サクライロノセカイ/リリカルなのはなお話

えびえもん兼いかじゅんのブログです。リリカルなのはの二次創作などを書いています。

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魔法少女リリカルなのは とある魔法使いと烈火の騎士のお話 プロローグ


出逢いは平凡。けど、その後は決して平凡な物ではない。

よくある出逢い。でも、出逢い人物は普通ではない。

これは物語。繰り返す、始まりと終わり、そして始まりと繰り返す一つの物語。

――一人の魔法使いと、本来の道を歩む烈火の騎士が出逢ってしまう、始まりの物語。

まだ熱さが本格的に残る、8月下旬の街。田舎過ぎず都会過ぎず、海と山近くにあり空気も澄んで綺麗な街、海鳴。

ミンミンと鳴り響く蝉の鳴き声を聞き流し、麦わら帽子を被った一人の少年が、ポツリと思った。

(さくらさん……まだかなぁ)

麦わら帽子からは長い金色の髪を覗かせ、その容姿は女優ですら素足で逃げ出す程に美しい――男なのだが。

そんな彼が、公園のベンチでボーっと待っているのは彼女……などではなく、立派な彼の保護者となっている人物である。いつもは時間には間に合わせる人なのだが、今日は珍しく遅れるとの知らせをさっき携帯で受け取った。

だから、涼しい場所で待っていれば良いのだがそんな気分ではなく、かといってただ待つのも――

(……かったるい)

という訳である。噴水があり、美しい草木があり、騒がしい子供の遊び声も聞こえる。だが、飽きる物は飽きるのだ、仕方がない。だが、動くのもかったるい。かったるい星人、ここに極りである。

とはいえ、本当にすることが無いのは困った物だとは思う。はてさて、どうしたものかと思ったその時――一陣の風が吹いた。

それは突然で、無意識に手で麦わら帽子を押さえる前に、麦わら帽子は空へと舞い上がり彼の芸術的なまでの容姿が露になる。しかし、注目されるのは慣れた物なのか、視線を特に気にも止めずに麦わら帽子の行方を追いかけ――一人の女性が、流される帽子を手に取った。

偶然か必然か、運命の悪戯か、麦わら帽子を手に取った桜色の髪をポニーテールに括った、凛々しい女性はゆっくりと彼へと近づき、彼の容姿を気にもせずに麦わら帽子を突き付け、言った。

「…………お前のか?」

――瞬間、会話は完全に途切れたと言っていい。いやそりゃあ、麦わら帽子が飛んだところを見ていてわざわざキャッチしてくれたのだろうから、彼女は彼が帽子の持ち主だと解っている筈だ。

なのに、わざわざ持ち主か聞くだろうか普通? 持ち主が解っていて聞くのは天然か……不器用な人かどっちかだろう。おそらく、彼女は後者に当たる。

その凛々しい容姿に反して、不器用とは何かおかしく思い、彼は思わず吹き出しで笑ってしまった。

「な、なんだ突然?」

「いえ、何でもないです。ありがとうございます」

しっかりお辞儀をし、彼は麦わら帽子を受け取る。彼女も、何やら釈然としない様子だったが普通に帽子を渡してくれた。

――珍しくて、そして面白い人だ。なにが珍しいかは、彼にしか解らない。しかし、初対面で面白い人というのは失礼な気がする、と麦わら帽子を被りながら彼はクスリと小さく笑った。

だが、いくら大きくない街と言えど、偶然会うなど二度はないだろう。それに、遠目から待っていた人が走ってくるのが見える。

お別れ――けど、その前に“かったるい”気まぐれを起こして見るのも、たまには良いかもしれない。そう思い、彼女の瞳を見つめたまま、彼は言った。

「紅(くれない) 刹那(せつな)です。私の名前……ついでに、こんなのでも男なので」

「刹那……か。私はシグナムだ」

普通の人は驚く筈の後半の告白をあっさりとスルーしながら、彼女は……シグナムは平然と自分の名前を言う。不器用かと思えば、突然のことにも軽く対応する器用な面もあるらしい。

やはり、面白いと思いながら、刹那は地面の置いてあったバイオリンケースを持ち、シグナムとのすれ違い様に口を開いた。

「じゃあ“また”――シグナム」

それは何故か、本人も解らぬ程に確信を込めた言葉だった。離れて行く二人の距離……だが、それでも何故か確信があった。

「お待たせ刹那くん……って、何かあったの? なんか嬉しそうだけど」

1分もしない内に現れたのは、小学生くらいの可憐な少女。金色の髪をツーサイドアップに括り、碧い瞳は見る物の視線を釘付けにする程に澄んでいる。

一般から見れば、彼らは姉妹になるのだろうが、全く違う。刹那が“弟”で彼女が“姉”である。

はて? と彼が上機嫌なのを不思議に思い、唇に人差し指を当てる彼女に、彼は微笑んだ。

「――まぁ、たまにはかったるい事をするのも悪くないって、思っただけです」

その笑みを見て、さらに先ほど何やら話している様に見えた刹那とシグナムの光景を思い出し、彼女はははーんっとニヤリと笑いからかう様に言った。

「……一目惚れでもした?」

「――ばっ!! 姉さん何言ってるんですか!? なんでそんな……か、かったるいことを……」

「ちなみに、刹那くんがボクを姉さんって呼んでくれる時は大体図星で、『かったるい』を言い淀む時は、嬉しい時か恥ずかしい時だよねぇ」

全て正確に言い当てられ、真っ赤に染まった顔を隠す様に麦わら帽子をさらに深く被り、刹那はずかずかと歩き出した。

「行きますよ!! かったるいんですよ私は!!」

「はいはい。急がない急がない」

そうして、二人の魔法使いは公園から姿を消す。

そう――これが始まり。よくある平然な熱い夏の、よくありそうな出逢い。

そんな時に始まった――歪んだ物語の一つだ。



















────────────────────

え?なんでこんな話を書いたかだって?いやその……ツイッターでいろいろありました(((

てな訳で、このお話はもともと自分の初期作品を今リメイクしたらどうなるかって感じです。だからこそ、自分の作品にしては珍しい普通のシグナムが出てます。

ま、それでも原型を留めて無いうえに、もう一人の芳乃さくらこそ『桜の魔法使い』も普通に出てますけどねww

多分、しばらくは刹那とシグナムとさくらしか出てこないかもしれませんねー。まぁさっさと原作に入る可能性もなきにしもあらず(笑)

それではまぁ、このお話に次回があればまた。感想等々もお待ちしています。次回をお楽しみに!!
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  1. 2013/02/20(水) 03:26:27|
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魔法少女リリカルなのはA's 通りすがりの魔法使い 第3話

加速する。月夜に彩られし結界空間にて、二色の流星が縺れ合い加速する。だが白と金色、二つの流星には明確な違いが在った。

金色の流星は、比較的読み易い軌道で天を駆けている。その直線的な軌道を、持ち前の速さで補っているといった処か。

対して白の流星は、金色の流星に優に追い付く速さで在りながらも、その動きは変則的で“読めない”。たった一つ、しかし決定的な違いが戦場のイニシアチブを大きく左右していた。

金色の流星――フェイトの視界から、白の流星が唐突に消え失せる。

「ッッ!!?」

途端、それを理解したフェイトが急激な制動をかける。当然、急激な制動にとてつもない衝撃がフェイトを襲うが、構っていられないとばかりにそのままバルディッシュを“後方”に振るう。

激しい衝撃が響く。それは、バルディッシュと真紅の刃を持つ魔王の月剣‐つるぎ‐がぶつかり合い、交わった証。攻撃を受け止められたにも関わらず、白の天使は相変わらず真意が解らない微笑を浮かべていた。その笑みが、フェイトの神経をさらに逆撫でする。

「なにを、笑っているんですか!?」

「フフッ、まだこのレベルには“着いて来られる”んだな、ってね」

「――!!」

明らかな挑発。しかし、今のフェイトにそれを判断するだけの冷静さは残されていなかった。速さも、技術も、目の前の女性には通じない事がこの数分間で解った。

――ならば、虎の子の新装備を発動させるのみ。

「バルディッシュ、カートリッジロード!!」

『Yes sir.』

バルディッシュがそれに答え、カートリッジを排出しようと6連装リボルバーから、カートリッジを炸裂させようと――その一瞬、何かがスライドした排出口の間に挟まった。

「なっ……!?」

フェイトが言葉を失いながら、“それ”を漸く認識し、そして己の思慮の浅さを後悔する他なかった。
――それは、戦闘開始じ彼女が何処かへ飛ばした誘導兵器……いや、これを見る限りただの誘導兵器ではない。

理のマテリアルたる彼女が使うそれは、近接型空間制圧兵器『ソードビット』……最初は加減していた状態で、使う必要が無いから待機させたのかと思っていたが、違う。彼女は機を待っていた……そしてそれが、この一瞬の隙だったのだ。

「さて、只でさえ相性の悪いインテリジェントデバイスに無理やりカートリッジシステムを組み込んだのに、こんな事をすればどうなるか――解るよね?」

「っ……バルディッシュ!?」

通常、意思を持つインテリジェントデバイスならば、この様な異常が起こると自動で対処する。が、今は“付け焼き刃”とも言えるカートリッジシステムを搭載し、大した調整も無く実戦投入――つまり、如何なインテリジェントデバイスと言えど即座に対処など出来る筈がない。

バチバチ、とスパークを上げカートリッジ部分から異常を来すバルディッシュ。急ぎ対処をするバルディッシュだが、フェイトはそこに隙を生み出してしまう。

「潜在能力は合格点――けど、精神と肉体はダメダメね」

瞬間、真紅の刃がフェイトへ襲いかかり――


「ディバイン……バスタァァァァァァ――――!!!!」


桜色の輝きが、戦姫の叫びと共にフェイトの目の前に煌めいた。それは、今までの彼女の砲撃より巨大な物。しかし、真紅の刃を振るった者は瞬間的に加速し、その砲撃をいとも簡単に避ける。

「なのは……?」

……思わず、砲撃の主の名を呼んだフェイトが疑問形となり呼んだのは、様々な疑問が沸き上がったからだった。

なのはは、あんなにも精密に――カートリッジと言う“付け焼き刃”が在るのに――射撃をする事が出来たか? しかも、この高速戦闘の中で、確実に自分に当たらないよう正確に。さらに、何時もの優しげな瞳はそこに無い。対象ですら無いフェイトが怯む様な、その獅子の瞳は一瞬にして視界から消えた処刑人(エグゼキューター)を確かに捉え、睨み付けていた。

ふと、なのはを見下ろす彼女の微笑が変わる。今までのように真意の解らぬ微笑ではなく、まるで獲物を見定める様な笑みへ。

「魂が引っ張られてる……か。面白いじゃない」

「…………」

『Accel Fin.』

白の天使が羽を羽撃たかせ、魔王の月剣と十のソードビットが滞空する。

獅子の子が両足に桜色の羽を展開し、砲撃形態のレイジングハートを真っ直ぐ構え加速魔力がブーストを掛け始めた。

二つの魔力が加速し始め、強烈な風圧を生み出して……爆発した。

「レイジングハートッ!!」

『Load Cartridge.』

まず動いたのは高町なのは。砲撃モードのレイジングハートの照準を真っ直ぐ処刑人に構え突撃、さらにカートリッジを二発排出する。その一瞬後に魔法使いが動く。そのスピードはなのはの飛行魔法をも圧倒的に凌駕し、しかし射線はなのはに合わせたまま引き離して往く。

対するなのはは、処刑人を逃さず睨み付け――二十を超える誘導弾を展開、一気に解き放つ。それは縦横無尽に飛び……その時、なのはの表情が一瞬苦痛に歪んだのを魔法使いは見逃さなかった。

(あの誘導弾……本来は足を止めて使う物じゃない)

彼女の戦略眼はその誘導弾の性質をあっさりと見抜き、同時に少女がどれだけ無理をしているかを理解する。

十のソードビットで誘導弾を迎撃しながら、魔法使いは振り返り思考する。いくら少女が自分に“引っ張られ”技量などの部分が異常なまでに急速成長しているとはいえ、それイコール少女の肉体が成長している訳ではない。そして、一方的に引っ張られると言う事は、精神的に“未熟”なのだ。

それは、己の知る『不屈の魔法使い』の足下にも及ばない程に未熟で、自分と言う存在がどれだけ知り合いの人間に影響を及ぼすかを理解しておらず、同時に己の存在をどれだけ度外視しているかがよく判る。

そしてそれ以上に、そういった自分の面を“自覚していない”と言うのが厄介だ。それでは『出来損ない』ですらなく……ただの『未熟者』だ。

(雷帝は合格点……でも不屈は私的には赤点ね。信念が定まってない心、私から見ても危うい)

急速に、少女への興味が薄れていくのを彼女は自ら感じていた。興味を失った訳では無い、しかし“今の”少女と戦う価値が無いことを……出来損ないの魔法使いは悟っていた。

ソードビットと誘導弾が乱舞する間を掻い潜り、再び桜色の砲撃が迫り来る。彼女はそれを――一瞬にして斬り伏せた。そして、背に隠されていた鞘に剣をあっという間に納める。

彼女の白いコートが揺らめき、修復されたバルディッシュを持ちフェイトが未だ警戒を解かないなのはの隣に合流する。奇しくもそれは、彼女らが対面した時と同じ状況。しかし、その心中はまるで違っていた。

「……興が削れたわ」

「どういう、意味ですか?」

「そこのフェイトちゃんなら未だしも、今の貴方は私が斬る価値もない。況してや、私の願いを叶えることも出来やしない」

ただ冷徹に見つめ、見定める瞳は高町なのは本人など見てはいなかった。少女の心の奥にある想い……ここにはいない、翡翠の守護者の少年を見ていた――同時に、この先の“歪んだ物語”に於いて、少女が直面する歪んだ運命を。

フフッ、と出来損ないの魔法使いが笑う。同じ存在であり、真逆の存在でもある少女に忠告の一つや二つ入れてやるのも、まぁ悪くはないだろう。

「――いつまでも大切な人が当たり前の様に傍にいると、思わない事ね」

「え?」

「それでもキミが絶望へ突き進むと言うなら……覚えておきなさい。“不屈”は折れないから不屈なんじゃない。例え折れたとしても、絶望が心を掬おうとも、何度でも、再び立ち上がる。それが――『不屈の魔法使い』よ」

視線が交錯する。なのはの視線には、先程までの獅子の光は消えている。少し喋り過ぎたかしら……と、白いコートと栗色の髪を翻らせ、出来損ないの魔法使いは二人の視界から消え失せる――瞬間、まるで予言の様に言った。

「さようなら、また会いましょう。フェイト・テスタロッサちゃん……そして『未熟な魔法使い』」









◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「……終わったみたいだね。あっちも」

同時刻、全ての結界が消えた時点で戦闘は終結したと言っていい。それは、異常なまでの過剰戦力が揃っていた、さくら達の戦いも同じ事だった。

既に結界は解かれ、さくらと刹那の二人は静けさを取り戻した公園をゆっくりと歩いていた。少なくとも、先程まで戦闘を行っていたとは思えない程に、柔らかな表情で。

「まぁ、全部が終わったとは言えませんけどね。結局、あの仮面の二人はさくらさんが見逃してますし」

「言ったでしょ? ボクは必要以上に関わるつもりはないし、あの場には用事があったから来ただけだよ」

つまりは、この世界の事はこの世界にいる人物で、決着をつけてくれ、と言う事だろう。まぁ、もう大分関わっているのだから今さらだとは思うが。

刹那は帽子を被り直し、なんだか面倒な事になりそうだな……と思ったのだが、今までの出来事からして非常に今さらだと諦めた。と言うか、そこら辺は折り合いを付けないとやっていけない。

実際、己の騎士がいきなり関わってしまった時点で、もうこうなるのは決まっていたのかもしれない。

「……で、あの赤い子に渡した物って何なんですか?」

「超高純度の人工リンカーコア……要は物凄い魔力の塊だね。昔シャマルちゃんが回収した物を、何でか知らないけどおばあちゃんが持っててね。今回、あの子に渡すように頼まれたんだよ」

赤い子とは、無論のこと刹那の手によって気絶させられていた少女、ヴィータ。そして“おばあちゃん”とは……此方も無論のこと『悪戯好きの魔法使い』

非常に、嫌な予感しかしないと刹那は思った。だけどしょうがない、悪戯好きの魔法使いなのだから。

「なんか、随分とかったるそうな物を引き受けたんですね?」

「しょうがないよ。おばあちゃんがするこの手の悪戯で意味がなかった事なんて無いし、ここにシグナムちゃん達を連れてこれたのも、おばあちゃんのお陰だしね」

ぶっちゃけ、無理やり予定を組まされた気がするのだが……と、もう何回目かのツッコミを心の中で入れる――と同時に、ここに来た時に別れた騎士の事を思い出す。今頃どうしているのか……まぁ弟子と兄がいるので生活面での心配はしていないが、その他の事、例えば恋愛の事とか――

「あ、今シグナムちゃんのこと、考えてるでしょ?」

「にゃ!? にゃんで私がシグナムのこと……」

「にゃはは、口調と声が元に戻ってるよ」

動揺してるね~と言う、相変わらず楽しげなさくらの言葉にハッとなり、刹那を赤くなったその表情を隠すように帽子を被り直し、コホンとわざとらしく咳をしてから言葉を放った。

「何で俺がアイツのこと……か、かったるいんですよ」

「にゃはは、刹那くんが『かったるい』を言い淀む時は、嬉しい時か恥ずかしい時だよねぇ」

「ぐっ……」

「ごめんね、色恋に疎い妹で。でも、キミならシグナムちゃんを任せられるし……今からさくらお姉さんって呼んでもいいよ? あ、『お義姉ちゃん』かな?」

「さ、さくらさん!!」

最後の方は、もう微笑ましくと言うかニヤニヤしながらと言うか、完全に楽しんで――実はかなり本気――刹那をいじくり回すさくら。
刹那は完全に素の状態に戻り、顔を真っ赤にしながら再び反論しようとするが……ふと、さくらが表情を変え何処かを見つめていることに気が付く。

「さくらさん?」 続きを読む
  1. 2012/10/02(火) 02:42:13|
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魔法少女リリカルなのはA's 通りすがりの魔法使い 第2話

人の印象と言うのは、近くで見ている人間と遠くで見ている人間によって違いがある物だ。

例えば『紅 刹那』と言う人物がどんな人間か、と言うのは人によって大分変わるだろう。

成績優秀スポーツ万能、そして学園の生徒会長――それが周りの人間から見た紅 刹那の印象。つまりは、『完璧な人間』と言うのが正しいだろうか。が、これは刹那の身近な人間からすれば簡単に覆ることだったりする。

例えば……おそらく今、彼との距離が(いろんな意味で)近いだろうシグナムに聞けば、こう返ってくる。

「アイツが完璧? ……確かにいろいろと器用で気が利く奴だが、別に完璧と言うほどでも無いだろう。ちょっとした事で、変に怒る奴だからな」

ちなみに、その“ちょっとした事”とは、初っぱなからセクハラまがいの事をしたりした事なのだが、まぁここでは割愛しよう。

もう一人、彼と親しい人物……弟子である高町シュテルに訊いてみたらこう答えるだろう。

「……まぁ、シグナムに会う前はそういう方でしたよ。『輪の中心に立つことはできても、輪の中に混ざる事はできない方』ですね。ですが、シグナムと出会ってからそれも変わりました。良い変化です」

珍しく嬉しげな笑みをこぼし、きっとそう言う筈だ。さてここでもう一つ、もし彼に誰かが戦いを挑んだらどうなるか? と訊いて見ると――

「アホだな」
「バカですね」

――と、一瞬で返ってくる。そして追撃で有り難い解説まで付いてくる事だろう。

「まぁ、神龍クラスをあっさりと鎮圧できる奴に挑む方が間違っているな」

「少なくとも、私を倒せない様ではシグナム……そして師匠には、天地がひっくり返っても勝てないでしょうね」

――ただ、それを知らずに挑んだならば、些か同情を禁じ得ないな。そう、シグナムは最後に締めくくった事だろうか。奇しくもそれは、彼女がつい最近に戦った少女が相手だったのだが……それを彼女は知る由もない。

翼が羽撃たく。時間を、空間を、あらゆる次元界を統べる純白の翼。二枚一対の実体を持った翼は、その力を振るい終えた直後に所持者の意思に従い羽を撒き散らし消え失せた。

舞い散る純白の羽は、幻想的な迄の美しさを醸し出す。しかしそれは、それを見た少女に対する何の慰めにもならず、その美しさですら持ち主の美しさを引き立てる背景にしか過ぎない……そんな人物こそ――紅 刹那。

「さてと、今度は俺から質問――」

「答える……つもりはねぇ!!」

いつもの彼とは違う口調で言った言葉は、ヴィータが武器を構え突撃した事により遮られた。まぁ確かに、ヴィータがわざわざ答える義理もない。何せ、強引に襲いかかった“犯人”と呼べるのは彼女だ。

だから、今から相手を倒す自分がその相手の話を聞く筋はない。そしてもう一つ――ヴィータの戦場の勘が告げている。こいつは危険だ……と。

そしてグラーフアイゼンが叩きつけられる瞬間――刹那が何かを呟いた。

「……全く、かったるいですね」

「なっ!?」

呟いたその瞬間、ヴィータの視界から彼は消え失せる。結果、グラーフアイゼンは地面に叩きつけられ、その威力でコンクリートの地面が叩き割られて粉塵を上げた。その粉塵を振り払い、一瞬にして消えた相手を探すヴィータを嘲笑うように、刹那は彼女の後ろ……離れた場所に立っていた――その手に、ヴィータが被っていた帽子を持って。

「じゃあ改めて、二つほど質問だ」

「んな……!?」

いつの間に、と言う言葉は続かず、手に持った帽子を何度も投げては取りを繰り返しながら、彼はヴィータを鋭い瞳で射ぬき言う。

「一つ目、お前の目的はなんだ? その反応を見るに、俺だけ狙ってる訳じゃないんだろ?」

「…………」

「ま、答える訳がないか。どうせ関係ないしな……二つ目、お前の目的は俺に危害を加えないとダメなのか?」

「――殺しはしねぇ」

つまりは、それが答えだった。殺すつもりは無いが、危害は加えると言う事だ。ふむ、どうしようかと考える刹那だが、その答えは既に出ていると言っていい。

その手には、いつの間にか蒼い刀が握られていた。そして、ヴィータに帽子を投げ返してから、告げる。

「じゃあ、一撃で決めるか。お前の全力の一撃……それで向かって来い――加減するのは、かったるいんだ」

その言葉に、ヴィータの瞳は明らかな怒りを灯した。バカにされているとも取れる言葉に、騎士としてのプライドが黙っていない。

「その言葉……後悔すんなよッ!!!!」『Gigant Form』

デバイスのカートリッジがロードされ、ヴィータは空中に躍り出る。そうして彼女がアイゼンを振り上げると――その大きさは、数十倍にまで膨れ上がった。人間など比べるだけ馬鹿らしく、言ってしまえば怪獣の様な大きさになったそれを、ヴィータはいとも簡単に操り……怒れる瞳で刹那を睨み付け、勢い良くグラーフアイゼンを振り下ろした。


「轟天爆砕――ギガントシュラァァァァァァァクッ!!!!」


それはまさに『巨人の一撃』。その圧倒的と言える一撃は、数秒足らずで彼に襲い掛かるだろう。だが、刹那は逃げようとはしない。

……必要ないからだ。彼が刀を水平に構え、左手で刀身に触れる。すると、彼の周りに冷気が渦巻き集束する。彼を包み込む渦となったそれは、一瞬にして刀と同化し力を与える。そうして瞳を開いた彼は、巨人の一撃をつまらなそうに見つめ、言った。

「はぁ……やっぱ加減するのも、かったるいんだけどな」

告げるは、その技の名。決するは、彼の名の通り――刹那の一瞬。


「舞い散れ――雪月華(せつげっか)」


瞬間、刹那の姿が消える。

――刃が煌めく。目に見えぬ程に、凄まじい速度で。数え切れぬ程に、凄まじい数が。

一瞬の交錯。たったそれだけ……それだけで、勝敗は明らかだった。ヴィータが不自然な形で崩れ落ち、巨大化した部分が“粉々に斬り裂かれた”デバイスと共に落下する。

全くの無傷で、ヴィータより早く地面に着地した刹那は、ポツリと呟いた。

「悪いな……ケガすると、怒る奴がいるんだ」

刀を払うように一閃させ、済まなそうに言う刹那の視線の先では、最後の力を振り絞ってデバイスが衝撃吸収用の魔法『ショックアブソーバー』を展開しヴィータを受け止めた。

彼女の展開した結界が消えていく……彼の“翼”の力で他の者にバレ無いように偽装していたとはいえ、根本的な部分は変わらないので当然と言える。つまり、外からの干渉を受ける様になったと言うこと。

何が刹那に接近する……身体を屈め高速で突進し、一撃で決めるべく拳を握りしめ――

「迅いね……けど、遅い」

「!!」

また、それとは違う何が割って入る。高速を遥かに上回る“神速”で間に入った何かは、相手の拳を手に持った刀の鞘で受け止め、一瞬の間も与えず相手を弾き飛ばす。
弾き飛ばされた相手も、ただ飛ばされるのでは無く受け身を取り体勢を整えた。

「チィ……!!」

その相手……仮面を付けた――体格的には男だろうか――人物は、再び仕掛け様と拳を構えた。が、その瞬間、金色の髪が“目の前で”フワリと揺らめく。

「だから、遅いよ」

ルビーレッドの瞳が男を射ぬき逃さず捉え、神速の動きが仮面の男の動きを止める。反撃する事も、ましてや逃れる事も出来ない男は……苦し紛れにも見える、反射的に展開した防壁に頼るしかない。

――それすらも、無意味なのだから。

「総天烈火(そうてんれっか)流抜刀術――閃華(せんか)・瞬(またたき)」

閃華・瞬。その名の如く、見えない“何か”が瞬き障壁を紙の様に斬り裂きそのまま仮面の男すらも横殴りに吹き飛ばした。

……今度はまだ見える範囲で閃光が華の様に煌めいた時には、仮面の男は公園の木を薙ぎ倒しながら土煙を上げて漸く止まる。恐らくやり手だろう仮面の男が、受け身を取ることすら出来なかった。

それだけの技を、突如現れた少女が繰り出したのだから驚愕だろう。ましてやそれが、まったくのノーマークだった人物ならば。

ウェーブのかかった金色の髪、彼女の家族とも親友とも旅仲間とも言える人物とは対極的な、ルビーレッドの瞳。そう、八神 はやての家に絶賛居候中の――リリィだった。

暫く観察するように土煙を見ていたリリィだったが、何やら表情を変えて刀を引き抜くと……折れた。そりゃあもう、凄く見事に真っ二つ。折れた刃は力なく地面刺さり、もはや刀としては機能してはくれない。

それを見たリリィが、困った様な表情で言った。

「えっと……峰で打っ叩いたのはマズかった?」

「そもそもな話、貴方の剣速に耐えられなかったのも原因でしょうに」

はぁ、とため息を吐きながら彼女の後ろに刹那が歩いてきた。いつもとは違う口調だったからか、リリィは少し違和感を感じる……が、今は敢えて無視して折れた刀の話に移った。

「や、この程度に耐え切れない様じゃ困るんだけどなぁ……」

「知りません。そう思うなら、さっさと兄の元に戻ってください」

「う……そのね弟くん、こういう形で別れたことなかったから、いざそうなると気まずくって……」

「それこそ知りませんよ。なんで、俺が兄さんと貴方の恋路をサポートしなきゃいけないんですか」

かったるい、とお決まりの口癖を最後に付けた刹那に、リリィは曖昧に笑いながら顔を赤らめる。まぁ、直球に“二人の恋路”と言われてしまうと凄く恥ずかしい。

だが、和やかな雰囲気は一気に霧散する。リリィが鋭く目を細め、言う。

「しっかし――案外しぶといね」

土煙の中から出てきたのは……先ほどより何処か動きがぎこちない、仮面の男。あばら骨の一本や二本……で、済んでいればラッキーだろうか。恐らくは、もっと逝っている。

「貴様……ぐっ!!」

「タフだね……あんまり喋らない方が良いよ。それとも、私が戦える事が不思議? まぁ当然か――はやてちゃんの家だと、貴方たちに気付かないフリしてた訳だしね」

唖然としているのか、それともどう動くか決めかねているのか、どのみち仮面で表情は見えない。

そもそも、相手が『ジャンヌ・ダルク』と言う人物を知っていれば、警戒も出来、このような結果にはならなかったのかもしれない。しかし、所詮は『かも』『もしも』の話。敢えて言うなれば……いないだけで寂しさを感じる程、大切に思っている人物を“何の力も無いのに旅の中で一人で自由にさせるか”……と言う事だ。

つまりは、今の状態も彼女の実力は信用しているが、それを心配が上回っているのだろう。本人は、絶対に認めはしないだろうが。

「それと……そっちの奴も出て来いよ」

今度は刹那。彼が髪を揺らし、そう言った先には無数の森林がそびえるだけ。だからこそ、彼ら程の腕ならば身を隠すことなど赤子の首を捻るより容易いこと。が、それも刹那には通用しない。

そして、同時にこれは警告ではない、“忠告”だ。フッと、口を僅かに上げた刹那が続けた。

「でないと……かなり痛いと思うぜ」

凄まじい“冷気”が流れ、妹と同じく凛々しく美しい声が響いたのは、その忠告から半瞬後のことだった。

「舞え、氷輪丸――氷柱舞(つららまい)」

冷気が勢いよく駆け巡った直後、リリィが相対する男とまったく同じ姿の仮面の男が、何かから逃れるように転がり出てくる。その“何か”は、2メートルは在ろうかと言う“氷柱”。それが次々に地面から姿を現し、仮面の男に迫り来る。

それは仮面の男が迎撃しようと、体勢を整えた時に彼の一歩手前で停止する。無論それは、術者の意思による物。 続きを読む
  1. 2012/08/27(月) 00:33:30|
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魔法少女リリカルなのはA's 通りすがりの魔法使い 第1話

「……で、結局どうするんですか?」

そう黙々と読書を続ける桜色の髪の女性と、感情の起伏が少ない表情で同じく黙々とゲームをカチカチカチカチ続ける栗色髪の少女に、現役中学生でシャーペン片手に宿題を片付けている少女――フェイト・テスタロッサは問い掛けた。
それに反応したのは、黙々と読書を続けていた女性だった。

「何がだ? お前が昨日の事を言っているのなら、私は別にどうこうするつもりは無い。第一、私達は厄介事に首を突っ込む為に来た訳ではないだろう」

「そうですけど――これ、社会化見学じゃなくて、ただのお泊まり会じゃないですか? それも長期間の」

「……間違ってはいない。が、文句ならおばあ様に言ってくれ」

鋭い瞳、桜色の髪をポニーテールに括った彼女――芳乃シグナムが、若干呆れを含みつつ言う。

そう、始まりはシグナム……そして、さくらの祖母である『悪戯好きの魔法使い』の連絡から始まった。

夏休み期間を利用した社会化見学、と言う名の長期間お泊まり会である。だが、かなりスケールがデカい。平行世界(しかも、自分と同じ存在がいる)への移動、広々としたアパートを借りて大々的なお泊まり会。で、介入したのはシグナムと、保護者役のさくらだけとはいえ、昨日のあの騒動だ。ちなみに、夏休みなのに冬の気候の場所で過ごす事には突っ込んではいけない。

「まぁ、おばあ様にとってはこれも予測範囲内なのだろうな」

「流石は、『悪戯好きの魔法使い』と言うことか」

二人の会話に、ヒョコっと台所から姿を現したのは艶やかな銀色の髪を揺らす、見た目は絶世の美女のと言う名が相応しいが、実は男なもう一人の保護者、旅の魔法使い……ジャンヌ・ダルクだ。

エプロンにお玉と、何処の主夫だお前はと言うツッコミはさて置き、ジャンヌの言葉に苦笑にも似た笑みを浮かべながら言葉を返した。

「昔から名前の通り、悪戯が大好きな人だからな。仕方がないさ――しかし、お前まだ課題が終わらないのか?」

「シグナムやシュテルと一緒にしないでください!! って言うか夏休み開始二日目で全部終わってること自体が可笑しいんですよ!!」

一気にまくし立てたフェイトは、呆れと怒りが含まれた表情で、若干息が上がっている。自分の名前が呼ばれたからなのか、ゲーム機の画面から目を離した少女――と言う割りには、高校生のシグナムと背が同じくらいなのだが――がフェイトに向かって、シグナムと共に言った。

「何を言っているのですか。ギャルゲーマーにとって、無駄な課題を1日で終わらせる事などデフォルトスキルですよ。寧ろ、半日で終わりました」

「なにその無駄なスキル!?」

「なに、昔さくら姉さんが『宿題は最初のうちに終わらせて、最終日に地獄を見てる友達を嘲笑うと良いよ』……と言っていたのでな」

「学園長さくらさん案外ドS!?」

わりかしどうでも良い(?)宿題スキルの原点と、フェイトの誉められても嬉しくない見事なツッコミスキルを披露した処で、台所に戻ったジャンヌを除いた三人の会話が別の話題になる。

「しかし、ずっと課題とにらめっこと言うのも気が滅入るだろう。息抜きにチェス――は、ボロボロで終わるから息抜きにならんか」

「ぐっ……ホントの事だから否定できない!!」

ダン、と机を叩いて悔しげに唸るフェイト。別に、と言うか決して彼女の頭が悪い訳ではない。寧ろ彼女は国語が少し苦手なだけで、中等部でもテストの順位は上から数えた方が早い秀才児だ。

が、如何せんシグナムが相手だと無理がある。前に遊びでチェスなどのゲームで挑み、片っ端からフルボッコにされたのは記憶に新しい。

ここでフォローを入れさせてもらうと、まさに相手が悪いとしか言いようがない。シグナムがもともと頭脳明晰なのに加え、実質的にシグナムを育てて来たのは、IQ180でアメリカの大学に飛び級で入り卒業し博士号まで持ち、彼女らの学園の主でもある天才学園長兼魔法使いにしてシグナムの姉、さくらだ。

もともと先生を目指していたせいか、はたまた元来の才能か人に教えるのが上手いさくらに育てられたシグナムは、必然的に頭も良くなる。彼女が物事を推理に例えて考察するのも、少なからず姉の影響があるのだろう……と、シグナムと時間を共にしてきた、学園の生徒会長は語っていた。

まだ悔しげに机を叩くフェイトに、シグナムは少し笑みを浮かべながら……何故かトランプのカードを取り出した。

「相手をする代わりに、さくら姉さんの教えを一つ語ろうか」

シグナムがトランプのカードクルリ、クルリと回し“表”のジョーカーの絵柄を見せ、それをテーブルの上に乗せた。そして、フェイトに向かって問い掛ける。

「フェイト、これは“表”か? それとも“裏”か?」

「え……表じゃないんですか?」

「正解だ。なら、これはどうだ?」

シグナムが手を切る様に振り、トランプのカードを半分回転させた。今度は、裏が表になった……まるで、“表”を隠すかの様に。

「えっと、裏が表になった……?」

「まぁある意味、正解だな。だが、こうも考えられないか? “表”と言う“真実”を、“裏”と言う偽装(つく)られたトリックで隠している、と」

「あ……」

そこまで聞いて、フェイトはなんとなくシグナムが言いたいことが分かってきた。要は、いつもの推理に例える癖なのだろう。

「幾ら廻そうとも、表は表だ。どんなに巧妙な裏(トリック)でも、どこかに必ず隠された“真実”がある。パズルの様にヒントを繋ぎ合わせ、隠された裏‐表‐を解き明かせ……これが姉さんの教えなのだが、理解できたか?」

「……なんとなく」

ちょっと難しい表情で、しかし“なんとなく”理解した表情で頷くフェイト。要は、偽装られたトリックに惑わされず、真実を導き出せと言うこと。

何でも良いが、ホント将来的に探偵事務所でも開くつもりなのではないかと、最近フェイトは思っていたりする。まぁ、その時は自分も一緒に探偵家業をするかも知れないが――

「――そろそろ、出てきたらどうです? 処刑人(エグゼキューター)いいえ、『出来損ないの魔法使い』」

「久しぶり、と言うべきかしら。殲滅者(デストラクター)いえ、『不屈の魔法使い』」

それぞれの名を呼び、それぞれの視線が交錯する。すっかり気を緩めていたフェイトが気付いた時には、彼女は既に部屋の中に侵入していた。

フェイトは驚き、シグナムは至って冷静に、いつの間にか戻ってきたジャンヌも冷静に、彼女を見つめる。

シュテルは相変わらず感情の起伏が少ないその表情で、そんな彼女と“瓜二つ”の女性は、ショートカットのシュテルとは違う長く無造作に伸ばされた、腰まで届く栗色の髪を揺らし、妖艶な笑みを浮かべた。

彼女の名は、彼女からすれば無いも当然なのだろう。だが、彼女と同じ構築体(マテリアル)はこう呼ぶ――処刑人(エグゼキューター)

「一応、訊いておきましょうか。今の貴方は敵ですか?」

「いいえ、と答えましょう。シュテルっち、今は夏休みでしょ? だから、それに合わせてあげようと思ってね」

「律儀な事です。それを言いに、私の所へ来たのでしょう?」

無表情が少し崩れ、若干呆れた表情を見せたシュテルに、出来損ないの魔法使いはただ笑みを浮かべ言葉を紡ぐ。それは恐らく、シュテルにしか理解できない物だ。

「そうね。まぁこの世界も面白そうだから、自由に行動したくってね……それでも貴方‐オリジナル‐以外に、私の願いを叶えられる人はいないでしょうけど」

「…………」

「ではまた、近いうちにお会いしましょう」

そう一方的に言い残し、“私の願い”の部分で珍しく表情を厳しくしたシュテルを敢えて無視して、出来損ないの魔法使いは一瞬にして消え失せた。彼女が残したのは、深い沈黙……それも、緊張感が解かれたフェイトのため息によって消え失せた。

「――ふぁぁ、なんであの人が……っていうか、結局なにをしに来たんでしょう?」

「アイツに敵意はなかった。ならば言葉通り、シュテルに会いに来ただけだろうな」

シグナムの言葉に、シュテルは静かに頷くことでそれを肯定した。彼女がどうやってこの世界に来たか……それは定かでは無いが、今の彼女からは“戦意”と言う物を感じられなかった。

――とはいえ、これは珍しい事では無い。彼方の世界でも、時折学園のメンバーを助け、時折シュテルと敵対し、またある時は自分に何のメリットもない人助けをする。

一見、掴み所のない人物に思えてくるのだが……シュテルには分かる。彼女も、何処か迷っているのだ。だが、それを頑なな迄に認めようとせず“願い”を叶えるために、シュテルに戦いを挑む。

今は戦うつもりは無い。しかし、いつかは決着を付けなければならないのだろう……。

(それでも……私は――)

「シュテル?」

ハッと我に返ると、自分を心配そうに見つめる長年の親友、フェイトが瞳に映った。どうやら、予想以上に思考に没頭してしまっていたらしい。心配をかけまい、と薄く微笑み彼女らしからぬ冗談を口にした。

「平気ですよ。はやてとユーノが、私がいない間に一夏の間違いを犯さないか心配していただけですから」

「そ、そう。冗談……じゃないみたいだね」

「えぇ、実際に想像したら段々とイラついてきました」

実際に想像してしまったシュテルにより、ギチギチギチと、片手に持ったゲーム機が地味に命の危機に瀕しているのをフェイトが必死に諌めるのを見ながら、シグナムとジャンヌがあっさりチェスの準備を始めていた。さらには、シグナムが火に油を注ぐ様な事を言う始末だ。

「まぁ、可能性的には無いとは言えんな」

「ちょ、シグナム!?」

「ならば、貴方の得意の“推理”で私達の行く末を予測してみてもらえますか?」

焦るフェイトを尻目に、シュテルは冷静にシグナムに言葉を切り返した。それにシグナムは、困ったように笑みをこぼして言った。

「前にも言ったが、私には“恋愛”と言う感情的な物は推理し難い。彼のシャーロック・ホームズも言っていたろう? 『恋愛は感情的なものだからね。すべて感情的なものは、何ものにもまして僕の尊重する冷静な理知と相容れない』……とな」

「なら、お前の場合は私の弟か?」

フフッ、と魔女の様な笑みを浮かべ、シグナムに追撃をかけたのは黙々と準備をしていた筈のジャンヌだった。相変わらず、ここぞと言うタイミングで介入してくる奴だな、と心の中で呟きつつ、シグナムも凛々しい表情に微かな笑みを浮かべ、チェスの台から黒のクイーンの駒手に取り応戦する。

「……そういうお前の相棒(クイーン)は、一体どこへ行ったのだ?」

「――ふんっ、いつもの気まぐれだ。すぐに戻ってくるさ」

相棒(クイーン)と言う単語を使い、妙な言い回しをするシグナムに強がって見せたジャンヌだが……何処か、寂しげな表情を一瞬見せたのをシグナムは見逃さなかった。

――やはり、似ているな。

無意識のうちに笑みをこぼし、シグナムは思った。この兄弟は、本当に似ている。強がって、弱い部分を見せまいとしている処も……でも、ホントは繊細で、寂しがりやな処も。流石は双子と言うか、なんと言うか。

「全く、早く素直になれば良いものを……」

「う、うるさいな。…………お前だって、私の弟相手に素直じゃないくせに」

「ぐっ――私とアイツは、別にそういう関係では無いし、私も意識はしていない!! ……筈だ」 続きを読む
  1. 2012/08/10(金) 00:10:34|
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魔法少女リリカルなのはA's 通りすがりの魔法使い・プロローグ

選択肢の数だけ無数に存在する世界、枝分かれする未来。これは、そんな選択肢の世界の一つ。

――魔法使いが入り込んだ、始まりの前の物語。

海鳴町、広域封鎖結界内。魔力を持たない一般の人間が入り込めないそこには、赤毛の少女――闇の書の守護騎士、ヴィータが一人の少女を追い詰めていた。

「っう……」

栗色の髪を微かに揺らし、ビルの内部に叩きつけられた少女が身動ぎする。が、ダメージが思いの外大きいのか、それても破損したデバイスの影響か、立ち上がる事すら出来ない。

バリアジャケットの再構築すら出来ずに、ただ擦れた思考で考える事しか出来ない。何故、こんな事になったのか。突然襲い掛かってきた少女と交戦状態に入ったが、弾丸のような物を少女が使った途端に戦況は一変。

彼女の魔力が突如跳ね上がり、展開した魔力防壁を打ち破られ、今に至る。

(もう……駄目なの?)

思考だけで無く、視界すらもぼやけてきた。赤毛の少女が近づいてくる……そして目を閉じかけた、その時――

「……誰だ、お前」

――誰かが、目の前に降り立った。一瞬目を離した隙に、だ。ストレートの桜色の髪がなびく。その手には、炎が波打つ様な美しい刃を持った剣。後ろ姿で、さらに帽子まで被っているので顔は見えない。しかし、後ろ姿だけでも何処か気品が感じられた。

……女性が、怪訝そうに見つめるヴィータに向かって、凛々しい声で言葉を放つ。その、質問の答えを。

「――通りすがりの魔法使いだ」

――それは、歪んだ物語が始まる合図だったのかもしれない。

女性の答えに、ヴィータは露骨に顔を歪める。答えになっていない……そして、目の前の者が何処か自分の仲間と被るイメージを感じて、振り払いたかったのかもしれない。

「答えになって――ちっ!!」

「なのはっ!!」

思わず叫ぼうとしたヴィータが舌打ちを放ち、すぐさまビルの外へ離脱する。それと入れ違いで、三人の人物が少女――高町 なのはの下へ駆け寄った。

少年、ユーノ・スクライアがすぐに治癒魔法を掛け、金髪の少女、フェイト・テスタロッサと使い魔のアルフがなのはを心配しつつも、警戒を含めて目の前に立つ女性に問い掛けた。

「貴方は、何者ですか?」

「二回目だが、通りすがりの魔法使いだ」

彼女的には正直に答えたのだろう……が、二人には冗談にしか聞こえなかったのかさらに警戒を強められた。

――別に、冗談のつもりは無いのだがな……。

まぁ、通りすがりの処は即興だがマジだ。本当に通りかかっただけ……だが、それを説明する暇はないらしい。帽子の下で、女性が鋭く目を細めて言う。

「気を付けろ、もう一人来るぞ」

「あ、ちょっと待ちなよアンタ!!」

警告するだけして、桜色の髪の女性は使い魔の制止を聞かずに飛び出した。フェイト達が使う飛行魔法を行使した様子も無いのに、女性はいとも簡単に空中に降り立つ。

彼女のロングスカートがゆらりと揺れ、彼女は再び赤毛の少女、ヴィータと相対した。

「もう、お前が誰か何て訊かねぇ」

ガシャン、とヴィータが己のデバイスである『グラーフアイゼン』を構え、言った。それに、女性が帽子の下で薄く微笑みながら、答えた。

「ほう、ならばどうするつもりだ?」

「決まってんだろ――前に立つなら、ブッつぶすだけだ!!!!」『Explosion.』

ヴィータの叫びに応え、グラーフアイゼンが変化する。弾薬の様な物を排出し、グラーフアイゼンの形状が変化した。

『Raketenform.』

ハンマー状だった物がスパイクに状に変形し、もう片方からジェット噴射によりヴィータがその場で回転し加速を始める。

「ラケーテン……ハンマァァァァァァッ!!」

そして、勢いをそのままにヴィータは一気に突撃した。推進剤の噴射と回転の遠心力、この要素によって強化されたそれは、受け止める事も避ける事も困難な一撃。事実、高町なのははこの技によって敗れた。

桜色の髪の女性は、何もせずに動かない。そしてヴィータの一撃が彼女に届こうか――瞬間、何かが煌めき、軌跡を描き、凄まじい衝撃が辺りに爆せた。

衝撃と轟音が収まり、そこに在った光景は……。

「なん、だと……!?」

呆然と、目の前の光景を信じられない瞳で認識したヴィータと……炎の刃で、寸分の狂いも無くスパイクの先端部分を受け止めた、魔法使い。

それが、この光景こそが純粋な真実。爆発的な破壊力を誇るヴィータの攻撃を、魔法使いが“いとも簡単に受け止めた”という事実がそこには在った。

完全に勢いを失ったのか、女性が軽く剣で押し返すだけでヴィータはあっさりと後退を余儀なくされる。けれど、そんな事はどうでも良いとばかりにヴィータは叫び気味に女性に言葉を放った。

「テメェ……なにしやがった!?」

「なに、とは? お前の攻撃を読めた事を訊いているのなら、簡単だ。あれだけ大雑把なモーションならば、攻撃を予測‐推理‐する事も容易いからな」

「とぼけんなっ!! どうやってアタシの攻撃を“受け止めたのか”って訊いてんだよ!!」

避けられたならまだ解る……だが、受け止めた? あり得ない。あり得る筈が無い。それだけの自信を少女は持っていたのだ。

――事実、ヴィータのこの一撃を受け止める事は、かなり難しい。カートリッジシステムによって、突破力と追尾力に優れるヴィータ一撃は、躱す事も受け止める事も難しい……だが、目の前の魔法使いは薄く微笑み、またいとも簡単に驚愕の方法を言ってのけた。

「別に、大したことはしていないさ。ただ単に……お前の攻撃に“衝突する瞬間に同じだけの衝撃”を与えて、完全に相殺しただけだ」

「なっ……」

もう、ヴィータは絶句して言葉を失う他なかった。女性が言っているのは、こういう事だ。

まず、彼女はヴィータの『ラケーテンハンマー』の軌道を完全に見切り、そして当たる直前に凄まじい速度で刃を振るった。さらに、刃とスパイクが衝突する瞬間に、強化された少女の一撃と全く互角の力を“一瞬だけ”生み出し、『ラケーテンハンマー』の威力を完全に打ち消したのだ。だから、あんなに簡単に受け止められてしまった。

――こういうのを、恐らく“神業”というのだろう。一瞬で相手の技を見切る推理力。さらに、桜色の髪の女性の友人曰く、未来予測じみた驚異的な直感力と、恐るべき反射神経と動体視力。そして、驚異的な斬撃スピード。

これらの要素を駆使して、この“神業”は成り立った。何より、未来予測じみた直感力については、彼女の右に出る者はそういない。

彼女にかかれば、放たれた銃弾をも超える速度の斬撃を放ち、銃弾のベクトルを強制的に変更する事すら、可能だろう。というか、少し前にやっている。……最早、反則的なまでの戦闘スキルだ。歴戦の騎士であるヴィータですら、驚く以外にどうしろってんだ、と言わんばかりの表情で惚ける他ない。
さらには――尋常ならざる速度で、月と空が曇に覆われていく……この切り取られた空間とも言える『広域封鎖結界』内部で、だ。


「なんだよこれ……これもお前か!?」

「聞き方が断片的だな。まぁ、この天候を私が操作したかと訊かれれば、答えは“NO”だ」

ただ、彼女はその答えを知っている。曇天が支配する、この天候。その曇天すらも、支配下に置かれた物。

全ての水が彼女の武器。全ての天‐そら‐は彼女の支配下。その力の名は――

「霜天に坐せ――氷輪丸」

溢れた冷気が創り出す水と氷の竜。水色の着物を羽織った少女が、金髪のツーサイドアップをなびかせ、それを従える。サファイアブルーの瞳が、目の前の騎士を見据える。
桜の魔法使いと、烈火の将が相対した。

「……そこの使い魔くん、そこの女の子を連れて下がって」

「あ、あぁ」

視線を外さず、そう告げた少女に何故か逆らえずにアルフはビルに突っ込み、気を失ったフェイトを回収して下がった。フェイトのデバイスも、辛うじて機能を保っているだけで破損が激しい。戦闘続行は、まず不可能だろう。

高町なのはと同じく、魔導師としての実力が高い筈のフェイトをここまで追い込んだのは、氷輪丸を構える見た目は少女、さくらの前に立つ、桜色の髪をポニーテールに括った女性。

――ヴォルケンリッター、烈火の将……シグナム。

「強い……ですね」

その百戦錬磨の彼女が、小さな少女を前にして額に一筋の汗を流す。剣こそ構えているものの、斬りかかる事はしない。いや、迂闊には出来ないと言う方が正しい。

それを見て、さくらはただ微笑み軽そうに言葉を口にする。

「そうかな? 案外見かけ倒しかもよ」

「いいえ、解ります。貴方は強い……そして、不思議と心が踊るのを止められない」

そう、笑みを浮かべて言うシグナムに、さくらは少しだけ目を見開いた。シグナムが俗に言うバトルマニアだったのが、何故か少々予想外だったらしい。

シグナムが剣のデバイス『レヴァンティン』を構え、さくらは氷の刀『氷輪丸』を一閃振るい、氷の竜を従える。そうして互いが動こうか、その瞬間――


――桜色の光が、瞬いた。


「なに!?」

「……集束砲撃」

さくらが静かに呟く、と同時にそれは放たれた。圧倒的な光の束、集束砲撃『スターライト・ブレイカー』。神々しいまでの光が結界に激突し、一瞬にしてそれを打ち破った。

一ヶ所とはいえ破られた結界は、そこから崩壊を始めてゆっくりと現実空間へ回帰しつつある。

「くっ……申し訳ない。刃を合わせるのは、また次の機会に!!」

答えは聞かず、シグナムは結界の外へ向けて飛翔する。確かに心踊る戦いは魅力的だ……が、自分には遣らねばならない事がある。そしてもう一つ、“アイツ”との約束がある。

――そうして、二人は交錯する。

「っ!!」

「…………」

一人――烈火の将――は目を見開き、もう一人――烈火の魔法使い――は帽子の下で静かに見つめるだけ。

同じ色の瞳と、同じ色の髪が一瞬交錯する。それが、この歪んだ物語が加速する合図。

『ダ・カーポ』の様に繰り返す物語の、一つの合図だった――
  1. 2012/07/30(月) 00:22:03|
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