は躊躇う事を知らない。

「時空管理局・首都防衛隊、ゼスト・グランガイツ」

「……出来損ないの魔法使い、高町なのは」

なのはの翼からは白い魔力粒子が。ゼストの身体からは彼を中心とした魔力による暴風が。

――同時に、爆せた。

「いざ、参る!!!!」

「目標を、殲滅します!!!!」

互いが叫んだ直後に爆せたそれは、一瞬にして距離を零とし激突した。ゼストが槍を、なのはは瞬間的に引き抜いた魔力で刃が構成された武器、マギリングサーベルを振るい鍔競り合いを起こす。

圧倒的な暴風が起こるその中心で、一瞬の拮抗の後に圧され出したのは……なのはだ。いくら今のなのはが超人的な戦闘能力を有しているとはいえ、ゼストとの体格差による力の違いは埋めきれない。

「……ッ!!」

「ウォォ!!」

激しいスパークの光りが瞬き、その瞬間空中に吹き飛ばされたなのは。いや、吹き飛ばされたと言うよりは、翼で後方にブーストし距離を取ったと言う方が正しいだろう。

そこから一度体勢を立て直す様に旋回し……また、閃光が瞬いた。それでも、今まで培った勘も在るのだろうゼストは、障壁を展開し大きなダメージを負う事だけは防ぐ。

魔力式亜音速弾頭加速砲‐レールガン‐。腰のブースターと兼用されているそれは、僅か半瞬で放たれ避ける間もなく着弾した。爆風が吹き荒れ……それをまた、新たな風が中心から吹き飛ばした。

圧倒的な威力を叩き出す、ブースト魔法が行使されたゼストの槍はあっという間になのはが片手で展開したシールドに到達。轟音を放ち、激しい火花を散らす。

息を吐く暇も見えない攻防……それが一旦止まったのは、なのはが自らのシールドを爆破させ互いを吹き飛ばした時だった。ゼストは飛行魔法を行使した己の足で強引に踏み止まり、なのはは空中で回転しながら翼で体勢を立て直す。

……僅か一分足らずの攻防。それだけな筈なのだが、局員達には目を逸らすことが出来ない戦いとなっていた――そう、“局員達には”だ。

「さくらちゃん、今のなのはちゃんの攻防……どんな感じや?」

「そうだね、まだまだ甘いよ。一見、拮抗してる様に見えるけど、ものの見事に圧されてるもん」

「厳しいなぁ」

もう1つの見学席。そこには戦いの行く末を見据える、二人の人物がいた。金髪の少女は戦いの行く末を既に予測し、糸目の青年は飄々としながらも同じく結果までも理解している。

「このままやと、なのはちゃんは――」

「勝てないね、確実に」

そう、極めて冷静な瞳で断言するさくらには、確かな確信がある。少女、高町なのはの戦闘技能……そのあらゆる物を叩き込んださくらだからこそ、断言できてしまうのだ。

体格の差も在るが、今のなのははまだ成長途中。この段階では、市丸ギンの言う通り“このままでは”敗北は必至だ。

――だからこそ、少女は動く。己の願いの下……勝利へ。

グッ、と指が出るグローブ、真っ白いオープンフィンガーグローブを両手に付け、なのはは瞳を閉じ、開いた。

「――ッッ!!」

刹那の瞬間に、なのはの纏う気配がまるで違う物に変化し、ゼストが驚きと戸惑いに目を見開く。
少女の中で何かが弾け、少女の思考はクリアに澄み渡る。

これは一枚目の手札……しかし、これだけではまだ足りない。

「エクスシア、フルドライブ起動。出力20%で固定」

『Yes Master.mode(モード)・unlimited(アンリミテッド) Drive(ドライブ)――Limit Break』

なのはの指示で瞬時にシステムを立ち上げたエクスシアにより、展開していた白い翼が最大出力で無いにも関わらず――眩しい黄金の輝きを放ち出す。

だが出力20%……己に全力での闘いを望んだ少女が、数字だけ見れば加減した状態で挑むのは些か不自然だとゼストには思えた。そしてその疑問は、直ぐに氷解する事となる。

「――往きます」

そう言い、少女の翼から黄金の粒子が輝き放たれ……少女の姿は、輪郭すら残さずゼストの視界から消え失せた。


そして次の瞬間――ゼストの身体は滞空していた空中から吹き飛ばされた。


(なん……だとっ!?)

まさか、と言う表現した出来ない。全くもって、反応すら出来なかった。警戒していた、油断はなかった、なのはからの予告が在ったにも関わらず、最強と名高い部隊の隊長たる、ゼスト・グランガイツが、だ。

本能的に全身に魔力障壁を張り巡らせ、何とか体勢を立て直そうとしたゼストが一瞬、両手でマギリングサーベルを引き抜いたなのはの姿を見た。だが、本当に一瞬だけだった。

「グッ!!」

次の瞬間には、マギリングサーベルがゼストの肩に叩きつけられ、一瞬待たずに別の箇所へ蹴りを叩きつける。

また、また、またまたまたまた。十、二十、三十、四十。姿なき天使が、目に追えぬ凄まじい連撃を加え、追い詰めて往く。

「はああああああぁぁぁぁぁっっ!!!!!!」

戦姫の叫びと共に、また次々と蹴りとサーベルを交えた攻撃を展開。そしてそれは、超速から繰り出される事により一撃一撃が強力な物へと変化している。

ゼストですら、防御に徹する事しか出来ず、例えカウンターを行えたとしても、今のなのはの超反応はそれすら見切るだろう。

もはや、勝負は決した……そう、ただ一人以外は思っていた。ただ一人、なのはの動きを“完璧に目で追っている”少女、さくらだけは、勝負はまだ判らないだろうと予測していた。

(……そろそろ、か)

唯一――ギンもやる気になれば出来るのだが――なのはの表情を見取る事が出来たさくらは、そこからさらに答えを広げる。そして同時にそれは、なのは本人にも判っている事だった。

(まったく、いくらなんでもタフ過ぎる……!!)

また一撃を放ち、離脱し加速をつけて突撃するなのはが、行動を選択する毎に段々と焦りを感じ始めていた。いや、正確には二十五手目辺りで既に焦りを感じていたのだ。

決して軽くは無い一撃……その攻撃をこれだけ喰らい、未だ両足で立ちその戦意は微塵にも薄れてはいない。いくら防御に徹しているとはいえ、異常な迄の耐久能力。

正直、自分も見誤っていたようだ……ゼスト・グランガイツの実力を。自分をサポートしてくれている人物から、彼の事はよく聞かされていた筈なのに。

既に少女の全身が悲鳴を上げ、嫌な音を立て始めている。しかし、それでもまだ少女は止まらない。目に見えぬ速度で右手のサーベルを振り上げ――その時、なのはの左腕は限界を迎えた。

「――づッ!!」 続きを読む
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  1. 2012/09/25(火) 22:12:24|
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